El Despacho Desordenado ~散らかった事務室より~

El Despacho Desordenado ~散らかった事務室より~

2015年1月4日から「Diario de Libros」より改名しました。
メインは本の紹介、あとその他諸々というごっちゃな内容です。
2016年4月13日にタイトル訂正。事務机じゃなくて「事務室」です(泣)。

もし、本ブログ記事内で張られたリンクが切れていてつながらない場合はコメントでお知らせください。コメントは全ての記事で受け付け、かつ即公開される仕様ではございませんので、気兼ねなくお教えいただければ幸いです。どの記事でも構いませんが、当該記事にコメントをつけていただければありがたいです。

こんにちは。気温の乱高下に困る男、エドゥアルド・ルイスです。昨日はそこそこ暑かったのに今日はなんか肌寒い。大型連休中ですが、皆さんも体調管理を万全にしましょうね。

さてそんな枕から、今月もこの記事から始めてまいります。先月は結構買いましたよ~。

 

飛行機の名前ってたいてい制式名称(なべてアルファベットと数字の羅列)よりも愛称の方が知られていますが、U-2については少なくとも私は逆。ドラゴンレディなんて優雅な名前、どこを見て思いついたんでしょうか。

時に世界史を動かしたアメリカの偵察機、役割のみならず乗り物としての特異さも際立っています。

 

『世界の名機シリーズ U-2 ドラゴンレディ』

イカロス出版

 

 

 

オリーブドラブとは字にすれば戦車やジープなどの軍用車両に塗られているくすんだ感じの緑色ですが、時期や使用塗料、撮影や目視時の光の当たり具合で千差万別です。

このなじみ深くも奥深き色をAFVプラモデルにどう塗っていくべきか? スペインの名モデラー、ホセ=ルイス・ロペス=ルイス氏が実例と共に伝授。迷彩模様一切なし!

 

『海外モデラー スーパーテクニック 戦車模型オリーブドラブ塗装&ウェザリングガイド』

ホセ=ルイス・ロペス=ルイス(模型製作・解説)

新紀元社

 

 

 

日本人なら誰でも知ってるアメリカ人、マッカーサー。彼の伝記はたくさんありますがピンキリもかなりあります。本人の回想録からして「大目に見ても、「実話を基に創作された」と評するしかない。」(p.ⅷ)という有様です。そんな中、今回中公選書から翻訳・出版されたものはかなり質が高いと監訳者は評価しています。その監訳者は占領期日本を専門として日本で教鞭を取っているそうで、翻訳の質も担保されていると取って良いでしょう。

 

『マッカーサー 20世紀アメリカ最高の軍司令官なのか』

リチャード・B・フランク ブライアン・ウォルシュ(監訳) ウォルシュあゆみ(訳)

中公選書

 

 

 

正直、もうちょっと続いてほしかった漫画作品でした。まさかあの対戦相手がね~。その辺も深めてほしかったですが、とりあえず新田君にはこれからも学問に体力作りに恋にがんばってほしいと思いました。

 

『バウトな彼女』(2)

貝遼太郎

講談社シリウスコミックス

 

 

 

正直、続くのは確定だろうけどどこに行きつくのだろう?と希望さん達三人組のこれからに恐怖を感じる漫画作品です。筋骨隆々な女たちの本気のぶつかり合いは熱いですが、とりあえずこの場では、97ページの次をめくる前に腹筋に力を入れて覚悟しておけ、とだけ。

 

『一勝千金』(2)

サンドロビッチ・ヤバ子(原作) MAAM(作画)

小学館(裏少年サンデーコミックス)

 

 

 

理系英文、といっても同じ英語である以上そう大差はないはずなんですが、スッキリしたわかりやすい英文は書くのが難しいようで……。本書は国際的な論文発表の場であるジャーナルに実際に載った例を基に、タイトルとアブストラクト(概要)の書き方を丁寧に解説。非常に実用性の高い一冊に仕上がっています。

 

『テンプレート式 理系の英語論文術 国際ジャーナルに学ぶ 伝わる論文の書き方』

中山裕木子

講談社ブルーバックス

ここ数年よく聞くようになったEV、昔のマスコミは電気自動車と言っていたのですがいつのまに定着したのでしょうか。一昔前なら「エレベーター?」と返されてもおかしくなかったはずです。時代は変わるものですね。

そんな朝刊一面のコラムみたいな枕から、今日は『トミカ歴代名車COLLECTION ⑱ 日産 リーフ』を紹介します。

 

2010年に発売された、普通乗用車としては初のEVである日産リーフ。初代からの形式ZEはZero Emissionから取られているなど、開発理念がはっきりしているのがわかります。今回トミカになった2代目は環境面以外でもアクセルペダルひとつで発進・加速・減速・停止保持を行なえるモードを搭載し、まるで「自分の手足の延長」(p.7)のように操縦できる楽しさに力を入れたそうです。こうした実車紹介が添えてあるだけでミニカーを見る眼も深まるというものです。

