医師出身のこの作家さんの医療・介護小説は何点か読んだことがある。いつも苦い読後感が残る。

 

 

 

 

地方の医師の家系の人たちを主人公にした連作短編。ミステリー要素もある。

 

 

ババモンの死を身近に体験してから、人間の死に方についてもいろいろ考えてしまう。

 

苦しまない死が一番だけれど、それも運がよければだろう。今は、医療技術の発達のおかげで、そう簡単には死ねなくて、苦しみが長引く可能性が高い。

 

この小説は「長生きは辛いよ」と、医者の体験から思わせてくれる。”じゃあ、どうすればいいか?”といっても、死は自分の思い通りにはならない。

 

「健康寿命を伸ばそう」というのが流行りだけど、そのために運動や節制をしてがんばっている人たち(私を含めて)も、本当にそれは幸福につながるのか、自信がもてないのではないだろうか。

 

多少健康に長生きしたとしても、結局その先には、疾病や要介護の世界が待っているのかもしれない。

 

まあ、人生は運頼みか。