霞が関公務員の日常
Amebaでブログを始めよう!
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

行政文書を作るときの相手方の発言の確認

引き続き、手間なく書けるニュースものを書いてみて、本当に再開するかを探っていきます。

最近大きめのニュースになっている、放送法の解釈変更をめぐる総務省の内部文書について。

 

このニュースそのものへの私の感想は、総務省が正規の行政文書と認めたことは、当たり前という感じ。

中身も形式も怪しいところは全くなく、これだけの量をでっち上げるのは不可能だから、国家公務員が見たら誰でも一目で本物でしょ、と言うところ。

中身についての感想もありますが、ちょっとまずいかもしれないので書きません。

 

しかし、このブログの目的は、私の個人的な感想を書くことではなく、公務員としての専門的知見をもって世の中に伝えたいことを書くこと。

そういう点で書きたいことは、このニュースの今後の業務への影響。

 

一言で言えば「誰かの発言を行政文書に書く場合は、必ずその誰かの確認を受けろ」というルールができることを心配しています。

仮にそういうルールが徹底的に実施された場合には、今回のような発言は文書に記録されなくなるかもしれません。

 

(ちなみに実態としては、相手方の確認を求めることは基本的にはしないことが多い。するのは、合意した発言内容をその後、対外的に使う場合にほぼ限られる。内部でのみ使う分には、確認する必要が乏しいので。)

 

「○月○日 ○○氏と○○について議論。○○といった発言があった」という程度のごく簡略化され、言った本人にとって都合の悪い内容はすべて消されたものになる。

そして、本当に言ったことは口頭でのみ報告されるようになる。

 

それは、都合の悪い内容を発言する、権力のある人にとっては、とても都合がよい。

相手に圧力をかける発言をし、その発言を文書にするなら見せろと言い、都合が悪い部分は全部消去しろと要求できる訳ですから。

 

そういう権力に対する、権力のない側の防御策が、相手に見せずに相手の発言を記録する文書を作ること。

それは、長期的・大局的に政府をよいものにしていくために、とても価値のあることだと思っています。

 

(ちなみに権力のある側の防御策は、現場でのメモ取り禁止ルール。後で文書にするなと言ってもされてしまいますが、現場でメモを取っていれば取るなと言えますからね。メモが全くない状態で、記憶だけで正確に発言を再現するのは難しい。)

 

正確性を期するためには言った本人の確認が必要などという単純な言葉で、そういう価値を否定するルールを作って欲しくはありません。

 

そういったルールが作られる萌芽は、既にあります。

内閣府の公文書管理課というところが作っている「行政文書の管理に関するガイドライン」には、こういう記述があります。

 

「○○省の外部の者との打合せ等の記録の作成に当たっては、○○省の出席者による確認を経るとともに、可能な限り、当該打合せ等の相手方の発言部分等についても、相手方による確認等により、正確性の確保を期するものとする。ただし、相手方の発言部分等について記録を確定し難い場合は、その旨を判別できるように記載するものとする」

 

このルールのままならよいのです。相手方の確認は「可能な限り」、つまり義務ではないので。

相手方の確認を取る趣旨は「正確性の確保を期するため」とあります。

つまり、相手方が正確でない形に修正しようとする場合は、確認を経ることでかえって正確性が確保されなくなるので、確認は不要とも考えられます。

 

この「相手方の確認」が今回の件を機に、例外のない義務となり、逃げ道がなくなることを心配しています。

そういうルールになればそのとおりに振る舞いますが、それで価値ある行政文書が作られなくなっていいのだろうか、と思ってしまいます。

 

杞憂に終わることを期待しつつ。

役所の一報道対応者から見た「オフレコ」の意味

このブログを本格再開させるか考えあぐねているのですが、とりあえずちょうどいいニュースが飛び込んできたので、軽く1回書いてみます。

能動的にテーマを考えて書くのは難しいですが、ニュースへのリアクションは簡単なので。

ただ、ニュースへのリアクションは即日書かないといけないのが面倒。

 

