原文: RNG Did Not Win the Hearthstone World Championship
HWCの優勝者を決めた要因は本当にRNGだったのか?
Pavelの輝かしいRNGは人々を魅了したが、
数々のデータによれば期待値通りの結果だった
Pavelの勝利はまっとうなものだ
「Pavelはおしゃべりな本と一心同体だ」
「Pavelは文字通り神だ」
「Pavelはこのトーナメントに賭ける意思で現実を意のままにしている」
「私のハースストーンライフにおいてPavelを忘れることは決してない」
Hearthstone World Championship(以下、HWC)のアナウンサー達が、Pavelがラッキーだったと言うことを避けるために使った、婉曲表現のうちの数例です。
一見すると、彼はラッキーだったかもしれません。
ロシアの弱者(※1)は先週(※2)BlizzConで行われた、ハースストーンで最も大きな大会を瞬く間に勝ち上がりました。勝利の多くはアドバンテージを得ることが可能なランダムカードの効果による派手で、輝かしいプレイによるものでした。
とりわけ、オンラインのコミュニティはPavelが準々決勝で最愛なるAmnesiacを下した後、すぐに彼を批判しました。"Pavel"は「ラッキーな結果を得る」と同義の動詞として使われています。また、トーナメントで《おしゃべりな本/Babbling Book》からの並外れた結果を出した後"《おしゃべりな本/Babbling Book》"は"Paveling book"と呼ばれるようになりました。
皆の意見は一致しています。Pavelはとても運が良く、RNGで得られたアドバンテージのおかげでトーナメントを勝ち抜いてきたことは広く知られていることでしょう。しかし、本当に運が良かっただけなのでしょうか? 客観的で、信頼できる統計的な数字を見てみましょう。そして彼を優勝に導いたのが本当にRNGの上振れによる結果だったのか検証してみましょう。
(※1 underdog を直訳、予選を勝ち抜いてきた経緯かもしれません)
(※2 BlizzCon 2016の1週間後の記事)
計算方法について
話を始める前に、計算方法について簡単に説明します。この記事の統計データ(stats:スタッツ)はハースストーンの世界選手権で行われたPavelの全19試合をサンプルとしています。
「ランダムイベント」の定義:
カードがもたらす結果がランダム性による影響を受けるあらゆる行動
例えば...
《シルヴァナス・ウィンドランナー/Sylvanas Windrunner》をプレイすることはランダムイベントではありません
《シルヴァナス・ウィンドランナー/Sylvanas Windrunner》の断末魔の効果はランダムイベントとしてカウントされます。ただし、対象となるミニオンが1体しかいない場合はランダム性を含まないためランダムイベントとしてカウントしません。
ドローに関してはランダムイベントとして分析してません。各ターンのドローがラッキーか、アンラッキーかを客観的に評価するのは非常に困難なためです。ただし、以下のCase Studiesでは特に重要な場面でのドローについては直に取り扱っています。
生データ(※3)の内訳
統計データ全体を見てみましょう。
Pavelの全試合数は19試合
2試合で、Pavelにランダムイベントはありませんでした。
3試合で、対戦相手にランダムイベントはありませんでした。
1試合で、双方のプレイヤーにランダムイベントはありませんでした。
Pavelの合計294のイベントのうち、ランダムイベントは52回でした(18.3%)
対戦相手の合計315イベントのうち、ランダムイベントは53回でした(16.8%)
すぐに気づいたかと思いますが、Pavelのプレイスタイルやデッキがランダムイベントに異常に依存しているようには見えません。その点では対戦相手と本質的に同じです。
次にPavelと対戦した各プレイヤーがどれほどラッキー・アンラッキーであったかを大雑把に見てみましょう。不可能ではないにしろ、客観的に運の良さを特定のカテゴリーに分類するのはとても難しいです。主観的な評価が混ざってしまうことは避けられないので、下記の一連のデータを鵜呑みにはしないで下さい。ある程度の幅を持った目安として考えて下さい。
例えば、後に紹介するPavelの2つのイベントに関してはとても良い結果が出ましたが、下記の”Very Good Events”と一緒くたにするのは不公平だと思えるため記事の後半で個別に検討せざるを得ませんでした。すでに手札にリーサルダメージがあるのと、《炎の大地のポータル/Firelands Portal》から《リロイ・ジェンキンス/Leeroy Jenkins》が出てリーサルになった のと全く意味合いが違うのです。
(※3 Raw dateの訳 未加工の、得られたデータそのままの意)
ランダムイベントのカテゴリ分け(スプレッドシート) (※4)
※4 Very Bad, Bad, Average, Good, Very Good, Very Very God の6段階評価
例えば、《獣の相棒/Animal Companion》から《ハファー/Huffer》が出た場合は
VERY GOOD とカテゴリー分けしている。
