2013年1月2日水曜日

2012映画ベスト

2012年が終わりました。いやぁ、早かった。あっという間です。色々環境の変化もありましたし、有難い出会いもありました。そんな一年、たくさん映画を観れました。順位というのは、野暮なことで、好きだった映画は好きだったということ以上の何物でもなく、面白かったものは面白かった以上の何物でもなく、それぞれがそれぞれでいいわけですけども。しいて、お気に入りの10本を並べてみました。気分でどうにでも入れ替わってしまいそうなものですが、よろしくおねがいします。



劇場鑑賞257本(短・中篇30本含む)より
※旧作と映画祭での鑑賞作品はベスト選考から除いています。


【2012映画ベスト】
①『ミッドナイト・イン・パリ』(ウディ・アレン)
②『裏切りのサーカス』(トーマス・アルフレッドソン)
③『桐島、部活やめるってよ』(吉田大八)
④『ホビット 思いがけない冒険』(ピーター・ジャクソン)
⑤『生きてるものはいないのか』(石井岳龍)
⑥『おとなのけんか』(ロマン・ポランスキー)
⑦『サウダージ』(富田克也)
⑧『ダークナイトライジング』(クリストファー・ノーラン)
⑨『レ・ミゼラブル』(トム・フーパー)
⑩『ドライブ』(ニコラス・ウィンディング・レフン)

次点『Jエドガー』『幸せへのキセキ』『アーティスト』『別離』『アルゴ』『アウトレイジビヨンド』『メランコリア』『恋のロンドン狂想曲』『預言者』『灼熱の魂』『プロメテウス』


軽くコメントを

①『ミッドナイト・イン・パリ』
大好きなウディ・アレンの完成度の高い作品が去年の「人生万歳!」と今年の今作とで立て続けに見られたことを嬉しく思う。オーウェン・ウィルソンのウディ・アレンを彷彿とさせる名演には痺れました。出てくる役者陣の見事なこと、女優陣の美しいこと、役者が生き生きしているように見えるのは本当に見ていて楽しくなる。ウディ・アレンの寝取られな感性の高さも堪能できて、ラストのレア・セドゥと雨のパリは今年観た映画の中でも群を抜いて素晴らしい瞬間だった。ウディ・アレンのドキュメンタリー「恋と映画とウディ・アレン」も面白かった。もう大分お歳だけれども、まだまだ作品を撮り続けて欲しい。愛すべきウディ・アレンでした。

②『裏切りのサーカス』
英国ベテラン俳優陣の大共演に心躍らさせられました。ゲイリー・オールドマンの静かな、そして怒りのような重みのある芝居には感服。中でもトム・ハーディは出色で、今年はダークナイトライジング、Black&Whiteと彼の才能を堪能できた一年であったとも思う。トーマス・アルフレッドソンは「僕エリ」から追いかけていきたいと思ってる監督さんです。ラストシークエンス、ラメールが流れてくるパーティ会場は本当に心に残っています。ちょっと難しいと言われたりもしていましたが、実際はそんなことはなく、多少読解力的なものを試されるとこはありますけれども、オススメです。面白かった。

③『桐島、部活やめるってよ』
最後の東出くんの拾って戻ってくるまでの動線と泣きの芝居のしつこさ?は二度目の鑑賞でノレないなぁと思ったものの、他高校生らしいとも言える生々しい芝居がとても良かったです。神木くんはいいところで芝居を締めてくれてさすがの一言。何を隠そう橋本愛!!!徹底したカテゴリーの視線と切実な「恋愛」。ナードな、いわゆる見下げられている映画部の主人公前田(神木くん)が、イケイケ女子カテゴリーの中でもまだナードな彼らにも優しいという女の子(橋本愛)に恋をしている。ただそんな橋本愛ちゃんも、帰宅部系天然パーマ野郎と付き合っているという事実である。カテゴリーの視線の中でこうしたカテゴリーの距離感がとても辛くわかる、本当に切なくなる恋愛模様。誰でも好きな子がなんであいつと付き合うんだよ!って思ったことあるはず、それをえぐってくれる。ある種のカテゴリーが吹っ飛んだ屋上でのゾンビシーン。何より素晴らしいのが「橋本愛の鎖骨をゾンビに食いちぎらせる」ところ!!!!(しかもその所でスタンダードだったゾンビ妄想シーンが、シネスコになる!!!)

④『ホビット 思いがけない冒険』
前日譚もあってスケールはいささか小さいけれど、LOTRに繋がる不穏さもまた骨身に染みるし、最新の技術に大好きなLOTRの世界がさらに広がって行く贅沢ったらない!お前に会いたかった!って叫びたくなりましたよ。ガンダルフがいる安心感。ゴラム可愛い。若き日のビルボ演じるマーティン・フリーマンも良かったですね。ドラマ版「シャーロック」では、相棒のワトソン。堅気で頑固な気質みたいなものは大変ビルボにはまり役でした。素晴らしい。音楽も素晴らしかった。ドワーフの哀愁漂った歌もいい。ドワーフの旅の仲間たちがこれからどんどんキャラ立つと思と楽しみだ。冒頭のワクワク感。あの茶色の魔法使いのうさぎそり活躍最高だった。顔がうさぎみたいだしね。ああ、色々思い出すだけでもう一度みたいです。三部作これから楽しみ。

⑤『生きてるものはいないのか』
五反田団の戯曲「生きてるものはいないのか」を石井岳龍が監督するという。あの石井岳龍がですよ。音楽がとにかく最高で、いやぁ、名演じゃないですか。役者さんたちそれぞれ随分心に残っています。轟音が鳴り響くのとは裏腹に浅いようでリアルな会話に浅い関係が広がってるのが、みんな何に関係して何して生きてんのーとか思う。で死ぬ。震災後だからこその不穏さも忘れてはならないでしょうし。ただただ直面する感慨、あの終末感。最高でした。

⑥『おとなのけんか』
ゲロにつぐゲロですが、声だして笑った~面白い!論理的だけどたまに飛躍してぼけたり、酒をいれてからのヒーットアップといい、帰りそうで帰らない展開の妙といい、最高の会話劇だったなぁ。戯曲原作ではあるし舞台で観るべきお話なのかもしれないけど、じゃなくて良くて映画だからこそ、むしろ生々しいってあると思うんだよねー。素敵だ。四人の役者もたまらなく名演だった。ロマン・ポランスキーは去年の「ゴーストライター」とさすがですわ。しびれる。

⑦『サウダージ』
今年の初頭に観ました。日本の自主映画をあまり観たことがなかったこともあって、度肝を抜きました。これほど面白いのか。哀愁と多国籍に入り混じった郊外、風景に不良感性の高さ、時代を切り取っていくような感性に酔いしれた。あんまり言葉にできないので多くを語れないけれど、面白かったです。

