(新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。)

2011年の年末にUFCではアリスター・オーフレイムVSブロック・レスナーというビッグカードをメインイベントにそえた興行が開催されました。また、日本では開催自体が危ぶまれつつもプロレスの興行と共同開催というイレギュラーなかたちで、例年通りに大晦日の格闘技興行が開催されました。

興行としても、競技としても、現在の日本のMMAの遥か先をいってしまっている今のUFCですが、年末の興行では、その勢いそのままに、アリスターVSレスナーというファンが一番観たかったと言っても過言ではないカードをぶつけてきました。

今のUFCの対戦カードの出し惜しみのなさは、日本におけるMMAの直近の最盛期であったPRIDEが開催されていた頃を彷彿とさせます。

それに対して、日本の大晦日に開かれた“元気ですか!!”は、一見中途半端にも、物足りなくも見え、悲観的にみた日本の格闘技ファンもいたかもしれません。

ただ、私の中では今回の大晦日の格闘技興行は、決して悪いものではありませんでした。

もちろん興行時間が長過ぎたり、プロレス(IGF)との共同開催に対する批判はあるとは思います。ただ、これは現在の日本の格闘技業界の市況を考慮すると、大晦日興行を実現するためには致し方ないことであったと思います。

2010年の大晦日における格闘技興行はお世辞にも良いものとは言えませんでしたが、今回の“元気ですか!!”には、ジャパニーズMMAの真骨頂ともいえるべきコンセプトが要所要所に詰められていたと思います。

代表的なのは、青木選手VS北岡選手でしょうか。

カードそのもののインパクトでいうと、UFCで組まれたアリスターVSレスナーに大きく見劣りするでしょう。

ただ、アリスターVSレスナーというカードは、純粋にその時点でアリスターがどの程度強いのかを観たいという需要と、その相手にうってつけなのがレスナーだったという、あくまで“点”としての対戦カード設定です。

そこに至までのストーリーや、両者の背景に関しては、ほとんど重要視されていませんし、そもそも、そういったものに対する需要がないのかもしれません。

青木選手VS北岡選手の試合時における会場の緊迫感や空気感は、両者が今まで共に創り上げて来たストーリーあってのものであり、それがなければもっと味気ないものになっていたでしょう。

おそらく興行の中で一番盛り上がったであろう菊野選手VS自演乙選手も、ミックスルールでしたが、K-1 VS DREAMという図式と、前の年にDREAM王者の青木選手が敗れているという遺恨あってのものだったと思います。

やはりプロレスの歴史を無視出来ない、日本のMMAならではのことかもしれませんが、こういったストーリーで盛り上がれるのは、ジャパニーズMMAの醍醐味ではないでしょうか。

そういった意味で、2011年の大晦日興行“元気ですか!!”は、開催そのものが危ぶまれた状況の中で、ジャパニーズMMAならではのものをファンに届けられた興行であり、今後の日本格闘技界の復権に向けてのヒントになる、意義ある興行であったと感じています。





「これはヴェラスケスが徐々にペースを握って勝つのではないか。」

これがUFC on FOXのメインイベント、ヴェラスケスVSドスサントスの試合が始まっての攻防を観た時の印象でした。

得意のパンチで攻めるドスサントスに対して、ヴェラスケスも自身の持ち味である打撃で応戦。

時折ローキックや、タックルに入るアクションを見せるヴェラスケスの方が引き出しが多く、次第にドスサントスを削っていくのではないかと感じていました。

しかし、その瞬間は突然訪れました。

ヴェラスケスが左のジャブを放ったところで、ドスサントスの渾身の力を込めた右のオーバーフックが、ヴェラスケスのこめかみを捕らえました。

ヴェラスケスは前のめりに手をつきながら倒れ、ドスサントスの追撃にTKO負けを喫しました。

ドスサントスは右のオーバーフックをヴェラスケスの左ジャブに合わせたのか、ドスサントスが右のオーバーフックを放つのと同じタイミングでヴェラスケスが左のジャブを放ち、丁度タイミングよく右のオーバーフックが入ってしまったのかは定かではないのですが、久々にヘビー級における一発の怖さを痛感した瞬間でした。

長期政権を築くかと思われていたヴェラスケスが敗れ、ドスサントスがUFCヘビー級の新王者となりました。

年末には、アリスターVSレスナーの試合が予定されています。

この試合に関しては、アリスターの勝利を予想する声が多いようで、早くもアリスターVSドスサントスに関して言及する声も聞かれています。

ドスサントスもアリスターも、まだ底を見せていない未知数の部分が多いファイターです。アリスターは決して打たれ強いファイターではないので、ドスサントスの強打を全て凌ぎきれるのかが気になるところです。

