はれ、ときどきリウマチ

はれ、ときどきリウマチ

時々痛みが出るリウマチ主婦の、時々下手っぴな絵がついてくる「時々絵日記」

ご訪問ありがとうございます。
「関節リウマチ」という病気をご存じですか?えっ、お年寄りがなるんでしょうって?いえいえ違います。
関節リウマチは自己免疫疾患の一種です。本来体に入ってきた異物を排除するための免疫システムが異常を来し、自分自身の関節などを攻撃して炎症を起こす病気なのです。命に関わることは滅多にありませんが、関節の痛みや全身倦怠感に悩まされ、放っておけば関節が不可逆的に変形してしまいます。

このブログはそんなリウマチを患っているあさ月が書いています。
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(※続き物です。未読の方は先にこちらをどうぞ その1→  その2→  その3→  その4→  その5→

もう一人の本部選出委員須藤さんはその時のことをこう振り返る。
「おおっ、安田さんもうここで言うんだ~?!と思って。急な話で事前に打ち合わせができなかったからいつ言うのかわかんなくって」
「そうそう、でも早見さんが『俺が立候補』とか言っちゃったらややこしくなるから、もう常任委員の順番が終わったら即言おうと思って構えてた(笑)」
「それ正解だったね」


「清水会長が?誰に?」
予期せぬ「候補者」の登場に苛立ちを隠せない様子で早見さんは問う。
「え、えーと、誰かはまだちょっと結果が未確定なので言えない…らしい、んですけど、でもあのたぶん今週末までには決まるそうなんで…」
「なんかはっきりしないな。会長に直接聞く」
早見さんは携帯電話を取り出し、清水会長に電話した。


「そう、いきなり電話かかってきてさ。でも俺ものらりくらり答えて曖昧なことしか言わねえしイライラしてたね。『俺が責任を取って立候補するつもりで』とか言ってたけど知らねーよw大体選出委員長ってそういうんじゃないし。責任を取って立候補って意味わかんねえからw」


清水会長の声掛けの結果を待たなければ候補者は確定できない、ということで選出委員会は中途半端な形で終わった。
その夜、早見さんからあさ月たち一年目役員にメールが来た。

<本日選出委員会で全候補者を確認する予定でしたが、安田委員より清水会長が会長候補者に声掛けをしていると発言があり保留となりました。このことで色々予定がずれる可能性があります。一年目役員の皆さんに迷惑をかけてすみません>

さらに副会長であるあさ月と、書記の室井さんには補足メールも来た。

<総会の流れにかかわってくるので、選出委員会の詳細を伝えます。
本日会長以外の候補者は選出委員会内で承認を得、会長は選出委員から候補が出なければ早見を候補として了承を得た上で、学校と本部役員への報告、候補者リストの配布を26日に行う予定でした。
しかし先のメールの通り保留になりました。会長にも確認しましたが、どなたか知りませんが声かけをしていて週末には決まるそうです。どうなるかわかりませんが、少なくとも予定は後ろにずれます。候補者の確定が委任状提出期限に間に合わなければ委任状の提出期限延期も考えなければいけませんが、清水会長はそれについて特に言及しませんでした。
立候補者への総会出席依頼も、選出委員会で確認できていないのでできません。
とにかく予定が狂っているので対応を考えないけせ。>

予定、というか自分のシナリオを狂わされたことへの苛立ちからか、最後日本語が変になっている。
「早見を候補として」ってさらっととんでもないことを言ってるし。

(しかしまあ、これをその「どなたか」が読んでいるとは夢にも思ってないんだろうな~)


本部選出委員の二人は口を揃えた。
「うん、全然思ってないと思う。私たちだって会長から聞いたとき全然考えてなかったからびっくりしたもん。
緑川さん?!って

清水会長の声かけの相手。
土壇場で切ったカード。


それはあさ月だった。


今は急転直下の選出委員会から4日後、早見さんと、都合のつかなかった木原さん・小林さんを除く全役員がいつものデニーズに集合している。名目は「緑川さんの不安を解消する会」。次期会長となる話を正式に受けるに当たって心配なことを相談したり、来年度一緒にやっていく一年目役員皆の協力を仰いだりする会(by清水会長)だ。

