- 人声天語 (文春新書)/坪内 祐三
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坪内さんの文春新書「人声天語」は、タイトルだけみるとつぼファンとしては、朝日新聞の天声人語を皮肉ったものかと期待したが、実際は、少しゆるめ坪流時事コラムであった。月刊文芸春秋に連載したコラムであるが、「天声人語」よりも数倍興味深い内容だし、そろそろ坪さんには、週刊文春の名物コラムの連載を担当してもらいたいと思っている。たまたま週刊文春で「コラムの歴史 名物連載50年分」という特集であり、次にここに名を連ねるのは誰だろうかと考えていたが、どう考えても坪さんしかいないと勝手に結論に達した。
朝日新聞は日本一購読数を誇る大新聞であり、それがゆえに注がれる視線も厳しい。特に顔といってもいい「天声人語」に関しては少しでも表現がおかしかったり主張に偏りがあると一般読者に限らず知識人からも槍玉に上げられる。彼らが書くそういう文を幾度となく目にしてきた。しかし書き手にとって実はそういう批判が朝日新聞という原稿料が高いとも言われる新聞からのオファーをなくすことで自分の首をしめている。もうそれほどの力はないにしろ天声人語は新聞で最も親しまれ読まれている代表格なのである。そういうことも踏まえて「人声天語」を書いた坪さんは読んだらわかると思うが、天声人語も引用しているし、「AERA」の記事も、なにかと騒がしい「週刊現代」も新聞、雑誌、本という活字メディアを押さえてそこから発するコラムは今を見事に風刺している。坪さんこそ活字界の声天語人だ。