4月18日 独自に学習する脊髄感覚運動学習回路(4月12日号 Science 掲載論文)
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4月18日 独自に学習する脊髄感覚運動学習回路(4月12日号 Science 掲載論文)

2024年4月18日
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完全脊髄損傷で脳と脊髄が切り離された患者さんでも、脊髄での感覚運動に関わる電気活動を記録し、それを用いて自分の足を動かせるようにするローザンヌ大学からの論文についてはこのブログでも何回か紹介し、YouTubeでも解説した。このような方法を可能にしているのが、運動に必要なインプット、アウトプットを脳から切り離された脊髄レベルで完成させることができるからだ。従って、このような技術をさらにレベルアップするためには、脊髄に形成されている感覚、運動神経回路の解明が重要になる。

今日紹介するベルギー・ルーベンにあるフランダース神経電子研究所からの論文は、刺激により足を引っ込める反応を学習により変化させたときに起こる神経回路変化を詳しく調べた研究で、4月12日Science に掲載された。タイトルは「Two inhibitory neuronal classes govern acquisition and recall of spinal sensorimotor adaptation(脊髄の感覚運動適応の獲得と再現には2種類の抑制性神経が関わる)」だ。

研究では脳から切り離した足の動きをカメラで記録し、足のポジションがほんの少し変化すると刺激が入るようにして学習をさせ、足先を刺激して起こる足の反射への効果を見ている。元々反射は存在するので、学習効果をどう調べるのかと思って読んだところ、なんとスローモーションカメラで63種類の運動パターンデータを記録して、動きのパターンが学習によって全く異なることを形態の主成分解析で行っている。まさに解剖学と生理学が統合された検出方法だ。

おそらく脳のように学習の長期固定化という過程はないと思うが、短期間学習効果は維持できる。次にこれを検出する系を作って、学習した短期記憶に関わる神経回路を、様々な遺伝子改変マウスを用いて調べ、まず感覚を受け取る神経のうち Ptf1α 陽性細胞が足の運動学習パターン形成に関わることを明らかにしている。

学習に関わる感覚インプット細胞が明らかになったので、その神経興奮パターンを調べると、学習によって Ptf1α 細胞の興奮が高められ、これが刺激への反応性を作っていることがわかる。

次に、インプットを受ける神経細胞活動を調べていくと、Aδ/C 神経細胞の興奮に学習効果が出ていることがわかる。ただ、カンデルらが研究した有名なアメフラシの水管反射に関わる単純な回路とは全く異なり、Aδ/C 神経細胞でも学習した神経は前シナプスレベルで閾値が高めてノイズを下げていることがわかる。

次にこの効果の持続は、おそらく運動神経の興奮を調節する抑制性神経の調節によるのではと考え、発現分子が異なり、相互に抑制しあう2種類の抑制性神経が学習によって全く逆の興奮性を獲得することで、通常なら抑制的に調節されている運動の刺激閾値が調節されていることを明らかにしている。

以上が結果で、単純に見えても、複雑な神経回路が成立することで、一本の線では決して描けない多数の神経でできている回路が調節されているのがよくわかる。こうして回路を明らかにすることは、今後 AI を用いた脊髄損傷患者さんの治療に大きく役立つことは間違いない。加えて、回路の複雑性、合目的性を明らかにすることで、現在使われている深層ニューラルネットのさらなる進化にも大きく役に立つと思う。

人工知能で遅れた我が国はキャッチアップすることを主に投資をしているが、さらに先を考えると実際の脳神経回路の研究に力を入れ、常に脳科学と人工知能の研究が相互作用することで、全く新しい回路設計などを開発することも重要になると思う。

この研究は竹岡さんという外国で独立して頑張っている女性研究者の研究室からの論文で、人工知能の後れを取り戻すためには、少し回り道でもこのような脳科学の人材が我が国で活躍できることが重要になると思う。

カテゴリ:論文ウォッチ

4月17日 人工血小板はどこまで可能か?(4月10日号 Science Translational Medicine 掲載論文)

2024年4月17日
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血小板は損傷した血管からシグナルを受け取ると、自らも傷口のマトリックスに結合して、トロンビンなどを介する凝固反応を誘導する。また、傷口に形成されるフィブリンの中に潜り込んで凝固塊を収縮させ増強して出血を止める。このように、敏感でなおかつ様々な機能が小さな膜の中に込められているので、現在も長期保存が難しく、慢性的に不足する。

このような血小板が持つすべての機能を人工物で再現することは難しいが、止血に必要な一部の機能だけを再現して、血小板の機能を助け、止血を促進する可能性がある。今日紹介するノースカロライナ州立大学からの論文は、アクリルアミドゲルとフィブリンと結合するナノボディーを組み合わせて、傷口に形成されるフィブリンネットワークの機能を高めて止血を促進しようとする試みで、4月10日号 Science Translational Medicine にオンライン掲載された。タイトルは「Ultrasoft platelet-like particles stop bleeding in rodent and porcine models of trauma(超柔軟な血小板様の粒子は齧歯類と豚モデルで出血を止める)」だ。