総理秘書官がLGBT差別発言で更迭というニュースがありました。

それだけなら書こうという気にならなかったのですが、オフレコ前提の取材中の発言だったというところに、興味を持ちました。

オフレコ取材報道の経緯 性的少数者傷つける発言「重要な問題」(毎日新聞)

 

2011年に、防衛省の沖縄防衛局長がオフレコで「犯す前に『やらせろ』とは言わない」という発言で更迭されたというニュースがあって、その時もブログを書いたんですよね。

防衛庁沖縄防衛局長の「犯す前に『やらせろ』とは言わない」発言

 

私の感想はその時も書いたように「オフレコを信じるなんて脇が甘すぎる(マスコミとのオフレコ懇談ってのは、報じてほしいんだけど公式には言えない本音を伝える場であって、報じられたら困ることを放言していい場ではない)」に尽きます。

いろいろ事情があったのかもしれないので、一方的な指弾は避けますが、一般論的な感想として。

 

私は今、とある役所で報道対応をしていて、オフレコっぽい記者との懇談もする機会があるので(オフレコっぽい雰囲気はありますが、明確に合意してないので実際はオンレコでしょうが)、その経験から感じていることを書いてみます。

正確な知識に乏しく、間違っている部分もあるかもしれませんが、省庁の一報道対応者がこう考えながら業務を行っているという、個人的な話として読んでください。

 

 

1.そもそもオフレコとは何か

オフレコって、発言者が一方的に宣言すればそうなる訳ではなくて、記者との合意があって初めて成立します。

そして、オフレコには2種類あるんだと思っています。発言の内容も報じない合意のオフレコと、内容は報じていいが発言者の名前は出さない合意のオフレコと。

 

一定レベル以上の責任者である公人のオフレコって、大抵は後者、内容は報じていいが発言者の名前は出さないタイプのオフレコなんだと思います。

だってそうじゃないと、内容も報じられないのでは、忙しい記者が聞く意味がない。

 

オフレコの場で話した内容は、私だと「○○省幹部は」と、総理秘書官だと「官邸幹部(関係者、筋)は」という主語で報道されるでしょうか。

 

そして、その「発言者の名前は出さない」という合意も、その人物が発言したと報じるに値する失言がなければ、という条件付きなんだと思っています。

私レベルでは失言しても報じる価値がないのですが、それでも、言ったことは常に実名入りで報じられても文句は言えないという緊張感を持って発言しています。

 

2.何のためにオフレコをするのか

内容は報じてもいい、失言があれば発言者も報じていいのでは、オフレコの約束は意味がなく、記者側が一方的に有利、発言者側が一方的に不利で、オフレコなんてやめればいいじゃないかと思った人もいるかもしれません。

 

でも、そうではありません。そういう条件でも、オフレコは、発言する公人の側にも大きなメリットがあるからやっているのです。

私が、オフレコっぽい場で踏み込んだ発言をする目的は、大きく言えば3つでしょうか。

 

(1)日程の見込みを伝えて、よい内容の記事を書く時間を記者に与える

重要なニュースを突然出すと、記者に時間がなくて、たくさん報道してほしいのに内容が乏しくなったり、心証を害して意図的に意地悪い記事が書かれたりします。

(記者の名誉のために書くと、役所側が心証を害するような対応をしても、それだけで意地悪くはなりません。記者もプロですから、気持ちは気持ち、仕事は仕事です。)

 

ただこれも、日程自体がニュースになるほどの重要な内容だと、安易に「いつ頃だと思いますよ」と言うと、そう書かれてしまいます。

日程にニュースバリューはあるか、日程の見込みを書かれてもよいか、書かれたくない場合はどの程度までボカせば書きようがないか、その見極めが重要になります。

 

(2)記者の期待値のコントロール

今後、公式に発表する予定の内容が、どの程度のニュースバリューがありそうかを伝えます。

重要だと思っていたのに大したことなくて肩透かしとか、ニュースバリューなしと思っていたのに結構重要で慌てて記事を書く羽目になった、となっていいことはありません。

記者の期待が高すぎると思えば「大した内容じゃないですよ」と期待値を下げ、注目してなくて危ないと思えば「けっこう興味深い内容になりますよ」と関心を高めます。

 