Pavelの52回のランダムイベントの結果の内訳
⦁ 9 Very Bad
⦁ 6 Bad
⦁ 10 Average
⦁ 13 Good
⦁ 12 Very Good
⦁ 2 Very Very Good
合計 61.5%が 平均から外れる結果で
27回が良い結果、15回が悪い結果(+64.2%) ( ※ 27/(15+27)=0.6428... )
Amnesiacの15回のランダムイベントの結果 vs Pavel
⦁ 0 Very bad
⦁ 4 Bad
⦁ 1 Average
⦁ 4 Good
⦁ 6 Very Good
⦁ 0 Very Very Good
合計 93.3%が 平均から外れる結果で
10回が良い結果、4回が悪い結果(+71.4%)
JasonZhou's 12回のランダムイベントの結果 vs Pavel
⦁ 0 Very Bad
⦁ 1 Bad
⦁ 7 Average
⦁ 2 Good
⦁ 2 Very Good
⦁ 0 Very Very Good
合計 41.6%が 平均から外れる結果で
4回が良い結果、1回が悪い結果(+80.0%)
DrHippi's 19回のランダムイベントの結果 vs Pavel
⦁ 1 Very bad
⦁ 1 Bad
⦁ 9 Average
⦁ 4 Good
⦁ 4 Very Good
⦁ 0 Very Very Good
合計 52.7%が 平均から外れる結果で、
4回が良い結果、1回が悪い結果(+80.0%)
データの山から考慮すべき大きな点が2つあります。1つ目はPavelの対戦相手のうち「Very Very Good」に分類されたものは1回もありません。
2つ目はPavelのランダムイベントの結果の平均値は、全ての対戦相手よりも若干低いということです。Pavelはそれでもなお、悪い結果よりも良い結果を出していますが、これらのマッチアップの中でどの対戦相手よりも50/50に近いものです。
そして、Pavelはラッキーなイベントでの上限値が高く・アンラッキーなイベントでの下限値が低い結果となりました。(Very badな結果はPavelが9回に対し、対戦相手全員の結果を足し合わせても1回しかありません)
ここで運の分散、特に上振れの中の上振れが彼の勝利に大きく貢献したのだと結論付けるのは魅力的な選択肢に思えます。しかし、劇的なランダムイベントの数例を掘り下げて本当の可能性を検証していきましょう。
Case Study No.1
《マリゴス/Malygos》⇒《動物変身/Polymorph》(vs Amnesiac) (クリックで動画へ飛ぶ)
最もインパクトの大きい結果から検証を始めましょう。
Pavelの奇跡のドロー
《マリゴス/Malygos》を倒すために、完璧なタイミングで《おしゃべりな本/Babbling Book》から《動物変身/Polymorph》を引き当てます。そしてAmnesiacの《ソーリサン皇帝/Emperor Thaurissan》に対応すべく、次のターンに2枚目の《おしゃべりな本/Babbling Book》から《炎の大地のポータル/Firelands Portal》を引き当てました。
(動画内1:13:30~)
一連のプレイはアナウンサー達を熱狂させ、Pavelを批判する人々が話題に取り上げる最も簡単で分かりやすい例となりました。更に詳しい確率を見てみましょう。
《マリゴス/Malygos》がプレイされた後の最初のターンで、15.3%のチャンスで《おしゃべりな本/Babbling Book》を引くチャンスがあります。
最初の《おしゃべりな本/Babbling Book》を引いた後、8.3%の確率で次のターンにも《おしゃべりな本/Babbling Book》を引く可能性があります。
2ターンにわたって、少なくとも1枚の《おしゃべりな本/Babbling Book》を引く確率は29.5%あります。
2ターン連続で《おしゃべりな本/Babbling Book》を引く確率は1.2%しかありません。
《おしゃべりな本/Babbling Book》を2枚とも引いたことは、間違いなく幸運の連続でした。
《マリゴス/Malygos》への回答を手に入れるために、1枚の《おしゃべりな本/Babbling Book》を引いたことは全くあり得ないということも無いでしょう。しかし、両方を連続して引いたことは驚くべきことです。ですが、《おしゃべりな本/Babbling Book》を手に入れたことはこの試合を決定づける要素の半分に過ぎません。
《おしゃべりな本/Babbling Book》からは29種類のスペルが手に入ります(※5)
《動物変身/Polymorph》《動物変身・イノシシ/Polymorph: Boar》は《マリゴス/Malygos》を除去するのに明らかに優れたカードです。その他には《マリゴス/Malygos》を2ターン掛けて除去する手段も数種類あります。《禁じられし炎/Forbidden Flame》と《パイロブラスト/Pyroblast》ならば容易に可能です。《粉砕/Shatter》は《ウォーター・エレメンタル/Water Elemental》と組合せれば除去が可能かもしれません。《蒸発/Vaporize》や《カバル教団の魔道書/Cabalist's Tome》は確実ではありませんが、望みはあります。《呪文相殺/Counterspell》や《スペルベンダー/Spellbender》も《マリゴス/Malygos》の脅威を軽減させることは可能でしょうか。かなり大雑把な前提ですが、上記7つの代替案のうち、5つはPavelにとって十分に許容できるカードだと仮定しましょう。