血小板が活性化されると、極めて複雑な凝固カスケードが開始されるが、最終的に形成された酵素トロンビンによりフィブリノーゲンからフィブリンが合成され、フィブリンネットワークが形成される。このネットワークに血小板が固定され、凝固塊の強度を高めている。

この研究では形成され始めたフィブリンネットワークに潜り込んで強度を高めるという一点に絞ったナノ粒子を開発している。

材料はポリアクリルアミドだが、架橋を最低限に絞ることで柔軟度が極めて高い粒子を設計している。これによりフィブリンネットワークの中で自由に形を変化させ、フィブリン凝固塊の密度を高めることができる。ただ、このままでは傷口のフィブリンネットワークには結合できないので、この粒子に、H鎖だけでフィブリンに対する抗体活性をもつナノボディーと結合させることで、傷口に形成されるフィブリンネットワークに統合されるよう設計している。

論文では様々なナノボディーを比較し、最もフィブリン特異的結合力が高いナノボディーを選び、フィブリンネットワークの密度を期待通り高めてくれるか、試験管内で検討、これを結合させたポリアクリルアミドゲルの止血能を調べている。

結果だが、マウスの肝臓に切開を入れる出血モデルで、あるいは大腿動脈に穴を開けるモデルでは、期待通り出血を抑えることができる。また設計通り、傷口のフィブリンネットワークに入り込んでいることも確認している。

通常フィブリンは損傷部位のみに形成されるが、ハイドロゲルにより血管内に形成されると取り返しがつかない。そこで様々な濃度のハイドロゲルを投与後、全身の臓器を調べ副作用が起こっていないかも確認している。また基本的には、投与後速やかに体外へ排出される。驚くことに体外への排出は腎臓を通して行われる。すなわち、糸球体のフィルターを通り抜けるだけの柔軟性があることになる。

最後に豚の肝臓を切開して出血させる実験で、止血効果を確かめている。実際のデータを見ると、フィブリンに対する抗体をつけない場合も、柔らかいハイドロゲルは止血効果を持っているので、アクリルアミドの素材としての可能性を示している。

以上が結果で、傷口にフィブリンネットワークが形成できるという条件で、出血を抑えることはできそうだ。ただ、血小板と比べると、凝固カスケード誘導、凝集反応誘導能は全くなく、一種の絆創膏といえる。ただ、素材としては面白いので、今後様々な分子を加えてより血小板に近づける努力が行われると期待する。人工材料も捨てたものではない。

カテゴリ:論文ウォッチ

4月16日 人間の脳で神経細胞の由来を調べる(4月10日 Nature オンライン掲載論文)

2024年4月16日
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遺伝子操作技術とともに発生学は大きな変革を遂げ、私も現役時代この進展を目の当たりにしてきた。しかし、遺伝子操作は人間にはほぼ利用できないため、モデル動物でわかったことを、発生後、あるいは胎児脳の解析により再確認する作業が必要になる。この作業は簡単ではなかったが、このギャップを埋めるため、iPS細胞など多能性幹細胞からの分化培養を使えるようになり、さらに single cell レベルのゲノム解析技術が人間についての研究を大きく進展させてきた。

今日紹介するカリフォルニア大学サンディエゴ校からの論文は、これらの新しいテクノロジーに、ゲノムシークエンシングで特定できる体細胞突然変異を組み合わせることで、脳に分布する各細胞の系譜を明らかにしようとした研究で、4月10日 Nature オンライン掲載された。タイトルは「Cell-type-resolved mosaicism reveals clonal dynamics of the human forebrain(細胞レベルで調べたモザイク性を用いて人間の前頭葉の神経細胞動態が明らかになった)」だ。

発生過程では細胞増殖が繰り返されるため、細胞内に突然変異が蓄積しやすい。変異は原則ランダムに起こるので、特定の変異を用いてその細胞に由来する子孫を定義することができる。すなわちすでにできあがった脳に存在する各神経細胞の由来を定義できる。このためには、まず系譜を特定できる突然変異を探索する必要がある。

この研究ではDNAの保存状態がいい2人の保存死後脳各部分を集めて、300回を超える全ゲノム解析を行い、それぞれ287、789種類の変異が系譜の印として利用できることを特定している。

次いで、この系譜特定変異を、同じ組織からマーカー発現により分類した興奮神経細胞と、3種類(DLX1、TBR1、COUPTFII をそれぞれ発現する)抑制性神経に分けて、そこから増幅した DNA での系譜標識遺伝子を元に、各細胞の系譜関係を明らかにしている。また、実験によっては single cell レベルで、DNA と RNA を別々に解析し、細胞の種類を確認した DNA を用いて系譜関係を調べている。

