(※続き物です。未読の方は先にこちらをどうぞ その1→■
その2→■
その3→■
その4→■
その5→■
)
もう一人の本部選出委員須藤さんはその時のことをこう振り返る。
「おおっ、安田さんもうここで言うんだ~?!と思って。急な話で事前に打ち合わせができなかったからいつ言うのかわかんなくって」
「そうそう、でも早見さんが『俺が立候補』とか言っちゃったらややこしくなるから、もう常任委員の順番が終わったら即言おうと思って構えてた(笑)」
「それ正解だったね」
「清水会長が?誰に?」
予期せぬ「候補者」の登場に苛立ちを隠せない様子で早見さんは問う。
「え、えーと、誰かはまだちょっと結果が未確定なので言えない…らしい、んですけど、でもあのたぶん今週末までには決まるそうなんで…」
「なんかはっきりしないな。会長に直接聞く」
早見さんは携帯電話を取り出し、清水会長に電話した。
「そう、いきなり電話かかってきてさ。でも俺ものらりくらり答えて曖昧なことしか言わねえしイライラしてたね。『俺が責任を取って立候補するつもりで』とか言ってたけど知らねーよw大体選出委員長ってそういうんじゃないし。責任を取って立候補って意味わかんねえからw」
清水会長の声掛けの結果を待たなければ候補者は確定できない、ということで選出委員会は中途半端な形で終わった。
その夜、早見さんからあさ月たち一年目役員にメールが来た。
<本日選出委員会で全候補者を確認する予定でしたが、安田委員より清水会長が会長候補者に声掛けをしていると発言があり保留となりました。このことで色々予定がずれる可能性があります。一年目役員の皆さんに迷惑をかけてすみません>
さらに副会長であるあさ月と、書記の室井さんには補足メールも来た。
<総会の流れにかかわってくるので、選出委員会の詳細を伝えます。
本日会長以外の候補者は選出委員会内で承認を得、会長は選出委員から候補が出なければ早見を候補として了承を得た上で、学校と本部役員への報告、候補者リストの配布を26日に行う予定でした。
しかし先のメールの通り保留になりました。会長にも確認しましたが、どなたか知りませんが声かけをしていて週末には決まるそうです。どうなるかわかりませんが、少なくとも予定は後ろにずれます。候補者の確定が委任状提出期限に間に合わなければ委任状の提出期限延期も考えなければいけませんが、清水会長はそれについて特に言及しませんでした。
立候補者への総会出席依頼も、選出委員会で確認できていないのでできません。
とにかく予定が狂っているので対応を考えないけせ。>
予定、というか自分のシナリオを狂わされたことへの苛立ちからか、最後日本語が変になっている。
「早見を候補として」ってさらっととんでもないことを言ってるし。
(しかしまあ、これをその「どなたか」が読んでいるとは夢にも思ってないんだろうな~)
本部選出委員の二人は口を揃えた。
「うん、全然思ってないと思う。私たちだって会長から聞いたとき全然考えてなかったからびっくりしたもん。
緑川さん?!って」
清水会長の声かけの相手。
土壇場で切ったカード。
それはあさ月だった。
今は急転直下の選出委員会から4日後、早見さんと、都合のつかなかった木原さん・小林さんを除く全役員がいつものデニーズに集合している。名目は「緑川さんの不安を解消する会」。次期会長となる話を正式に受けるに当たって心配なことを相談したり、来年度一緒にやっていく一年目役員皆の協力を仰いだりする会(by清水会長)だ。
「緑川さんが会長になるって、大分前から決まってたんですか」と神田さん。
「いや、全然。超最近(笑)」「そう、まだ一週間経ってないですよね」
話は近隣他校との合同行事の日まで遡る。
あの日、<このままだと時間切れかな。。。>という清水会長のメールには続きにこんな一文があった。
<緑川さん、Y小初の女性会長になるかー?>
それに対してあさ月はこう返信した。
<あー、一瞬考えたんですけどね。初の女性会長。
小林さんと似たパターン(その4を参照→■
)で、副会長を解任し会長へ。副会長は1年だけ別の人が引き継ぐ。
でも副会長が二人とも新人になったら困るし、かといって早見さんを留任させるのは早見さんが承服しないだろうし(任期切れになる早見さんを会長にせず任期が残る私を会長にする意味が分からないだろうし)。
それに何より私の有給が足りなくなりそうなので無理です~>
清水会長から返信。
<それだ!(・∀・)
小林さんパターンで木原さんを副会長だったらいけるんじゃない?