「緑川さんが会長になるって、大分前から決まってたんですか」と神田さん。

「いや、全然。超最近(笑)」「そう、まだ一週間経ってないですよね」

話は近隣他校との合同行事の日まで遡る。
あの日、<このままだと時間切れかな。。。>という清水会長のメールには続きにこんな一文があった。

<緑川さん、Y小初の女性会長になるかー?>

それに対してあさ月はこう返信した。

<あー、一瞬考えたんですけどね。初の女性会長。
小林さんと似たパターン(その4を参照→ )で、副会長を解任し会長へ。副会長は1年だけ別の人が引き継ぐ。
でも副会長が二人とも新人になったら困るし、かといって早見さんを留任させるのは早見さんが承服しないだろうし(任期切れになる早見さんを会長にせず任期が残る私を会長にする意味が分からないだろうし)。
それに何より私の有給が足りなくなりそうなので無理です~>

清水会長から返信。

<それだ!(・∀・)
小林さんパターンで木原さんを副会長だったらいけるんじゃない?
緑川会長!!
なんで今まで気づかなかったんだろう!どんどんイメージ湧いてきた!>


<ちょwww待っwwwww
無理っつっとろーがwww>


そこからどわーーーっと怒涛のようなメールの応酬が開始され、
・会長業務は代理も立てられるし、来年度一年はどのみち副会長なのだから有給取得頻度はそんなに変わらない
・早見さんに会長になられたらおそらく副会長の苦労は半端ない
・会長になって主導権を持ち仕事を下に振る方が楽かもよ
という説得に少しずつ立候補を引き受ける方向へ傾いていった。これが選出委員会前日夜のこと。
勝ち目ありと踏んだ清水会長は選出委員の二人に「緑川さんを会長候補として今説得している。選出委員会で誰かは言わず俺が声をかけている候補がいると言って会長候補決定を保留にしてくれ」と連絡。
そして運命のちょっと待ったコールからデニーズへ←今ここ

「早見さんは相当衝撃を受けるよね。それも内部から候補者が出るなんて」と須藤さん。
「でも、外部からはもはや出づらい状態だったんですよ。みんな早見さんがやると思って遠慮してて。だから事情を知ってる内部から出るしかなかったんです。ある意味『俺がやる』って言いふらすってすごい作戦ですよね。もう少しで負けてましたよ」とあさ月。
「だからそんな作戦を仕掛けてくるような奴を会長にしちゃダメなんだってwまあでも最後の最後まで諦めないでいればこうしてちゃんといい結果になるんだよ。諦めたら終わりだからね、うん」と清水会長。
「何ですかそのスラムダンクの『諦めたらそこで試合終了ですよ』みたいなw」


これにて一件落着とあいなりそうなこの話、良く言えば「青い鳥はすぐ側にいたんだ!」だが、どちらかというと
「ミイラ取りがミイラになった」
だよなあ、と思うあさ月であった。木原さんを会長にすべく動き始めたのに、気づいたら自分が会長だ。それもY小学校史上初の女性会長!なんとも恐れ多いがやるっきゃない…よな。

そして早見さんの「作戦」は代償が大きかった。さんざん俺がやると言い回ってこの結果はかなり恥ずかしい。自業自得なのだが…
もしこれを読んでいるあなたがPTA会長をやりたいのなら、この作戦は諸刃の剣だと覚えておくと良いだろう。
それ以前に格言「やりたい人よりやってほしい人」に当てはめると、やりたいあなたは実はPTA会長向きではない…のかもしれない?
逆にあなたかあなたの配偶者がPTA会長をやってくれないかと頼まれているのなら、特にそれが人柄を見込まれてのことだと思われるなら、なんとか前向きに検討してあげてほしい。
もしかしたらあなたの学校のPTAが危機に瀕しているのかもしれない。
それを救える幸せの青い鳥はあなたなのだ。

