さてこの作品は
有名な絵本のかわいそうな象が元となっております。
この絵本を私が初めて母から読んでもらったのは
二歳の頃でございます。
ただ、記憶としては三歳か四歳ころの記憶しか残っておりません。
その時、強く印象に残ったのは
この絵本を読んでくれる母が泣いていた事でありました。
ところがどっこい
私の方は泣くどころか憤りを感じていたのであります。
というのも、
「戦争で食糧難だし、空襲で猛獣が逃げ出したら大変だから殺処分して」
という役所の言い分に「もっともだ」と至極納得したからなんですね。
なのに飼育員はいつまでも像を殺処分しない。
この行動がたいへんわがままに思えたのであります。
折しもこの頃、わたくしの弟が二歳になっておりまして、
おじいちゃんに貰った消防車のおもちゃを
次男にねだられ、身を斬られるような思いで消防車を譲ったという
つらいエピソードがございました。
なので余計に飼育員に感情移入してしまったのでしょう。
「俺は大切な消防車を弟に譲っているのに、こいつらは危険な動物を殺さないでくれと
未だにわがままを言っている。なんて聞き分けのない子なのだろう」
という思いでいっぱいなのでした。
まあ、四歳くらいの子供なので
戦争の事もよくわかりませんし
人間以外の生き物はだいたい
害獣か害虫として扱う田畑ばかりの山村の生まれであったので
動物を愛玩するというイメージが薄かったのは否めません。
ただやはりこの時の母の涙は
どういうことなのだろう?
という疑問が長年にわたり続いておりました。
その疑問にようやく答えを出したのがニコニコさんが泣いた日だったのでございます。
動物も飼育員も大好きになれたら
この話はとてつもなくかなしいお話なのだと。
答えとしてはとても単純なものですね。
しかしこの答えに辿り着くのに
ひどく時間を擁してしまいました。
時間の掛かったあたりまえの答えですが
それだけ愛着のある作品ともなりました。