(※5 当時のスタンダード環境場合)
最初の《おしゃべりな本/Babbling Book》から《動物変身/Polymorph》/《動物変身・イノシシ/Polymorph: Boar》を手に入れる確率は6.9% (※ 2/29=0.0689)
どちらか一方のおしゃべりな本から《動物変身/Polymorph》/《動物変身・イノシシ/Polymorph: Boar》を引く確率は13.3% (※余事象を使えばよい。少なくとも1枚引ける確率は 1-(27/29)*(27/29)=0.1331…)
最初の《おしゃべりな本/Babbling Book》から《マリゴス/Malygos》への回答として使用に耐えうるカードを引く確率は24.1%
(※《動物変身・イノシシ/Polymorph: Boar》+《動物変身/Polymorph》+上記7つの代替案のうち5つ 7/29 = 0.2413…)
どちらか一方の《おしゃべりな本/Babbling Book》から使用に耐えうるカードを引く確率は42.4%
(※部分の確率は訳者で補完しています)
かなり大雑把な前提条件とは言え、Pavelのオッズ(※6)は50/50にさえ及びません。明らかにランダムイベントのオッズを上回り、ボードの脅威に対する完璧な回答を1度ならず、2度得ることに成功しました。
(※6 odds:勝率・確率)
ここで問題になるのは、この結果が本当にラッキーだったかということです。疑問に答えるために、一連のランダムイベントが発生したゲームの状態を確認しなければなりません。
Pavelはminion-heavy Mage (※ミニオンが非常に多いTempo Mage)を使用していました。
Amnesiacに除去を強要するために、ゲーム序盤・中盤で大半のミニオンをボードに送り込んでいます。この戦略により、PavelはAmnesiacのデッキには《マリゴス/Malygos》の恩恵を受けるダメージスペルは既に3枚しか無いことは分かっていたことでしょう。《ワタリガラスの偶像/Raven Idol》は使いきっており、《自然の怒り/Wrath》・《なぎ払い/Swipe》・《生きている根/Living Roots》が1枚ずつ残っているのみです。Pavelは《マリゴス/Malygos》がプレイされると予想されるかなり前のターンからAmnesiacのデッキから脅威を取り除いていました。そのため、《マリゴス/Malygos》がもう1ターン長く盤面に居座り続けた場合でも、Pavelが絶対に負けていたかというと疑問の余地があります。
Case-Study No.2
《シルヴァナス・ウィンドランナー/Sylvanas Windrunner》
⇒《昏倒/Sap》(vs Amnesiac)
《シルヴァナス・ウィンドランナー/Sylvanas Windrunner》がプレイされた直後にドローされた《昏倒/Sap》はPavelの対戦相手のAmnesiacをひどくイライラさせたもう1つの出来事でしょう。(動画内1:25:30~)
一見したところでは、ミラクルドローに見えますが、PavelのRogueデッキは対戦相手の脅威に回答するカードを探すためのドロー・サイクルに長けています。確率を検証してみましょう。
20枚のカードが、《シルヴァナス・ウィンドランナー/Sylvanas Windrunner》がプレイされた直後のターン残っています。
このターンで3枚のカードをドローしました。
《昏倒/Sap》をこのターン中にドローする確率は28.4%です。
最後のドローに焦点を当てると、《昏倒/Sap》を引ける確率は11.1%です。(※20枚-1枚(通常ドロー)-2枚(《ガジェッツァンの競売人/Gadgetzan Auctioneer》の効果によるドロー。最後の1枚は18枚から1枚ひくので 2/19 = 0.1111…)
最初は、再びかなりラッキーだったように見えます。彼は再び、オッズを十分に上回った、そう見えるのではないでしょうか? ですが、次のデータを考慮すれば違うということが分かります。
ターン終了時までに、Pavelはデッキの半分以上のカードをドローすることができます
(マリガンは3枚、ゲーム中には13枚ドローしています)。デッキに2枚ある《昏倒/Sap》をこの時点までに引く確率は79%あります。実際には《シルヴァナス・ウィンドランナー/Sylvanas Windrunner》がプレイされるまでに《昏倒/Sap》を持っている確率は非常に高いのものです。
実際、《昏倒/Sap》が無い状況というのはかなり不利な状況(21%)に置かれていたと言えるのではないでしょうか。既に引いているべきだったと言っても大袈裟は無いかもしれません。
もちろん、この一連の考え方は他の要素の影響を受けやすいものです。Pavelの過去の選択・対戦相手の選択などなど。それでもゲーム全体を見た場合、このゲームが特にラッキーだったったというのは難しいでしょう。序盤のアンラッキーを埋め合わせ、バランスが取れたのだと考える方が適切ではないでしょうか?
