5000VOLTもの電撃を受けるとシビれます

5000VOLTもの電撃を受けるとシビれます

自分がビリビリと刺激的電撃を受けたCDやレコードなどの音を中心に、レビューっぽい感じで綴っていきます。よろしくです。

Amebaでブログを始めよう!

出演DJがMUROっぽい選曲をする「妄想MUROナイト」というクラブイベントから派生したムーヴメント、MOUSOU PAGERの2020年8月発売のアルバム「BEYOND THE OLD SCIENCE」。

 

メンバーはSir Y.O.K.O. PoLoGod.、showgunnの2MCに、DJとビートメイクでKuma the Sureshotの3人組。

 

まずアルバムのジャケからしてニクい。数年前に出た12inchや7inchもMAD KAPやDIGABLE PLANETSサンプリングでニヤリとしたが、本アルバムはトライブの1NCE AGAINネタで、BEAT STREETやAMOEBAの値札オーバーゴーイングもイイ感じ。更に裏ジャケはピートロック&CLスムースだし、帯はMOBB DEEPのクィーンズの悪党(このアルバムの各曲の邦題センスまで帯裏で再現!)だし、90年代HIP HOPに対するグループの愛情がパッケージングから溢れ出てくるかのよう。

 

1曲目「INTRO ~サァ皆キキナ~」のサウンドから期待を裏切らない。良質なHIP HOPアルバムのそれだ。

2曲目「#MOUSOUPAGER」は興奮を抑えきれなくなるけたたましいドラムから始まり、2MCの掛け合いもバッチリなアルバムの名刺代わりとなるオープニングゲート。特にshowgunnの入りはこのアルバムで初めてグループの音源に触れるリスナーは度肝を抜かれるだろう。ペイジャー時代のMUROさんじゃん!

 

3曲目「誇大妄想 (Re-REC)」はグループが最初にサンクラで発表した曲。楽曲発表時はフックで歌われるようにこれは妄想(の延長線上という遊び)だったのだろうが、今となっては妄想では済まされないほどのバズを起こしている現実を踏まえると事実は小説よりも奇なり。

 

5曲目「DA RINGLEADER」はマイクゲストにTWIGY、プロデュースはBen the Aceと、遂に本物を引っ張り出した一曲。ミックス作品はゲトっていたもののBen the Aceの新しいビートをかなり久々に聴いたのだが、入りのドラムブレイクから色気を纏ったスペーシーな展開がホントに素晴らしい。spellboundの12inchを全部買ってた頃の俺に教えたい。欲を言えばTWIGYも90年代フロウでやって欲しかったが、現役のMCにOSをダウングレードしろというのは行き過ぎた要求か。

Sir Y.O.K.O.のKnowledgeなんてたかがソーセージというラインがめっちゃ好き。

 

6曲目「キキタリネエカ」は数年前に7inchカットされていた曲。ビートの質感ハンパないね〜。ラストのWho's The Man (With The Master Plan)使いもカンペキ。7曲目「360°~THREE SCRAPPIN' STUFF~」は同7inchのA面。これまた入りのドラムブレイクからオッサンBBOY殺し。俺と同世代の友人、ヒロ the 9mmのカーステで爆音で聴きながらドライブしたのだけど、ベースラインが先導するビートが湾岸辺りのシチュエーションにめちゃくちゃハマる。夜半に都内を走る足立ナンバーのVOXYは夜行列車と化した。

 

8曲目「真ッ黒ニナル過程 (Re-REC)」はBROWNSWOODのコンピに収録されてた名曲をリノベーション。フックのコスリ泣ける。showgunnのヴァースはMUROがA.Gとやってた曲のオマージュで、真ッ黒ニナル迄~真ッ黒ニナル果テの正当な続編としての位置づけを提示する。9曲目「SBY」は前曲のライブテイクから始まる構成にまたもニヤリとさせられる。日本中のBBOYの憧れだったがいつからか後継者がいなくなり店じまいした渋谷ブランドの看板を掲げる宇田川アンセム。

 

10曲目「BEYOND THE OLD SCIENCE」はアルバムのタイトル曲。疾走感溢れるKuma the Sureshot作のビートはスゴいことになっている。更に、キタキタキター!!!!と声が出てしまいそうになるゲストのAkeem the Dream!四街道ネイチャー諸作での好演、HELL RAISER CARTEL、リトルトーキョーと、このお方はホント外さない。一気に90年代フレーヴァーを加速させる。2MCの気合もバッチリ。越えろ〜越えろ〜不可能な壁乗り越えろ〜。

 

