アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-タイトル  明日行きたくなる美術展情報をあなたに

星星星(3ツ星)
  ・デ・キリコ展  東京都美術館(~8/29)
もうすぐ…雪舟伝説―「画聖」の誕生―  京都国立博物館(~5/26)
  ・マティス 自由なフォルム  国立新美術館(~5/27)
  ・チームラボボーダレス
  
星星(2ツ星)
NEW平山郁夫―仏教伝来と旅の軌跡  平山郁夫シルクロード美術館(~9/9)
NEW生命の交歓 岡本太郎の食  川崎市岡本太郎美術館(~7/7)
NEWどうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより  東京ステーションギャラリー(~6/23)
NEW板倉鼎・須美子展  千葉市美術館(~6/16)
  ・走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代  菊池寛実記念 智美術館(~9/1)
  ・青山悟 刺繍少年フォーエバー  目黒区美術館(~6/9)
  ・金屏風の祭典 ―黄金の世界へようこそ―  岡田美術館(~6/2)
  ・村上隆 もののけ 京都  京都市京セラ美術館(~9/1)
  ・加山又造 ―革新をもとめて  下瀬美術館(~6/30)
  ・サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品  サントリー美術館(~6/16)
  ・テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本  パナソニック汐留美術館(~6/9)
  ・没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家  渋谷区立松濤美術館(~6/9)
  ・宇野亞喜良展 aquirax uno  東京オペラシティアートギャラリー(~6/16)
  ・マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア  弥生美術館(~6/30)
  ・ブランクーシ 本質を象る  アーティゾン美術館(~7/7)
  ・北欧の神秘―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画  SOMPO美術館(~6/9)
  ・カール・アンドレ 彫刻と詩、その間  DIC川村記念美術館(~6/30)
  ・MUCA展 Icons of Urban Art  森アーツセンターギャラリー(~6/2)
  ・こどものみなさまへ あれ これ いのち  ちひろ美術館・東京(~6/16)
  ・第8回 横浜トリエンナーレ  横浜美術館他(~6/9)
  ・こどものみなさまへ あ・そ・ぼ  安曇野ちひろ美術館(~6/2)
もうすぐ…館長!これどうするんですか!?  アクセサリーミュージアム(~5/25)
  ・ピカソ いのちの讃歌  ヨックモックミュージアム(~9/23)

星(1ツ星)
NEW和フリカ―第三の美意識を求めて―  丸紅ギャラリー(~6/8)
  ・いのちのパレット 松本亮平展  調布市文化会館たづくり(~6/30)
  ・久保寛子展「鉄骨のゴッデス」  ポーラ ミュージアム アネックス(~6/9)
  ・川越ゆりえ YURIE PARK  下山芸術の森発電所美術館(~6/9)
  ・卒寿記念 人間国宝 鈴木藏の志野展  国立工芸館(~6/2)
  ・崇高さに関する抽象的な覚書  広島市現代美術館(~6/9)
  ・翻訳できない わたしの言葉  東京都現代美術館(~7/7)
  ・ホー・ツーニェン エージェントのA  東京都現代美術館(~7/7)
もうすぐ…没後100年 富岡鉄斎  京都国立近代美術館(~5/26)
  ・タローのダンス  岡本太郎記念館(~7/7)
  ・夢二がえがく動物ワンダーランド  竹久夢二美術館(~6/30)
  ・未来のかけら: 科学とデザインの実験室  21_21 DESIGN SIGHT(~8/12)
  ・フランシス真悟「Exploring Color and Space」  茅ケ崎市美術館(~6/9)
  ・にほんの洋食器ものがたり 120年のみちのり  ノリタケミュージアム(~12/25)
  ・遠距離現在 Universal / Remote  国立新美術館(~6/3)
  ・つかの間の停泊者  銀座メゾンエルメスフォーラム(~5/31)
  ・旅するピーナッツ。  スヌーピーミュージアム(~9/1)
  ・活字の種を作った人々  市谷の杜 本と活字館(~6/2)

 

 

1990年以降、板橋区立美術館には、

洋風画を中心とした珍しい個人コレクション、

通称、「歸空庵コレクション」が寄託されています。

その数は、実に248件。

そんな「歸空庵コレクション」から選りすぐりの73件を紹介するのが、

現在開催中の“洋風画という風―近世絵画に根づいたエキゾチズム―”です。

 

