ご縁があって、「もし、アドラーが「しゅうかつ」をしたら」(幻冬社)を読みました。

 

著者、豊富な実務経験をもつ長田先生です。

長田先生は、組織人事戦略コンサルタントとして独立し活動されています。

大学での非常勤講師歴も多数あります。

 

本のタイトルに「しゅうかつ」とありますので、最初は大学生向けの「就活」の本なのかと思わせます。

とろこが、その思いは、いい意味で裏切られます。

 

表紙にもある通り、長田先生のいう「しゅうかつ」とは、以下の3つです。

 

1)就活:ブレない自分軸をつくる

2)習活:社会が求める人財になる

3)充活:人間力を磨きより良く生きる

 

アドラー心理学の考え方をベースとして、この3つの「しゅうかつ」を実現していこうと考えるのが、この本の主旨となります。

 

ですので、大学生の「就活」だけではなく、その概念を3つの漢字で表現し直し、もっと広い意味での「しゅうかつ」について述べているのが、この本です。


さらに、いい意味で裏切られるのが、表紙でアドラーがクローズアップされているので、アドラー心理学の話題で占められるかと思ったところ、他の心理学者の理論も出てきますし、経営学の話、キャリア理論の話など、多彩な学問的理論が次から次へと展開していきます。

 

個人的には、フランクル心理学アドラー心理学をからめながら解説しているところが、興味を引きました。

 

アドラーはフロイト、ユングにならぶ世界三大心理学者のひとりとして有名です。日本では『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)が、大ベストセラーとなり多くの人の知る人物となっています。

 

フランクルといいますと、『夜と霧』の著者として世界的に有名なのですが、その認知度は、我が国においては、アドラーに比べるとかなり劣ると思います。

 

フランクルは、若き日、アドラーが設立した個人心理学協会に所属していました。アドラーの考え方に傾倒していたのです。ところが、だんだんと考え方が異なっていき、最終的に、フランクルはアドラーに除名されてしまうのです。

 

とはいいつつ、アドラー心理学とフランクル心理学は、似ている部分があるのです。アドラーのいう「貢献感」とフランクルの「意味充足感」は、言葉は違えども、その考えはほぼ同じといえます。

 

「どのようにすれば、意味のある人生を生きていると感じられるか?」

 

そのためには、自分中心ではなく、自分以外の外の世界との関わりが重要だと、アドラーもフランクルも考えています。

 

また、この本には、京セラ創業者稲盛和夫氏の考え方も紹介されいます。

 

稲盛さんが生涯大切にされた考え方は、「利他の心」です。これをアドラー心理学とからめて長田先生は次のように書いています。

 

☆「利他の心=相手を思いやること=相手の関心事に関心をもつこと

 

私は個人的に稲盛氏を尊敬しているので、アドラーの本と思っていたら、稲盛さんの考えも登場し、とても感動しました。

 

長田先生は、この本のコンセプトを「Beyondコロナ時代に向けて、新しい(本来の)自分、新しい生き方を発見すること」と書いています。

 

アドラー心理学だけでなく、人生をより充実させるために必要な様々な理論・考え方が紹介されており、まさに「新しい生き方を発見する」ための指南書をいえます。