11曲目「鸞翔鳳集 -RUNSHOWHOSYU-」はタイトルからしてもうズルい。聞いたことないけど難しい漢字が多くてなんか意味ありそうな四文字熟語は当時のお約束。フックは本アルバムで一番アノ時代に持っていってくれる。鬼哭啾啾をサンプリングしたジャケもよかった。

 

12曲目「JAPANESE LESSON -The Check-」はKuma the Sureshotの独壇場。タイトルが示す通りのLESSONモノで中毒性高め。13曲目「FAN RHYTHM (Re-REC)」は2000年前後の、赤道にどんどん近づいていってた頃のKINGを彷彿とさせるストローハットチューン。showgunnの「ラップ取ったらタダのデブ」というラインは、御本人が言っているような錯覚を起こして一瞬ドキッとする。

 

15曲目「HUG NIGHT(Re-REC)」は1st 12inch収録の初期曲。Sir Y.O.K.O.のヴァースは仕掛けが多くて聴いててニヤニヤしてしまう。16曲目「夢幻泡影」はここまでの流れを一旦落ち着いて消化しながら想いを馳せられるレイドバックした一曲。アルバム本編はここで一区切り。

 

ここからはボーナストラックとして、ドイツ盤やUK盤には収録されていないREMIXが日本盤には6曲も入っている。

 

17曲目「誇大妄想 (Illicit Tsuboi Cloud 9 Remix)」は出だしのプチノイズからもうイリシット・ツボイの本気度が伝わってくる。曲を通してアイディアめっちゃブッ込んでるな〜。ラップも録り直した力作。18曲目「360°~THREE SCRAPPIN' STUFF~ (8ronix '96 RMX)」はマジで96年辺りの12inchのB面に入っていそうな質感を醸し出すサイコーなREMIX。

 

20曲目「BEYOND THE OLD SCIENCE (DJ JIN's Dreaming-a-Dream Remix)」は近年のライムスターでは絶対出さないDJ JINのBLACK SHEEPばりに地を這うベースラインが秀逸。22曲目「#MOUSOUPAGER Pt. 2」の軽快なビートと2MCのテンションはアルバムが終わってしまうとは思えない余韻を残す。

 

全22曲。

宇多丸がラジオで、これが90年代にリリースされていたら大クラシックだ!と、当時をサバイヴしたプレイヤー目線でも絶賛していたのが納得できるほどの完成度。色モノだと思って敬遠していました的なコメントをネット上で少し見たけど、そんな感受性に乏しい連中すら一発でアノ時代に持っていくであろう、仕掛けられた90年代トリックの数々。年末の様々なアワードにノミネートされる事も想像に難くない、帯の(SDPの)言葉を借りるとまさにこれぞローファイ大本命盤。

 

四半世紀を超えてMICROPHONE PAGERの2ndアルバムを2020年に聴くコトが出来るなんて考えもしなかった。王道楽土はコンピだったでいいじゃないか。これが正史でいいじゃないか。

 

マイク5本、いや、5000VOLT

 

 

 

 

 

Libra主催のULTIMATE MC BATTLE 2019 GRAND CHAMPIONSHIP、通称UMB2019。

インタビューやライブ映像も含んだBlu-rayとバトル部分だけを抜粋して収録したDVDの二枚組という事を考慮しても、税込み7,700円はけっこう高いんじゃないかな。メインの購入層はわりかし若いだろうに手が出るのかこれ。

 

まず、すべらない話でもお馴染みの若本規夫氏のナレーションで今回の出場MC数、一回戦から8小節の4本勝負、準決勝からは先行にビート選択権、賞金は100万円などが会場に説明される。

 

次いで、司会のDO BOYのオープニングライブ。広島弁のフックで歌っとりますけんと熱を吐き出す彼の泥臭いパフォーマンスは自分が会場にまでバトルを観に行く熱心なヘッズ時代だったらココロに響いたのだろうか、なんて思いながらスキップボタンを押してまず一回戦のスタート。

 

一回戦

第一試合

◯先攻 SURRY (和歌山)

×後攻 MAVEL (沖縄)

SURRYは調子出てない感じもしたが相手のMAVELが全く会場を掴めなかったので勝利。

 

第二試合

◯先行 Atmoshiphere (福島)

×後攻 MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻 (リベンジ)

Atmoshiphereはその昔はOLA-U-TANのともしMCとして活動していたベテランMCで個人的にはけっこう好きなMC。しかしバトルスキルは2011年あたりの時代で止まっており、この試合も終始ニガリのペースで進んでいたのだが、Atmoshiphereの「リベンジ代表のお前は地元を背負ってない、結局お前の地元は東京」というけっこうベタな攻め方に思い当たるフシでもあるのか、ニガリのペースが狂い始める。いつものような上手い返しが全く出てこなくなり、オーディエンスも冷ややかな反応。優勝候補の一人に数えられていたニガリがまさかの初戦敗退。