⑧『ダークナイトライジング』
ノーランバットマン最終章です。今年はこのランキングを観てもそうですが、アン・ハサウェイとトム・ハーディの一年だった。この二人が共演している。しかも、素晴らしい役どころで、である。物語の粗雑さというか、バットマンの世界観がどこか崩れてしまったような、ある種の世界が外に開けてしまったような印象がうけるのと、マリアン・コティアールの残念な芝居も含めて、色々グチグチ言いたくなってしまうのだけれど、個人的にはジョーカーに引き継いたベインという悪役の造形は大変ツボでして(寝取られベスト10参照)そして継承のヒロイズムには心震えました。

⑨『レ・ミゼラブル』
ミュージカル映画、いわゆるディズニーや雨に唄えばのようなものは楽しめるんだけど、シュルブールの雨傘やオペラ座の怪人など芝居として歌われた時にどうにも違和感が拭えなかった。だけど、レ・ミゼラブル158分間ほぼ歌なのに驚くほどノレました。自分でもびっくり。全て杞憂だった。アン・ハサウェイにヒュー・ジャックマン、と名演。感無量。鼻水垂らしながらボロ泣きしてしまいました。新しい世界に一歩踏み入れることができたような嬉しさがあったのでランクイン。良かったですよ。

⑩『ドライブ』
正直、「幸せへのキセキ」と「Jエドガー」と悩みに悩んだ。ただなんだろう。この映画を観た時の新鮮なゾクゾク感をきちんと覚えておきたいなぁと思ってしまうほどだった。ひとつ昔にもほどがあるようなライアン・ゴズリングの寡黙男、ダサいように感じる音楽や格好がなんだか煌めいて見えてきてしまう瞬間。ライアン・ゴズリングの空気のように溶けこんでいく芝居は去年のブルーバレンタインでもそうでしたが、相変わらず素晴らしい。エレベーターでのキスシーンは最高だった。キャリー・マリガンもとてもよかった。


以上。いやぁ、まったくもってまとまっていないコメントですけど、ほんと順位なんて関係なく好きな10本!っていう気持ちが伝わってもらえたら嬉しいです。


【劇場鑑賞、心震えた旧作10本】
『アンダーグラウンド』『ラブストリームス』『オープニング・ナイト』『白夜』『スカーレット・ストリート』『一条さゆり 濡れた欲情』『3-4×10月』『ビッグ・コンボ』『お葬式』『刑事ベラミー』『カリフォルニア・ドールズ』

【劇場鑑賞特別枠】
『スプリング・ブレイカーズ(TIFF)』『インポッシブル(TIFF)』『ポッポー町の人々』『Pina 3D 踊り続ける命』『演劇1、2』『マルドゥック・スクランブル圧縮燃焼排気』『旧支配者のキャロル』『紀子の食卓』

本年もよろしくお願いします。

2012年12月27日木曜日

2012寝取られ映画ベスト


早いことに今年ももう終わりです。興奮して書いた桐島以来、久しぶりに書きます。今年は去年よりかなりハイペースに月20本のペースで映画鑑賞が出来た。とても充実していたと思う。嗜好の偏った2012寝取られ映画ベストテンを年間ベストより一足早くお披露目する。

劇場鑑賞255本(30本の短・中編含む)より

【2012寝取られ映画ベスト】
①『僕等がいた 前後篇』(三木孝浩)
②『ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵&黄金時代篇Ⅱ ドルドレイ攻略』(窪岡俊之)
③『桐島、部活やめるってよ』(吉田大八)
④『Black&White』(マックG)
⑤『白夜』(ロベール・ブレッソン)
⑥『ドットハック セカイの向こうに』(松山洋)
⑦『ミッドナイト・イン・パリ』(ウディ・アレン)
⑧『ダークナイトライジング』(クリストファー・ノーラン)
⑨『悪の教典』(三池崇史)
⑩『テイクディスワルツ』(サラ・ポーリー)

次点『ドラゴン・タトゥーの女』『ダークシャドウ』『Jエドガー』『マリリン7日間の恋』『夢売る二人』『SHAME』『ドライブ』『ワンデイ・23年のラブストーリー』『フライトナイト』『クソがきの告白』『こっぴどい猫』

【2012寝取られワースト③】
①『ベルフラワー』
②『一枚のめぐり逢い』
③『砂漠のサーモンフィッシング』


せっかくなのでコメントを1つずつ。寝取られベスト。

①『僕等がいた』
少女漫画が正直ここまでややこしくめんどくさいとは思わなかった。純愛を語る(美化する)ために寝取られ合うしかなかったと言わんばかり。登場人物の複雑な寝取られ合いが堪能できる。前編はとにかく寝取られの空回り。そんな寝取られの亡霊に怯えて手の届かなさをひねくれる原因と素直になれない想いの強さの測りにしながら、奪い合う。本当に困ってしまう。後編、前編に描かれる若々しい恋い焦がれな寝取られは、時間を経て、面倒にも絡み取られた図々られ(図々しくされる)になったのである。前編で恋破れた主人公の親友である武内くん(高岡蒼甫)が親友の恋人のためには図々しくなれるのに親友の恋人に対しては(自分の気持ちに対して)図々しくなれない。寝取られた相手、主人公に見捨てられた恋人を勝手に任され、健気に慰め、プロポーズするも振られ、挙句に戻ってきた主人公に『お前はこの六年なにしてたんだよ!』なんて言われてしまう。武内くんのあんまりな図々られに号泣してしまった。そんな竹内くんの寝取られ回収も素晴らしく。若い恋焦がれな寝取られから、寝取られのひねくれがどこまでも図々しくなっていく様をぜひ堪能したい。

②『ベルセルクⅠ&Ⅱ』
まだ原作ベルセルクの序章のそのたったⅠとⅡなのであるが、これほど寝取られな重みを持っている映画は初めて観たと思った。それはともかく原作が偉大な寝取られ漫画だからだ。原作未読でⅠを観たのだが、物語は中途半端に終わってしまうものの、これから壮大な寝取られに合うということがヒシヒシと伝わってくる。そしてⅡで物語はどこまでいくのかと思うくらいに壮大な寝取られな重みを蓄えていく。来年公開するⅢだけでも来年の寝取られベストに入ってしまいそう。じわじわとこれから寝取られていくことになるという重たい空気をぜひ堪能したい。

③『桐島、部活やめるってよ』
橋本愛!!!徹底したカテゴリーの視線と切実な「恋愛」。ナードな、いわゆる見下げられている映画部の主人公前田(神木くん)が、イケイケ女子カテゴリーの中でもまだナードな彼らにも優しいという女の子(橋本愛)に恋をしている。ただそんな橋本愛ちゃんも、帰宅部系天然パーマ野郎と付き合っているという事実である。カテゴリーの視線の中でこうしたカテゴリーの距離感がとても辛くわかる、本当に切なくなる恋愛模様。誰でも好きな子がなんであいつと付き合うんだよ!って思ったことあるはず、それをえぐってくれる。ある種のカテゴリーが吹っ飛んだ屋上でのゾンビシーン。何より素晴らしいのが「橋本愛の鎖骨をゾンビに食いちぎらせる」を寝取られ回収にした所である!!!!(しかもその所でスタンダードだったゾンビ妄想シーンが、シネスコになる!!!)寝取られ男のせめてもの抵抗と妄想、あの瞬間の倒錯感を今年は忘れられない。