Case Study No.3
ランダムイベントが無いマッチアップ(vs JasonZhou)
RNG嫌いの人たちは、いつも笑顔のプロJasonZhouとの試合を間違いなくチェックするべきです。PavelのMalygos Druid vs JasonZhouのDragon Warriorではゲーム全体を通してランダムイベントは1つもありませんでした。
またPavelがRNG無しで勝利した唯一のゲームです。この記事での分析においては重要な要素を含んでいませんが、興味深い余談ではあります。
Case Study No. 4
《クトゥーン/C'Thun》が勝利をもたらす! (vs. JasonZhou)
Pavel vs JasonZhouの最後のマッチアップである6試合目、JasonZhouはPavelのクトゥーンWarriorを追いつめています。次のターンは11点以上のバーストダメージがあります。(※ 《リロイ・ジェンキンス/Leeroy Jenkins》+《冷血/Cold Blood》+ Hero Power)
この盤面に対してPavelは《クトゥーン/C'Thun》を放ちます(動画内 1:15:00~)
次のターンを凌ぐためには、14/14の《クトゥーン/C'Thun》によるボード全体のクリアが必要となります。何が起きたか見ていきましょう。
《クトゥーン/C'Thun》は11点をミニオンへ、3点をフェイスに与えました。その結果3体のミニオン全て(ヘルス4,4,3)を除去しました。
一見したところでは、ラッキーに見えますが、より詳しく検証してみましょう。《クトゥーン/C'Thun》の効果のターゲットは4つ存在し、各々が3~4点のダメージを受けました。この結果は非常に平均的な結果であることは想像できるかと思います。確率上、十分に起こりうる結果です。全て理に適っています。
実際、3体のミニオンのうち2体はかなり早い段階で倒されたため、後のスプリットダメージがミニオンにあたる確率が低下しています(最終的に上手くいったことは言うまでもありません)。3/4の《バーンズ/Barnes》と4/4の《ガジェッツァンの競売人/Gadgetzan Auctioneer》を倒した後に、スプリットダメージはあと4点残っていました。このアンラッキーな状況により、3/3の《アレクストラーザの勇者/Alexstrasza's Champion》に残り4点のスプリットダメージのうち1点は与える必要が生じています。(2/3の《邪悪の誘い手/Beckoner of Evil》でトレードが可能となるため)
整理しておきましょう。《クトゥーン/C'Thun》をプレイした結果、必要としてた結果よりもラッキーな結果となり、完璧にミニオンを倒しました。(25%の結果)(※ 4/2^4 =0.25)
素晴らしい結果ですが、この数字はPavelの勝敗に関係ありません。
JasonZhouが勝利するためには3/3の《アレクストラーザの勇者/Alexstrasza's Champion》が4点のスプリットダメージから1点のダメージも受けない必要があります(6.3%)(※ 1-(½)^4=0.0625)
結論
一般的な結論として、Pavelは全てのゲームを通じてオッズを上回りました。彼のランダムイベントの結果は利益が損失を上回るものです。しかし、対戦相手も皆同じであることは事実です。プロが選ぶランダムイベントを起こすカードは、何よりもまず素晴らしいカードだということを知っておく必要があるでしょう。
プロはこれらのカードが起こすランダムイベントが悪い結果よりも良い結果をもたらす可能性が高いために採用しているのです。もしそうでなければデッキには採用しないでしょう。
そのため、プロの素晴らしいRNGを見ると、その1つ1つのシーンは「ラッキー」に見えるでしょう。ですが、理由があるのです。純粋なコインフリップ(※50/50ではない)では無いのですから。1の目より6の目が出やすい、イカサマダイスとして機能しているのです。そのような理由で、プロはこれらのカードが好きなのです。