簡単に述べてしまったが、それぞれのステップでの方法論だけでなく、ゲノム解析から標識遺伝子を元に系譜を作成するための深層学習モデル作成など、大変な実験だ。

もちろんすべての細胞の系譜を調べることはできないので、数百個の十分なデータがそろった細胞について、系譜解析を行っている。結果については以下に箇条書きでまとめる。

  1. 興奮神経は脳が形成されている過程で、ラディアルグリアと呼ばれる幹細胞から局所で形成されていることが知られている。事実、それぞれの領域での興奮神経細胞は同じ系譜に属することがわかるが、海馬の興奮神経細胞は、他の領域の興奮神経細胞から分離しており、発生の早い時期に運命が決定されている。
  2. 抑制神経ではこれまで終脳腹側幹細胞が移動してくると考えられていたが、興奮神経とともに脳背側、局所で発生するポピュレーションが存在している。これらは背側新皮質由来で、興奮神経と同じ由来で、それぞれ分化した後、それぞれの系列の子孫を作る。興奮神経と比べると、抑制精神系は局所でもより広い範囲へ分布できる。
  3. 背側由来の幹細胞は、前後軸に沿って移動して、そこで興奮神経と抑制性神経を発生させる幹細胞へ分化する。
  4. 大体6割ぐらいの抑制性神経が終脳腹側から移動して形成される。この中で、DLX1 陽性細胞とTBR1 陽性細胞は系譜が重複するが、CPUPTFII は別の系譜で、同じ幹細胞由来の子孫が皮質に広く広がっている。

以上が重要な結果で、マウスとは異なり、抑制精神系のかなりの部分が終脳腹側ではなく、興奮神経にも分化できる幹細胞が移動してきた局所で分化して発生することは、ヒトでの研究の重要性がよくわかる。それでもヒトで調べるのは大変なコストと労力が必要なのは間違いない。

カテゴリ:論文ウォッチ

4月15日 糖代謝異常が DNA 修復を抑制して発ガンを促進する(4月11日 Cell オンライン掲載論文)

2024年4月15日
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昨日は、TCA サイクル活性化の結果合成されるイタコン酸が NRF2 の転写を介して炎症を抑え、グルココルチコイドの作用も実はこの経路を上昇させることで発揮されていることを示した、ドイツ・エアランゲン-ニュルンベルグ大学からの論文を紹介した。このように、代謝経路から発生する様々なメタボライトの影響は想像以上に大きい。

おそらく一般の人にもよく知られている例は、アルコール代謝によるアセトアルデヒドで、アルデヒド処理酵素が欠損している人では、悪酔いするだけでなく、DNA が修飾を受けて変異が入りやすくなったり、あるいはタンパク質のアセチル化により分解が促進されたりして、結果として食道ガンが発生しやすくなる。

今日紹介する国立シンガポール大学からの論文は、糖代謝産物として発生するグリオキサールがガン抑制遺伝子 BRCA2 の分解を誘導して DNA 修復異常、そしてそれに続くガン発生が起こりうることを示した研究で、4月11日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「A glycolytic metabolite bypasses ‘‘two-hit’’ tumor suppression by BRCA2(解糖系からの代謝物が BRCA2 によるガン抑制2ヒット経路をバイパスする)」だ。

このグループはこれまでアルデヒドなどの代謝物がガン抑制分子の分解を促進することについて研究しており、この論文もその延長線上にある。BRCA2 が欠損すると DNA 修復異常で遺伝子変異が起こりやすくなり、結果ガンが発生することが知られている。通常ガン抑制遺伝子の場合、片方の染色体の異常だけでは機能は維持されるが、もう片方の染色体でも変異が起こると、機能喪失になり、これを LOH (loss of heterozygosity)と呼んでいる。ところが、ゲノム研究が進み、LOH がなくてもガンの進展が見られるケースが知られるようになった。このグループは、このようなケースは、遺伝的欠損ではなく、BRCA2 分子のタンパク質レベルでの機能異常があるのではと考えた。

そこで、片方、あるいは両方の染色体で BRCA2 の変異があるマウスに、膵臓ガンを誘発する RAS 変異と p53 変異を導入し、BRCA2 欠損で起こる遺伝子修復異常の出方を調べると、ヘテロもホモも同じような修復異常による遺伝子変異が見られることを発見した。すなわち、片方の染色体の BRCA2 が正常でも、発ガン過程でタンパク質レベルで機能が欠損していることがわかった。

そして、この原因として発ガン過程で発現する変異 RAS により高まったグルコースから乳酸への解糖過程で合成が高まる副産物、メチルグリオキサール(MGO)が BRCA2 と結合すると BRCA2 が分解されることを発見する。すなわち、LOH がなくても解糖系から MGO が発生すると、BRCA2 欠損と同じ状況が作られることを明らかにした。

