新年早々に緊迫した話題が…イランでの事件。

 

2020年1月3日、米軍の無人機がイラクの首都バグダッドにあるバグダッド国際空港を攻撃し、ソレマイ二司令官と親イラン派民兵「人民動員隊」(PMF)のアブ・マフディ・ムハンディス副司令官を殺害した。

 

以前から反米工作を行っていましたし、昨年は米兵が亡くなって緊張は高まっていました。

今回の事件を受けて早々と米国批判を表明した中・露・北。

日本は、2020年1/4の時事通信によれば、4日に安倍首相が記者団から米国とイランの間で緊張が高まる中東情勢を問われ、「情勢が許せば中東を訪問する準備を進めたい」と語ったと報道されています。 

 

日本は米国支持・理解を示しています。

日本とイランの関係自体は友好的といえますが、安倍首相のイラン訪問時に日本のタンカーが攻撃され、先月末のオマーン湾での中露との演習は、ちょうどイランのロウハ二大統領が日本で安倍首相と首脳会談を行う日程に合わせるように行われていました、これらを主導しているといわれていたのが革命防衛隊。

中露北はイラン寄り、というよりもホメイニ師寄りという方が正確かもしれませんね。

 

■【ベイルート=佐藤貴生】イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が米軍に殺害されたことを受け、中露両政府の外相が4日までにイランのザリフ外相と会談し、ともに米国を非難した。

トランプ米政権がイランの報復に備えて中東への米軍部隊の増派を決めるなか、中露がイランを支持する意向を示した形で、3カ国は米国への対抗を基盤に今後も連携していくとみられる。

ロイター通信によると、ザリフ氏は3日にラブロフ露外相と電話で会談した。ラブロフ氏はソレイマニ氏の殺害に弔意を示し、両外相は「米国の行動は国際法に違反している」との見解で一致した。一方、ザリフ氏と4日に電話会談した中国の王毅外相は、米国は軍事力の乱用を停止して対話による解決を目指すべきだと述べた。

ソレイマニ氏の殺害を受け、イランは米国に報復すると警告している。その時期や手段は不明だが、イランとしては、どのような事態になっても中露を後ろ盾に米国に対抗していく狙いとみられる。

トランプ政権が中東での軍備増強に乗り出しイランとの軍事的な緊張が高まった昨春以降、中露はほぼ一貫してイランを支援3カ国は先月末、オマーン湾などで初の合同軍事演習を行っている。(産経新聞2020年1/5)

中国外務省の耿爽副報道局長は3日の記者会見で、米軍の空爆について

「中国は一貫して国際関係における武力行使に反対だ。関係各国、特に米国は冷静さと抑制を保ち、緊迫した情勢が一層エスカレートするのを避けるよう促す」と非難しています。

香港のデモ隊に武力鎮圧中のお前が言うな(# ゚Д゚)ノ!!って感じですが、言ってることとやってることが違うのは中共の平常運転ですね。 

 

2014年9月末には、初の中国海軍軍艦のイランへの寄港のニュースもありました。

アデン湾での海賊対処活動に参加している中国海軍ミサイル駆逐艦「長春」とミサイルフリゲート「常州」が交代のために中国に帰国する途中、イランのバンダル・アッバース軍港に寄港し、イラン側の大歓迎を受けた、というもの。

当時から、中国側もイラン側も、中国とイランの友好関係ならびに中国海軍とイラン海軍の協力関係の進展を強調してきましたし、一帯一路でも中東での重要拠点です。

 

イランの国民はよくわかっている。中国がイランにもたらすものは戦いでもなく、制裁でもなく、政治的な条件でもなく、経済的な圧迫でもない。中国がもたらすものは共同で検討し、共同で建設し、共同で恩恵を享受する「一帯一路」だ。自国の発展戦略と中国の発展戦略を連携させ、中国の発展のメリットを享受することは、イランにとってまたとない喜びだろう。(編集KS・「人民網日本語版」2016年1/25抜粋)

http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2016-01/25/content_37658316_2.htm

 

どういうわけかイラン・中・露・北寄りであるかのように、報道ではこの革命防衛隊とスレイマ二氏について、「イランの英雄」が暗殺された、というような印象を与えているようです。