 

第三試合

×先行 MULBE (広島)

◯後攻 KBD (奈良)

お得意の押韻でケツにわかりやすい落としドコロを持ってくるKBDと、お得意のTHCネタとセルフボースティングのみで勝負するMULBEのスタイルウォーズ。「MULBEと鶴瓶なんて何度も聞いた、やっぱりお前もベーシックMC」という試合を決定づけるようなパンチラインも決まり、自分的には3回観てもMULBEの勝ちだと思うんだがKBDの勝利。

 

第四試合

◯先行 山本びんた (滋賀)

×後攻 TORA (静岡)

どっちもいいトコないけどオリジナルの言葉をその場で振り絞って即興している山本びんたの方がまだマシか。

 

第五試合

◯先行 梵頭 (愛知)

×後攻 USTR (秋田)

出だしにDJ 8MANがバトルビートじゃない音を出してしまうミスを挟みつつスタートした試合だったが、梵頭にビビって強い言葉が全く吐けないUSTRがあっさり敗退。梵頭は以前より即興でのライミングが上手くなっている印象。

 

第六試合

◯先行 脱走 (北海道)

×後攻 鋼 (大分)

スピットスタイルの脱走がルーズにラップする鋼に勝利。8小節×4本ラップしても全くインパクトを残せなかったMCでも「あとで物販でCD買ってくれ」と去り際に言い残すが、この試合を観て彼の音源を買うヘッズがいるのだろうか。

 

第七試合

◯先行 狛犬 (長野)

×後攻 J-Mack (岩手)

ちっちゃいヒビキラみたいな狛犬とステレオタイプB-BOYのJ-Mackはどっちもどっちだったが「地元の仲間や捕まった仲間の分も背負って戦うぜ!」と、言ってる内容までステレオタイプなJ-Mackに「仲間背負ってんのとか今日出てるヤツ皆一緒だろ」と正論で返した狛犬の勝利。

 

第八試合

×先行 KATY (兵庫)

◯後攻 Kowree (島根)

KATYの悪ガキっぽい感じは嫌いではないが経験の差か終始Kowreeが主導権を握る展開に。トドメはビガップ90年代発言で墓穴を掘ったKATYにまたもや上手く返したKowreeの圧勝。

 

第九試合

×先行 KOOPA (埼玉)

◯後攻 JAKE (鳥取)

MC紹介で一際大きめの歓声が出るほどUMB常連で人気者のJAKEとオバサンみたいな頭のKOOPAの対決。試合内容はベタな地元レップ系でつまんないが、最後のバースで韻の連打が決まったJAKEの勝利。

 

第十試合

×先行 MAKA (栃木)

◯後攻 早雲 (京都)

一回戦から知名度の高い2人による好カード。ボブマーリーのカウチンでめかし込んできたMAKAだったが、尾崎豊の歌詞、保健のCMなど、バース毎に的確なアンサーを返され、打つ手なしで早雲の圧勝。「レゲエのあんちゃん」発言を繰り返してMAKAの場違い感を演出し、何を言っても沸かない空気を作ったのもUMB出場経験の多い早雲ならではの試合運び。

 

第十一試合

×先行 小池潔宗 (群馬)

◯後攻 KUYA MIGUEL (香川)

ヒッピー然とした小池潔宗と日本育ちのペルー人(ハーフ?)KUYA MIGUELはどっちもいいトコなさすぎて2人とも負けでいいと思う。もうすぐ子供が産まれるとかどうでもいいハナシで最後に盛り上げたKUYA MIGUELの勝利。

 

第十二試合

×先行 Eftra (富山)

◯後攻 KZ (大阪)

個人的に全く好感が持てない純粋真っ直ぐ綺麗事野郎のKZは早く負けて構わないのだが、相手が今大会ワースト5に入るくらい低スキルだったのでKZの勝利。

 

第十三試合

◯先行 SHAMO (千葉)

×後攻 SKRYU (愛媛)

罵倒で観た時も気になってたSHAMOはブルーハーツのトレイントレイン引用の入りで空気を作る。学生バイトみたいな風貌のSKRYUはバースを重ねていく度に声が枯れて、どんどん情けない感じになって同情を禁じ得ない。最初は沸いてたオーディエンスもクールダウンして判定はほぼ坊主。SKRYUが追い込まれて「エスケー、エスケー」と何度も自分のMCネームの頭文字を連呼するのはウケたけど笑