これがこの研究のハイライトで、あとはグリオキサール除去経路が欠損すると、DNA 修復が働かなくなること、そして人間の乳腺上皮オルガノイド培養を用いて、グリオキサールに長期的に暴露されることで、遺伝子修復異常に基づく突然変異の蓄積が起こることを明らかにしている。

結果は以上で、この論文を読んで糖尿病など高グルコースの持続が膵臓ガンリスクになる原因がよく理解できた。実際、MGO は高グルコースを反映するヘモグロビンの変化(A1c)の原因として知られており、同じことが膵臓内で BRCA2 でも持続的に起こっていたとすると、これは大変だ。

この研究が教えるもう一つ重要な点は、BRCA2 といったガン抑制遺伝子、あるいはガン遺伝子として知られている遺伝子の変異だけを見たのでは発ガンの把握はわからないことだ。この論文の場合、RAS 変異による解糖系の活性化が、BRCA2 分解を誘導する相互作用が起こっているし、さらにこの経路に関わる代謝系の遺伝子はすべて発ガンに関わることになる。このような総合的視点で患者さんのゲノムを解析していくことの重要性を理解できるいい論文だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ

4月14日 グルココルチコイドの作用機序の見直し(4月10日 Nature オンライン掲載論文)

2024年4月14日
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私の現役時代から、様々な免疫異常にはグルココルチコイドが使われてきた。一般的に、ステロイドとか、副腎皮質ステロイドと呼ばれているのはグルココルチコイドのことで、今もこの薬剤なしに医療は考えられない。確かに、抗体薬をはじめとする分子標的薬が利用されるようになり、何でもグルココルチコイドに頼るというのはなくなった。しかし、例えば私の場合、単発性に湿疹が起こると、グルココルチコイドの濃度の高い塗り薬を使っているし、花粉症の目薬もグルココルチコイドを使っている。このような局所投与は問題ないが、グルココルチコイドは内服薬として摂取したときに代謝異常を中心に様々な副作用をおこすため、薬としては印象が悪い。

今日紹介するドイツ・エアランゲン-ニュルンベルグ大学からの論文は、グルココルチコイドが抗炎症作用を発揮するメカニズムを追求し、これまで副作用として知られていた経路が実際には炎症を抑えるのに重要な働きをしていることを示した興味深い論文で、4月10日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Metabolic rewiring promotes anti-inflammatory effects of glucocorticoids(代謝経路の再編がグルココルチコイドの抗炎症作用を促進する)」だ。

グルココルチコイド(GC)は核内受容体に結合し、転写を介して作用すると考えられてきた。ところが最近、代謝への影響は GC とピルビン酸デハイドロゲナーゼ(PDH)が直接結合することで TCA サイクルが活性化することによることが示された。この論文は引用数から考えてあまり注目されなかったようだが、おそらくこれに注目して GC の抗炎症作用を見直したのがこの研究だ。

炎症の中心に存在するマクロファージを LPS で刺激すると、様々な炎症促進分子が発現するが、GC 処理しても転写レベルでの変化は大きくないことがわかる。一方狙い通り、GC 処理後すぐから TCA サイクルが高まるとともに、酸素消費量が上昇する。すなわち、LPS で刺激されたマクロファージは短距離走時の筋肉のような糖代謝システムに変化し、グルコースを燃やしてできたピルビン酸は乳酸になるが、GC 処理で PDH 活性が高められるとピルビン酸が TCA サイクルに供給され、有酸素の長距離走型に変化することが確認された。

ただ代謝が長距離走型に変化するだけでは抗炎症作用は説明できない。調べていくと、TCA サイクル活性が高まることで、中間の代謝物の合成が上昇し、特にクエン酸からアニコット酸、そしてイタコン酸への経路が高まり、結果としてイタコン酸の合成が上昇していることがわかった。

イタコン酸は抗炎症作用を持つ代謝物として知られており、KEAP1 分子に結合することで NRF2 転写因子の核内移行を誘導することが知られている。そこで、LPS 刺激マクロファージに対する GC の効果を調べると。NRF2 がノックアウトされたマクロファージでは GC の効果が消失することがわかる。同様に、イタコン酸合成経路をノックアウトすると、やはり GC 効果がなくなることから、GC は、PD Hに結合して TCA サイクルを高めることで、イタコン酸の合成を上昇させ、マクロファージが分泌するイタコン酸が NRF2 を介して炎症反応を和らげていることが明らかになった。

最後に、GC 治療を受けている患者さんでは血中イタコン酸が上昇していること、マウスの実験系でイタコン酸合成経路がノックアウトされたマウスでは GC の効果がないことなどを示し、これまで GC 結合核内受容体の作用と考えてきた GC の抗炎症作用が、実は代謝の再プログラムを介したイタコン酸合成増加によると結論している。