④『Black&White』
寝とりキャラvs寝取られキャラ映画。タック(トム・ハーディ〉に与えられた徹底した寝取られキャラの前提感とオチの付け方(回収も含め)まで素晴らしい。寝とりキャラとしてライバルになるFDR(クリス・パイン)と比べられ、ある女性を奪い合うお話にして、タック派FDR派とどっちがいいかな?なんてあたしFDR派とか言われたらそれでこそタックが美味しいという哀しさ‥!!! ありがとう‥?!愛すべきタック。徹底した寝取られキャラを見事に演じきったトム・ハーディの寝取られ俳優っぷりをぜひ堪能したい。

⑤白夜
年間ベストには旧作を入れないことにしている(旧作でベストを作ろうとも思っている)が、寝取られ映画ベストにはぜひ入れておきたい作品。伝説の作品だということで、観に行ったブレッソンの『白夜』。うまく言葉に出来ない。なんて愛おしいと思えた作品だったか。もう本当にめんどくさい、ここまでめんどくさくなれちゃうのかっていう(変態)なんだけど、そんな変態寝取られ男の甘ったるい、わかっててドツボにハマっていく、頭の中を覗きこんでしまった。音楽がまた素晴らしいので寝取られ幻想とも言うべき、甘い時間を堪能したい。

⑥ドットハック セカイの向こうに
何がどう寝取られ的な倒錯に満ちているかというと、主人公の女の子に恋している男の子がバーチャルなネトゲの世界でその子に告白するのだが、別の友だちだと勘違いされてしまう。この!この!事態を!ほんとに最後の最後まで焦らし続ける。物語は、ネットのセカイでの交流「僕たちは僕たちが思っている以上に繋がっているのかもしれない」と無関係の中でのつながりたい気持ちを軸に発展して解決までいくのに。その片思いの男の繋がりたい気持ち、恋する気持ちは、思っている以上というか、もう完全につながってないんですけど…。というね。回収もしてくれないし!ああ、焦らされた!!気持ちがまるで伝わっていないけど、それすら知らずに頑張り続ける片思いの男の子を応援したい。

⑦『ミッドナイト・イン・パリ』
年間ベストでも語りたいのであまり書きたくないのだけれど、やはりウディ・アレン御大、寝取られ感性が高すぎる。物語で語られる過去の黄金時代への憧れをもつ主人公が、最終的に気づく、どの時代でも同じように当時代を憂いているというこの感覚が、ウディ・アレンらしい皮肉にも取れるけど、寝取られ感性によるところだと思えてしまうような。そしてさすがウディ・アレン、相変わらず寝取られ要素がある。物語の中で、主人公は妻をさらっと寝取られてしまうわけだが、そのことに気づいてしまうまでの流れの見事なこと。そして何より素晴らしいのが、雨の中のパリ、レア・セドゥの組み合わせで寝取られ回収をしてしまうところ。いやぁたまらない。ウディ・アレンの洗練された寝取られ感性、美しすぎる寝取られ回収を堪能したい。

⑧『ダークナイトライジング』
クリストファー・ノーランが大傑作「ダークナイト」の悪役ジョーカーという切り札を失ってしまい、ノーランバットマン最終章で悪役をどうするのかと散々言われてきて登場したのがトム・ハーディ演じるベインである。このベイン、序盤はミスリードとして影の同盟の最強野郎って事になっているのだけれど、蓋を開けてみれば、ただの寝取られ男だった!!しかも、バットマンにも寝取られる!!ああああ!!!可愛いよベイン。バットマンにとどめを刺さずに刺し傷そのままゆっくり死なせなさいなんて言われても、殺そうとしちゃうのは、そりゃ寝取られた相手だからだよね。で、結局回収も何もなく、キャットウーマンにズドーン。ああ…。トム・ハーディの寝取られ俳優っぷりはマスクをしてもなおであり、ノーラン、ジョーカーの次に寝取られな悪役を持ってきてしまったあたりがなんだかたまらなく愛おしい。

⑨『悪の教典』
残念ながら他の作品のような寝取られが映画自体にあるわけではなく、ちょっと別枠なのだけれど、どうしても寝取られベストに入れてしまいたかったという作品。寝取られに教師と生徒はつきものでしょう。人気者の教師ハスミンは、ある女子生徒に手を出しどっぷり堕ちさせていく。兎にも角にも、その女子生徒がめちゃくちゃ好みすぎて悶絶してしまったのがこのランクインの原因である。出来ればその子のことが好きな男の子を出してくれたらよかったと思うんだけれど、脳内補完があまりに容易であった。結果、ショットガンで生徒を殺しまくるハスミンのもろもろ完全犯罪にボロがでるのは、この女子生徒を殺そうというところで他の生徒に観られてしまうから。それは勝手な寝取られ男子感覚で寝取りの報いですらあったという。教師に堕ちていく好きな女の子シチュエーションで悶えたい(個人差大いにあり)

⑩テイク・ディス・ワルツ
恥じらいのなくなった妻と恋する乙女を絶妙に演じるさすがのミシェルウィリアムズ。女性監督ならではの生々しさか。不貞ではないし、恋の激情を否定できない、理解を示すセスの姿勢に涙する。責められるとしたら本人だけだという現実か。寝取られ回収は、、作家デビューという元妻の夢を寝取られ旦那が叶える。何故か!何故か倒錯感がなかった。もう本当にアラレもなく、女性監督が描いているからこそ、寝取られとして見れなくなってしまう、恋の激情と肯定されていくような感覚に倒錯感は覚えられず、大回転チラ見せ場面では、背筋が凍ってしまった。いや、これほど恐ろしい寝取られ映画を観たことがあったろうか…寝取られ好きとか言ってる君、本当に寝取られに堪えられますか?と言われている感覚をぜひ堪能したい


次点・軽くコメントを。

『ドラゴン・タトゥーの女』キャラ萌えと届かない思い
『ダークシャドウ』寝取られ魔女の恨み辛み
『Jエドガー』同性愛だからこその寝取られ感、驚くべき純愛
『マリリン7日間の恋』マリリンの天性の美貌と魅力に魔性性に惑わされる主人公。そんな彼に結果弄ばれたルーシーは、ふふ、いい薬になったわねと釘をさす。寝取られっ子の真価がここに。
『SHAME』同僚に妹が寝取られてしまうけど、セックス依存症で否応なしに寝取り続けてもしまうような男の哀愁
『ドライブ』人妻を好きになってしまったんである。ああ。
『ワンデイ 23年のラブストーリー』いやぁこれベスト級だよね!!くうううう!23年の寝取られストーリー。彼女に寝取られな想いをさせ続けた代償は大きかった…。
『フライトナイト』彼女がドラキュラにされちゃうよー!
『クソがきの告白』熱量のある寝取られ
『こっぴどい猫』魔性女に騙される、寝取られおやじね。