 

第十四試合

◯先行 T-STONE (徳島)

×後攻 CJ (福岡小倉)

どっちもどっち。気になったのはCJが福岡小倉代表って、福岡だけ2枠あんの?47都道府県の代表+リベンジ覇者の48人でやってると思ってたんだけど出てない県があんのかな?と思って調べたら、鹿児島大会が中止になったので福岡が2枠になったそう。

 

第十五試合

×先行 だーひー (宮崎)

◯後攻 PONEY (山梨)

ビートへのアプローチでプロとアマの差が顕著に出た試合。だーひーが「フロウの概念を履き違えてる」とPONEYに吐いたが、むしろ逆だろうと。お前だよと。バトルの勝ち方を突き詰めようとしているMCと、ソロでもグループでもリリースを重ねて現場のキャリアも十二分にあるMCとじゃ比べるのも酷か。

 

第十六試合

×先行 Amg (福岡天神)

◯後攻 BUCHI (岡山)

大型犬の前を飛び跳ねながらキャンキャン吠える子犬のようなAmgとビートに乗らず(乗れず?)喋くりスタイルのBUCHIのスタイルウォーズ。Amgの選ぶ言葉が稚拙すぎたお陰もあって噛みまくりで酷かったBUCHIの勝利。

 

ここで一回戦が終了。

48MCが32MCに絞られシード選手も出てきて二回戦が始まる。ビートを担当するのはDJ CELORY & DJ WATARAI。セロリはFSDで知名度もあるだろうけど、ワタライのコトは今の若い観客は知ってんのだろうか。

 

二回戦

第一試合

◯先行 裂固 (岐阜)

×後攻 SURRY (和歌山)

セロリが用意したビートは「般若 / ホントのコト」。実力者同士の対決だったが2人とも良い時の半分くらいしか出せていない印象。持ち味の熱量がホゲたビートで半減してしまったSURRYが割を食って敗退。

 

第二試合

×先行 H1GH BR1DG3 (熊本)

◯後攻 Atmoshiphere (福島)

一回戦よりだいぶ調子が上がってきたAtmoshiphereが勝利。H1GH BR1DG3は印象ゼロ。

 

第三試合

×先行 Dar-Tなたでここ (新潟)

◯後攻 KBD (奈良)

今大会ワースト5確定のDar-Tなたでここにすらバシッとしたパンチを当てられないKBD。何言ってもオーディエンスが沸かない感じになっててツラそう。

 

第四試合

×先行 Jony the sonata (石川)

◯後攻 山本びんた (滋賀)

どっちもどっち。山本びんたの辛勝。毎年代表になるものの全国で全然結果が出せないJony the sonataの不運は地元に好敵手がいないコトか。

 

第五試合

×先行 OSCAR (山形)

◯後攻 梵頭 (愛知)

2008年の東京予選でも姿を確認できるOSCARがまだ活動してたコトに驚いた。開始から口火を切って梵頭をクロちゃんもどきと言い放ったのは笑ったが、40歳でニートという赤裸々な発言で自爆。

 

第六試合

×先行 U-t.o. (福井)

◯後攻 脱走 (北海道)

いかにもなバトルMCスタイルの脱走からは何も感じるモノはないが、一つも沸きドコロを作れなかったU-t.o.には難なく勝利。

 

第七試合

×先行 SHIN DA ENLARGEMEN. (山口)

◯後攻 狛犬 (長野)

ダサすぎる格好の狛犬に突っ込みたくなるSHIN DA ENLARGEMEN.の気持ちはわからんでもないが、しつこくそこに執着しすぎて敗退。もう一つだけでも別の切り口のディスが出来てれば勝てただろうに。

 

第八試合

◯先行 Authority (青森)

×後攻 Kowree (島根)

優勝候補の大本命、去年の準優勝者Authorityが登場。オーディエンスもAuthorityが何を言うのか、どんな韻を踏むのかを期待している感じで、こうなるともうKowreeが何を言っても引き立て役にしかならない。Authorityも期待を外すコトなく、会場が欲しがっている韻の連打をきちんとハメて順当に駒を進める。

 

第九試合

◯先行 GOTIT (茨城)

×後攻 JAKE (鳥取)

ガッティつまんなくなったなぁ。JAKEの言う通り、嫁と子供がこの試合に何の関係があんだ?と俺も思ったが、対するJAKEもお前の地元のハナシを聞かせてくれとクソつまんない煽りしか出来ない醜態を晒す。地力のある2人の対決だったが消化不良。

 

第十試合

×先行 スナフキン (東京)

◯後攻 早雲 (京都)

