仕事が慌しくなり、完全に放置してしまっていました。。



大学のニュースは相変わらず、多くの雑誌に取り上げられていて、

最近でも『週刊ダイヤモンド』が「壊れる大学」なんていう特集を組んでいたり、

『AERA』では、大学職員はおいしい仕事だとかいう記事が出ていたり。


こうした大学の特集は、やはり売れるそうなのだが、

その多くの購入者は大学関係者なんじゃないのかと穿った見方を最近はしてしまう。



さて久しぶりの今回はニュース絡みではなく、

仕事に絡んでSD(スタッフ・ディベロップメント)について考えたい。

SDについては、これまでにも何度か取り上げたが、

ここ最近は大学同士の集まりでも本当によく話題に出る。


それだけ大学職員の能力が必要とされる環境になってきたということかもしれない。


そもそも「SD」という言葉は「FD」(ファカルティ・ディベロップメント)から派生して使用されるようになった。

一言で言えば、職員の能力開発ということなのだが、未だに腑に落ちない点がひとつ。





それって、一般的な研修と何が違うのだろう?ということ。




SDの議論では、大学職員に求められる能力を定義して、それを身につけるための方法を考えることが多いが、多くの場合、大学職員に求められる能力自体が、一般の社会人に求められる能力と大して変わらない。

あえて異なる点といえば、教員と議論できるだけの知識と理論と度胸を身につけようよというくらい。


そうであれば、企業が実施している研修と、何ら変わることはないのではないだろうか。



なのに、何故かSDの議論は大学の中で完結していて、

企業研修をベースにしたものを組み込んでいる大学はほとんど聞いたことがない。



大学職員がおいしい仕事かどうかは知らないが、

企業から中途で入ってくる人は沢山いても、大学から企業へ転職する人はごく少数。

こんなところにも、その理由があるんじゃないかと思ったりもする。



2月。大学は後期の授業が終わり、一見落ち着いているように見える季節だ。

一方で一般入試があり、1年間の入試広報活動の成果と社会からの大学評価が数字として表れる時でもある。


その数字について、明治大学が日本一になったという記事。


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今年の志願者 明治がトップの可能性

Sankei Biz

2010年2月20日


今年の私立大の入試動向が明らかになってきた。志願者数を見てみると、上位は表のようになる。15日現在の志願者数ランキングだ。

 これを見ると、トップ早稲田大の志願者数が昨年に比べて5651人、4.7%減って11万5515人。これに対して2位の明治大は8922人、8.4%増で11万5158人と、早稲田大との差がわずか357人に迫っている。明治大はまだ出願可能な方式を残しており、早稲田大を抜いて初の志願者数日本一になることは確実とみられている。


<一部抜粋>


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志願者数のトップは11年連続で早稲田大学だったということなので、この動向変化は確かに気になるところ。

ただ入試制度の多様化の影響もある。特に全学部統一入試で明治大学は1万8千人の志願者を集めているが、早稲田大学は同様の入試制度を導入していない。こうした入試制度の多様化のために、入試動向をチェックしていても単純な前年比較が難しくなっている。


さて、トップ争いは激しさを増しているが、その影で深刻な課題も進行している。


それが規模別による入学定員の充足率である。


日本私立学校振興・共済事業団 が毎年、「私立大学・短期大学等入学志願動向」を出している。


平成21年度私立大学・短期大学等入学志願動向 」(PDF)


このうち8,9ページに大学の規模別による入学定員充足率が過去5年分示されている。

この表を見ると一目瞭然だが、全体平均では平成17年が109.90%、平成21年が106.49%と、さほど大きく変化しているわけではない。しかし入学定員400人以上500人未満では、平成17年は110.06であったものが、平成21年には96.55%まで落としている。この他、300人以上400人未満や、500人以上600人未満などでも同様の傾向を示しており、この5年で規模による二極化がはっきりと現れた。



18歳人口の需要に対して、大学の入学定員という供給が過多であることから、競争が激しくなることは当然だろう。また市場原理に基づけば、スケールメリットが表れるのも当然予測のできるところ。



志願者数のトップ争いが繰り広げられる中で、募集人員に満たない受験者数しか集められない大学も散見される。



現状、この点について、文科省なども特段の対策を考えている向きは見られないので、今後この傾向は益々強まっていくだろう。


個人的には規模の大きな大学だけが残ることが、これまで目指してきた大学の個性化ではないと思うのだが、一方で小さな大学で目立つものは少ない。アメリカのリベラルアーツカレッジのような個性が、もう少し日本にもあって良いと思うのだが、そこに辿りつけそうなのはICUくらいというのが現状。


