おことわり

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2015年3月27日金曜日

ミュージカル映画の世界

新任地への引継ぎの途中、フィルムセンター展示室へ。終了間際のポスター展「ミュージカル映画の世界」に滑り込み。海外のポスターが中心で、未公開作品も多く、仕事の疲れも忘れてしばし楽しんでまいりました。6月には京都でもやるようです。

日本製のポスター・宣材もあったのですが、なぜか冷遇(?)されていたのが「南太平洋」で、展示されていたのが70年代にリバイバルされた時の半券のみ。

最近テレビを点けっぱなしにしていたら、車のCMでいきなりこの作品の序曲が流れてきてびっくり。午前十時の映画祭を手がけている映画演劇文化協会の主催でこの夏に全国で巡回上演するようなので、そのプロモーションもからんでいるのかな。「南太平洋」については東京での本命系のチラシが何とかそろった感じがしているので、こちらにまとめてみました。

新任地、と書きましたが、転勤で4月から九州に戻ることになり、ただいま荷造りの真っ最中。パソコンもさすがにXPはそろそろアカンやろ、ということで早々に買い換える予定。ということで、落ち着かない毎日を過ごしておりますが、必ず再開いたします。

2015年3月22日日曜日

2014年上半期に観た映画(リスト)


今さらながらではありますが。
昨年の下半期と同じパターン(☆20点 ★5点。旧作はなんとなく☆☆☆★★を上限)でだらだらとメモ。


1月
キャプテン・フィリップス☆☆☆★★
    P・グリーングラスはこういうタッチの方が冴えるな。

ターミネーター☆☆☆★
    音楽が80年代してるなぁ。

ロッキー☆☆☆★
    映像が70年代してるなぁ。

大脱出☆☆☆★
    いくらなんでもこのネタバレ宣伝は酷い。所長が蝶好きなのでマル。

麦子さんと☆☆★★
    故郷の描写があまりにファンタスティックでついていけず。往年の花王名人劇場を観ている感が。

スティーラーズ☆☆★★★
    V・ドノフリオ、「大脱出」で「おぉ、久しぶり!」と思ったらここでも会って、10数年ぶりに街中であった旧友に駅のホームでまた会った気分。

エンダーのゲーム☆☆☆
    どうもハリウッドのジュブナイル系作品とは相性が合わないなぁ…って観る方が歳なんだから仕方ないです。

燃えよドラゴン☆☆☆★★
    恥ずかしながら映画館では初観戦。何も言うことはありませぬ。

2月
ザ・イースト☆☆☆
    ちょっと優等生すぎて、期待したほどのものではなかった感が強い。

ウルフ・オブ・ウォールストリート☆☆
    10代に「時計じかけのオレンジ」を初めて観た時の衝撃を思い返す。若い頃だったら人生変わっちゃいそう。内心の自由を大いに満喫。

華麗なる週末☆☆☆★
          こちらを参照。

ラッシュ/プライドと友情☆☆☆★★
    今年は「ウルフ…」とこれを観ることができて大満足の一年でした。

アメリカン・ハッスル☆☆☆★
    演技合戦というより役作り大会。夜中のA・アダムス「スペースバンパイア」のテーマが頭の中を駆け巡り、参った。

ペコロスの母に会いに行く☆☆☆
    ひどい出来だとも思わないけれど、これがキネ旬1位というのはどうもよく分からない。選出者の高齢化?

ダラス・バイヤーズ・クラブ☆☆☆★
    映画としてはインディ感は否めない(岡山の渋谷化とか)けれど、もう、ジャレッド・レトが圧巻で必見。

3月
リーガル・マインド☆☆★★★
    興味深い題材ながら、展開も演出もこれといったものがないままだった。

ハリケーンアワー☆☆★★★
    面白いシチュエーションだったけれど、ゴールをうまく用意できなかった感が。

それでも夜は明ける☆☆☆
    えぇ、監督の名前と予告編のいかだで「パピヨン」期待した俺が悪かったんです。21世紀の19世紀って雰囲気の課題図書映画。.

