(1)教授のバックグラウンドについて
まず、教授自身の経歴をチェックしましょう。
とはいっても・・一体何に基づいて
有名教授かどうかなんて分かるのでしょうか?
どういうところからラボの雰囲気が伺えるのでしょうか?
私の独断と偏見に基づいたアドバイスです。
<教授か助教授か>
まず始めに教授がキャリアのどのステージにあるかで、
ラボの雰囲気はかなり特徴分けできるかと思われます。
その指導教官がassistant professor(助教授)でやや若い場合、
研究室の規模は小さめで、一人一人の学生の成果が重要ですし、
やる気に満ち溢れているので、教授からの一対一指導が期待できます。
しかし、学生の成果が直接教授のキャリアを今すぐ左右するので、
かなり厳しい指導になるでしょう。
教授がテニュア(ずっと大学にいられる権利)を狙っている場合、
教授自身が論文を出さなければならないので、
学生の名前が第一著者にならない可能性も無視できません。
また、アメリカでは教授が転校することがよくあり、
とくにテニュアのない若い教授は移動することが珍しくありません。
アメリカでは教授が転校する時は研究室ごとごっそり移動しますが、
単位取得の関係など転校にまつわるあれこれに
時間を取られることもあります。
そういう意味では、すでにその大学で一定の成果をあげ、
テニュアもあり、移動する可能性の低い有名教授の研究室は、
資金も安定しているであろうし、
安心して研究に打ち込める感があります。
しかし、その分教授が一人一人の学生に対してこだわりがなく、
「5人とって、そのうち一番優秀な1人が成果を出してくれればOKで、
後の4人は適当にやって」といった
「ハンズ・オフ」スタイルになることがあります。
もしくは、教授がすでに確立した専門分野に執着があり、
新しいテーマの開拓に乗り気でなく、
保守的な研究スタイルになりがちなこともあるでしょう。
ちなみにうちの研究室は後者の分類になります。
うちの教授は研究歴も長く、有名でテニュアもあり、
なにやら特別な名誉教授で学生に奨学金をあげる
権利を持っているような方ですが、意外にも
研究成果を上げることにとても貪欲なので、
学生にかなりのプレッシャーをかけています。
(というか・・ミーティングの旅に、
学生やポスドクを怒鳴りちらし罵るので、
ミーティングの跡はみんなでグチりあって
ストレスを発散しています(笑))
研究室はいつもピリピリしています。
自分の得意分野の外には絶対に手を出しません。
研究スタイルもかなり保守的で、
斬新なアイデアに取り組むことはありません。
まあ、うちの研究室はScienceではなく
Engineeringの研究室なので、
製品化にむけた応用研究が中心なことも理由のひとつなのでしょうけれど。
<教授の出身大学>
意外に重要なのではないかと思うのが教授の出身大学です。
私はアメリカでPhDを取った教授につくのをお勧めします。
研究の世界でもコネはとても重要です。
もちろん成果があればチャンスは向こうから勝手にやってきますが、
教授の母校が有名大学の有名教授研究室の場合に、
その関係のコネクションが期待できますし、
共同研究や卒業後のポジションなどでもコネが効くかもしれません
(もちろん教授にその気があれば・・の話ですが)。
ちなみに私の教授はフランスでPhDを取り、
優秀だったのでアメリカに引っこ抜かれた方です。
天才的に社交的な方ですが、研究は一匹狼的スタイルです。
ほとんど誰とも共同研究はしないし、
噂によるとかなり浮いている感じがします。
そうすると、私達学生も外との交流がないので、
とても切り離されて閉塞的な感じがします。
ハッキリ言ってこういう環境はお勧めしません。
もちろん教授の個性によると思いますが、
少なくとも同じアメリカに自分を育ててくれた恩師と
そこで育った研究室の同窓生がいるだけでも、
かなり違うのではないでしょうか?
<その他>
教授の有名度を示すその他の指数として
Fellowというのがあります。
これは、学会などがその分野に大きく貢献したと
思われる教授に与えるものらしいです(あまりよく知りません)。
また、教授が雑誌の審査員をしていたり、
学会を取り仕切る代表などである場合も、
教授の有名度は高いと思われます。
アメリカの場合、その特定分野の有名教授が
必ずしも有名大学だけにいるとは限らないので、
こういう個別のチェックが必要かと思われます。
<教授の人間性>
何気にHPに教授の方針や趣味、
人柄などが載っていることがあるので、
そういう情報もチェックしてみるとよいと思います。
しかし・・・
基本的に、単に優秀なだけではアメリカで教授にはなれません。
アピールがうまく、ずる賢く強かでなければ、研究室の運営はできません。
すなわち、一般的に教授になる人物は自身をすばらしい人物に見せる事に関して
天才的な能力を持っていることが多いかと思われます。
(最近私は教授という職業は
(1)はったりを利かせて研究費をとってくる
(2)自分と研究室を魅力的なものに見せて、優秀な人材をおびきよせる
(3)手に入れた人材をうまく利用+最大限働かせて成果をだす
が仕事なんだという認識に落ち着いてきました)
そうすると、20やそこらのひよっ子学生が
ちょっとやそっとで教授の真の人間性を見抜くのは
不可能だと思います。
やり手で優秀でかつ人間的にも尊敬できる教授なんて・・・・
分野にもよると思いますが、
10%くらいなんじゃないですかね?
宝くじとまではいきませんが・・・
これに関する私のアドバイスとしては、
そもそも教授に人間性を期待しない方がいいと思いますよ。
相手がどれ程非人道的人物であっても、
うまくやっていく能力は
どんな業界でも必要なのですから、
極悪非道教授に当たったとしても
人生の試練だと思って耐えるしかないと思います・・・(笑)