メキシコ、エクアドルを提訴 ICJに、大使館突入めぐり:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

 

南米エクアドルの当局がメキシコ大使館に突入し、保護されていたエクアドルの元副大統領を拘束した事件で、メキシコは11日、国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)にエクアドルを提訴した。国際法違反を認め、公式に謝罪するまでエクアドルの国連加盟国としての資格を停止するよう求めている。

(4月12日朝日新聞デジタルから一部引用)

 

外交関係に関するウィーン条約22条において、使節団の公館である大使館は、不可侵とされ、使節団の長が同意しない限り、接受国の官吏は立ち入ることができないとされています。

例外は認められておらず、火災などの緊急時でさえ使節団の長の同意なくして立ち入りが認められないとする見解が有力とされています。

 

外交関係に関するウィーン条約

第22条 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。
 接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。
 使節団の公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は、捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される。

 

国際司法裁判所は、このような公館不可侵ほど国家間関係において基本的義務はないと指摘しています(イランアメリカ大使館人人質事件)。

 

 

今回のように、亡命を求めて大使館に逃げ込むということはしばしば起こりますが、こうした人に庇護を与えることを外交的庇護といいます。

外交的庇護は前記ウィーン外交関係条約にも規定はされておらず、国際慣習法としても確立していないとされています。

そのため外交的庇護を求めて大使館に駆け込んだ人を大使館が保護したとしても、接受国によって保護が保証されるというわけではありませんが、さりとて、接受国の官吏が今回のように大使館に押しかけて連れ戻すということもできないので、国同士で交渉して決着させるということになるのが普通であるところ、今回、エクアドルは大使館に警察を入れて連れ戻したというわけであり、国際的に全く支持される余地はないほどにひどい行為であるものといえます。

 

 

なお、外交的庇護は国際慣習としても確立していないとはされているものの、エクアドルやメキシコが加盟している米州機構加盟国においては、地域的慣習法として確立しているとされ、また、米州機構加盟国では外交的庇護条約を締結し、庇護を尊重する領域国の義務を確認しているため、そうした地域でこうした行為が発生したことも一つの衝撃として捉えられているということがあります。