交響詩『人魚姫』

(A・ボーモンによる2013年クリティカルエディション世界初録音)

シンフォニエッタ イ長調 作品23(室内管弦楽版)

(R・フライジッツァーによる2013年室内管弦楽版世界初録音)

 

John Storgårds指揮

Helsinki Philharmonic Orchestra(ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団)

 

2014年録音

レーベル:Ondine

 

演奏 (評価は5つ星が満点です)

 

HMVのサイトにとても詳しい作品紹介がありますが、それによるとツェムリンスキーはマーラーとシェーンベルクの架け橋的な存在だそうです。

そんな時代(1871-1942)に生きた彼ですが、私は彼の音楽に世紀末的な、或いは前衛的なものを感じる事はありません。

このアルバムに収めされた楽曲にも、キャッチーな旋律や展開があるわけではありませんが、親しみやすいロマン派作曲家が描く少々印象派的な絵画、そんな感触を受けたります。

丁寧で洗練された演奏が、ツェムリンスキーをより親しみやすく感じさせてくれていると思いますが、やはりキャッチーさがないので録音や演奏されることが余り多くないのかも知れません。

 

録音 (評価は5つ星が満点です)

 

SACDハイブリッド盤ですが、余り音響的な愉悦が高いとは言えません。

全体的に音場がやや平面的で奥行き感が足りていないように感じます。

ソロ楽器が登場する際の響きにも、滲みや不明瞭さはありませんが、輪郭や陰影はもう少しあったほうが演奏をより楽しめるように感じます。

SACDならではの自然さはあり、決して悪い録音ではありませんが、オーディオ的には今一歩感を否めません。

 

(画像をクリックして頂くと、HMVの当該サイトにリンクしています)

Trio Jean Paul

 

ピアノ三重奏曲 第27番 ハ長調 Hob.XV.27

ピアノ三重奏曲 第23番 ニ短調 Hob.XV.23

ピアノ三重奏曲 第12番 ホ短調 Hob.XV.12

ピアノ三重奏曲 第26番 嬰ヘ短調 Hob.XV.26

 

2013年録音

レーベル:Avi Music

 

演奏 ☆☆☆☆ (評価は5つ星が満点です)

 

HMVの解説によれば、1991年に結成されたトリオ・ジャン・パウロは1993年の大阪国際室内楽コンクール、1995年のメルボルン室内楽コンクールで優勝している実力派で、この録音時でも既に20年以上のキャリアがあるんですね。

私にはまだまだハイドンの楽曲が『分かる」程の知識も聴き込んだ経験もないのですが、闊達ながらも丁寧さも感じられる彼らの演奏は、ハイドンならではの親しみやすさが漂っているように思えます。

その分、奥深さや内省的な側面に関しては、私には余り訴求してくるものがなかったように感じますが、それはこちらの勉強不足、経験不足にその責があるのだと思います。

彼らのキャリアを知らずに聴いていましたが、心地よいキレのあるアンサンブルは見事に整っていて、20年以上のキャリアと聞けば「さもありなん」と頷けます。

ただ個人的には少しチェロが控えめで物足りないとも感じます。

 

録音 ☆☆☆☆ (評価は5つ星が満点です)

 

中央やや奥にピアノ、その手前やや左にヴァイオリン、そして右手にチェロがしっかりと定位する録音です。

演奏がそうであるように、録音にも音のキレや粒立ちの良さが感じられ、特にピアノの音色に関しては一音一音がビロードの上を転がる小さな美しい水晶玉をイメージさせる鮮度、際立ちがあります。

やや強めのアタックの響きがハッとするほどの鮮烈さを伴って再生されたりもしますが、決して過度にエッジが効いたものではありません。

彼らの演奏スタイルか、それとも録音の結果なのかは分かりませんが、低域の豊かさや量感に関しては物足りなく、それはチェロに留まらず、ヴァイオリン、ピアノに関しても同様な感触です。

残響も少し控えめと言えるかも知れませんが、響きにドライさは感じません。

 

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Florian Uhlig(p)

 

ダヴィッド同盟舞曲集 作品6(第2稿)

クライスレリアーナ 作品16

 

2017年録音

レーベル:Hänssler

 

演奏 ☆☆☆☆ (評価は5つ星が満点です)

 

フローリアン・ウーリヒが着々と進めているシューマンピアノ独奏曲全集のvol.12になります。

念の入った全集を録音する気らしく、ダヴィッド同盟舞曲集は2014年録音のvol.8に収めれていますし、クライスレリアーナは初稿版を2015年録音のvol.11にてリリース済みです。(ともに購入していますが、未聴です)

初稿と改定稿(第2稿)との違いに関しては私には分かりませんが、稿の問題を度外視しても、ウーリ匕の独特のピアノの音色はシューマンにはとても合っているのかも知れないと感じます。

分析的な側面を感じるわけではありませんが、ウーリ匕のシューマンには冷静さが常に感じられ、弱奏時のロマンティシズムにも強奏時のダイナミックさにも、理知的な抑制が感じられます。

それが無味乾燥然として味気ないものにならないのが彼の魅力の一つなのかも知れません。

 

録音 ☆☆☆☆ (評価は5つ星が満点です)

 

左右への広がりが少し物足りない印象もありますが、ピアノ独奏曲として不足のない音場を形成していると思います。

音の粒立ちも特に優れているとは言えませんが、ウーリ匕ならではと言える、彼の弾くスタインウェイDの過美に華やかではない響きを十全な静寂を背景に楽しむことが出来ます。

少し奥から響いてくる感触を受けますし、左右の指の動きが見えるかのような分解能の高さも訴求してはこない録音ですが、少し小さめのホールのやや後ろで聴いているかのような自然さが好ましいです。

 

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