アリスターはボクシングが巧い訳ではないので、少しでもドスサントスのパンチを貰ってしまうと、アリスターが厳しいような気がします。

今回、負けはしたものの、ヴェラスケスもまだ底を見せていないファイターです。

普段、表情を崩さないヴェラスケスが今回の試合後に見せた、悔しさをにじませる表情が非常に印象的でした。

ヴェラスケスは必ずまた這い上がってくることを、確信させるような表情でした。

ヴェラスケスがドスサントスにリベンジマッチを挑む日が来るのは、そう遠くはないような気がしています。






日本MMA最後の砦ともいわれていた日沖選手が、UFC137で米国のMMAのリングに初登場しました。

小見川選手など、期待されていた日本人選手がUFCを含む米国MMAの舞台で苦杯を飲むんでいる中で、日本の格闘技ファンの日沖選手に寄せる期待は大きかったと思います。

日沖選手のUFCデビュー戦の相手は、ジョージ・ループ選手。UFCでは、中堅どころに位置するファイターかもしれませんが、最近の戦績をみると決して侮れる相手ではなく、強豪ともいえるかもしれません。

日沖選手は、ループ選手に僅差ながらも2-1の判定勝ちを収めました。

ファンが期待していたような、すっきりとする勝利とはいきませんでしたし、金網への適応性などに対して厳しい意見もあるようですが、まずはUFCのデビュー戦を取ったというのは非常に価値のあることだと思います。

色々と課題の見つかった試合でしたが、それらは逆に発見としてポジティブに捉えることも出来ますし、何よりデビュー戦ではまず勝つことが大事でした。

特に、あのような僅差の中でものにした、ある意味アウェーの環境でのデビュー戦の勝利は、今後に活きるはずです。

また、今回の自分より身長の高い選手との対戦というのは、日沖選手にとって初のUFCという以外の面での新たな挑戦であったと思います。

おそらく日沖選手は、今までの自分より背丈のある選手と試合をしたことはないのではないでしょうか。

頻繁に自身の身長を活かして、覆いかぶさるかたちでテイクダウンを奪取する日沖選手にとって、今回の試合は相手の方が身長が高いという部分で、攻め手が制限されたかたちになったと思います。

UFCデビュー、そして自身より高身長の選手との初対戦という、プレッシャーのかかった中で、よくぞ勝利を挙げたと思います。

一方で、課題は肘での攻撃と、何といっても金網際でのテイクダウンでしょう。

日沖選手に肘の攻撃のバリエーションが加われば、グラウンドで上になった状態で、更に有利に試合を進められるようになるでしょう。また、リングと違い、金網が体を支えてしまうオクタゴンでは、金網際でのテイクダウンが取りにくくなります。

これらは米国に拠点を移しての、練習環境からではないと、習得しにくい部分かもしれません。

日沖選手はインタビューにも英語で答えています。

これは、日沖選手が米国に活動拠点を移すことの準備と決意の表れなのかもしれません。

また、日沖選手が初白星を掲げたUFCの今大会で、2人の偉大なファイターが引退を表明しました。

ミルコ選手、BJペン選手ともに、負けたら、いや勝っても試合内容によっては引退をすることを心に決めて臨んだ試合だったと思います。

それがミルコ選手の試合内容にも表れており、近年の試合と比較して、KOでの勝利への姿勢が強くみられました。キレのある左ハイも見せました。ただ、やはり全体的にキックの数が少なかったですし、ローキックも一発も放たなかったような気がします。

単発の左ハイでは、相手に読まれてしまうのですが、他の場所にキックを散らせる余裕がないほど、左足に限界が来ていたのかもしれません。

最後は心身共に、何かが切れてしまったかのように、相手のネルソン選手にTKO負けを喫しました。

BJ選手もボクシングを得意とするディアス選手に果敢に打ち合いを挑みました。ディアス選手は腰があまり強くないので、寝技の展開に持ちもむなど、もう少し他の戦い方もあったかもしれません。

BJ選手の中で、ディアス選手と打ちあって勝てないのであれば、もうこれ以上UFCの一線でやる意味がないと思ったのでしょうか。

最後は判定まで粘ったものの、ディアス選手に顔を腫らしての判定負けを喫しました。

それにしてもディアス選手も強かったと思います。ボクシングにも定評のあるBJ選手をあそこまで一方的に追い込むほどの、ディアス選手のMMAにおける独特のボクシングテクニックは脅威です。

GSP選手との2月に対戦することも決まったようですし、相性は悪いかもしれませんが、現在GSP選手を倒せる幻想を抱かせるウェルター級のファイターはニック・ディアス選手を他に差し置いてはいないでしょう。

今回で引退を表明したミルコ選手と、BJ選手ですが、間違いなく両名ともに格闘技史に名を刻んだ偉大なファイターです。

本当にお疲れ様でした。