悩ましいところである。



8月に入ってから、新型インフルエンザの感染者数が急速に増加している。

9月には各大学も後期の授業が始まる。

学校・大学は感染ルートになりやすいので、感染した学生がいる場合には慎重な対応が求められるだろう。


春は1週間の休校処置などで乗り切れたが、感染者が増えている状況でどう対応するかは

非常に難しい選択になってくるかもしれない。


さて、もう一つ心配なのが入試である。

文部科学省も検討に入った。


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インフル感染、大学受験欠席… 追試認める?文科省協議

asahi.com

2009年8月29日


文部科学省は28日、新型インフルエンザ感染が拡大した場合に備え、大学入試での対応を考える会議を設置した。メンバーは高校教諭や国公私立大学長、公衆衛生の専門家ら計10人。感染で受験できなかった場合、追試を認めるかどうかなどを話し合う。

 大学入試センター試験では毎年、病気を理由に欠席した受験生に追試が認められている。しかし、大学ごとの試験では、追試による救済はほとんどなかった。「95年の阪神大震災で追試を認めたケース以外は見あたらない」(同省大学入試室)という。

 季節性インフルエンザでは認められなかった追試を「新型」で認めれば、公平性の観点から議論が起きる可能性もあり、大学入試室は「いざという時のために対策を考えておきたい」と話した。


***


入試は一発勝負である。新型インフルエンザに感染してしまった受験生に対して

救済処置をとる必要性は当然あるが、各個別大学で追試を行う場合、下記の問題が発生する。


1.追試問題の作成と点差についての調整

2.日程の確保

3.入学手続き率の読み


実は1.の追試問題の作成と点差についての調整だけでも、かなり大変なことである。

現在各大学は複数の入試日を組んでいるので、追試問題も1本用意すれば良いという話ではない。

また追試との点差をどう扱うかも難しい問題となる。


2.の日程の確保も難問である。

一般入試は2月、または3月だが、受験生は複数の大学を併願することから、

追試の日にちが併願大学の入試日とバッティングするということが予想される。

総合大学の追試日に当たってしまった小規模大学は受験者が大きく減る可能性もあるだろう。

また3月に入試を実施している場合には、追試を行うにしても日程的にかなり厳しい。


3.の入学手続き率は混乱が予想される。

各大学は「合格者の何パーセントが入学する」という、データや経験則を持っている。

そのデータから入学定員の何倍を合格させれば良いかを割り出すのだが、

この数字というのは入試日程と入学手続き締切日が比較的影響しやすい。

追試を実施することとなると、この入試日程と手続き締切日も例年と大きく変わってくるので、

場合によって予想より大幅に入学者が減って定員割れとなってしまったり、

逆に入学者が定員を大きく上回ってしまうというリスクが生じてくる。



現段階では、まだ新型インフルエンザの流行がどのようになっているか読みきれないが、

今から動いておく必要があるのは間違いない。


入試課には例年以上に厳しい年になりそうである。


高等教育におけるキャリア教育について、中教審から2件の話題が出ているが、

どうにも的を外している感が否めない。


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職業指導:全大学で導入へ 義務化も視野に--中教審、来年度から

毎日新聞

2009年7月14日


◇入社3年内の離職率35.9%

 就職後すぐに離職する若者が増えるなど、学生の職業・勤労観形成が課題になっているとして、中央教育審議会大学分科会は、すべての大学や短大で「職業指導(キャリアガイダンス)」の授業を導入する方向で検討を始めた。科目として義務化するか、各大学に努力義務を課すにとどめるかなど、具体的な制度設計を急ぎ、早ければ来年度からの導入を目指す。

 同分科会の作業部会が「社会人として必要な資質能力を高めるためにも、職業指導を教育課程に位置付けることが必要」と提案し、14日の会議で大筋了承された。

 分科会の委員からは「大学には本来(職業について)何らかの意図を持って入るはず」との意見も出されたが、「将来が見通しにくい社会構造になっている」などとして、入学してから職業意識の形成を図ることや、自分の適性を考えることの必要性を認める意見が大勢を占めた。

 1~2年次の選択科目などを想定しており、大学設置基準の改正なども視野に議論する。


【以下、略】


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中教審:職業教育特化の新学校 高卒者を対象に--部会提言

毎日新聞

2009年7月15日


中央教育審議会の特別部会は15日、実践的な職業教育に特化した新しい種類の高等教育機関の整備を求める中間報告をまとめた。「ニート」など若年無業者の増加や、早期離職率の上昇を防ぐ方策として提案しており、さらに具体的な制度設計を進める。

 想定しているのは、既存の大学や短大、専門学校などとは別の枠組みで設置する学校。高卒者を対象に受け入れ、実務経験のある教員を中心に、各業種で求められる中堅人材を育てる。

 具体的には「実験や実習などの授業を4~5割程度行う」「企業へのインターンシップを義務づける」などのイメージを示し、卒業までの年数は「2~3年」または「4年以上」とした。


【以下、略】


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既存の大学の職業指導を強化する方向性を示す一方で、職業教育に特化した新学校構想を出してくるあたりが、場当たり的な発案と見えてしまう。同じ中央教育審議会からの発信ではあるが、「大学での職業指導強化」が大学分科会 、「新学校構想」が特別部会(たしかキャリア教育・職業教育特別部会 )。仲、悪いのだろうか?