ジャッカルの日☆☆☆★★
    ようやく映画館で観られてうれしい。何も言うことは(以下略

ひまわり☆☆☆★
    川喜多映画記念館で鑑賞。ひたすら涙、涙かと構えていましたが、思った以上にコミカルなシーンもあって驚き。

ハンナ・アーレント☆☆☆★
    柄にもなく、現在の社会状況と比較論考したくなる作品。主演女優のハードボイルドな雰囲気もいいが、実際近くにいたら鬱陶しいか。

MUD -マッド-☆☆☆
    マコノヒーとウィザースプーンの掛けあいを見て、「ヒート」のデ・ニーロとアル・パチの競演シーンを思い出す、性格の悪い俺。

ウォルト・ディズニーの約束☆☆☆★★
    観た時は満足していたのだけれど、その後やれ「マレフィセント」だ「イントゥ・ザ・ウッズ」だと旧作解体路線ばかり続くと複雑な気分。

4月
LIFE!/ライフ☆☆☆★
    LIFEの休刊をからめたのは上手いと思いましたが、必要以上に話を大きくし過ぎ。

ロボコップ☆☆☆
    考えて、ひねりすぎて、理には落ちてもかえって魅力が減じるという…後だしジャンケンもつらい。

ローン・サバイバー☆☆☆
    おそらく米国民目線の映画なので、異邦人である自分には受け容れがたい箇所もありましたが、戦場の酷薄さ等、観応えありました。

あなたを抱きしめる日まで☆☆☆★
    正直J・デンチは苦手なのですが、これは良かった。可愛かったぞ。

仁義なき戦い☆☆☆
    どうもこの作品を観るたび、途中で写る「シャギー・ドッグ」のポスターが引っかかる。せめて封切時の「ボクはむく犬」にしてくれれば。

LEGO®ムービー☆☆☆★★
    レゴ初心者から上級者まではもちろん、株主はじめ利害関係者の皆さん、ブロックは河田だった自分まで満足させる凄い映画。

ドラゴン怒りの鉄拳☆☆☆
    ネトウヨから見たら「ブルース・リーは反日!」になるのかしらん。それにつけてもノラ・ミャオの可愛さよ。

白ゆき姫殺人事件☆☆☆
    以前観た「ゴールデンスランバー」もそうだったのだけど、どうもTV局内部の描写にリアリティを感じない。説明過多の台詞にも閉口。

5月
ルパン三世 カリオストロの城☆☆☆★
    さすがに絵の動きには古さを感じざるを得ないが、面白さは相変わらず。

ブルージャスミン☆☆☆★★
    マイナーリーグで長らく調整していたピッチャーが、久々のメジャーのマウンドでいきなり剛速球を投げた感。

WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜☆☆☆★
    主題歌を誰にするかはこのCMで決めたんだろうなぁ…と思うとつい顔がほころぶ。伊藤英明の登場シーンも最高。

あなただけ今晩は☆☆☆★
    ちょっとくどい感じはあるものの、面白さは相変わらず。

8月の家族たち☆☆☆★
    もう少し舞台劇そのものの情報を知っておけばより楽しめたかな。パンフは物足りない.。

新しき世界☆☆☆
    設定を欲張りすぎて、説得力が薄れ、「インファナル・アフェア」には遠く及ばず。

ポリス・ストーリー/香港国際警察☆☆☆
    スタッフのクレジットに馬飼野康二の名前が。それにつけても画質のひどさよ。

6月
インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌☆☆☆★
    今ひとつ苦手なコーエン兄弟でしたが、これは楽しめました。