結果は以上で、自己免疫反応に対する GC の効果がすべてマクロファージによって担われているのかについてはさらに検討が必要だが、GC の作用機序の一端が明らかになったことは、より特異的で副作用のない治療への一歩になると思う。

カテゴリ:論文ウォッチ

4月13日 動力学的視点が喘息の新しい治療法開発を促す(4月5日号 Science 掲載論文)

2024年4月13日
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喘息は気管支のアレルギー性炎症による刺激で気管支が収縮し、特に息を吐くのが苦しくなる病気で現在は気管支拡張のためのβ2アドレナリン受容体刺激剤と、炎症を抑えるステロイドの吸入で対応している。まだステロイド吸入剤が整備されていなかった私の現役時代(50年近く前)と比べると、かなりうまくマネージできるようになったと聞いているが、まだまだマネージができない患者さんもおられるようだ。

今日紹介するロンドン・キングスカレッジからの論文は、これまで考えられていた免疫性炎症だけでなく、気管支が収縮するときのメカニカルストレスによる組織障害が喘息の重要な要因になる可能性を探った研究で、4月5日号 Science に掲載された。タイトルは「Bronchoconstriction damages airway epithelia by crowding-induced excess cell extrusion(気管支収縮は上皮の過密を誘導し過剰になった細胞が吐き出されることで気管を損傷する)」だ。

確かに発作により気管が収縮すると、息が苦しくなるほど気管の内径が狭くなるので、気管上皮の密度は上昇する。しかし、ストレッチや圧縮に耐えるようにできた気管で本当に押しくらまんじゅうのように細胞が飛び出すのか、まずこの点を気管支収縮剤投与や、アレルギー反応誘導により気管を収縮させてみている。

結果は予想通りで、15分ですでに気管内に細胞が飛び出してくるのが観察できる。収縮が強いと、上皮全体が剥げ落ちることすらある。すなわち、気管収縮は力学的な強いストレスとして働き、上皮細胞の脱離を引き起こすことが確認された。そして、この脱離を気管支拡張剤だけでは防ぐことができない。

そこで気管上皮のメカニカルストレス経路にある分子の発現を調べると、Piezo や TRP のチャンネル、スフィンゴシン1リン酸(S1P)合成とそれによる受容体刺激が続くことを確認し、それぞれの阻害剤を気管支収縮誘導と同時に投与すると、気管支は収縮しても上皮の障害が起こらないことを確認している。また、より臨床的設定で、アレルギー反応が起こってから気管支拡張剤とともにメカニカルストレス経路を阻害する実験系でも、気管組織を守れることを示している。

メカニカルストレス軽減により気管支上皮の障害を防ぐことは、単純に組織のインテグリティーが守られるだけでなく、障害部位からのアレルゲンや細菌の侵入を防ぎ、炎症の拡大を抑えることも示している。すなわち、発作の度に上皮が傷害されることが喘息の遷延に大きな役割を演じていることがわかる。

さらに、阻害実験からメカニカルストレスは気管上皮を刺激して粘液分泌を高め、上皮組織の障害をさらに促進しており(すなわち上皮が基底膜から浮き上がる)、これを Piezo チャンネルや S1P 阻害剤で抑えることができることも示している。

最後に、喘息でステロイド吸入を続けている患者さんが、ガンで肺切除を受けた機会を捉えて、実際の喘息患者さんの気管組織を調べると、気管上皮の障害とともに、上皮の気管内への脱落が見られることを確認し、人間でもこの治療を必要としていることを示している。

以上が結果で、この研究で使われた Piezo 阻害剤や S1P 受容体阻害剤はそのまま臨床に使えないので、より安全な阻害剤の開発が必要だが、動力学的視点に立つことで喘息の新しい治療標的が特定できたことは間違いない。

カテゴリ:論文ウォッチ

4月12日 転移ガン組織中に潜む細菌叢を暴き出す。(4月25日 Cell 掲載論文)

2024年4月12日
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近代医学が始まって以来、細菌が発ガンを促すという考えは根強く存在していたが、研究が進むにつれ細菌説は消えていく。ところが、オーストラリアのマーシャルとウォレンによりピロリ菌が胃潰瘍や胃炎だけでなく、胃ガン発症リスクを大きく高めることが示され、ノーベル賞に輝いて以来、細菌とガンの相関研究は重要な分野になり、例えばフゾバクテリウムと直腸ガン、そしてこのブログでも紹介した口内連鎖球菌と胃ガン(https://aasj.jp/news/watch/24006)など、発ガンを促進する細菌が明らかにされてきた。

今日紹介するオランダ癌研究所からの論文は、4000を超す転移ガン組織の細菌叢を調べることで、包括的に細菌とガンの関係を探った研究で、4月25日号 Cell に掲載された。タイトルは「A pan-cancer analysis of the microbiome in metastatic cancer(転移ガンの細菌叢のガン横断的研究)」だ。

