運命の人を探して

35歳までに結婚しなければ、積み立て資金が解約に!


結婚資金の消滅をきっかけに、リサの婚活がはじまった!

飲み会、異業種交流パーティ、紹介・・・
ありとあらゆる出会いを経て、気づいたことは・・・?

とうとう見つけた運命の人とは・・・?



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●出会い その3

出会い その1 はこちら 
      その2 はこちら

 

「ライブの途中ですが、ここで一曲、友達のシンガーに歌ってもらいます。」

 

Rくんが、客席から一人の女性をステージに招き寄せた。
ゴトゴトと椅子を動かす音がして、
赤いニット姿の女性が、笑みをうかべながら前にでてきた。

 

年のころは・・・、60代、いや70代かもしれない。
ふくよかで、というより太っていて、
ニットもずいぶんと、着古した様子。
失礼を承知で言うなら・・・
シンガーというより、

スーパーで買い物中のおばさんという感じ。

 

「彼女は、ふだんは、九州にいるんですけど、
震災のイベントで共演させてもらったときに、
すごく感動して、それ以来のつきあいです。
今日は、たまたま東京に来ているというので、
僕のライブに来てもらいました。それでは、何かお願いできますか?」


彼女は、背中をまるめて、恥ずかしそうにマイクを受け取った。

 

「こんな若い女性たちの前で歌えるなんて嬉しい。
じゃあ、聴いてね」

 

♪~~~ ♪~~~~ ♪~~~~~

 

 

初めてだった。

 


♪~~~ ♪~~~~ ♪~~~~~

 

 

 

 

私は、自分でも驚くくらい、号泣してしまったのだ。

 

歌は、坂本九さんの「上を向いて歩こう」

はじめ、歌っているのかも分からないほどかすれていた声に
なぜか、どんどんひきこまれ・・・
全身から、詞の世界があふれでてきて、
目の前に夜空がいっぱいに広がるのを感じた。

 

 

 

世の中には、
こんな歌があるのだ。


「リサ、大丈夫?どうしたの?」
隣にいた佐知子は、私の嗚咽を聴いて驚いていた。

 

はちきれんばかりの拍手の中、背中をまるめたままで席に戻った彼女は、
気持ちよさそうに目を閉じた。

 

どうしよう、彼女から目が離せない。

 

話しかけたい・・・

 

でも・・・

 

でも・・・

 

でも・・・


ここでいかなきゃ後悔する。
 


ステージが終わり、佐知子がトイレに行っている間に、
私は、思い切って席をたち、彼女のそばへ歩み寄った。

 

「あの、素晴らしかったです」

 

「まあ、ありがとう。」

彼女は、お酒で赤くなった顔で私を見上げた。

 

「どうやって、歌っているんですか」

言ってから、なんという質問なのかと思ったが、
彼女は意味を取り違えたようだった。

 

「歌わせてくださいってお店に頼んで、歌ってるのよ」

私が、口ごもっていると、

「だって、頼まないと歌えないもの。3年前、夫が亡くなってから歌おうって決めたの。
まだヨチヨチのシンガーで~す。」

と、茶目っ気たっぷりに首をすくめた。


次回へつづく・・・こちらも

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