実際には海外での工作活動を主導し、シリアのアサド政権側に立ち、シーア派武装勢力に武器を渡し内戦に関与、イランでも民衆を暴力で抑え込んできた人物、NATO加盟国は米国支持を表明しました。

 

 

■ テロ・弾圧・殺人の張本人だったソレイマニ

【黒井文太郎】殺害されたソレイマニ司令官は、20年以上にわたりゴッズ部隊を率いてきた破壊工作のプロである。イランのハメネイ最高指導者ともしばしば直接会見するなど、ハメネイの子飼い的な立場にあり、海外でのテロ作戦などの謀略・破壊工作の全権を任されていたものとみられる。

コッズ部隊はイラクやシリアで数々の工作を行ってきたが、多くのケースでソレイマニ司令官が直接現地で指導していた姿が目撃されている。後方のオフィスから指示と出すというより、現場で工作を直接指揮するタイプなのだ。配下の民兵が今回のように駐留米軍へのテロ攻撃を仕掛けるなら、直接その監督に出向く。つまり、彼本人が超大物のテロ工作員といえる。

今回の攻撃は、米国側からすれば、イラクで合法的に活動している米軍が、自らに対するテロ作戦を指揮していたイランのテロ工作員を、自衛のためにピンポイント攻撃で殺害したことになる。米国側は「差し迫った脅威があった」「米国の外交官や軍人に脅威がある以上、何もしないわけにはいかなかった」としている。

 

また、ソレイマニ司令官は、イラクやシリアで多くの人々を弾圧し、殺害してきた、まさに張本人である。イラクでは配下のシーア派民兵がISと戦う過程でスンニ派住民を大規模に虐待・殺戮してきたが、そうした作戦自体をソレイマニ自身が指揮してきた。

 

また、シリアでは一般住民を虐殺するアサド政権を、イランの勢力圏をシリアに拡大する目的で、一貫して支え続けた。アサド政権の戦力が脆弱な戦線に配下の民兵「ヒズボラ」を投入。さらにアサド政権が劣勢になると、ロシアと共謀して大規模介入し、アサド政権を死守した。いくつもの町を封鎖して住民に飢餓地獄を強いた残酷な作戦も、コッズ部隊が主導している。イラクではたしかにISと戦うという名目もあったが、シリアで戦ったのはISより、もっぱら反IS系の反政府勢力である。

 

敵対する軍事組織よりも一般の住民を攻撃したこうした戦争犯罪を、ソレイマニ司令官が直接、指揮してきた。生きていれば、今後も彼の手によって多くの人々が殺害されることになっていただろう。今回のソレイマニ殺害に対し、イラクやシリアの各地では祝福する声も多く聞かれる 

(Yahooニュース2020年1/6抜粋)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200106-00058843-jbpressz-int&p=1

 

テレビで流れている葬儀での悲しみに暮れているイラン人の光景とは違う感情を持つイラン人もいるという事です。

記事を書いた黒井文太郎氏によれば「ソレイマニ司令官がこれまでどれほどテロ活動を主導してきたかを知れば、単に米国が一方的に理不尽な攻撃をしているとの批判はあたらない。前述したように、今回の攻撃への流れは、ソレイマニ司令官の配下の民兵組織が、反イラン・デモの高まりからイラク国民の目を背けるために米軍を攻撃したことから始まっている。」と米国の攻撃について述べています。

ISIL問題でシーア派武装勢力・イラン政府軍が参戦していたという事もあり、イランがイラクでの影響力を拡大していたことから、米国としても放置できないレベルになっていたんでしょう、そしてソレマイ二氏の動向の情報を得られるだけの諜報力を米国は持っているという事になります。

 

イラクの武装勢力に新型無人機を供与 米軍殺害のソレイマニ司令官

【ベイルート=佐藤貴生】ロイター通信は3日、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が米軍に殺害される前、新型兵器をイラクに運んで米軍施設などへの攻撃を強化していたと報じた。イラク治安関係者らの話としている。ソレイマニ氏は昨秋以降、イランが開発したレーダー探知を回避する無人機や多連装ロケット砲をイラクに運ばせ、イスラム教シーア派武装勢力に使用させた。関連施設への攻撃の精度を高めて米軍に危機感を抱かせ、反撃するよう仕向けてイラク国民の反米感情をあおる狙いだったという。一方、米側は武装勢力によるイラク軍施設などへの攻撃を分析し、昨年12月には兵器などが変わった可能性を察知していたとしている。(産経新聞2020年1/4)