1700人の転移ガンの患者さんから、4000を超す転移組織バイオプシーに潜む細菌 DNA 配列を解読し、細菌叢とガンや転移組織特異的相関が見られるか調べている。当然バイオプシーの過程や、転移した側の組織の細菌叢などからの細菌の紛れ込みなどを考慮する必要があるが、これらの要因を除いても、転移組織やガンのタイプに特徴的な細菌叢が存在することを明らかにしている。

転移先の組織で見ると、酸素濃度の影響が大きい。すなわち、嫌気性菌の割合で組織が低酸素状態かどうかがわかる。理由はわからないが面白いのは、ガンのゲノム不安定性と細菌叢のタイプがはっきり分かれる点で、再現できる結果なら調べる価値はある。

この研究の目的は細菌叢によってガンの進展が影響されていないかを決めることだ。ただ、ピロリ菌やフゾバクテリウムのように、ガンの増殖を促進するかどうかについては検討されておらず、もっぱら細菌叢により影響される自然免疫が、ガンの増殖進展に追う影響するかが検討されている。

まず、細菌叢は様々な分子を介して、ガン組織の遺伝子発現を変化させる。例えば、コラーゲンの発現は大きく高まる。また、自然免疫を刺激して好中球や単球の主要組織への移動を促す。これらの結果、ガン組織への免疫細胞の遊走が阻害され、ガンの増大や転移が促進される可能性がある。

一方で、細菌叢はホスト免疫系の影響を強く受ける。例えばチェックポイント治療を受けている患者さんは、一般的免疫が増強される結果、細菌叢の多様性や量が低下する。

残念ながら、この研究はガン免疫に影響を及ぼす特定の細菌を特定するには至っていないが、直腸ガンの増殖を促進することが知られている Fusobacterium とチェックポイント治療について調べ、このバクテリアがガン組織での免疫を抑制して、チェックポイント治療の効果を抑えていることも示している。

以上、「とりあえず調べた」といった感じの論文だが、ガン組織で細菌叢と自然免疫に焦点を当てた点は面白いと思う。このように、細菌叢が自然免疫を誘導し、白血球の浸潤を増やすなら、チェックポイント治療も、まず一般抗生剤でガン組織の細菌を減らしてから行うことも考えられる。

カテゴリ:論文ウォッチ

4月11日 予想外に長寿命の RNA が存在する(4月5日号 Science 掲載論文)

2024年4月11日
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脳の神経細胞は増殖後静止期に入ると、ゲノム DNA の代謝は修復時に起こる置換だけに限られる。従って、ほとんど代謝されずに情報がしまわれているとすると、人間の場合100年近く同じ核酸がゲノム中に維持されることになる。実際、カロリンスか研究所の Frissen 研究室からの原爆実験によりできたアイソトープを用いて脳の一部の細胞で生後も増殖が続いていることを証明した研究には驚いたが、逆に言うと何十年も取り込まれたアイソトープが安定にゲノム DNA の中に維持されていることを意味している。これは核酸だけでなく、同じアイソトープを使って、脂肪組織の中には古い脂肪酸が維持されていることを Spalding グループは証明している(https://aasj.jp/news/watch/11426)。

今日紹介するドイツ神経変性疾患研究センター、戸田研究室からの論文は、RNAの中にも細胞内で代謝されずに長期間維持される種類があり、主にクロマチン維持に関わることを示した研究で、4月5日号の Science に掲載された。タイトルは「Lifelong persistence of nuclear RNAs in the mouse brain(マウス脳内の一生涯維持される核RNA)」だ。

この研究のハイライトは、RNA の中に代謝されないで長期間維持される分子があるのではと考えたことだ。そして、エチニルウリジン (EU) を生後に注射し RNA をラベル、その後1週間、1年、2年とラベルされた RNA の存在を追跡している。と、驚くことに、一部の細胞では代謝されない RNA が核内に維持され、2年間もそのまま存在するケースがあることを発見している。

主に海馬や小脳に局在し、海馬では4割、小脳では6割の細胞が一年間たってもラベルされる。ところが、皮質体性感覚野では全くラベルされない。

培養細胞をラベルして調べると、増殖するとラベルは消失するので、静止期にあるときにだけこの長寿 RNA が維持されることがわかる。

次に、どのような RNA が維持されるのか、培養細胞やラベル1ヶ月目の海馬で調べている。培養実験では1575種類の EU ラベルされた RNA が特定されている。一方、海馬では16種類しか検出できていない。従って、長寿 RNA もゆっくりは新陳代謝している可能性が高い。

さらに驚くのは、ノンコーディングもあるが、コーディング RNA が圧倒的に多いことだ。しかもクロマチン維持に関わる分子が多い。海馬の場合16種類なので、実験を繰り返しても同じ16種類が分離されるのか、さらに RNA の長さに偏りはあるかなど、長寿 RNA 発生機構はまだまだ研究が必要だと思う。