(ひとまず完)

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有力候補の小林旦那さんを失い、他の候補者に当たっていくが次第に状況の厳しさが浮かび上がってきた。

まず「あの人は自営業だから時間に融通が利くはず」などの条件面で抽出した候補の場合、人柄が不明である。
とりあえず選出委員がアポイントを取り、PTA会長候補として名前が挙がっていることを伝えお願いできないかと頼むわけだが、ある候補者は「PTA会長」のインパクトに頭が真っ白になってしまったという。
翌日になって我に返り清水会長のもとへ断りにやってきた。
清水会長は彼の「お断り」の理由を一つ一つ「それは~~だから大丈夫」「それはこうカバーできます」とブロックしていったそうだが、全ての理由が尽きたときの言動が「明らかにまずい」(清水会長談)ので彼を候補から外したという。
「会長に限らず本部役員としても不適当と思われた」とは一体どんな言動だったのか個人的には非常に興味があるが、とにかくそんなわけで人柄が分からない人はこのように候補として成り立たない可能性がある。

かといって人柄を知っている人には限りがある。あさ月だって長女のクラスメイトのお母さんはかろうじて知っていても(それでもお互い仕事をしていたりで言葉を交わす機会もなく、人柄までは分からない人が大半)お父さんなど顔も見たことがないレベル。他の選出委員や会長だって似たようなものだ。
唯一の例外が木原さんや早見さんの住む社宅で、会社でのつながりがあるし社宅内での交流もあるから父親であっても誰がどんな感じだと住人同士の間ではよく知られている。

が、社宅は恐ろしい状況に陥りつつあった。
日を追うにつれ社宅内の候補に声をかけると

「会長?だって早見さんがやるんでしょ?」

という返答が返ってくるようになったのだ。
早見さんが「会長が決まらなくてさー、まあ俺がやるよ」と吹聴して回っているからだ。
そうなれば同じ社宅内の人は本当は自分が会長になってもいいかなとちょっと思っていたとしても、角を立てたくないし早見さんがやるんならそれでいいじゃないかと引いてしまう。
そのうち社宅内にとどまらず学校中に「早見会長説」が広まり始め、誰に声をかけても良い返事が期待できない状況になってきた。非常に良くない。


もう2月半ばを過ぎた。タイムリミットが迫っている。3月11日にPTA総会がありそこで次期役員候補者の承認が行われる。候補者の選出は総会10日前までに行う決まりなので、候補者最終確定をするための選出委員会が2月24日に開催される予定になっていた。

選出委員会を2日後に控えた2月22日、近隣他校数校との合同行事があった。本部役員全員スタッフとして参加し、つつがなく過ごしたつもりだったが、その晩に清水会長からメールが飛んだ。

<選出委員の皆さんへ

 明後日の選出委員会の前に、委員で今まで誰にアクセスしてどういう結果だったかを共有し、他に候補者がいないかを確認してください。
 早見氏が会長になることを前提にはしないでもらいたい。

 今日も他校の会長2名・副会長1名から早見氏にクレームが出てしまったので、なんとかして踏みとどまって候補を見つけたい…>


あさ月は(別件もあったので)清水会長にメールを打った。

<大変ですね。やはりクレームが出てますか…。しかし全体に早見さん推しムードになってしまってますよね。なんとかならないものでしょうか>

すぐに返信が来た。

<他校でもまだ会長が決まっていないところはあるから、まだ粘れるとは思うんだけどね。でも選出委員の二人が制限時間超過のプレッシャーに耐えられないかもしれない(- -;)
このままだと時間切れかな。。。>


2日後、早見選出委員長以下委員全員参加で選出委員会が開催された。

「会長については候補者はいませんか」
常任委員と兼任の委員4名が次々に「いません」と申告する。
「では」と早見さんが口を開いたその瞬間

「あっあのっ!清水会長が、候補者に声掛けしています!!」

本部選出委員の安田さんが「ちょっと待ったコール」をかけた!