で、ワースト3。

①『ベルフラワー』失恋暴走、寝取られ映画にして正直ここまでノレないとは思ってもみなかった。男が被害者たれすぎるし、女の子の描き方が酷い。寝取られ回収に火がぶわぁ!で世界が煌めかれても。救いは親友がいつまでも優しい。この映画が楽しめるような男的な感慨があまりにもなさすぎたようです。うーん。

②『一枚のめぐり逢い』戦場で拾った一枚の写真からいかにもなラブロマンスな展開、良い話ですが、元旦那が!!!元旦那がぁ!!! 驚くほど嫌なやつを置いてくれてこのあとどうすんだよ?まさかな(笑)と思ってたら…ほんと元旦那の最後それでいいの?!!あまりにむごい寝取られ回収に唖然。

③『砂漠でサーモンフィッシング』物語の中でうっすーい寝取られっぷりに愕然とする。寝取られをやたら良心的で誠意と信じる心と爽やかさで乗り切ろうとしたからなのか、妙に気持ち悪い。なんだかな。ねとねとられな帰還兵ロバートを想って泣きたい。

読んでくださってありがとうございました。ホントに嗜好の偏った、曝け出した寝取られベストでしたが、面白がっていただければ幸いです。

2012年8月14日火曜日

残酷な青春のテーゼ/「桐島、部活やめるってよ」

「桐島、部活やめるってよ」

吉田大八監督(「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」「パーマネント野ばら」)

人によって高校時代にどんな過ごし方をしてきたかは、まるで違う。部活を熱心に取り組んで色恋沙汰もなく過ごした人、部活も熱心に色恋沙汰も充実していた人もいるだろうし、鬱屈した日々を送った人もいれば、ともう言い出したらきりがない。自分はどうだった?あなたの周りはどうだったろう?


「桐島」という学校一の美女と付き合っていて運動神経も抜群で周りのみんなから周知され帰宅部の友達を毎日待たせるくらいには、慕われている存在が部活をやめていなくなったという、それは何故か?という事件が物語の中心に添え、そこにゆっくり踏み込むように物語は冒頭、桐島が部活をやめた事を知る「金曜日」を過ごすという同じ時間軸を複数の登場人物の視点を交錯させながら織り成していく。その序盤、徹底して描かれるのが学校内におけるカテゴリーだ。

ある種の学内におけるカテゴリーがあることを、私たちはそれとなく理解している。「帰宅部系、ちょいと悪っぽくて人気者、悪っぽい女の子たちと仲よくて、中堅な女子にもなんだかんだ慕われてる」「特に取り立てるところもないけど、部活は熱心に取り組んでたり、地味に色恋してる中堅」「こいつらと話すとちょっと周りの目を気にしちゃうようなナードな部類」というようなものである。これはまんま「桐島」に出てくるカテゴリーを分けたものになる。

どのカテゴリーの人がどのカテゴリーの人間に対して、どういう感情を抱いているか、どういう扱いをしているかを同じ時間軸における視点の交錯を通してそれぞれに描き出すので関係が非常にわかりやすい(ある種ステレオ)、また、このカテゴリーは(動線)位置関係や高さにはっきりと描き出されているとも感じられる場面がある。帰宅部系の男子に恋心を寄せる部活熱心な吹奏楽部の女の子は、上から見つめている。そんな彼女を、ちょっとナードな映画部の男の子は、そんな彼女を見上げることになるし、帰宅部系男子とナードな映画部の彼らは、ドアでぶつかる程度の関係、まるで眼中にすらないのだ。ちょいと悪っぽい女子にナードな映画部の男子は、気持ち悪いよねと教室の橋から遠巻きで見られ、挙句に彼らは教室を逃げるようにでていく。

こうして、部活熱心な中堅女子として帰宅部系の彼に恋心を寄せつつも、、やはりどこか見下しているのであるし、
ナードな映画部が部活熱心な彼女を見上げるのも、彼女が彼らをどこか見下している。彼らもどこか彼女を見上げてしまっている。悪っぽい女子には、立ち向かうこともできないで逃げるしかないのだ。

このカテゴリーへの視線が台詞の中にも顕著に散りばめられる。曖昧な記憶でニュアンスで書くので精確ではないけど「部活ばっかりやってセックスもできないやつらと、セックスばっかりしているやつらがいて、あいつらはこっち側にはこれないんだ」「映画部?遊びなんでしょ?」


ここで改めて「桐島」が浮かび上がってくる。「桐島」をおさらいしよう。
①桐島は、バレー部のキャプテンだった。
②桐島は、成績も優秀だった。
③桐島の彼女は、校内一の人気者だった。
(さらに悪っぽい帰宅部系に毎日部活が終わるのも待たせるくらいには慕われてる)


そんなカテゴリー的には、最強!な彼が「部活をやめた」っていうんだから、何があったんだってなるよね。
そしてその桐島の存在にマクガフィン的な役割を与え、物語は、そのカテゴリーの境界で揺らぐ。

序盤で徹底的に描いたカテゴリーが カテゴリーの境界=葛藤=青春 の図式が中盤で加速していく。

いくらカテゴリーといったってこの境界、どこかで超えれて、寄り添えあえない事がないとは言えないはず。

桐島という圧倒的な存在のせいでベンチに座り続けた男の子が、彼の代わりになろうと努力をし続けてる。
悪っぽい女の子たちと仲良くしていても、部活を熱心に考えている。
ナードな映画部の前田くんに対して、話すのが恥ずかしいだなんて思わないで話しかけてくれる。
見下していたはずのナードな映画部に溜まった気持を吐露しちゃうようなことだってある。
帰宅部系男子だけど「別にセックスができないような部活熱心なやつらだっていいと思うんだ」なんていってくれる。
片想いしてた中堅女子は、部活に真っ直ぐ向き合えるようになる。

ただ青春は残酷なのだ。学校内のカテゴリーの境界は、いつだってシビアに存在する。

部活熱心な中堅女子は、好きな彼が別の女の子と待ち合わせ場所にいってわざと遭遇してキスシーンを見させられて(それを見下ろし)気持ちに踏ん切りをつけることなる。
「桐島」の彼女のはずの女の子は、彼とはまるで連絡も取れず、結局彼がどうしてやめたのかも分からない。
「桐島」の代わりになろうと努力をどれだけしたって届きそうにもない。
ナードな映画部の前田くんが恋心を寄せた優しい女の子も、やっぱり帰宅部系のちゃんちゃらっぽい男の子と付き合ってる。

ここで個人的に楽しいのが、誰かを突出させることなく均一に青春を描こうとしているわりには、映画部のナードな部類の彼らの描き方はもうひとつ物語がある。「先生に押し付けられる映画のテーマ」vs「自分たちで撮りたい映画のテーマ」。そこにやはり監督の映画愛と、この映画のテーマをみてしまう。

彼らが自分らしく自分たちが撮りたい映画のテーマを反対を押し切って撮り続け、屋上で一堂に会するシーンでは、誰もが誰を見下すことも見下ろすこともなく平等にゾンビに食われるのだ。(ナードな彼らの小さな反抗でもあり、自分をつらぬくという訴えでもある)誰しもが平等で誰しもがカテゴリーのない瞬間が描かれるのだ、それはまるでフィクションであるが、区別が差別として理解されてそれがダメだと一言で終わらせるのではなく、区別が区別として存在することによってそうした瞬間だって生まれるんである。