これまた実力者同士の好カードだけど、スナフキンの調子があまり出てなかったように見えた。一回戦でMAKAを破った早雲が勢いを付けてスナフキンを撃破。

 

第十一試合

◯先行 しぇん (宮城)

×後攻 KUYA MIGUEL (香川)

宮城代表のしぇんが「俺の街にはヒップホップのシーンはない」と言ったのはビックリ。大きい街なのに、ガグルやDj KENTAROは居てもシーンは育ってないのね。KUYA MIGUELの「しぇん、わかりましぇん」は笑ったけどそこだけ。

 

第十二試合

×先行 BALA a.k.a SBKN (神奈川)

◯後攻 KZ (大阪)

革命はテレビに映らないとか、借りモンの言葉でドヤるKZには失笑するしかないが、BALAも典型的なバトルMCスタイルでどうしようもない。「AKLOやZORNに勝ちたい、般若と同じ舞台に立ちたい」だの「R指定と呂布カルマが1000万稼いでるから俺にも夢がある」だの、他の誰かが気になってしょうがないんだなKZは。人前に立つ器じゃない。

 

第十三試合

×先行 視聴覚アルピニスト(カツヲ) (佐賀)

◯後攻 SHAMO (千葉)

セロリが用意したビートは「SOUL SCREAM / 蜂と蝶」。カツヲは声も良いしフロウも出来てるんだけどいつもハナシのテーマがボンヤリしてて何が言いたいのかわかんなくて勿体無い。一回戦のバイブスを持続したSHAMOの勝利。魔の巣のロンTもカッコいい。

 

第十四試合

×先行 ふーわ (三重)

◯後攻 T-STONE (徳島)

泥仕合。出だしからスベッたふーわ。大した返しが出来ないT-STONE。感想としてはm&mのチョコが食いたくなったくらい。

 

第十五試合

×先行 RAGA (高知)

◯後攻 PONEY (山梨)

高校生MCのRAGAは五月蝿い声と空回りバイブスで真っ正面からぶつかっていくが、そんなMCを数え切れないくらい葬ってきたPONEYに軽くいなされる。

 

第十六試合

×先行 玲音 (長崎)

◯後攻 BUCHI (岡山)

玲音の独壇場。2バース目に「裂固お前はいいヤツそうだ」とBUCHIの名前を勘違いをした辺りから歯車は狂いはじめる。3バース目では「自殺しようかと思ってた」と文脈を無視した角度からの独白、この辺りから呂律も急に回らなくなって噛みまくる。4バース目では客席に向かって「笑いたいなら笑え、死にたいっつったらピエロみたいな人生か?」と別に笑われていないのに被害妄想に包まれてガチギレし始める始末。最後は客判定で坊主だったのが納得いかず両手でファックサインを出して「ボケが!」と捨て台詞を吐いて退場。久々にヤバいMCを観た。ちなみにBUCHIは何もしてないのに相手が自滅してくれて三回戦のキップを手に入れた。

 

ここで二回戦が終了。

参加MCも16人に絞られて三回戦。ビートを担当するDJはPMXとDJ KENSEI。

 

三回戦

第一試合

×先行 Atmoshiphere

◯後攻 裂固

Atmoshiphereは韻ばっか追いかけて内容が薄い。裂固は「福島ならGILを出せ」、「ニガリとやりたかったのに何でお前みたいなヤツが上がってきてんだよクソ野郎」とバトルっ気マンマンで攻め立てて順当に勝利。

 

第二試合

×先行 山本びんた

◯後攻 KBD

どっちもパッとしない。これと前の試合はDJ KENSEIのビートもバトル向きじゃなかったのでイマイチ盛り上がりに欠けた試合だった。

 

第三試合

◯先行 梵頭

×後攻 脱走

PMXが用意したビートは「OZROSAURUS / Hey Girl」。またバトル向きじゃないビートを出してくるな~。糸巻き巻きの替え歌で「ウィード巻き巻き、ウィード巻き巻き」がキマって梵頭の勝利。ホント思ってた以上にこの日の梵頭は良い。

 

第四試合

◯先行 Authority

×後攻 狛犬

狛犬の甘噛みではAuthorityに傷を負わすコトが出来ず。

 

第五試合

×先行 GOTIT

◯後攻 早雲

DJ KENSEIが用意したビートは「ラッパガリヤ / 爆進」。どちらも決め手に欠けたが、要所要所で細かいパンチを当てていった早雲のポイント勝ち。

 

