三宅弘之映画祭/続々・スクリーンの向う側

2016年3月20日(日)・21日(月・祝)13:00~17:00
神戸映画資料館にて開催します。
渡辺武信さん(映画評論家)と荒井晴彦さん(脚本家)をゲストに招いたトークも開催します。

三宅さんと映画を論じる人は、自分の映画への愛着を三宅さんのより濃密な愛着と重ね合わせることで、特定の映画への評価の違いを超え、同好の士が映画を語り合うという祝祭の中に入れるのである。こう考えてくると、三宅弘之という人間それ自体が、映画を語る祝祭の中で映画ファンを結びつける点で、いわば〝 歩く映画祭 〟なのだ。
渡辺武信(「向う側を見続ける人」『スクリーンの向う側』解説文より)


上映スケジュール
3月20日(日)
13:00~14:30 『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』(松竹/1932年/16mm)
監督:小津安二郎 脚本:伏見晁 出演:斎藤達雄、吉川満子
14:35~15:10 トーク <渡辺武信・荒井晴彦>
15:15~17:00 『リオ・グランデの砦』(リパブリック/1951年/35mm)
監督:ジョン・フォード 脚本:J.K.マクギネス 出演:ジョン・ウェイン、モーリン・オハラ

3月21日(月・祝)
13:00~14:40 『赤いハンカチ』(日活/1964年/35mm)
監督: 舛田利雄 脚本:小川英、山崎厳、舛田利雄 出演:石原裕次郎、浅丘ルリ子、二谷英明
14:45~15:10 トーク <渡辺武信・荒井晴彦>
15:15~17:00 『憎いあンちくしょう』(日活/1962年/35mm)
監督: 蔵原惟繕 脚本:山田信夫 出演:石原裕次郎、浅丘ルリ子
17:15~18:45 アフター・パーティ

三宅弘之イラスト・原稿展併催

《料金》入れ替え制
一般・シニア:1200円 
学生:1000円
1日券:2000円(有効期限の1日で2本の映画上映とトークに参加できます。アフターパーティ参加には別途チケットが必要です)
2日券:3500円(2日間両日で4本の映画上映と2つのトークに参加できます。アフターパーティ参加には別途チケットが必要です)
アフターパーティ:2000円(21日のパーティに参加できます。立食&1ドリンクのチケットです。追加ドリンクの注文は別途料金が必要です)
2日券+アフター・パーティ:5000円(2日間両日で4本の映画上映と2つのトークと、21日のアフターパーティに参加できます。パーティは立食&1ドリンクのチケットです。追加ドリンク別途料金)
*トークは無料
*予約受付中(予約者1名につき三宅弘之イラスト缶バッジ1個をプレゼントします)
magazine.kcc@gmail.com まで、参加者様のお名前・ご連絡先(メールアドレスまたはお電話番号)をお知らせください。

主催:KCC(京平シネマ倶楽部)
問い合わせ先:担当 前田耕作(magazine.kcc@gmail.com)

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三宅弘之
1947年兵庫県神戸市生まれ、2014年2月享年67歳逝去。
映画を愛し、人を愛し、酒を愛した彼は、出会ってきた多くの映画ファン、映画人に愛されて来ました。
そして多くの映画を観続け、多くの映画について語り、多くのイラストを残して、逝きました。
2013年には『スクリーンの向う側』(風詠社)を上梓。
1986年1月に仲間を集めて発足した映画サークルはKCC(京平シネマ倶楽部)として、彼が亡き後も続き、今年30周年を迎えます。KCCに在籍した会員は延べ70人を超え、現在も30人を超える会員が在籍しています。
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渡辺武信(映画評論家・建築家・詩人)
1938年神奈川県出身。東京大学建築学科博士課程単位取得満期退学。大学院在籍中より渡辺武信設計室を開設。建築家のかたわら詩人として活躍。その詩には作詞家の松本隆も大きな影響を受けたという。
一方で映画評論家としての活動を続けてきた。青春時代に傾倒した日活アクション映画に惚れぬき、70年代に「キネマ旬報」での連載をまとめた名著「日活アクションの華麗な世界」は、豊富な知識量と徹底した分析で、日活アクションを愛する者だけでなく、日本映画ファンの必読書というべきものである。
<主な著書>
「映画的神話の再興―スクリーンは信じ得るか」「銀幕のインテリア」「日活アクションの華麗な世界 1954―1971(合本)」
荒井晴彦(脚本家・映画監督・「映画芸術」編集長)
1947年東京生まれ。早稲田大学抹籍、雑誌「映画芸術」のスタッフに加わった後、若松孝二のプロダクションで足立正生と共にシナリオを執筆するようになる。ピンク映画の助監督を経験した後、田中陽造のもとで商業映画の脚本を学び、1977年『新宿乱れ街 いくまで待って』で一本立ち。以後、数々の名作・話題作を手がけ、日本を代表する脚本家として数々の賞を受賞。1989年から「映画芸術」の編集長をつとめ映画人を中心とした映画評論を展開し、映画批評の活性化に力を注ぐほか、近年は映画関連の書籍編纂・制作も精力的にこなしている。
<主なフィルモグラフィ>
「赫い髪の女」「遠雷」「Wの悲劇」「身も心も」「共食い」「海を感じる時」「さよなら歌舞伎町」「この国の空」