(つづく)

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清水会長からのメールはこうだ。

<自分が考えるベストの体制は、

小林さんの旦那さんを会長に、会計は木原さんが一年だけ引き継ぐ。>

小林さんはあさ月と同じ一年目役員の会計だ。その小林さんを会計から降ろして(夫婦共役員は無理だから)旦那さんを…なかなか斬新なアイディアである。

<理由は、小林さんの旦那さんなら人柄もばっちりだし、本部の概況も分かっているから。木原さんは会長は無理だが別の役職だったらという話で、一年限定なら奥さんの幼稚園役員もまだ三役ではないので両立できる。会長を支えるのにふさわしい。>

小林さんは下のお子さんが小さいこともあり、会計業務以外の行事手伝いなどにはよく旦那さんを代役で出している。旦那さんは人当たりもいいし、働きもいいし、行事終了後の飲み会の付き合いもいい。なるほど適任かもしれない。

<そこで、小林さんの旦那を説得に当たりたいと思います。作戦として

1.まず「相談がある」として本部男連中(怪しまれないように神田さんも)と小林さん夫を呼び出す。
2.そこでこのメールを見ているメンバー全員が加わり説得を開始する 


奇襲作戦じゃねーかw

そして神田さんはやはり一年目の会計監査役だ。一年目役員がまた一人巻き込まれ…ていうか「このメールを見ているメンバー全員」って説得係にもはや当然のごとくあさ月も含まれているし。

その後
<日曜にいつものデニーズで10時に集まる約束を取り付けました。頑張りましょう>
とメールが来、いよいよその日曜日を迎えた。

病み上がりなこともあり少し遅れ気味でデニーズに到着すると、既に皆来ていた。ターゲットの小林さんの旦那さん(以下略して小林旦那さん)も来ている。
男同士の話(?)のはずが、選出委員の女性二人に加えあさ月も来るに至り

「これ、何の集まりなんですか?(汗)」

と小林旦那さんが聞いてくるが、曖昧に笑ってごまかす。そら気になるわな。

各自ドリンクバーの飲み物を取り着席し、おもむろに清水会長が口火を切る。
「実は本部の次期会長を、小林さんにお願いしたいなと」
会長以下6名の視線が一番隅に座った小林旦那さんに集中する。

「え、ちょっ…いや無理、無理無理無理無理」

視線を避けてテーブルに突っ伏す小林旦那さん。

聞けば、奥さんの代役で出ている行事の手伝いは土日でしかも数ヶ月に1回だから可能なのであり(それでもずいぶん前から仕事を調整している)、クライアントがあるタイプの仕事でクライアントから注文が入れば即対応を求められるため平日は全く動けないとのこと。仕事量もまちまちで、多量に仕事を抱えたときは一切何もできないという。
会長の仕事はある程度は代理を立てられるが、やはり平日が全くダメというのはちと厳しいのでそういう事情なら仕方ない…。

「え、でもここで僕が断ったら嫁ピンチ?!今後本部内でいじめられるとか…」

「そう、奥さんをいじめられたくなかったらおとなしくこの話を受け…w」と言いかける清水会長を制し「そんな悪質なことはしません!(^_^;」ときっぱり言い切っておいたが、よく気がつき優しい旦那さんで羨ましい限りである。
うちの夫ハカセにはできない芸当だ。

またしても小林さんと同学年の保護者で自営業だとか会長に適任そうだと思い当たる人を少し挙げてもらって、その人たちも加えた他の候補者に早速今日の午後からアタックしようということを決め、奇襲作戦は幕を閉じた。

(つづく)