ただ、多くの RNA がゲノム内の繰り返し配列にマップされたことから、繰り返し配列を持つ RNA に焦点を当て、これらがヘテロクロマチンと結合しており、この RNA を細胞内で除去するとヘテロクロマチンの維持が低下することを明らかにしている。また、このような細胞では増殖期に移行させると DNA 損傷などが起きて細胞が死ぬことを示し、おそらく長寿 RNA はクロマチンの維持に積極的に関わることで、静止期の細胞を守っていると結論している。

結果は以上で、読んだ後、余計に疑問がわいてくるタイプの論文だと思う。考えてもいなかった現象なので当然だが、静止期にあっても神経細胞では興奮のたびに DNA 切断がおこり、修復されているので、ヘテロクロマチンと結合しているという以上の意味があるかもしれない。さらに詳しい研究が必要だと思う。

いずれにせよ、RNAワールドでは長寿 RNA が必要だった。そのためには、安定なタンパク質に守られることで、個別性が維持されたと思っているが、ひょっとしたらそんな名残が長寿 RNA から見えるかもしれない。

カテゴリ:論文ウォッチ

4月10日 毛生え薬が腎臓の嚢胞形成を抑える(1月4日号 Cell Stem Cell 掲載論文)

2024年4月10日
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多発性嚢胞腎は遺伝的な変異で腎臓に嚢胞が形成され、経過とともに腎不全に陥る疾患で、我が国には3万人前後の患者さんがおられる。現在遺伝子診断は可能になっているが、治療する方法はほとんどない。幸い、患者さんの iPS細胞から誘導した腎臓オルガノイドに嚢胞を形成させる方法が開発され、これを用いた創薬研究が行われてきた。この分野は我が国も西中村さんや長船さんなど活発な研究が行われており、たしかレチノイン酸を用いた治験が進められているはずだ。

今日紹介するシンガポール南洋理工大学からの論文は、患者さんの iPS細胞を用いた嚢胞形成の細胞学的、生化学的解析を進めて、繊毛とオートファジーの嚢胞形成への関与を明らかにし、これに基づく薬剤スクリーニングの結果、一般的にもよく知られるケハエグスルミノキシジルが嚢胞形成を抑える可能性を示した研究で、1月4日号の Cell Stem Cell に掲載された。タイトルは「Kidney organoid models reveal cilium-autophagy metabolic axis as a therapeutic target for PKD both in vitro and in vivo(腎臓のオルガノイドモデルは繊毛・オートファジー・代謝の経路が多発性嚢胞腎の治療標的になることを試験管内および生体内で明らかにした)」だ。

創薬への iPS細胞応用を調べていたとき、見落としていたこの論文に気づき、1月号と少し古くなってしまったが面白いので紹介することにした。

研究ではこれまで多くの研究と同じで、腎臓のオルガノイド形成により、様々な多発性嚢胞腎の嚢胞形成を再現できること、この過程に細胞内 cAMP とカルシウムシグナルが関わることを明らかにしている。すなわち、アデニルシクラーゼを活性化すると嚢胞形成が高まり、カルシウムチャンネルをブロックすると嚢胞形成が抑えられる。

このシステムを用いて、さらに嚢胞形成に関わる過程を細胞学的、分子生物学的に検討して、嚢胞形成には上皮の極性の変化と、細胞増殖スピードの変化を来す様々な遺伝子発現変化によることを明らかにしている。詳細はすっ飛ばすが、なるほどこうして方法ができるのかというイメージがよくつかめる。

その上で、多発性嚢胞腎の上皮では細胞内の代謝変化に平行してオートファジーが抑えられていることに気づく。そこで、オートファジーを高めるため ATG5 を発現させると、嚢胞形成が強く押さえられる。

次に、オートファジーに関わる様々な分子が繊毛に一度集まることが知られているので、繊毛と嚢胞形成を調べる目的で、KIF3分子をノックアウトして繊毛形成ができなくした iPS細胞を用いた実験を行うと、嚢胞形成が押さえられる。このメカニズムを探ると、細胞内カルシウムシグナルが上昇し、オートファジーが上昇する。すなわち、繊毛形成を押さえることで、オートファジーが高まることで嚢胞形成が押さえられる。

この系を用いて嚢胞形成を押さえる薬剤を探すと、グルコース代謝阻害剤、メトフォルミン、ラパマイシンなどの代謝に関わる化合物が嚢胞形成を抑えることを発見する。ただ、使用濃度から治療薬として用いることはできないと判断している。

この代謝を標的にする薬剤に加えて、フォルスコリント同じアデニルシクラーゼ阻害剤の ST034307 と、毛生え薬として一般薬としても使われているミノキシジルが特定された。