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スクリーンの向う側/三宅 弘之

¥1,620
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1月31日発売の『映画芸術』誌で今年も「ベストテン&ワーストテン」を執筆しました。
選んだ作品は下記の通りです。

BEST
9点 さよなら歌舞伎町
9点 ハッピーアワー
9点 この国の空
7点 バクマン
7点 ピース オブ ケイク
7点 マエストロ
2点 娚の一生
2点 夫婦フーフー日記
2点 ローリング
1点 ジョーカー・ゲーム

WORST
10点 天空の蜂
10点 あん
9点 海街diary
8点 きみはいい子
7点 百円の恋
7点 ソロモンの偽証 前篇

併せて3000字の選評を書いています。是非お買い求めの上、お読み下さい。

冒頭次のように書きました。

映画『したくて、したくて、たまらない、女。』を撮った沖島勲が死んだ二〇一五年、「戦争ができたくて、できたくて、たまらない、男」安倍晋三は安保法案十一本を強行採決した。昭和三〇年生まれの筆者にとって、中坊だった昭和四五年は安保デモではなく万博の年だった。そう「戦争も安保も知らない子供」だった筆者は、国会議事堂前の安保デモなんてもう体験できないと思っていた。ところが六〇歳を前にして九月一八日、国会議事堂の前にいた。野外ロックフェスのような雰囲気に「民主主義ってこれだ」と思う方が、思わないよりいいと思い、「戦争も安保も知っている爺」になりつつあることに愕然としていた。
 さて本年は三本の映画をもってベストスリーとする。三本の共通点は「徹底的な台詞劇」であり、三本のうち二本は荒井晴彦が、一本は濱口竜介が脚本に名を連ねている。(以下略)

『映画芸術 2016年2月号』是非お買い求めお読み下さい。



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先日聞いたよしだよしこさんの新しい唄、『高野君の焼鳥屋』が素晴らしかった。Ballad(物語詩)とも呼ぶべき10分以上の歌は、いくつかの旋律を組み合わせて自在に紡がれていく歌だ。
歌は、まず「いわきの駅から歩いて1分、高野くんの作った焼鳥屋がある」と始まる。そう、東日本大震災によって津波と原発事故に見舞われた福島についての歌である。

津波に流された家から譲られた神棚で作られたカウンターで「美味しく、高野くんの焼いたレバー」を食べているのだ。人が住めなくないままになっている半径20キロ圏内の故郷富岡町にいつか帰るのかと聞かれても、繁盛している店で忙しく焼鳥を焼きながら帰らないと答える。

そう店は繁盛しているのだ。歌はリフレインする。
「いらっしゃーい、
店は繁盛、いつも満員
私はレバーのタレが好き」
この何度も繰り返されるリフレインの美しさが、生きる人の清々しさが感じられ、この歌を彩る。

歌の物語は核心へと進む。昔原発で働いていた高野くんは、被曝量を測りながら、立入禁止の瓦礫の中で、お母さんを2週間後に、お父さんを3週間後に見つけたと。
話を聞く彼女の沈黙に対して、微笑みながら高野君は、「宝物みたいだったんだ、宝物を見つけたみたいに嬉しかったんだ」と言うのだ。

歌を聞いている僕は胸を締め付けられる。
でも、「宝物を見つけたその手は、今夜も忙しい」。そう、富岡町から車で30分のいわきの町は復興景気で、「妙に活気にあふれている」のだ。「土木関係、復興事業関係、除染作業員、ジャーナリスト」そして東京電力の人、アジア各地から働きに来た人で。

さらなる事業拡大を計画する高野くんに二人目の子供が生まれると言う。彼女も僕らも「子どもたちに食べさせるものはどうしてるのって」思い、「突然、原発反対を遠くから叫んでみたり」する。でも彼女も僕らも「目の前にいる一人の人にも微笑みかけることさえできない」のは同じだ、

僕らも彼女も、鳥を触ることもできないまま、捌いてもらって、焼いて貰って、美味しく食べるし、電気がどこでどうやって作られたものかも知らなかったのだ。

そして彼女は小さな決意を歌う。「自分の目で見ること、自分の耳で聞くこと、そして自分の心で感じたこと」を歌おうと。「立ち止まったら、二度と前には進めない、そんな風に生きてきた」そんな普通の人たちのことを歌おうと。
自在に歌われるこのBalladには、奔放に奏でられるタコヤキのスライドギターによってイキイキと彩られる。
(なおこの2015年3月のライブの映像では、詩は完成形ではなかったようで、
僕が聞いたBalladの歌詞は、4月のライブの映像の時とほぼ同じだった
https://youtu.be/TpnY--tObKo)