「猫の後ろ姿」
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猫の後ろ姿 2283 My Inside Is Broken

 

 

 18日、朝7時のNHKテレビのニュースで、悲痛な声を聞いた。UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の保護局長・清田明宏さんがガザで聞いた声。
 看護婦の一人が涙しながら、「My inside is broken.」と言った。「心がこわれた」。看護婦という職の責任を十分に果たすことができないという自責の念と共に、この国・地域がまるごと壊されていくのを目の当たりにしたこの人の心はこわれた。
 辛いなあと思う。なにもできないけれど、こういうひとたちが今もかの地に生きていることを見つめたいと思う。どうぞ、もう少し頑張ってください。

猫の後ろ姿 2282 清水登之と石本秀雄の戦争画

 

 

 

 

 相変わらず、性懲りもなく毎日、「戦時下日本の美術」のことを調べ、考えている。今日はふとこんなことに気が付いた。図版をご覧いただきたい。


 上は、1944年11月の「戦時特別文展」に出品された作品。清水登之の「工兵架橋作業」、東京国立近代美術館所蔵。
 下は、1942年12月の「第一回大東亜戦争美術展」に出品されたもので、石本秀雄の「後方架橋」。図版は、『大東亜戦争美術展画集』掲載。
 ほとんど同じ構図であることは、文字通り一目瞭然。清水登之ほどの画家が先行作品を真似することは考えにくい。


 考えられるのは、架橋作業を撮影した写真をこの二人が手本にして架橋作業の「戦争画」を描いたのではないか。写真を提供したのは恐らく軍部であろうけれど、新聞社ということもありうる。
 大勢の人間が複雑に連携する「架橋作業」を描くには、写真を参考にせざるをえなかったということなのだろう。
 しかし、岩本と清水はこの絵で何を言いたかったのか。近代化されておらず人力に頼るしかない日本軍の現状を批判しようとしたのか。それとも人力でこそ新たな時代は切り開かれるのだとやせ我慢をむしろ誇ったか。
 しかし、この2点、そこそこに写実的で上手だけれど、なんとつまらない絵であることか。戦時下の日本の絵画が陥っていたのはこんな情けない状況なのだとあらためて思う。

猫の後ろ姿 2281 京一会館の闇の中で 映画「あこがれ」

1966年10月公開 監督:恩地日出夫 脚本:山田太一 音楽:武満徹

 

 

 ゴンチチのFM番組を録音しておいたのを毎日少しずつ聴いている。           2006年3月25日の中で、映画「あこがれ」の音楽が紹介された。            曲が流れて来ると、僕はあの京都の京一会館の暗闇の中で、すすけた椅子に沈み込んでいる自分の体の感覚がよみがえってきた。
 

 内藤洋子の初主演映画とのこと。確かに、内藤洋子は可愛かった。
 武満徹によるこの音楽の響きには、60年代の時代の匂いのようなものが流れている。音源を探したけれど、見つからない。映画自体はDVDになっているらしいのでこっちを手に入れようと思う。
 

 大学に入って、映画におぼれるようになって、もう50年が過ぎた。気力と体力は本当に無くなっているけれど、映画館の闇の中に沈み込んでいた情けない気弱な心はいまもそのまま。さてこれからどうなりますことか。

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