 

読み物「トミカペディア」ではコミック『頭文字D』が登場。主人公・藤原拓海の「AE86トレノ」(豆腐屋の店名が書いてあるやつね)はじめとする劇中に出てきた車をトミカにするというのは1998年当時としては斬新な試みでした。このためにAE86トレノの金型を作ったんだとか。今はあらゆる方面と組んでバシバシ出ているコラボ商品のさきがけと言えます。

また1998年はトヨタのハイブリッドカー、プリウスが初めてトミカになった年でもあります。既存の燃料供給網を利用しつつ確実に排気ガス量を減らす環境とお財布に優しい自動車という新たな地平は電池でも動かないミニカーの世界にも衝撃を与えたのです。

元来ミニカーのメインターゲットは子供であり、子供の願望と共に大人が子供にどう応えたかの反映でもあります。日本を代表するミニカーブランド・トミカもまた自動車を通して時代を映すメディア的側面があることも忘れてはなりますまい。

 

……それにしても、『トミカ歴代名車COLLECTION』、20号で休刊との知らせにはがっかりしました。70号くらい続けると聞いていたんですが。これではぽっと出や香具師まがいの新参EVメーカではありませんか。今回の竹岡圭さんはじめとする自動車愛・ミニカー愛にあふれる方々のエッセイには力がこもっているのが感じられただけに、大手新聞社にふさわしからぬ企画力や貫徹力のなさに呆れを覚えてしまいました。

 

さて、では気分を入れ換えて見ていきましょう。実はわたくし、初代リーフを持っているのでモデルチェンジやトミカへの反映のほどをじっくりと比較……

ってでか!なんかでか!

念のため箱に入れて比べてもこの違い、何なのよ!?

と思ってウラを見てみると、初代リーフ(2011年当時のトミカ番号120)が1/68に対し、今回の付録になった2代目リーフは1/63。道理で大きいはずです。そういえば、箱も違ってたなぁ、ってもっと早く気づけよ。

 

気を取り直して、やや斜めから正面。上2枚もそうですが、右が今回の付録となった2代目リーフ、左が初代リーフです(後者は含まれておりませんのでご注意ください)。

こうしてみると、初代は充電ポートの扉がけっこう目立ちます(何せNISSANのロゴが付いている)。むしろ己がEVであることを主張するためデザインの要となっているのが分かります。対する2代目はほぼ同じ場所にあるはずなのにロゴマークの上に設けられて流線形に溶け込んでいて目立ちません。逆説的ですが、フロントデザインの中心から充電ポートの扉を外したのはEVの普及を反映している、のかもしれません。ライトも初代はウルトラマンみたいというかかなりアグレッシブ、対して2代目はいろんな意味で従来車っぽく落ち着いています。

 

後ろ。こちらは目立った変化は見られませんが、トミカとしては2代目の方のみ、

後部ドアが開閉します。もしかするとこのしかけ(ギミック)を盛り込みたいためにスケールを大きくしたのかもしれません。なんだかんだ言ってこどものためのおもちゃですからね。そうした配慮も進歩のうちと捉えられる、のかもしれません。

 

 

¿Cuál es el coche eléctrico más barato en España?
(スペインで最も安い電気自動車はどれですか?)

 

 

『トミカ歴代名車COLLECTION ⑱ 日産 リーフ』

朝日新聞出版

高さ:25.9cm 幅:18.4cm(カバー参考)
厚さ:4.5cm

重さ:209g

ページ数:8
本文の文字の大きさ:3mm

黒田龍之助さんといえば言語に関する様々な方面での著作の多いことで有名です。このブログでも何冊か紹介しましたし、これからも紹介すると思います。

今回はそんな氏の原点ともいえる、ある語学学校について回想した本を紹介します。その名も『ロシア語だけの青春 ミールに通った日々』。

 

ロシア語に興味を持った高校生・黒田龍之助が勧められて入った「ミール・ロシア語研究所」は、代々木の雑居ビル「平和ビル」に教室を構える入門科・予科・本科・研究科に分かれた昔気質の学校。

カリキュラムは、ひたすら発音・暗唱。教科書の文を予習で覚えて、教室では時に口頭で露文和訳、和文露訳。ウダレーニエ(英語のアクセントにちかいもの)をあえて不自然に聞こえてでも強め、長めに発音しなければなりません。東多喜子先生の言う通り「音を作る」と評された指導方針ですが、「発音はネイティブに習うより、日本人の専門家から指導されたほうがいい。」(p.24)との黒田先生の指摘には深く納得しました。ネイティブが聞き取れればそれでいーじゃん、ではイカンのです。

 

ミール・ロシア語研究所は知る人ぞ知る学校だったようです。黒田さんが通訳のバイトでご一緒したプロ通訳は最初キビシク接していましたが、ミールで習っていると聞くや態度が一変。自分もミールで習った、才能あるわと励ましたそう。実力を鍛えてくれる学校だったのです。