さて、この2件に共通するのは、大学の職業教育が充分ではないという認識だろう。それを新学校設置という方法で補うのか、既存の大学カリキュラムで強化するのかというアプローチの違いかと思う。


しかし、そもそもの問題意識は、早期離職やニートの問題から。

ならば職業教育を強化すれば、早期離職やニートの問題は解決するのだろうか?


現在の大学の状況から言えば、10年前と比較すれば驚くほどキャリア教育や就職支援に力を入れている。

仮に10年前と比較して、離職率やニートが増加しているということであれば、

現在のキャリア教育を強化したところで、本質的な解決にならないのは目に見えているのではないだろうか。



これは個人的な見方であるが、現在の学生に足りないものがあるとするならば、それは職業意識やテクニカルな職業技術ではなく、仕事を行っていく際の忍耐力の方ではないだろうか。現在の就職課・キャリアセンターでは、様々なガイダンスで職業意識を高めさせる工夫をしているが、結局入社してからの仕事というのは大学時代に描くものとは少なからず乖離する。その際にアジャストしていけるのか。その忍耐力を身につけさせる方が、よほど離職率改善には役立つはずである。


では、どうすべきかというと、職業指導に力を入れるのではなく、卒業後に就職する学生が多数いることを前提に、育成する能力を明確にしてカリキュラムを再構築するということである。それは職業指導科目を設置するといった類でなく、発信力強化であればプレゼンを組み込む、コミュニケーションスキルであればグループワークによる授業展開を増やすといった形でカリキュラム全体としてキャリア形成を意識した展開を行うことであろう。今でも研究者養成意識が高く、情報収集能力や論文作成能力に重きが置かれているカリキュラムは多い。実際、授業のまとめとしてレポートを科す科目はどこでも多いだろうが、発表を科す科目はどの程度あるだろうか。

現実には、なかなかカリキュラム全体でシフトさせることは難しく、キャリア科目を設置することで「キャリア教育やっています」といったPRをする大学が多いように感じる。そもそも数コマのキャリア科目で形成できるのはキャリア意識や職業知識であって、会社での業務遂行能力(プレゼン力、分析力、文章力、チームプレー等)ではないだろう。


授業名が「哲学」であっても、グループワークもできれば発表もできる。時には厳しい指導で忍耐力をつけさせることもできる。そうした教育の中身にこそ大学は手を付けていかねばならない。


LEC大学も学生募集を停止した。


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LEC大、学部生募集を停止=株式会社立、入学者が減少

時事ドットコム

2009年6月18日


 株式会社が設立したLEC東京リーガルマインド大学(東京都千代田区)は18日、2010年度以降の学部生の募集を停止すると発表した。入学者が減少し、学部の累積赤字は3月末で約30億円に達していた。大学院は募集を継続する。
 LEC大は04年に構造改革特区制度で開校した初の株式会社大学の1つ。資格試験対策の予備校を展開する東京リーガルマインド(東京本部・中野区)が運営している。
 全国に14キャンパスがあったが、志願者の減少で今年度は千代田キャンパスでのみ学部生を募集。入学者は定員160人、募集目標60人に対して18人だった。08年度は26人。学生がいる間は授業を続けるとしている。
 LEC大に対しては、文部科学省が07年1月、専任教員の大半に実態がなく、ビデオを流すだけの授業を行っていたなどとして、学校教育法に基づく改善勧告を行った。
 4年制大学では、既に愛知新城大谷、神戸ファッション造形大など4校が10年度からの募集停止を決めている。6校ある株式会社大学では、大学院のみのLCA大学院大(大阪市)が今年度から募集を停止した。


(以下、略)


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このLEC大学については、他大学の学生募集停止と同じ流れとはいえないだろう。

このブログでも改善勧告の際に2回取り上げている。


LEC大、再びの改善要請に思う  (2007年9月29日)


「政府」と「文部科学省」の温度差  (2007年1月26日)


改善要請段階からの流れを考えると、突然のことではないだろう。

株式会社立であることも含め、見込みがなくなれば撤退は懸命である。

ただし株式会社立が学生を集められない場合に早期撤退することは設置段階においても

懸念されていたわけで、そうした点で株式会社立を認める際のリスクを国はどう捉えていたのだろうとも思う。

(自己責任として早期撤退も想定して認めていたとも考えられるが、その場合あおりを受けるのは学生だろう)



立て続けの学生募集停止のニュースは、大学関係者としては辛いものだが、

受験生や保護者が大学の広告に頼らず、

自ら大学をチェックする意識が芽生える契機となってくれれば幸いだ。