この効果を調べるため、試験管内で形成させたオルガノイドをマウス腎臓カプセル内で成長させ、嚢胞を形成させるモデルを作成し、これを治療実験に用いている。この系で、オートファジーを遺伝的に高めると嚢胞形成は抑えられる。また、繊毛のできないオルガノイドでも嚢胞形成が抑えられる。そして、ミノキシジルを投与すると、嚢胞形成が半分程度に抑えることが明らかになった。

この研究ではなぜ sulfonyl-urea receptor を作動させるミノキシジルが嚢胞を抑制するのかについて完全に明らかにできていないが、結果として細胞内カルシウムの上昇とオートファジー上昇が起こっていることは確認できている。従って、詳しいシグナル経路を解明するのは難しくないだろう。

以上、ミノキシジルが嚢胞を抑えるという結果に驚いた。

カテゴリ:論文ウォッチ

4月9日 一人のバイキングに由来するポリメラーゼ γ 変異によるミトコンドリア病のメカニズム(4月3日 Nature オンライン掲載論文)

2024年4月9日
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ミトコンドリアは細胞内で独立して増殖するが、そのときのDNA合成はポリメラーゼ γ 複合体により行われる。ポリメラーゼ γ の機能が低下すると、当然ミトコンドリアの数が減少し、重傷のミトコンドリア病を発症し、目や眉を動かせないというミトコンドリア病特有の症状を始め、感覚運動失調やてんかん、さらには肝臓障害など多様な症状が現れる。

今日紹介するヘルシンキ大学からの論文は DNA ポリメラーゼ γ を構成する POLG1 の変異の中でも、p.W748S と呼ばれる一人のバイキングに由来し、フィンランドやノルウェーではキャリアの比率が1%を超えるまでに広がっている MIRAS と名付けられたミトコンドリア病の発症メカニズムを明らかにした研究で、ミトコンドリアの機能の複雑性がよくわかる面白い論文で、4月3日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Ancestral allele of DNA polymerase gamma modifies antiviral tolerance(先祖から伝わるDNA ポリメラーゼ γ の変異はウイルス感染寛容性を変化させる)」だ。

MIRAS の特徴は、発症時期が極めて多様なことで、年齢とともに発症する一般のミトコンドリア病とは大きく異なっている。このグループは、MIRAS の発症の引き金がウイルス感染ではないかと考えた。というのも、MIRAS で特に象徴的なのが、元気だったティーンエージャーが軽いウイルス感染の後、急にウイルス性脳炎と同じ症状を示すケースがある。また最近の研究で、ミトコンドリア DNA 合成時に発生する DNA が自然免疫センサーの感度を高める役割をしていることが明らかになっている。すなわちミトコンドリアとホスト細胞との相互作用が、ウイルス抵抗性に寄与している。実際、フィンランドゲノムベースで p.W748S と創刊する病気を調べると、トップに来るのが免疫不全になり、この可能性を強く示唆している。

そこで MIRAS 患者さんから線維芽細胞を分離し、2重鎖核酸で刺激すると、1型インターフェロン(IFN1)の誘導が低下している。また試験管内でヘルペスウイルスを始めコロナウイルスなど様々なウイルス感染実験を行っても、同じように IFN1 誘導が低下し、逆に NFκB を介する自然炎症が代償的に上昇することを確認している。以上のことから、ポリメラーゼ γ 変異によるミトコンドリアの DNA 合成低下が、ウイルス感染防御に関わっていることが明らかになった。

次の問題は、ウイルス感染という引き金が実際に神経や肝臓の症状まで進展するかで、このためにMIRAS 変異を持つマウスを作成して実験している。まず、MIRASマウスをダニ媒介脳炎ウイルスに感染させると、インターフェロンシグナルによる自然免疫遺伝子発現が軒並み低下しており、試験管内での結果が生体内で確認された。そして、脳細胞を調べると、特に GABA 作動性の抑制性神経の変性が強く、これがてんかんの原因になっていることを示している。

さらに肝臓では肝細胞の細胞死を誘導する MLKL 分子のリン酸化が上昇しており、何かの引き金で急速な肝臓障害が誘導できる状態になっている。この結果は、MIRAS 患者さんがてんかんを発症したとき使われる抗てんかん剤 valproate で肝臓細胞壊死が誘導されるケースの理解に極めて重要で、少なくともバイキングの子孫の場合、このことを頭に置いててんかんに対処する必要がある。

以上をまとめると、MIRAS ではミトコンドリアの DNA 複製が低下しているため、自然免疫系のセンサーの感度を維持することができておらず、ウイルス感染に対して IFN1 分泌が傷害され、ウイルス感染が拡大しやすくなり、脳炎や肝炎へと発展する。一方で、自然炎症は正常マウスより更新しやすく、感染症が重症化しやすく、変性が進む。

このような遺伝子変異がこれほどの頻度で維持されているのは不思議で、おそらくもっと面白い話が一人のバイキングの子孫から出てくる気がする。

カテゴリ:論文ウォッチ