第六試合

△先行 KZ

△後攻 しぇん

KZの「俺はアルバムを何枚売った、ライブを何本やった」という主張は寒くて聞いてられないし、「フリースタイルとヒップホップが離れていっているところを繋げたい」というフレーズは己を鏡で見ろとしか言えないし、「バトルシーンじゃなくて日本のヒップホップシーンを俺は変えたい」に至っては自惚れも大概にせいと。しぇんも「KZさんと繋がれて嬉しい」とかBLかっつの。両者決め手に欠けて延長。

 

延長

△先行 しぇん

△後攻 KZ

ここでもKZの主張がしっくりこない。「俺は頭を下げた、CDを配った、お願いしますと声を枯らした」というお涙頂戴路線。実際にそういうコトしてたとしてもオーディエンスの前で主張するのがダサい。しぇんの返しは熱気があってこれで決まったかと思ったけどまたドロー。

 

再延長

×先行 KZ

◯後攻 しぇん

お互いを讃え合う青臭い内容になりバトルじゃない感じ。しぇんの勝利。KZは敗退後の語りもウザかった。

 

第七試合

×先行 T-STONE

◯後攻 SHAMO

2バース目からSHAMOのエンジンがかかって完璧に主導権を握って勝利。SKRYWが裏で泣いてたってのは黙っててやれよ笑

 

第八試合

△先行 BUCHI

△後攻 PONEY

支離滅裂なBUCHIの会話にPONEYが付き合ってる感じでドロー。

 

延長

△先行 PONEY

△後攻 BUCHI

BPM速いビートが故に、ラップスキル勝負になるとデリヴァリーの豊富なPONEYが断然有利に。決まったかと思いきやドロー。

 

再延長

×先行 BUCHI

◯後攻 PONEY

自信が持てないと情けない心情を吐露したがオーディエンスのココロを掴めずにBUCHIが敗退。

 

ここで三回戦が終了。

dj hondaを招いて準々決勝がスタート。hondaさんいつも仏頂面でコワい。

 

準々決勝

第一試合

△先行 KBD

△後攻 裂固

KBDがドヤ顔で落とす韻が何度も滑っていたのと、2バース目の裂固の「踏むっていうとこでただ踏むだけのつまんないラップよりもフルで俺はフルスロットルで高速で振り絞っとるこの脳みそ」は降りてきた感あって決まったかと思ったけど、オーディエンスはKBD、陪審員は裂固でドロー。

 

延長

◯先行 裂固

×後攻 KBD

DJ KENSEIが用意したビートは「INDOPEPSYCHICS / 100万光年のやさしさが注がれる限り」。両MCが得意とする韻が落としドコロで上手く落ちずパッとしない展開。良いビートだけどこれもバトル向きではないのよねぇ...。手数が多かった裂固が辛勝。

 

第二試合

×先行 梵頭

◯後攻 Authority

1バース目からAuthorityがトップギアで梵頭を引き離す。喰らいつく梵頭も予想以上に良い出来で多少盛り返すが、最後のバースまで全力疾走したAuthorityの快勝。

 

第三試合

×先行 しぇん

◯後攻 早雲

ニット帽対決。しぇんは三回戦でKZと延長し過ぎてスタミナ切れを起こしてしまった印象。逆に早雲は体力を温存できて、この後の試合にベストコンディションで臨めるアドバンテージを手に入れた。大会中盤でこれは有利。

 

第四試合

△先行 SHAMO

△後攻 PONEY

感情むき出しでビートに言葉をぶつけてくるSHAMOと、気持ち良いフロウで理路整然とライムするPONEYのスタイルウォーズ。一進一退の攻防が続いたがラストバースのLIBROサンプリングがバシッと決まったPONEYの勝利かと思いきやドロー。

 

延長

×先行 PONEY

◯後攻 SHAMO

stillichimiyaのハナシを振られた時のPONEYがなんとも言えない表情で感慨深い。ビートも相まってどんどんエモーショナルになっていく。逆にSHAMOはアジテーションっぽいバイブスでオーディエンスを巻き込んでいくやり方。フロウデリヴァリーではPONEYだったが、扇動しきったSHAMOの勝利。

 

準決勝

第一試合

◯先行 Authority

×後攻 裂固

ビート選択でPMXがかけた人間発電所にオーディエンスも大歓声。世代を超えて愛される曲なのね。このビートを打ち込んだのもパブさんご本人だとは知らなさそうだが。Authorityのスカイツリー、宮本武蔵、634mのハナシの持っていき方ヤバい。裂固は普段から唾が口に溜まったようなモゴついたラップをするタイプだが、一つ一つの単語まで聴き取れるようにハッキリと発声をするAuthorityのようなMCが相手だと、悪い意味でよりそれが浮き彫りになってしまう。