最後の最後になっても「桐島」はどこにいったのかわからないのであって、桐島の彼女は「桐島」が自分で選んだ道を認めることしかできない、漠然と帰宅部系に属していた塾通いの男の子は野球部に戻ろうと気持ちが揺らぐのを誰も止められはしない、映画部のナードな部類は、それでもただ好きな映画を撮り続けることしかできないのである。

残酷な境界を目の当たりにしたって「自分らしく」「相手らしさ」を徹底的に肯定する。
この映画の真髄をそこに観た。残酷だ、青春は残酷かも知れない、思い通りにはいかない、でも君が君らしくあることがきっとそれで青春なのだ。目の前にした相手がどんな人間なのかわからない、嫌な人かも知れない、好きな人の彼氏かも知れない、それでもその人がその人であるということは否定ができないんだ。

こんな痛切なメッセージを描かれて泣けないわけがない。残酷青春映画の傑作。



映画部のナードな前田くん(神木隆之介)の寝取られ回収が橋本愛のゾンビ食いちぎり!橋本愛の鎖骨がああ!なんて最高でしたよ。ただ1つ、ゾンビで一堂に会する終わり、あのカメラのレンズを拾って持って行こうとして戻ってきた件は、全然よくわからなかった!なんで拾ってもっていこうとしちゃったんだ?

ちょっと自分の話すると、自分は高校私服だったし、単位制だったしクラスもないに等しかったから、全然この高校生の青春らしい青春とは文脈が離れすぎて感情移入もお前は俺か!もできなかったんだけどね。それでもまた別の所で感慨深く繋がるように思えて憧れさえ覚えたのでした。

2012年2月19日日曜日

君は僕を笑わせる。笑い事ではなく。

人生はいくらでもやり直しがきくというのは、詭弁かも知れないし、綺麗事かも知れない、そんな環境や親、地続き的に続いていく関係の中で開き直るのはそう簡単なことじゃあーない??

人生はビギナーズ


あらすじ:ある日突然、父・ハル(クリストファー・プラマー)からのカミングアウト。「私はゲイだ。これからは本当の意味で人生を楽しみたいんだ」それは44年連れ添った母がこの世を去ってから、癌を宣告された父・ハルからの突然の告白。元々は厳格で古いタイプの人間だった父が、そのカミングアウトをきっかけに若々しいファッションに身を包み、パーティやエクササイズに精を出し、若い恋人まで作って、新たな人生を謳歌した。一方、息子・オリヴァー(ユアン・マクレガー)は38歳独身のアートディレクター。友達は仕事と犬。元々の臆病な性格故か、父のカミングアウトにも戸惑いを隠せない。父と母の間に愛はあったのか? ふたりのあいだに生れ育った、“僕”とは―?そんな様々な過去に戸惑うオリヴァーとは裏腹に、父の生き方はとても潔かった。父の振りまく愛に、周囲の人は素直に心を開き、また父も素直にその愛を受け入れた。身体は癌に冒され、確実に最期の日は近づいていたが、決して心は衰えることなく、今までのどんな時よりも前を向いて生きようとしていた。そんな父と語り合った母のこと、恋人のこと、人生のこと―。オリヴァーはこの語らいの中で、父もまた過去においては、 親や母との距離において多くの葛藤を抱えながら生きていたことを知り、改めて自分自身の生き方を見つめ直していく。
ポスターやフライヤーのイエローの印象からポップなお話だと思ったけど、大いに裏切られた。父ハルを演じるクリストファー・プラマーの好演にあの笑顔は、それは春爛漫と輝いているのだけど、全体のお話はどうにもこうにもオリヴァーくんのウジウジをぐるぐると堂々めぐりする。オリヴァーくんは、どこか冷めてて熱を持つということができない。仕事としてポップなイラストを手がけていることが対比的にオリヴァーくんの心の居座りどころのなさを感じさせ、犬に話しかけたり話しかけられたり、決壊することのない鬱積した何かがある青年。そんなオリヴァー君になってしまったのも、親の背中を見て育ってきた、親の冷めたどこか心の通っていない様子を見てきた影響であって、そこに父のゲイのカミングアウトが決定的な追い打ちとなってしまう。お父さんが簡単に開き直ることができたのは、人生の終わりが近づいていることもあるし、お父さんを唯一縛り上げていた奥さんの死が皮切りに誰にも隠し立てする必要がなくなったからであって、きっかけとして至極単純だ。人生をやり直すように生き生きとした親父さんを見て、今までを反面教師的に思えば、自己否定的な喪失感を味わうオリヴァー君である。

ただこの自己否定的な喪失感は、さらに言えばお母さんに対しての罪悪感なんだと思う。お話の中で父ハルは、母を愛していたし母のために病気としてゲイを直そうと努力を続いけていたが直せなかった、母があたしが治してあげると結婚した判断は、結果として父ハルを縛っただけになってしまった。愛し合っていたといっても夫婦の心の通っていない関係を見てきたオリヴァーのそばにいたのは母だった。愛し合っていたといっても、母は父を縛ってしまっていた。そして母の死と同時に解放されたように生き生きとした父を見て、父を許すことが同時に母を否定することになりかねない危うさの中で自己否定的な喪失感が重なっていく。しかも母親自身がユダヤ人として隠れる側にいた人間だったのだから、母がそもそもユダヤ人という生まれに縛られる苦しみを味わう側の人間だったけれども、父を縛っていたのだからなぁと思ってしまう。すこし奥さんには救いがない?

オリヴァーのウジウジに拍車をかけるのは、まさしくこの点だろうなぁと思いながら観ていた。とあるパーティで出会う不思議な女性アナに惹かれていくところから、物語は父との時間とアナとの時間とで交錯していく。アナの喋れない女の子のふりをした登場から、オリヴァーと一緒に惹きつけられていくがその時同時に思うのが彼女のめんどうくささというか彼女自身も抱えているウジウジさだ。不思議ちゃん。アナもまたユダヤ人であり、しかしそれを隠そうとはしない奔放な姿勢、すこし母と重なる。

恋に落ちていく二人だが、ここからオリヴァーくんのウジウジに二人して葛藤するので、ヤキモキする(嫌いじゃない)

ここで父ハルと母の関係が、蘇ってきてとても辛かった。どこか冷めてしまう故に結局うまくいかないんじゃないか母のように愛なんて結局彼女を縛ってしまうのではないかという不安がオリヴァー君の表情からいやほどと伝わり、アナもまた母のように愛してくれてはいるけれどどこか心の通っていなさをオリバーに対して感じてしまう、この溝が埋まらないままにウジウジウジウジする。アナが一緒に暮らそうって部屋を見に来た時に、突然泣いちゃったりして悲しかった。そして交錯して映される開き直って人生を謳歌する父ハルの姿に、あーどうしてこうなってしまうんだろう。こんなうじうじしてんだよ。なんてつくづく思ってしまう。