新型兵器がイランが独自開発したものだけだったのか?分かりませんが、殺害された時、イラクのシーア派武装組織の幹部がイラクの空港に一堂に会していたということです。

今回の事件が戦争にまで発展するか?という報道もありますが、今まであったような国と国との戦争は起きないでしょう。ただ別の形の「戦争」ならもうすでに始まっていて、実は「戦争中」のように思います、日本も無関係ではないですね。

少なくとも殺害されたスレイマニ司令官は、相手は戦争とは思っていなくても、米国相手に戦争として工作活動を行っていたはずですし、それを受けて米国も反応した、とも思えます。ただ、今回、やみくもに敵認定して攻撃するのではなく、米国は「敵を間違えない」ように慎重に行動をしているように見えます。

それは敵対相手であるイランも同じのようですね。

 ■イラン革命防衛隊のサラミ司令官は2日、同国は戦争に向かっているわけではないものの、いかなる衝突も恐れないと表明した。

タスニム通信が報じた。 

司令官は「わが国は戦争に向かっていないが、いかなる戦争も恐れない。米国に言っておきたいが、口の利き方には気をつけろ。わが国は何回でもやつらを破壊する力を持っており、心配無用だ」と述べた。 

エスパー米国防長官は2日、イランとの関係を巡って「状況は一変した」と明言した上で、場合によってはイランへの先制攻撃を余儀なくされる恐れもあると警告した。

 またトランプ大統領は昨年末に「米国の施設で死者が出たり被害が発生した場合、イランはその一切の責任を問われ、非常に高い代償を支払うことになる!これは警告ではなく脅迫だ」とツイート。

ただ記者団からイランとの戦争に発展する可能性を問われると、「いや、平和を望んでいる」と答えた。(ロイター2020年1/2)

 

もしかしたら安倍首相の中東訪問で何か動くかもしれませんね。

 

しかしメディアは、反米なのか、トランプがヤバい…という印象に持って行こうとしているように見えてしまいますが、イランは中露北との関係が非常に深く、核開発では北と協力関係ですし、中国の一帯一路にも関わる国。

 

司令官殺害事件が起きる前に、カリアゲ君確保の訓練画像を米軍が公開していました。

■米軍が11月に韓国軍と合同で金正恩委員長ら政権首脳を急襲する作戦演習を実施し、その内容を12月下旬に公表した。金委員長に扮したとみられる人物を拘束して連行する写真も明らかにしており、北朝鮮首脳部への抑止の意図があると目される。

「金正恩」拘束をシミュレーション?

ロイター通信は、この米韓合同の特別作戦演習の内容を12月22日に詳しく報じた。報道は米国国防総省の非公式な発表に基づいており、演習の写真なども同時に公表された。同報道によると、この演習は米軍および韓国軍の特殊部隊によって、2019年11月12日に、韓国中西部にある群山米空軍基地で実施された。特殊部隊が北朝鮮の心臓部に奇襲攻撃をかけ、金正恩委員長はじめ労働党や人民軍の最高幹部を襲い、首脳陣を抹殺あるいは拘束する、という作戦の演習だった。

12月下旬、米軍当局はこの演習内容の一部を、メディアにリークする形で映像とともに開示した。映像のなかには米韓軍部隊に捕獲され、後ろ手に手錠をかけられて連行される北側の最高指導者らしい人物の姿も含まれていた。

 

韓国軍当局者はこの演習について「反テロと人質奪取を目的とする定期的な訓練であり、今回だけの特別な意味はない」と述べた。

だがロイター通信は、この演習は明らかに北朝鮮首脳の拠点を標的として急襲し、首脳部の要員を拘束するという目的の特殊な作戦の訓練であると報じている。北朝鮮の首脳に焦点を合わせたこうした攻撃は、米国が年来保持しているとされる、北朝鮮首脳部に対する「斬首作戦」の一種だとも言える。

さらにロイター通信は、この演習の写真が米国防総省機関の「防衛視覚情報配布サービス」から選別的に配布されたと述べ、米国によるこの時期のリークは、北朝鮮への戦略的なメッセージの意図が込められていると解説していた。

強力な軍事手段を知らしめるため?