ただ、なかなか難しさもあります。役所側の思う重要性と、記者側の思う重要性は必ずしも一致しません。

役所は政策面で意味あるものを重要だと考えますが、記者は読者の関心があるものを重要だと考えます。

 

特に危ないのは不祥事、スキャンダル系。

ありふれた出来事だし、悪質でもないので重要性は低いと考える案件でも、記者の関心は極めて高いということはよくあります。

この温度差をキャッチして、不祥事をやらかした担当部局に「軽く見るな」と警告するのも、私の仕事の1つです(と簡単に言いますが、難しくてなかなかできていない)。

 

(3)記者の反応を事前に探る

何か重要な決定が予定されているとき、あえてその内容の一部を説明し、どういう角度で記事にしてきそうかを探ります。

厳しい論調になりそうなポイントがあれば、そのポイントについてどう説明するか、想定問答を充実させます。

場合によっては、決定の中身を変更することが必要な場合もあるでしょう。

 

ただ、これは難易度が高い。

「○○省幹部は、今後こういう決定がなされるだろうとの見通しを示した」と書かれてはいけないことが多いので、記者への当て方が難しい。

まぁ、あえて秘密の正しい内容を漏らさなくても、記者の反応はある程度は探れるので、その程度で止めることが多いですね。

 

それでもあえてやるとすれば、自分自身がその決定に反対で、記者の反応の見通しも使って、あわよくば決定の内容を変えさせようと考える場合でしょうか。

危ない、危ない。そんな危ない橋を渡らなくても、役所の報道対応はまずは無難にやることが大切です。

 

 

 

私の書いたものの逆側、報道する記者側から見たオフレコの場の価値、みたいなものを聞いてみたいですね。

(もし私の役所の担当記者の人がここに気づいたら(気づかないでしょうが)、こっそり教えてください。)

 

いずれにしても、公人の失言にオフレコはありません。

人のことをとやかく言うのではなく、私自身が失言でニュースにならないように、今回の件で改めて心したいと思います。

クイズ大会「天9」の感想(おまけ2 団体戦クイズの作戦概論)

今回は、作戦概論というか、私が作戦を考えるに当たって大事にしていることを書いてみます。

それに加えて、私が感じている作戦の限界と、その突破口のアイディアについても。

 

 

1.作戦を考えるに当たり大事にしていること

いろいろ書き出すと切りがないので、重要なところ、次の5項目に限って書きます。

 

①実際に発生しそうな、勝敗を分ける重要な局面を絞り込む

②重要な局面でどう行動すべきか、集中的に深く読む

③「何の条件が整ったら何をする」という形にまで事前に言語化する

④舞台上での判断のスピードの向上

⑤メンバーのボタンを押す意識のそろえ方

 

 

(1)実際に発生しそうな、勝敗を分ける重要な局面を絞り込む

私がいちばん大事だと思っていることはこれです。

広く浅く読み、展開の可能性は無限にあるからあまり絞っては考えないということでは、他チームとは差はつかないと思うのです。

 

勝てるとしたらどういう展開が最もありそうで、その展開になったら何が勝敗を分けるのか、大胆に絞り込んで考えるのが大事です。

大阪秋の陣で言えば、序盤こう動いて相手がこう来たらこうしようというのは誰もが考えます。

そこでは差は付かないと思います。

 

私は、発生し得るできごとの枝のうち、大阪・堺の両取りで勝つ枝や堺だけ取ればよい枝はあまり考えませんでした。

両取りが必要ではだいたい負けだろうし、堺だけで勝てるなんて都合のいいことは起こりません。

 

勝てるパターンはほとんどが大阪だけ取ればよい枝だろうと読んで、そこに絞り込みました。

読みが外れてもいいのです。絞り込まなければ100%当たりません。

絞り込めば、運良く当たることもあります。たまたまですが、今回は現にそうなりました。

 

 

(2)重要な局面でどう行動すべきか、集中的に深く読む

ここが重要な局面と絞り込んだら、そこで何が起こりそうか、その際にどう行動するか、その行動を判断するためにどのような情報が必要か、徹底的に深く読みます。

 