 

 

歸空庵コレクションの中でも、

特に名高いのが、秋田蘭画のコレクション。

秋田蘭画とは、秋田藩士が中心に描いた阿蘭陀風の絵画のこと。
略して、「秋田蘭画」です。

その中心人物と言えるのが、小田野直武。

もし彼の名前は知らずとも、

彼が描いた『解体新書』の挿絵は、

教科書などできっと一度は目にしているはずです。

そんな小田野が描く秋田蘭画は、

当時の日本画と比べて、だいぶとコッテリしています。

 

 

 

当時の日本画が、和菓子の味わいなら、

秋田蘭画は、バターがしっかりと効いているような。

そのコッテリ感に、西洋が感じられます。

 

また、こちらも小田野直武による作品。

 

 

 

描かれているのは、ワラビとのことですが、

コッテリしすぎていて、もはや新種の生命体のよう。

それも、地球外の。

しばらく眺めていたら、この場所がナメック星のように思えてきました。

 

さて、そんな小田野直武から絵を学んだのが、

久保田藩(秋田県)の藩主であった佐竹曙山です。

キャプションの解説によると、かなりの癇癪持ちだったそう。

本展では、佐竹曙山が描いた絵画だけでなく、

彼が癇癪を起して書いたとされる手紙も展示されていました。

 

 

 

なんでも、印を彫る職人に、オランダの印を注文したところ、

雨天や人形制作を理由に、なかなか仕上がってこなかったのだとか。

曙山はそれに癇癪を起して、この追求の手紙を書いたのだそうです。

 

 

 

達筆すぎて、具体的に何と書かれているのかは、よくわからなかったですが、

謎のマークを書き込んでしまうくらいに、正常な状態でなかったことはわかりました。

しかし、藩主のオーダーに対して、

雨天や人形制作を理由に、印を作らなかった職人も、なかなかの大物ですよね。

 

 

さて、本展では秋田蘭画の画家の他にも、

さまざまな洋風画家たちが紹介されています。

例えば、亜欧堂田善。

昨年、千葉市美術館で大規模な回顧展が開催された銅版画家です。

本展では、新寄託の作品も併せて紹介されています。

 

 

 

また例えば、石川大浪。

その名を聞いても、ピンと来ないかもしれませんが、

教科書でもお馴染みの杉田玄白の肖像画(←ぬらりひょんみたいな)を描いた人物です。

本展では彼の作品が数点紹介されていましたが、

中でも一番印象に残っているのが、《ターフェルベルグ天使図》

 

 

 

彼なりに頑張って、天使を描いたのでしょうが、

目にした瞬間、「天使なんかじゃない!」と口走りそうになりました。

ダウンタウンの浜ちゃんに、ちょっと似てましたし。

 

 

 

他にもインパクト強めな洋風画がいろいろありましたが、

個人的にもっとも衝撃を受けたのが、結城正明による《HIPPOCRATES》です。

 

 

 

タイトルは、「医学の父」ことヒポクラテスですが、

実際は、キリスト教の聖人ヒエロニムスを原図にしたものとのこと。

と、それはさておき。

圧の強さがハンパではありません。

医者でもなければ、聖人でもなく。

老人が襲ってくる系のホラー映画のようです。

 

 

全体的に、思わずクスっとなる洋風画が多かったのですが。

決して、当の洋風画家たちは、

笑いを取りたかったわけではないでしょう。

彼らは少ない情報の中で、必死に西洋画を追求していたはず。

にもかかわらず、現代の眼から見ると、

妙な可笑しみが生まれてしまっていることに、

愛らしさのようなものを感じずにはいられませんでした。

こんなオモロい展覧会が、無料で観られるなんて有り難い限り。

板美と歸空庵さんに感謝です。

星星

 

なお、思わずクスっとなるのは洋風画岳にあらず。

先ほど紹介した小田野直武のワラビの絵に対して、

「モゾモゾ わさわさ ブンブン」と擬音だけで表現するなど、

思わずクスっとなるキャプションも、本展ではたくさんありました。

それらセンス溢れる数々のキャプションの中から、

マイ・フェイバリット・キャプション、MFCを一つ選ぶとすると、

やはり、こちらの作者不詳の《少女愛犬図》のものになるでしょうか。

 

 

 

「カゲつけ過ぎて、ヒゲに見える」とありました。

確かにw

 

 

 

 

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