 

第二試合

◯先行 早雲

×後攻 SHAMO

ここまでと同じバイブス戦法でSHAMOがオーディエンスを掴みにかかるが、さすがにバリエーションが少なく感じたのか火点きが悪い。ならば時事ネタで盛り返そうとM-1のぺこぱに自らを例えるが、早雲に「お前がM-1見てる間も俺はリリック書いてるぜ」と返され、「芸人だって頑張ってる、お前だけが頑張ってるんじゃない」と喰らいつくも「頑張ってるつもりはない、リリック書くのは俺のライフワーク」でトドメを刺され、早雲の勝利。

 

決勝

△先行 早雲

△後攻 Authority

PMXが用意したビートは「OZROSAURUS / AREA AREA」。早雲の方が沸かしていた気がしたが、オーディエンスの声は五分五分。ドロー。

 

◯先行 Authority

×後攻 早雲

DJ KENSEIが用意したビートは「TAB001 / 禁断の惑星」。これまで尺の選択で全てのMCが8小節×4本しか選んでこなかったが、遂にここでAuthorityが16小節×2本を選んだ。しかも決勝の延長という大舞台で返すターンが少なくなるリスクを冒してまで。

この作戦が非常に功を奏し、自身の得意なBPMが速いビートとも相まってバシバシ強めの韻をロングバースの中に落としていく。何でこの尺にしたのかという理由も良かった。対する早雲は2バース目に顕著だが普段のクールさを返上するように熱くラップする。ビートとのシンクロ率も高かったが、16小節の中に解りやすい落としドコロを細かく作れずに敗退。

 

 

長丁場の中、最後までステージに残っていたのは去年のダークホースから一気に躍り出たAuthorityだった。ニガリが早々に消えてしまった誤算はあったものの、下馬評も高かったAuthorityの優勝は順当と言えば順当な結果のように思える。フリースタイルバトルに必要な要素(フロウ、即興性、ライミング、内容、アンサーなど)を全て高水準で備えており、敗れたMCたち、オーディエンス、主催者からも文句のないチャンピオンだったと言えるだろう。普段はベスト8要員くらいのイメージしかない早雲がここまで頑張れたのも好印象だったが、彼は2年前くらいに出したアルバムがちょっとアレだったので製作の方で精進を求む。

 

賞金授与で1,000,000円のパネルを持ってきたのはHIDADDY。この人も昔は出場者、最近では敗者インタビューと、UMBとは長い付き合いだろうけど、たった今激戦を終えたばかりのチャンピオンに相変わらずの老害ぶりを発揮した寒いツッコミで大スベリするあたり、最早お役御免なのではないかと強く感じた。

 

変な空気を払拭するかのようにウィニングラップをカマすAuthorityは「この国に王様は二人もいらねー」とKOKも視野に入れている宣言で締める。有名な大会を総ナメにする意気込みはとても良いのだけど、せっかく良いポテンシャルを多く持ったMCだと思うので、バトル一本鎗にならずに色んな活動を期待したいところである。

 

UMBはこれまでも全国規模で予選大会を開催しており、地方のB-BOY達にチャンスを与えているのはとても素晴らしい。更に本大会では遂に全ての都道府県で予選を開催した点は評価に値するが、それ故に例年以上に玉石混交になってしまった感も否めない。

 

とは言え、かつてのPUNPEE、25時の影絵、ZONE THE DARKNESS、TKda黒ぶち、R-指定、MOL53などなど、無名のMCがとんでもないスキルを持っていたり、UMBをキッカケに大化けした例はいくらでもある。2020年は地方予選が全て中止になったりと、コロナ過で大変だとは思うが、騒動が落ち着いた暁にはまた全国規模での予選を再開していただければ幸いです。

 

P.S.

昨年のチャンピオンライブという触れ込みでMU-TONのライブが収録されているのだけどダサすぎてヤバかった。ブリってんのはいいけどコントロール出来ないようじゃ本番前はやめとけYO!なんてね笑

 

 

 

 

 



2013年2月発売のアルバム「ENTER THE FANTASY」。

Brother's Machinegun FunkはダースレイダーとDJコペローによる1MC、1DJのグループ。今作はジャケでも強く押し出しているようにFINAL FANTSY VI (以下、FF VI)へのオマージュ作で、トラックは全てFF VIのゲーム内BGMのサンプリングで作られている。


したがって、FF VIをプレイしたコトのある人とそうでない人でこの作品の評価は大きく別れてしまうだろう。ちなみに高3くらいまでRPGはドラクエしかやらなかった俺にFFの楽しさを教えてくれたのは正にFF VIであり、狂ったようにやった時もあるくらい個人的には馴染みのあるゲームだ。