1の絞り込みは、ある種の当てずっぽうでもいい、絶対の正解はなくて何かに決めればいいという世界。

しかしこちらは正解がある世界です。

 

できるだけ厳密に正確に起こり得るできごとをパターン化し、あるパターンならどう行動するのが最も勝つ確率が高いのかを分析していきます。

大阪秋の陣では、大阪だけ取ればいい場合にいつ大阪に入るかは、他チームが大阪から何手の位置にいるかで決めればいい、という結論を出しました。

 

ここの分析の精度、正確さはすごく重要です。

せっかく展開の読みが当たって想定した重要な局面になっても、ここが粗いと役に立ちません。

でも、センスが問われたりはしない、論理的に詰めていけば正解がある世界です。時間をかけてじっくり読めば、誰もが正解にたどり着けるはずです。

 

 

(3)「何の条件が整ったら何をする」という形にまで事前に言語化する

1・2のようにいろいろ考えていくと、作戦の骨格が見えてきます。

でもここで止めると、いざ現場ではどう判断したらいいか迷ってしまいます。

 

大筋ではこうすればいいと分かっていても、現場は大筋ではなく1問1問、問題が進んでいきます。

何問目にどういう条件が整ったら何をするかまで細かく言語化しておかないと、結局は判断できないのです。

 

「言語化」と書きましたが、脳内言語化よりもやはり「文書化」が望ましいです。

文書化する過程で抜けている部分に気づくことも多いですし、チームメートに作戦を共有することもできます。

 

ただ、パターンや例外は無限にあって、真の意味で厳密な文書化は難しいです。

どこまで書くかいつも悩んでいますが、何となく心がけているのは、広さより深さを優先すること。

 

パターンや例外って書き出すと切りがない割に、忘れずに書いたぞってだけで、あまり役に立たない気がします。

ある特定のパターンについて深く考えた読み筋をしっかり書いておけば、意外に他のパターンや例外にも類推適用できるように感じています。

 

 

(4)舞台上での判断のスピードの向上

実践的にはこれも重要です。時間がなく緊張する舞台では、できることは限られます。

ちょっとした工夫を積み重ねて、判断のスピードを上げていきます。

 

事前に準備できることは準備する。

上野が用意した問題数カウント用の表もそうでしょうし、私が暗算用に面積を百分率化し、いくつかの市町村をまとめてパッケージで覚えたのもそうでしょう。

 

そして、現場では常に1手先を考える。さてこうなった、次どうするでは遅いです。

次の1問でこうなったら2問先はこうしようと考えておき、次の1問の結果が出たら、すぐに判断できるようにしています。

 

後は、余計なことを考えない。

ああなったら、こうなったらとあまり広く考えすぎない。作戦上の判断が必要な場合のことだけ考える。

それ以外のパターンになったら、もう作戦は諦める。そうなっても、クイズで連答すればまだ勝てるのです。

 

私は大阪は取った前提で考えていました。大阪を失ったら負けなので、考えても意味がないので。

私はクイズの問題も、苦手ジャンルだと余計なこととして捨ててしまうのですが、さすがにそれはやり過ぎかもしれません。

 

他にもいろいろ工夫はできると思います。

 

 

(5)メンバーのボタンを押す意識のそろえ方

団体戦ならではの部分ですね。ここもいつも悩みます。

クイズが強い弱い、誤答が多い少ない、問題を聞く際の意識の持ち方、状況に応じた押し方の変更が得意不得意、指示を受けたい受けたくない、メンバーはそれぞれ違います。

 

誤答の重さやルールや状況に応じて、共通の意識でボタンを押してもらいたいのですが、メンバーの個性の違いがあって、なかなか難しい。

昔は押し方そのものを仕切ろう仕切ろうとしてました。

 

天2の1回戦では「完全2択問題が出ると分かっている15問目は、残っている中でいちばん弱い人が、2択の選択肢さえわかったら、答が分からなくてもとにかく押せ」と指示しました。

天5の1回戦では「誤答ペナルティは5休(7チーム参加なので実質-0.833ポイント)と軽いのだから、3○3×ルールのつもりで押せ」と指示しました。

 