個人的には、角田安正さんが生徒、そして講師としてミールに居たのに驚きました。原文が英語の『菊と刀』の訳がロシア文化も対照しての深い洞察に基づいたものに仕上がった原点がここにあったのかと考えると、その偉大さが分かります。

 

どの学校にもある出会いや別れもミールならではのものが。高校生から社会人までみんな同じ方法で愚直に学んでいました。後にロシア文学の大家となる大学生・貝澤哉さんとも出会う一方、優秀で親切だったのにあっさりとやめてしまうエリートもいました。

 

 彼女だけではない。このような優秀なタイプにかぎって、実にきっぱりとロシア語に見切りをつけてしまう。もちろん多喜子先生も残念がるのだが、外国語は本人のやる気がなければ、誰も強制できない。去りゆくうしろ姿を見送るしかないのである。

 わたしは考えた。

 優秀でないわたしにできるのは、止めないことだけだな。

(p.60)

 

今、プーチー・プーによる笑えない笑い話より笑えない戦争がただでさえ遠い国をますます、ソ連よりも遠い国にしています。それ以前にこの21世紀では教師が身を削って生徒に寄り添って教える教育スタイルが消えつつあります。ミール・ロシア語研究所もその流れに逆らえませんでした。そんな学校が2013年まで存在できたこと自体奇跡に近いものがあります。

それでも、ひとつの学校を軸にした「ロシア語が勉強したいだけのヘンな高校生」(p.164)の青春は、何があっても色あせないでしょう。

 

 

-¿En Londres hace tan mal tiempo siempre como así? ¿Cuándo es el verano?

-Es una cuestión algo difícil de contestar. El verano pasado fue el miércoles.

(「あなたがたのロンドンでは、いつでもこんなに天気が悪いのですか? 夏はいつなんですか?」)

(「どうもお答えするのが難しいですな。去年の夏は水曜日でしたがね」)(p.38)

 

 

『ロシア語だけの青春 ミールに通った日々』

黒田龍之助

現代書館

高さ:18.8cm 幅:13cm(カバー参考)

厚さ:1.5cm

重さ:232g

ページ数:188

本文の文字の大きさ:3mm

『日の丸を掲げたUボート』なる書題を見ると、「ドイツ潜水艦がなぜ日本の旗を?」となってしまうのではないでしょうか。このブログで一番読まれている記事でも取り上げた、呂500と日本で呼ばれることになるU511以外にも、一隻ならぬUボートとその乗組員が日本やその占領地に到達していたのです。

 

本書を概観すれば、遠くドイツから大西洋、喜望峰を回ってインド洋を渡りやってきたUボートが意外に多かったことに驚かされます。節を立て詳細に取り上げられているだけでも5隻。そしてどの艦も波乱万丈を経験しています。

 

最初に日本に渡ったUボート、U511がもたらした影響、遺産の中には戦後日本を支えるものもありました。ドイツから日本に向かう時に積んだ積み荷に加わっていた射出成形機が戦後日本のプラスチック産業の基礎になったとは驚きです。

U862は大戦末期にオーストラリア沿岸部をただ一隻で暴れ回り、その大遠征はUボート史全体から見ても偉業と言えるものでした。この間たまたま見たCSのある番組でも取り上げられていましたね。

後世の冷静な視点で細かく検証していくと伝説が単なる伝説だった判明する一方で致命的な失敗の原因も浮かび上がります。U168は現地女性に紛れ込んでいたスパイから情報が洩れて沈んだのかと思いきや日本側の防諜能力の低さが有力な原因として浮かび上がったり。良かれと思って細かい航路を関係各所に通達したのが原因で、というのが一度や二度ではないという所に学習能力の無さを感じてため息が出ます。

 

乗員など関係者ひとり一人のレベルまで細かく見ると、実に多くのドラマがあったことが分かります。戦争といったどれだけ大きな出来事も、当事者の数と同じだけ事実というか物語というかがあるわけですが、そのうねりの大きさに驚かされ、圧倒されます。

 

最後にはインタビューを二つ掲載。ひとりは呂500の元乗組員、もう一人は海中ロボットを活用した海洋探索で呂500はじめとする艦船を発見した「ラ・プロンジェ深海工学会」代表理事・浦環氏です。海底資源探索や事故沈没船の早急な引き揚げといった応用分野の広さに感心しました。海底に眠る過去を探る試みが未来を支える可能性はもっと広く知られるべきでしょう。

 

 

Inquebrantable

(不撓)

 

 

『日の丸を掲げたUボート』

内田弘樹

イカロス出版

高さ:21cm 幅:15.2cm(カバー参考)

厚さ:1.4cm

重さ:336g

ページ数:226

本文の文字の大きさ:3mm