印象的なシーンに台詞がある。オリヴァーが看板に書いた言葉。
"YOU MAKE ME LAUGH BUT IT’S NOT FUNNY." (君は僕を笑わせる。笑い事ではなく。)

途中に差し込まれる絵本の中でもほんとうの姿は、時間が経たないとわからないんだーなんて言っていたような気がする。そんなこと言われたら、オリヴァー君のように親でそんな現実を見ちゃったら怖いし、不安だし、複雑に考えも過ぎちゃうかな。あのお仕事としてのイラストで過去の女の子のお話をとにかくイラストにしてみたのなんて、女女しく、とにかくもしあのままあの子と続いてたらどうだったのかの考えに考えていたのか?そこからアナを縛らないでずーっと一緒に幸せになれる道を模索したかったんだろうか、過去の女の子のところに考えを巡らすウジウジさw

結局オリバー君は、うじうじと突き放したアナにもう一度立ち向かっていく。もし、父ハルがゲイの告白をしてオリヴァーに色々と語り聞かせるようなことをしなければ、オリヴァーはアナと真摯に向き合うことは出来なかったのかも知れないのだから、地続き的な関係の中でしかむしろ開き直ることはできないのかも知れない。そんなことを思いながら、最後に二人の笑顔にタイトル「BIGINNERS」と写される瞬間、人生知らない間に縛られるかも知れない、二人はうまく行かないかも知れない、先のことなんて考えた所でわからない、でもそんなことばかりなんだよ。笑い事じゃないよねぇ。それでも謳歌しないと…!!

いいキャスティングに支えられたうじうじ映画でした。

そういえば、今年のおみくじは、取り越し苦労すんなよー!って教えだったことを思い出した。取り越し苦労して大事なものを見失わないようにしたいですね。

2012年1月21日土曜日

2011年邦画BEST

あけましておめでとうございます。皆様の映画生活がさらなる充実をすることを祈りまして、今年もよろしくお願いします。

2011年のベスト10を去年の暮に発表しましたが、邦画がベスト10に入らなかったことが少し残念で気になっていました。

去年の全劇場鑑賞数141本の内、邦画が30本の約二割というあまりの少なさに愕然さえして、邦画はもういいかなぁとも思っていましたが、やはりせっかくなのでベスト10としてブログに残しておきたいと思い、改めて【2011邦画ベスト10】を発表したいと思います!(最近映画雑誌の発表が相次いだのにも若干感化されつつということで)

全28本劇場鑑賞邦画作品の中からベスト10!

第1位…『冷たい熱帯魚』〈園子温〉

第2位…『指輪をはめたい』〈岩田ユキ〉

第3位…『ハードロマンチッカー』〈グ・スーヨン〉

第4位…『探偵はBARにいる』〈橋本一〉

第5位…『恋の罪』〈園子温〉

第6位…『REDLINE』〈小池健〉

第7位…『劇場版神聖かまってちゃん』〈入江悠〉

第8位…『婚前特急!』〈前田弘二〉

第9位…『海炭市叙景』〈熊切和嘉〉

第10位…『神様のカルテ』〈深川栄作〉


コメント
「冷たい熱帯魚」…でんでんの怪演にさることながら、初めてちゃんと観た(自殺サークルだけ観たことあったけど)園子温監督の狂気みたいなものを身に染みて感じた傑作だった。これはすごい。名言も色々飛び出して、あっという間に惹きつけられて見終わった後の世界の色が違うように見えた体験は邦画では久しかった。衝撃という意味も強く今年の邦画のNo,1は固い。

「指輪をはめたい」…男として、今までの人生においてあったさまざまなありとあらゆる恋愛感情が想起させられなんとも気持ち悪いような、ああ分かるwと腑に落ちたりもしてとっても楽しむことができた作品。ぜひ男の人に見てほしいなぁと思いながら、卑屈に空回りした挙句に最後彼が思い出した本当の好きな人とその思いの結末、痛い痛いと味わえて…。山田君もさることなあら、3人女優陣の奮闘にふみちゃんの可愛さも光っていて、ポップにファンタジーな世界観の演出とお話がとてもマッチしていてよかったです。

「ハードロマンチッカー」…韓国の監督さんだし、邦画?というとどうなのかなぁとも思いながら、でも在日の方なのだっけ?わからないけど、邦画としてカウント。自分のための暴力を絶対的に肯定し探し続ける主人公は、なんだかとっても馬鹿でどうしようもないんだけど、誰かのためになんてかこつけないでただただ自分のための暴力というロマンを抱き続ける姿に、暴力ではないけれどロマンを抱き続けたい気持ちが揺さぶられるようで、ロマンを抱きたいと思いつつやっぱりかこつけている自分がいるんだろうとさえ思えたりもしてなかなか響いた一作。

「探偵はBARにいる」…これは大泉洋がはまり役だったと思うし、単純にすごい楽しめた!というランクイン。ハードボイルドだけどちょいとお茶目な役どころのギャップというか切り替えもよく聞いてたと思うし、松田龍平とのコンビもなかなか良かったです。振り回されて、振り回されての最後、男心にぐさりときまして、野暮ったい男の野暮ったい映画でした。吉高由里子のメガネっ子萌え。

「恋の罪」…冷たい熱帯魚に続くランクインということで。実は、正直男としてどういう感想を持てばいいのか若干良く分からないというお話だったし、意気は感じても主演の神楽坂恵の演技がそこまで良かったというと全然はまらなかったんですね。でも、アンジャッシュ児島がすごく良く効いてたと思いました、とてもいい意味で、ちゃんと自分にナルシストになれるタイプの人間で特徴という強みもなく普通さを損なわないで色を足せるって天性のものがある気がする。彼が良かったのがとにかく嬉しい誤算。どこまでも行き過ぎるようなぶっ飛んだ富樫さんにばばあ、強烈で脳裏に焼き付いたし、あのピンク爆弾も会場にいる全男性の玉袋が破裂したんじゃないかって本気で心配しそうになる(若干縮みつつ)凄まじい表現だったし、いやぁ凄かったな。

「REDLINE」…2011年じゃないかな?ドリパスの企画上映で鑑賞。蒼井優って鉄コンの時も思ったけど、声優上手いよね。天性の才能があるわーなんて思いました。カートゥーン調なトーンの色付けがまず好きなのと、画の迫力に音楽の鼓動感までとにかくとにかく熱かった!!!冗長に感じた所も少なからずあるんだけど、それを一切なかったことにできるくらいの熱い魂を感じることができたのでお気に入りです。まぁキムタクはもういいな。

「劇場版神聖かまってちゃん!」…これもすごい正直難しいなぁという微妙なラインなのは、コテコテな悪者がプロデューサーという構図が若干残念に思えたのとかまってちゃん本人達の素人丸出しな演技にも正直なんだかなというのがありまして、うーんと思っていたのだけど、そうした気になっちゃった点を除いてみれば最後のライブのシーンにしたって最高でした。同じ場所にいるって感覚を求めているのか、たったtwitter一つで同じ場所にいれるって思えるような今を象徴するかのようなかまってちゃん。そうゆうこと考えながら彼らの音楽には、凄まじい共鳴があるって思ったんだよほんとに。その同じ場所って感覚を群像劇で描き切ってくれたって思った!