緑川会長!!
なんで今まで気づかなかったんだろう!どんどんイメージ湧いてきた!>
<ちょwww待っwwwww
無理っつっとろーがwww>
そこからどわーーーっと怒涛のようなメールの応酬が開始され、
・会長業務は代理も立てられるし、来年度一年はどのみち副会長なのだから有給取得頻度はそんなに変わらない
・早見さんに会長になられたらおそらく副会長の苦労は半端ない
・会長になって主導権を持ち仕事を下に振る方が楽かもよ
という説得に少しずつ立候補を引き受ける方向へ傾いていった。これが選出委員会前日夜のこと。
勝ち目ありと踏んだ清水会長は選出委員の二人に「緑川さんを会長候補として今説得している。選出委員会で誰かは言わず俺が声をかけている候補がいると言って会長候補決定を保留にしてくれ」と連絡。
そして運命のちょっと待ったコールからデニーズへ←今ここ
「早見さんは相当衝撃を受けるよね。それも内部から候補者が出るなんて」と須藤さん。
「でも、外部からはもはや出づらい状態だったんですよ。みんな早見さんがやると思って遠慮してて。だから事情を知ってる内部から出るしかなかったんです。ある意味『俺がやる』って言いふらすってすごい作戦ですよね。もう少しで負けてましたよ」とあさ月。
「だからそんな作戦を仕掛けてくるような奴を会長にしちゃダメなんだってwまあでも最後の最後まで諦めないでいればこうしてちゃんといい結果になるんだよ。諦めたら終わりだからね、うん」と清水会長。
「何ですかそのスラムダンクの『諦めたらそこで試合終了ですよ』みたいなw」
これにて一件落着とあいなりそうなこの話、良く言えば「青い鳥はすぐ側にいたんだ!」だが、どちらかというと
「ミイラ取りがミイラになった」
だよなあ、と思うあさ月であった。木原さんを会長にすべく動き始めたのに、気づいたら自分が会長だ。それもY小学校史上初の女性会長!なんとも恐れ多いがやるっきゃない…よな。
そして早見さんの「作戦」は代償が大きかった。さんざん俺がやると言い回ってこの結果はかなり恥ずかしい。自業自得なのだが…
もしこれを読んでいるあなたがPTA会長をやりたいのなら、この作戦は諸刃の剣だと覚えておくと良いだろう。
それ以前に格言「やりたい人よりやってほしい人」に当てはめると、やりたいあなたは実はPTA会長向きではない…のかもしれない?
逆にあなたかあなたの配偶者がPTA会長をやってくれないかと頼まれているのなら、特にそれが人柄を見込まれてのことだと思われるなら、なんとか前向きに検討してあげてほしい。
もしかしたらあなたの学校のPTAが危機に瀕しているのかもしれない。
それを救える幸せの青い鳥はあなたなのだ。
(ひとまず完)
ご訪問ありがとうございます。
「関節リウマチ」という病気をご存じですか?えっ、お年寄りがなるんでしょうって?いえいえ違います。
関節リウマチは自己免疫疾患の一種です。本来体に入ってきた異物を排除するための免疫システムが異常を来し、自分自身の関節などを攻撃して炎症を起こす病気なのです。命に関わることは滅多にありませんが、関節の痛みや全身倦怠感に悩まされ、放っておけば関節が不可逆的に変形してしまいます。
このブログはそんなリウマチを患っているあさ月が書いています。
「関節リウマチ」という病気をご存じですか?えっ、お年寄りがなるんでしょうって?いえいえ違います。
関節リウマチは自己免疫疾患の一種です。本来体に入ってきた異物を排除するための免疫システムが異常を来し、自分自身の関節などを攻撃して炎症を起こす病気なのです。命に関わることは滅多にありませんが、関節の痛みや全身倦怠感に悩まされ、放っておけば関節が不可逆的に変形してしまいます。
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