多くの分析結果から、実際にはPavelの全体のランダムイベントによる結果は対戦相手よりも悪かったのです。《おしゃべりな本/Babbling Book》の上振れの影には、《乱闘/Brawl》が1/1のミニオン達を倒して、9/9の挑発を持った《ガーディアン・メディヴ/Mediv, the Guardian》を残してしまうという結果もありました。 Pavelと他の対戦相手たちとの最も大きな違いと思われるのは、とても輝かしい・劇的な瞬間で最大の幸運を引き寄せた点でしょう。数少ない奇跡のランダムイベントは鍵となるターンにやってきたのです。彼の上振れの幅はより大きかったのです。
しかし、これらの奇跡的な結果は実際には不必要だった瞬間に来る傾向がありました。ほとんどのケースでは、ラッキーな結果が得られずとも勝利が約束されていたか、おそらくは勝てるだろうといった場合でした。
例えば、JasonZhouとの4試合目、《炎の大地のポータル/Firelands Portal》から《リロイ・ジェンキンス/Leeroy Jenkins》が出てPavelはゲームに勝利しました が、検証に頭を悩ます必要はありませんでした。Pavelは次のターンでのリーサルダメージを既にハンドに持っており、対戦相手には止める手段が無かったからです。この事実は熱狂的な観客たちの思考には存在する余地は無かったのでしょう。信じられないぐらい興奮に満ちた瞬間でしたが、全く不必要なものだったのです。
DrHippiとの4試合目、Pavelの《クトゥーン/C'Thun》による勝利 も同様です。ダメージがどこに与えられたとしてもPavelの勝利は確定的でした。ボードクリアは群衆を興奮させる結果でしたが、DrHippiはすでにデッキに残っているカードがなく、プレイすることのできない《バロン・ゲドン/Baron Geddon》のため負けが確定していました。Pavelは有利を築くために、前のターンから何度も慎重に考え、対戦相手の脅威を1つ1つ取り除いていました。《クトゥーン/C'Thun》はただのおまけに過ぎなかったのです。
なぜ彼は勝てたのか?
Pavelのインタビューやユニークなデッキを見ると、彼がランダム効果があるカードを特に好んでいるようには見えません。むしろ、反対かもしれません。1つのデッキを除いてはランダムイベントは非常に少ないデッキでした。Druidのデッキでは2ゲームを通じてランダムイベントは1回もありませんでした。Warriorデッキでもランダムイベントは全体の11.5%に過ぎません。
Mageのデッキには多くのランダムイベントカードが採用されており、36.5%のランダムイベントがありました。《フレイムウェイカー/Flamewaker》、《魔力の矢/Arcane Missiles》、《炎の大地のポータル/Firelands Portal》などです。最善のMageのデッキを作りたければ単純にランダムイベントを受け入れなければなりません。他のプロ達のMageデッキも同様でした。
彼のMageデッキと、他の残りのデッキがかなり対照的な構成だったのは彼の最大の強さと言えるでしょう。また彼がトーナメントで勝てた真の理由は非常に柔軟であったからです。トーナメントの間中、デッキから何をドローしても、対戦相手が何をプレイしても、Pavelは状況を分析し受け入れたのです。だから上手くいったのです。
Pavelが恩恵を受けた、素晴らしいラッキーなランダムイベントの数例に目を向けるのは簡単です。しかし15回の「Bad」と「Very bad」のランダムイベントについてもバランスよく考慮すべきではないでしょうか? Pavelが被ったランダムイベントの総数は、対戦相手の総数(15-7)と比べて2倍近く多いのです。それでもなおトーナメントを勝ち抜いたのです。
何よりも、Pavelはこのトーナメントで困難を乗り越えてきたことを証明したのです。彼は効果が保証されているカードが好きですが、それなしでも勝つことができたのです。彼の並外れた、状況に適応する能力と不確定なリスクを見極める能力により、トーナメントの苦難を乗り越え、勝利へとつながったのです。
RNGがHWCで勝利したのではありません。
Pavelが勝利したのです。