「婚前特急!」…吉高由里子がいわゆるビッチ!5股かけてる女の子をあっけらかんと好演しているんだけど、もうなにがなんだかとにかく吉高由里子の魅力がほとばしっていました。ええ。兵野くんとの掛け合いは笑ったし、テンポよくて、ユーモアのセンス抜群。一切のエロシーンがないというのも面白いなぁー何股もしてて、セックスについての言及が一切ないってところを誰かの言及で気づいて、そういえばなぁとか思ったんだけど、生々しくならない微妙なバランスを上手く綱渡りしていたんではないですかね。とても楽しんだ、ただ着地点がだんだん見えてくるところから、すごーむかついたけどw

「海炭市叙景」…海炭市を生きる人々が折り重なって紡がれる叙景、群像劇は、痛みでも立ち向かう姿でもない、ただ惨めでつつましやかで無様というか。監督が、どんな眼差しをもってこの叙景を描き込んだか、その温かさがスクリーンの向こうに透けて見えるようでした。ノルウェーの森の映画に「深く愛すること。強く生きること」なんてコピーがあって、全然違う作品で引き合いにだすのも心もとないんだけど、同じ時代に生きた作者たち、海炭市叙景の原作者の最後を思うに、おれの口の甘さに対する許容限界の狭さを思い出すくらい深く〜強く〜が甘ったるく思えて「惨めに嫌うこと。無様に死ぬこと」くらいにばっさり切り刻まれるうれしさ心地よさを感じた。皮肉に描くわけじゃない、ありのままに映し出されるだけに、風景がなのかいや目の前の出来事が、そこ対する考えがなのか生きていることがなのかわかんないけど、ずーんとのしかかってくる感覚を味わえてとても印象深い作品でした。

「神様のカルテ」泣いた、良かった。主人公夫婦が仏様のように人間離れしてて浮いた感があるものの、人間味のある物語に、人間味のある脇役人がいて救われる。深川監督の役者の持ち味を引き出し方というか、役者の使い方がすごい好き。音楽も良かった。宮崎あおいの涙はもう観たくない。加賀まりこもとっても良かったと思うし、役者さんの使い方っていう点ですごい気に入ってしまってのランクインでした。

次点 モテキ 白夜行 映画けいおん! まほろ駅前多田便利軒 電人ザボーガー ノルウェーの森 劇場版サラリーマンNEO(笑)

もう、8位9位10位あたりから次点の中はどこがどう入れ替わっても正直おかしくなかったかも知れないなというくらい微妙な感じでした。「モテキ」はなんとも言えない気持ち悪さがあって、たぶん、モテの社会的な現実が透けるところとか、ずるい終わらせ方とか、面白かったところもあるんだけど、気持ち悪いという所がどうにもこうにも優ってしまってという。「白夜行」は神様のカルテと同じ深川監督で役者さんは良かったし(ちょっと船越ですぎたかなってのはあっても)泣けたし、良かったんだけど、原作という偉大な存在の前に二時間という枠に収めるしんどさをちょっとぬぐいきれなかったかな。「映画けいおん!」まぁいいや「まほろ」くるりのエンディングがとにかくすごい良かった。「電人ザボーガー」面白かったが、いまいち自分の特撮離れしていたことを感じてしまいノリきれず。「ノルウェーの森」足の早さと死への歩みが混同させられるような感じとか、二人の女声のコントラスト、色彩など好きな点はもろもろあるんだけど、惜しい。「サラリーマンNEO」無根拠のいい加減さが最高なのですが、それだけでもあったという。

はい。以上です。

邦画全然観れなかった、思い出して考えるだけでも…「奇跡」「東京公演」「サウダージ」「監督失格」「歓待」「大鹿村騒動記」「八日目の蝉」「マイ・バック・ページ」とあるので、本当に後悔ですね。だから微妙なランキングになってしまいました。あえて劇場鑑賞した邦画でランキングをつけるのであれば、という程度のランキングだということでどうぞよろしくお願いします。

2011年12月30日金曜日

ポジティブな強さと君とひととき

出会いとは本当に突然。偶然時間が合ったからというだけの理由で飛び込んだ渋谷シネマヴェーラにて特集「映画史上の名作」からエルンスト・ルビッチ監督の「君とひととき」を観てきました。

映画館で白黒映画を観るのは、かなり久し振り。午前十時の映画祭で観た「シベールの日曜日」…いや「ハスラー」以来かな。その日はすでに映画二本のはしごした後だったし、白黒映画で1932年の映画だし、全然知らない古い映画なので、よもや寝てはしまいだろうかと不安だったんですけど、全くの杞憂でした。

君とひととき

あらすじ:パリっ子の粋なお医者さんアンドレ・ベルティエは美しい奥さんコレットをもちろん愛している。そして至極仲睦まじく円満に暮らしているのである。ところがある日アンドレはタクシーの中で美しい夫人と偶然知り合いになった。その夫人と言うのは彼の愛妻コレットの親友ミッチであることが判った。そんな愛妻の親友ミッチから積極的な誘惑をされてしまい…?一方で、アンドレの親友アドルフは、ベルティエをずっと想っていて…?

ルビッチの代表作と言われる「結婚哲学」をトーキー映画としてリメイクしたものがこの「君とひととき」という映画だそうだ。名前だけはなんとなく知っていたけれど、全然作品を見たことがなかったルビッチ。今年は、クロード・シャブロルという肌に合う監督に出会えたことの衝撃をずっと忘れられなかったわけだが、また肌に合う監督さんに出会ってしまった。

物語は、単純にして実にお馬鹿なお話でした。けれど、大好きなウディアレンで親しみのある画面に向かってしゃべり始める語り口、観客に対するちょっとした目の配らせ方、セリフの気持ちのいい掛け合いや皮肉の上手さ、奥行きのあるような味わい。実を言うと作品によっては苦手なミュージカル映画なんだけど、歌になったらついついにやにやしちゃうくらいおんなじフレーズを何度も繰り返すところとかも最高に楽しくて可笑しかった。

やはり古い映画だから、今に比べたら色々制約があって粗があるんだろうけど、粗なんてびっくりするほど振り返ってみてもわからないくらいに引き込まれてしまってました。浮気の誘惑に駆られるアンドレと一緒になってもがきあえいでしまう始末です。妻のベルティエはどこまでも可愛く愛おしいし、誘惑してくるミッチの小悪魔っぷりたらもうないし、こうアンドレに感情移入させられるというか一緒になってピンチになってしまっている感、役者たちの素晴らしさに加えて、ルビッチの手腕なんだろうなって思うと艶笑喜劇の神様と言われるだけの所以を感じ取れたような気がしました。

「君とひととき」の最後は、実に可笑しいハッピーエンド。悲惨?お馬鹿?シニカル?な物語で、これからの展開どうなるんだろうとか思っていた最後の最後、本当にしてやられたなーともう最高でした。