ゴジラ☆☆☆★
    第1作。河内桃子のふくよかさにしても、追悼を歌う女学生たちにしても、時代の変化を実感。

グランド・ブダペスト・ホテル☆☆☆★
    そのおしゃれな感じにどうも食わず嫌いだったW・アンダーソン監督でしたが、行ってみたらさすがに良かったです。

羅生門☆☆☆★
    音楽がどうも「ファム・ファタール」(坂本龍一)を彷彿させるなぁ。影響あったのか。

ハミングバード☆☆☆★
    すごく良くできた、ってことではない(特にオチの展開)ものの、登場人物の描写に味わいがあり、魅力的な作品に仕上がっていました。

ある過去の行方☆☆☆
    展開は相変わらず上手いのですが、「別離」に比べると妙に演出めいたこと(昔の営業手法みたいな)をやっていてがっかり。


死亡遊戯☆☆★★★
    今の眼で見るとさすがに代役シーンはかなりツラい。それにつけても画質のひどさよ。

X-MEN:フューチャー&パスト☆☆☆
    やはりM・ヴォーンで観たかったなぁ。それにしてもなんでこう皆さん、中国中国なんですかね。

トランセンデンス☆☆★★
    観る前から微妙な予感はしていたが、やはり、という結果に。

her/世界でひとつの彼女☆☆☆★
    「トランセンデンス」の後だと何を観ても傑作に観てしまうのかもしれないが、こちらはアイデアをいろいろ詰め込んでいて面白かったです。

う~む、やっぱり1年経つと忘れてしまうな。続きはまたあらためて。

遥かなる西部のバラード(「砂漠の流れ者」「ケーブル・ホーグのバラード~砂漠の流れ者~」)

スピードチラシ。仮題つきはボロボロの
ものしか持っておりません。
前回の続きになりますが、同じワーナー70年代初頭の「エロ・グロ売り」例をもうひとつ。

70年代の珍品チラシを追いかけていると、どうしても「スプラッシュ公開」(東宝や松竹・東急系列の二番館で上映)の作品が気になってくるところ。この「砂漠の流れ者」のように、観客に配布されるようなチラシは(おそらく)作られていなくても、業界内配布用のスピードチラシが「本命」として珍重されています。このあたり「『映画のチラシ』をどのように定義するべきか?」という問題もはらんでいるのですが、実際はかなり適当、コレクターの主観・価値観次第になっている感が。

で、「砂漠の流れ者」も、当初は「遥かなる西部のバラード」という仮題がついて、シングル盤も発売されていたようなのですが、最終的にはタイトルを変え、「鷲と鷹」(リー・ヴァン・クリーフとウォーレン・ウォーツの競演作。東劇系での封切は1週間で終了)との二本立てと相成った次第。

そんな経緯からスピードチラシも仮題のものとタイトルが空欄になったままのものがあり、チラシ大全集には空欄に正式なタイトルが手書きされたものが掲載されています。
プレスシート B3

スピードチラシとプレスシートを比べると、解説やストーリーは同じですが、プレスの方はアートワークやキャッチコピーをアクション映画、それもマカロニを意識した残酷ものっぽく仕立てています。

当時の新聞広告はプレスに載っている「宣伝文案」を手直しし、「毒蛇責め!渇き責め!砂地獄!」と打って、さらに「眼を覆う残酷さ!この世のものとも思えぬ物凄さで話題騒然!」と煽っているのですが、この映画を観た人なら、「眼を覆う残酷さ」は作品を捻じ曲げてでも売り込まねばならぬ「業界の掟」であり、「この世のものとも思えぬ物凄さ」はスピードチラシの4枚の場面写真をアクション風にデザインした「プロの技」だと思うのではないでしょうか。これらのフレーズ、おそらくは宣伝した側の自己韜晦、自虐も入っている気がします。

ワーナーは60年代後半から「ブリット」「俺たちに明日はない」「ワイルドバンチ」「ウッドストック」「ダーティハリー」「時計じかけのオレンジ」「スケアクロウ」…と、映画史に残る作品を連発していましたが、台所事情は厳しかったよう。「エクソシスト」と「燃えよドラゴン」が大当たりした1974年1年間の日本法人の配収が過去10年分だった(キネ旬決算号)そうですから、作品の価値と商品の「旬」の興業価値はなかなか一致しないものです。

2015年2月16日月曜日

コールガール/愛すべき女・女たち

1971.10.16 丸の内松竹ほか
残念ながら1週間で終了。
すっかりご無沙汰しております。楽しみにされていた方には本当に申し訳ありません。今後も(特に3月以降は)厳しい状況ですが、少し頑張りますので、よろしくお願いいたします。

エントリーはしていないものの、気の向くままに調べものはいろいろやっております。チラシの話題とはそれてしまいますが、以前「電撃脱走 地獄のターゲット」のコメント欄で出た「コールガール」「愛すべき女・女たち」の改題について中部圏の新聞広告を調べてわかったことを。