米国は北朝鮮に一貫して非核化を要求し、それに対して北朝鮮側は米国に経済制裁の緩和を求めている。12月上旬に北朝鮮は、トランプ政権が経済制裁を緩和しない場合には「クリスマスプレゼント」として長距離弾道ミサイル発射など軍事手段に訴えることも示唆していた。

トランプ政権は、北朝鮮のそうした挑発的な軍事行動を抑止するために、1カ月前に行われた「北首脳急襲作戦」の演習情報をあえて公表したとみられる。米国側にも強力な軍事手段があることを北朝鮮側に知らしめようという狙いである。

トランプ大統領は12月上旬、北朝鮮側の威嚇に対して「米国には、北朝鮮に対して軍事力を行使する権利がある」と述べていた。米太平洋空軍のチャールズ・ブラウン司令官も「わが軍は必要に応じて軍事力を使う態勢にある」と語っている。さらに12月中旬には、米軍がRC135W、RQ4など最新鋭の偵察機、爆撃機などを北朝鮮上空に飛ばしたことが伝えられていた。

米国のこうした軍事活動について、在韓米軍勤務歴の長い軍事専門家、デービッド・マックスウェル氏は、「米軍が高度の偵察能力や強大な攻撃能力を示すことは、北朝鮮に危険な軍事行動を思いとどまらせる効果がある。北朝鮮がクリスマスになんの行動もとらなかったのは、その結果かもしれない」と論評した。

現在、全世界の注視を集める米国と北朝鮮との非核化交渉には、こうした軍事的な要素も複雑に絡み合っているのである。古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)(ライブドアニュース2020年1/1)

核開発やミサイル開発でイランは北朝鮮と深く結びついています

【ワシントン=黒瀬悦成】イランの在外反体制派組織「イラン国民抵抗評議会」(NCRI)は、イラン政府が2015年の核合意締結以降も北朝鮮の支援で弾道ミサイル開発を加速化させている、とする報告書を発表した。

イランのハメネイ体制や革命防衛隊の内部からNCRIにもたらされた情報によると、イランのミサイル発射基地と、ミサイルを製造、貯蔵、維持するための地下施設やトンネルは、いずれも北朝鮮の施設を手本にしており、現地に派遣された複数の北朝鮮の専門家の協力で建設された。

NCRI幹部は20日、ワシントン市内で記者会見し、「山のふもとにトンネルを掘って施設をつくるのは、北朝鮮の方式にならったものだ」と指摘した。北朝鮮の専門家らは頻繁にイランを訪問。

テヘランの南西にあるアルメフディ駐屯地を含む、イラン革命防衛隊の駐屯地のミサイル専門部隊の訓練も請け負っているとされる。また、革命防衛隊は北朝鮮から専門家を恒常的に受け入れるため、テヘラン市内にあるミサイル開発を主管する企業「ヘンマット・ミサイル・インダストリーズ」の指令センターの隣に居住施設を建設。専門家らは同施設を拠点に、ミサイルの弾頭や誘導装置など各種のミサイル関連企業に出入りしているという。

一方、革命防衛隊も宇宙航空機部門の代表団も北朝鮮を頻繁に訪問し、弾道ミサイルに関する知識や情報、開発成果などを交換しているとした。オバマ米前政権とイランのロウハニ政権が13年に核交渉を始めて以降、一連の動きは途絶えたことがないという。報告書はまた、イランには現在、42のミサイル関連施設があり、うち12が新たに発見されたとしている。NCRIは02年、イラン西部アラクの重水炉と中部ナタンツのウラン濃縮施設の存在を初めて世界に公表し、イラン核問題の火付け役となった。(産経新聞2017年6/22) 

スレイマニ氏は北とも関係の深かった人物。

もしかしたら米軍としては何かしら暗示するものがあったのかもしれません。