強い。この映画の終わりに象徴されるようなポジティブな強さは、凄く気持ちがいい。今年のベスト1に「ブルーバレンタイン」を挙げてしまったせいか、まぁ「ブルーバレンタイン」は前向きな終わり方だったと思ってるんですけども…やっぱりポジティブに強くはなれない映画だったとは思うので、今年の締めくくりに「君とひととき」を観れたことはとても価値があったなーと思えてます。いやー。

来年の三月にDVD化されるみたいだから、絶対買うしかない!
あと来年は、この映画を観て肌に合うと思えたルビッチ監督の作品を色々観るようにしたい。勝手に自分で特集組むぞ!と意気込んで…皆さん、よいお年を

2011年12月28日水曜日

一瞬であるということ。永遠の信じられなさ。

純愛や青春映画を見たときのほろ苦さにどう立ち向かっていけばいいのか分からないなぁと思う。というか、死が絡まる純愛映画ほど、ましてわからないのである。たしかに大事な人が死んでしまうのは悲しい。


永遠の僕たち

交通事故によって両親を失い、臨死体験をした少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)のただ一人の友人は、彼だけにしか見えない死の世界から来た青年ヒロシ(加瀬亮)だけであった。他人の葬式に参列するのが日常的なイーノックは、ある日、病によって余命いくばくもない少女アナベル(ミア・ワシコウスカ)と出会う

イーノックとアナベルの青春、青い若さと死が描かれるわけだが、「死」が日常の中にというより、二人の中に当たり前に存在しているのがこの映画の怖い所だった。いわゆる純愛映画だと死が受け入れがたいものでしかなくて、それを乗り越えていくというような映画も多いわけだけど。その点は、「永遠の僕たち」は特殊な純愛に位置づけられる気がする。

「永遠と信じられる、信じたい一瞬」をどう描くかみたいなのが、俺が映画を見ちゃうときに恋愛が絡んできたと時に考えさせられてしまう所であったりするのだけど、この映画でもラストシーンはまさしくその瞬間を思わさせてくれるものである。ただそのことで、ちょっと深読みしてしまいたくなったので、恋愛脳の独り言を書いてみようと思う。

「永遠の僕たち」というタイトルからも「永遠」な二人を意識してしまう節があるのだけど、原題は「Restless」。意味で言うと、落ち着かないとかじっとしていられない、不安な…というものである。邦題で浅はかにも意識させられてしまう永遠の二文字はどこにもない。どうして、Restlessというタイトルなのか。

最初に怖い所として、「死」が日常にあると言ったが、その点がひっかかってくる。つまり、主人公のイーノックは臨死体験をしたせいで唯一の友達として幽霊(ヒロシ)が描かれ、またアナベルの方も余命いくばくもないという死があり、それを受け入れる形で二人の愛が育まれていくことになる。死を体験しているから死と一緒に彼女を受け入れることができる主人公の強さと少しも死を恐れてはいない彼女の強さは、あまりにも強靭すぎるとしかいいようがない。

例えば、彼女はダーウィンを愛好しているというお話が出てくるが、ダーウィンを信じているということは、宗教的なすがる存在が一切ないということでもあるし、何故彼女が死に対してそこまで強くいられるのか不思議で仕方がない。

「死」とはひとつの見方でいえば、解放であり、永遠になってしまうものである。忘れるという選択ができないのであれば、忘れられなずにずーと背負って行かないければならなかったりする。そういうイメージがある。

その象徴的な存在が幽霊のヒロシだ。日本兵で最愛の人を残してしまったという愛の儚さが終盤描かれ、イーノックのアナベル喪失と並べられて描かれもするが、彼という存在がまさしく永遠的な存在なのである。死を恐れていない存在、アナベルも同じく死を恐れていない存在。

だから、まるでイーノックとアナベルは、幽霊で死んでしまってるかのような、永遠的な存在に思えてしまってくる。つまり「永遠と信じられる、信じたい一瞬」が当たり前になってくる。やっばり好きな人とはずっと一緒に居たいし、永遠と思える一瞬のために生きてるというか、その瞬間を信じてすがってたりするんだけど、永遠がどうたらとかすがったりとかしてるということがないんだよ。幽霊のヒロシの存在がその点をすごく曖昧にしている感じがして、二人はもう永遠に愛を分かち合えているように思えるんだよね。

そんな二人にも死という別れが訪れる。たしかに永遠でないという事実・彼女の死の現実に、イーノックは自棄になってしまったりするのもあるんだけど、これは彼女を失うことへの恐怖。これは純愛映画のいつもと同じようなベタなお話、失って初めて彼女との永遠と信じられる一瞬を手に入れてたんだと気づくという。

でもね、アナベルの死を迎えてイーノックが最後笑顔を見せる瞬間、

永遠でしかなかった相手を失えた喜び

になっていたように思えたんだよ。

もうなに言ってるか、上手く伝わるかわからない文章で申し訳ないんだけど、普通なら彼女が永遠的な存在ではなかった事実に触れ、けれど失って永遠と信じられる一瞬を手に入れていたんだという愛にすがって生きていけるというようなお話になってしまったりするのを、永遠と信じられなくなった事実をくれたことへの喜び・愛の見出してるように思うんだよね。

幽霊ヒロシの最愛の人へと宛てた手紙、彼の中で彼女は永遠の想い人として生き続け、愛がそこにはある。
同じように、アナベルを失ったノーイックの中でもアナベルが生き続けていく。これは並べられて描かれるように思うのだが、先の俺の解釈にしたら同義にも近いけど、対比とも取れるようになる。

幽霊ヒロシの最愛の人へと宛てた手紙、彼の中で彼女は永遠の想い人として生き続け、永遠と信じられた一瞬に、愛を見いだせる。一方で、アナベルを失ったイーノックは、永遠と信じられた時間の中から永遠の信じられなさ、一瞬が一瞬でしかないことに愛を見出いだせた。

永遠はない。けれど、積み重ねた一瞬が永遠と信じられるのではなくて、一瞬でしかないから、愛が見いだせた。

タイトルの話に戻れば、不安でいられること、じっとしていられないこと、落ち着いていられないこと、つまり「Restless」その一瞬一瞬が永遠でないから、一瞬でしかないから…。そんなことを改めて考えてみたら、永遠と信じたい一瞬を求めてる、すがっていたい人間としては、彼らが到達したその場所、イーノックの最後の笑顔に涙するしかないんだよね。

もうなにが言いたいのかよくわからなくなっちゃったけど、青春・純愛映画が死を絡むことでただ永遠の一瞬を手に入れたと描きがちで、だから死が絡む映画って嫌いなんだけど、ここまで死について深読みさせてくれる映画なんだと思うとその一線からちゃんと踏み出していたと思えて嬉しかったんですね。

みずみずしい若い主演の二人の演技は素晴らしいかったし、洒落た衣装に、音楽までとっても良かったです。
NICOのThe Fairest Of The Seasons、BeatlesのTwo of us 頭から離れないや。