論より証拠、ということでこちらをご覧いただければ一目瞭然であります。自分の興味が70年代前半あたりの作品に行きがちなので、ブログを始めてから、この時期の新聞広告を見る機会が多いのですが、まさに「エロ・グロ」売りの時代で、特に地方紙ほどその傾向を強く感じます。観客動員数が減り続ける中でたどり着いたのがこの扇情的な売り文句な訳で、今見ると映画会社(というより興行主)の悲鳴にも思えてしまうところ。

まず、「コールガール」ですが、ネットでは東京での公開後、半年以上経って関西圏で上映、という情報もありましたが、実際には東京終了後3週あまりで名古屋にて改題による公開がされています。上映期間は1週間、これでは改題後のタイトルでの宣材は作ってなさそう。おそらく映画館は看板だけじゃないかなぁ。なまじプレスとか貼ったら、それを読んで「真相」を知ったお客さんが逃げちゃいそうだ。
1971.12.25
銀座東急・東急レックスほか

丸の内松竹は「コールガール」の後も「くたばれ!ダーリン」「昨日・今日・明日」(リバイバル)と1週間打ち切りが続き、12月も「白い肌の異常な夜」が10日で打切り、ヘプバーンの二本立てに差し換わっています。斉藤守彦の労作「80年代映画館物語」の『「ある日どこかで」物語』の章でも、80年代における丸の内松竹の”消化番組劇場”的な立場が記されていますが、この時期も同様だったのかもしれません。

愛すべき女・女たち」も予想以上にえげつない広告で、ちょっとびっくりしてしまいました。こちらは東京公開から2ヵ月後。70年代にはさすがに機を逸した艶笑オムニバス(製作は67年)なので、売り方も難しかったのでしょうが、それにしてもなぁ。

ともあれ、露悪的・冷笑的に紹介するつもりはないものの、映画が持つ「商品」という側面は冷厳として存在するわけで、まさに「チラシの裏」としてエントリーしておく次第です。



2014年11月3日月曜日

25 NIJYU-GO

25周年記念作品。主演はやはり哀川翔。
阿佐ヶ谷ラピュタの
連続上映のチラシ
今年は東映Vシネマも25周年、だそうで、このところ記念の映画出版物連続上映、と企画も目白押し。

自分はVシネマについて語る資格は全くない人間なのですが、せっかくの機会ですので、手持ちのVシネマのチラシをアップしてみます。古本屋で偶然見かけたのをきっかけにポツポツと集め始めたもので、シリーズものもろくにコンプしていない体たらくですが、お楽しみいただければと。

映画チラシコレクターからすると、1993年に「Vワールド」と称して加藤雅也とハリウッド女優の共演作を作り始めたあたりから、劇場公開とのリバーシブル(?)チラシが出始め、その一方「修羅がゆく」の1・2のように完全に劇場向けのチラシも登場、グチャグチャになっていった気がします。

こうやって並べてみますと、今なお最前線で活躍している人、映画界に活躍の場を広げた人、政界に打って出た人、行方不明になってしまった人…まさに人生いろいろ、の感が。それにしても皆さんほとんど、銃か刀を持ってらっしゃいます。

2014年6月8日日曜日

風と共に去りぬ(MGMリバイバル②)

1967.4.7日比谷スカラ座公開時のチラシ。後年使われ続けるこのイラストは60年代に数々の映画ポスターを手がけた
ハワード・タープニング(Howerd Terpning)によるもの。
61年もヒットを飛ばした「風と共に去りぬ」ですが、その勢いは1967年のリバイバルにも引き継がれます。当時のチラシには「全世界はすでに5回、わが国ではこれが4回目」とありますが、前年から3月にかけて菊田一夫による舞台版(帝国劇場)が5ヶ月のロングラン、70㎜版の世界初公開という絶好のタイミング。公開直前4月5日付の毎日新聞夕刊は「またヒット確実?」と報じているのですが、記事によると、公開約2週間前の3月28日から始まった日比谷スカラ座の前売り(窓口および電話予約)は、最初の4日間で3,714枚。昨年(1966年)の同劇場のヒット作「南太平洋(リバイバル)」「おしゃれ泥棒」の前売り発売数(最初の4日間)がそれぞれ1,128枚、938枚だったというから、期待の高さがわかろうもの。