1曲目「IIコンマイク世代 & 最後のスーファミ世代」はダースとコペロー、それぞれの年齢でのゲーム初期体験時代を当時の主流ハードで比喩した内容のオープニング。不安感を煽るようなトラックは、魔大陸でアルテマウェポンを倒した後に帝国のガストラ皇帝とケフカが出てくるイベント時の音ですね。2曲目「世界崩壊」はゲームスタート時のセーブファイル選択の時の音なので、当時プレイしていた人にはかなり耳馴染みが強いトラックだろう。HOOLIGANZからBANと、Tilなる女性シンガーを迎えたリードシングル曲だが、ゲストが2人ともトラックの良さに負けていて残念。

3曲目「BATTLE!」は誰しもテンションの上がる 敵モンスターとのバトルBGMをベースにしたトラック上で、e.k.yとTK da 黒ぶちという埼玉を代表するバトルMC2人+自身も果敢にバトルに参加するダースの三者三様のバトル観を吐き出していくという、かなりコンセプチュアルな曲。疾走感がある音にコペローのスクラッチが相まってかなりカッコいいビートなのだが、ゲストの2人がMC松島が言うところの「BMKD」にモロに当てはまってしまう仕上がりでツラい。誤解のないように言わせてもらうと俺はこの2人のバトルMCとしてのスキルはかなり高いと思っており、実際に現場で見て声を上げたコトは何度もある。e.k.yは押韻が売りで、相手の言葉を拾ってのアンサーも含めこれでもかと踏み倒してくるタイプ。即興性の高さも魅力的だ。TK da 黒ぶちはビッグタイトルにこそ恵まれないが、覚醒した時なんかは現存するバトルMCでは勝てる相手がいないんじゃないかってくらいヤバい。ちゃんと意味を繋げながら随所随所にライムを挟み高速ラップでまくしたてるスタイルは、その頭の回転の早さにド肝を抜かれる。 …が、そんな2人であっても「BMKD」に当てはまってしまうという悲しい現実。この2人に共通して言えるのはバトルと音源でフロウに差が殆どないところだろう。どちらも自身名義での音源が出た際は即購入するだろうってくらい気になる存在なので、フロウの幅が増えるコトを切に願う。



4曲目「BROTHERs MACHINEGUN DANCE」はモーグリステージの軽快な音で、パーティーで相成れないダンサーとの確執がテーマ。視点がオモロい。5曲目「WHAT YOU WEAR NOW?」はリルムステージの音でゲストにYurikaを迎え、アクセサリなどのそうび品を自身のファッション観とリンクさせていく曲。

6曲目「コッチミエルソッチミエナイ」はドラムが秀逸なガウステージ (獣ヶ原)の音で、隻眼になったダースならではのテーマ。この人は自分の病気にふさぎ込むコトなくパフォーマンスとして消化する生粋の表現者だと改めて思う。7曲目「HOW TO PLAY」はゲーム序盤のハイライトに上げる人も多いだろう、オペラ館でセリスがマリアの代役を務めた際の名曲「♪いーとーしーのー、あなたーはー」をダースが歌い上げる怪作!笑

8曲目「チャーリー・シーン」は唯一の外部トラックメーカー KO-ney作の一曲。カイエンステージの硬派な音の上で、アメリカが誇る希代の好色漢 チャーリー・シーン (5000人の女性とセックスしたという伝説を持つ)をテーマにするという組み合わせにニヤリとさせられる。曲中で語られる押尾学や寺の住職のハナシも生々しくて好き。そして、感動的なフックのメロディに乗せてこのリリックかよ…!という、アルバムのハイライト。

全10曲。
ダースの深いFF VIへの愛情が作り上げたアルバムは、同ゲームを愛したプレイヤー達からの賛同は得られる出来映えだろう。3曲目、8曲目に代表されるように、テーマに沿ったトラックとリリックの組み合わせが殆どの曲に施されているのもポイントだ。

やはり良いヒップホップアルバムに必要なのはオリジナルのアイディアなのだ。FF VIをモチーフに、曲毎にこれだけのアイディアを盛り込めるダースはさすがの奇才と言わざるを得ない。惜しむべくは、各ゲストにダースの熱意が伝わらなかったのか、はたまたFF VIをプレイしたコトがないMC達だったのか、足並みが揃わず孤軍奮闘になってしまったコトだろう。ノーゲストでやっていれば文句ナシの5000VOLTの電撃アルバムになっていた可能性は拭いきれない。

マイク4本、いや、4000VOLT。