実際に公開されたときの熱狂ぶりは、元東宝社長で「午前十時」の選考委員も務めた高井英幸の回想録「映画館へは、麻布十番から都電に乗って。」に詳しく書かれています。当時スカラ座で働いていた入社4年目の高井氏も残業100時間の大奮闘、続々と詰めかけるお客様に、宣伝カーで「お帰りください」と呼びかけたのは、あとにも先にもこのときだけだったそうです。余談ですが、以前映画年鑑(いつの年かは記憶なし)を読んでいたら、係長時代の高井氏が「映画館の業務の手順を冊子にまとめて評判」みたいな記事が載っていて、社長になる人は違うなぁ、と思いましたが、この時の経験も生かされているんでしょうか。

かくしてスカラ座は17週、続くニュー東宝(現在のTOHOシネマズ有楽座。この作品にあわせて70㎜対応に改装)で6週の大ヒット。翌68年3月にテアトル東京で26日、69年3月にもテアトル銀座と新宿武蔵野館で47日とたて続けに上映されています(大阪では70年に阪急プラザ劇場でD-150方式で上映されているのは以前ご紹介したとおり)。

さて、「チラシ大全集」を開くと、1967年の頁に上記のイラスト柄と本編を観た人には印象的な写真柄の2種類が掲載されています。共にB5の二つ折りで、中の文面は同じです。自分はイラスト柄はスカラ座版とニュー東宝版、写真柄はテアトル銀座版を何とか入手しているのですが、写真柄がそれ以前(67・68年上映時)に出ていたのかはちょっと判りません。
上:風と共に去りぬ
下:ドクトル・ジバゴ
ともに、1969年テアトル銀座上映時

写真柄のMGMマークは67年以前の古いタイプ(「2001年」製作に合わせて作られた新マークは67年12月公開の「危険な旅路」以降に使用)なので、69年に新たに作られたものではないと思うんですが、何せものを見たことがないので確信が持てません。この辺にキャリアの浅さをひしひしと感じます(ご存知の方、教えていただけると嬉しいです)。

続く1972年2月、当時のチラシによると、「わが国五回目」の公開がシネラマ方式で行われます。すでにテアトル東京で2回上映されていますが、シネラマ方式としての上映は松竹系のこれが初めてだったよう。
左がシネラマによる松竹・東急系、右が70ミリによる
東宝系(日比谷スカラ座)アンコール上映。

72年2月というと、札幌オリンピック真っ盛りの時期。「フレンチ・コネクション」と「ダーティハリー」の対決を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、東京では「風」が「フレンチ」の倍近く動員、年間興行でも第4位と強さを見せつけます(大阪は「フレンチ」が上。「ハリー」はロードショー時、大ヒットに至らず)。

年末にもスカラ座に戻ってアンコール上映。MGMは2年後の74年2月に日本支社を閉鎖しましたので、これが最後の「風」の配給だったと思われます。

個人的にはこの時のチラシのデザインが一番好きです。クラーク・ゲーブルを入れなくちゃいけないのでしょうし、67年版のイラストに大河ドラマ調の魅力があるのも確かですが、やはりこの映画は「南部女のど根性半生記」だと思ってますんで。

2014年4月30日水曜日

風と共に去りぬ(MGMリバイバル①)

丸ノ内日活の館ニュース
「風と共に去りぬ」の初公開(1952年)は当時、特別披露公開として「一年間は絶対に一般公開はいたしません」と売り込んでいました。そのためか翌年6月のアンコール上映(2週間)も帝国劇場のお盆興行、カーニバル・ショウと題して行われています。東宝のサイトを確認すると、帝国劇場で映画が上映されたのは1950年の「白雪姫」以来で、その後も1955年からの一連のシネラマ作品上映までなかったようです。この時のチラシを見かけないのも、その辺に理由がありそうな気がしますが、どうなのでしょう。

そして封切から1年経った、1953年10月と12月、なぜか2回に分けて新宿東宝や浅草大勝館等8館で一般公開、以降は低料金の劇場に流れていきます。ただ、これは都内の状況で、全国では有楽座の公開後、各地で独占公開を行っていたようです。

その流れが止まり、仕切り直しされたのが1955年のこと。シネマスコープ第1作「聖衣」(1953年12月公開)のヒットから沸きあがったワイドスクリーン人気に乗ってメトロスコープ、立体音響を施され、9月2日丸ノ内日活劇場にて再公開(3週間)されます。詳しい経緯はこの後一般公開された際の館ニュース(渋谷国際)の画像にて確認願います。
渋谷国際の館ニュースの見開き画面

丸ノ内日活劇場は「私は告白する」「ダイヤルMを廻せ!」といったヒッチコック作品をはじめとしたさまざまな作品を封切っていますが、作品そのもののチラシは見当たらないことが多く、「風」についても、館ニュースだけのように思われます(50年代はこういうことが多いようですが、この辺は自分の勉強不足もありますので、間違いがありましたらご容赦ください)。

ここで少し脱線。「リバイバル」という元はといえばキリスト教の信仰復興運動を指した言葉、近年はあまり使われなくなってしまいましたが、日本で使われはじめたのは映画界より歌謡界の方が先のよう。古い曲を別の歌手で再度吹き込むことを現在では「カバー・バージョン」といいますが、この時代は「リバイバル盤」といって売り出していたようです。リバイバル・ブームについて書かれた文献(矢沢寛)では「1959年村田英雄の『人生劇場』に端を発し、60年の『無情の夢』から61年の『並木の雨』、そして『君恋し』のレコード大賞受賞で絶頂に達する」とあり、電通の広告景気年表の1961年の流行語にも「リバイバル」が掲載されています。

実際には7月15日公開ですが、14日のスタンプが押され
ています。「ベン・ハー」は13日に上映終了していますので、
14日は改装か前夜祭的な催しがあったのかもしれません。
この広告景気年表の1962年に「洋画にリバイバル・ブーム」とあり、「駅馬車」「禁じられた遊び」
「荒野の決闘」等、続々と公開されたのですが、これの先駆けとなったのが、前年1961年7月にテアトル東京で公開された「風と共に去りぬ」です。

この公開は南北戦争100周年記念行事で地元アトランタでワールド・プレミアが行われ、またまたヒットしたため、全世界配給となったもの。

当時の朝日新聞によると、前売りは「ベン・ハー」を千枚上回る4万7千枚が出る人気。もともとは当時大ヒットした「ベン・ハー」と「キング・オブ・キングス」のつなぎとして3ヶ月上映する予定だったはずが、最終的には5ヶ月のロングラン。東京地区の洋画年間興収で「アラモ」「荒野の七人」に次ぐ第3位、上位2作は3館上映(パンテオンほか)だったので、1館あたりの数字でいえば堂々の第1位ということになります。これに年末の「哀愁」のリバイバルのヒットが翌年のリバイバル・ブームを生んだと言えるので、ヴィヴィアン・リーはまさにリバイバルの女神です。

なお、当時の「スクリーン」を見ると、「風」公開時にはリバイバルという言葉はなく、年末近く、「荒野の決闘」「見知らぬ乗客」(劇団民芸による吹き替え版。そういえば初期のレンタル専用ビデオは吹き替えでした)等の公開予定作の記事あたりから使われ始めています。
1962年10月TY白系公開時。
紙質は薄くなり、文字も金から黄に。

「風」は翌1962年も4月に築地中央でゴールデン・ショウと銘打って40日、10月に一般公開でTY白系9館で20日上映されています。

築地中央ではテアトル東京と同じタイプのチラシが出ているようです(ネットに画像あり)。ただ、自分のテアトル版はかなり厚紙で、プレスかも、と迷ったのですが、プレスはカラーもので別にあるし、大丈夫ではないかと。でも「大全集」(P92)の京成ローザ版(千葉)とも少し色が違うんだよなぁ。この辺は自信ないので、もしご事情ご存知の方で誤りに気づきましたら、ご教示いただけると非常にありがたいです。