それなりの利はあったと思うのですが、そんなことまで指示されることに、違和感を持ったチームメイトもいたかもしれません。

なので、今回はアプローチを変えてみました。

 

ボタンをどういうタイミングで押すかは、本人のクイズの価値観に関わるほど重要なもの。

そこまで作戦側が決めるのではなく、本人が自分の価値観に照らしてどういうタイミングで押すかを決めるために役に立つ情報を、多く提供しようと心がけました。

 

今回、第1ラウンドの作戦の書では、

・3位通過のラインは8点なら確実、7点でもおそらく大丈夫。つまり1人1点取ればいい

・誤答ペナルティは、1問目は-1.91点、1問進むごとに0.1点ずつ減り、10問目は1点

という情報を提供しました。

 

その上で、

・各人がこの2条件と自分の実力を考え合わせ、どのような意識で10問のクイズに臨むか決めておく

・そこで決めた意識のまま10問のクイズを貫き通す。状況によって押し方を変えてはならない

と書きました。

 

結局のところ、本人が気持ちよく押せないとダメなのだと思います。

押し方は人に言われるより、自分で決めた方がいい。

こういう情報さえ開示すれば、個々人が最適な押し方を自分で決めてくれる。最近はそう思えるようになりました。

 

その「情報」として特に、誤答のペナルティの数値化に力を入れています。

正解のメリットを1ポイントとしたときの誤答のペナルティを正確に数値化できれば、押すべきスピードは自ずと定まります。

(今回の第1ラウンドは、正解のメリットが1ポイントで不変だったため数値化は楽。正解のメリットも揺れ動くと、かなり難しい。)

 

 

以上、私が団体戦クイズの作戦を考える際に大事にしている5項目を書いてみました。

 

一般論として作戦概論を書こうと思ったけど、ちょっと大阪秋の陣の事例に影響されすぎたかもしれません。

一般化した作戦概論を本気で書こうと思ったら、横の広がりと縦の深さ、どこを重点的に書くか、相当の検討が必要なので、今回はこの程度にしておきます。

 

 

2.作戦の可能性の限界突破に向けて

(1)個々人のクイズ能力の数値化

団体戦クイズの作戦について文章を書くと、いつも最後は同じところにたどり着きます。

作戦作戦言うけど、大したことないよねということ。

 

クイズの勝敗に大して影響してないんですよ。

そんなことどうでもいいから、ボタンを押して正解取れよって話です。

 

今回は大阪秋の陣という、作戦がいちばん力を発揮できそうな特別なルールがあって、それでも影響力は先の文章で書いた程度です。

さすがに私も最近は限界を感じてきました。

 

その限界は、クイズにおける「作戦」という概念そのものにあるのかもしれません。

それはある種、私に競技クイズの世界でもうやることはない、という結論です。

ただ、その最終的な結論にたどり着く前に、してみたいことが1つ残っています。

 

私がこれまで考えてきた作戦は、ルールという要素のみから組み立てています。

その要素の少なさに限界があったのではないか。作戦を組み立てるために使う要素を増やせば、その限界が広げられるのではないか。

私が増やすべき要素の有力な候補と考えているのは、個々人の能力差。

 

(※)本当は、ポリフォンさんからのコメントにもあったように、クイズの問題の方を分析する方がより効果は大きいだろう。でも、そこは私の苦手分野なので、踏み込まないようにしている。

 

スポーツになぞらえれば、当たり前の話です。

無死一・二塁なら多くの場合はバントでしょう(今は違うかも)。ルールのみから作戦を組み立てるとは、こういうこと。

でも、中軸打者ならバントはさせないはずです。ルールという要素の上に、別の要素(この場合は個々人の打撃能力の差)を加えることで、作戦の幅は増すのです。

 

クイズでも、個々人の能力差を数値化することで、作戦の幅は劇的に広がるのではないか。

13年前の天3の時にそう発想し、試作してみた成果を天5の時にブログにも載せました。

ただ、評判は悪かったですね。みな知ってることが数字になっただけだし、その数字の使い道もないのです。

 

それでもこのアイディアは13年間、ずっと頭の片隅に残り続けています。

そしてこの13年間で、データ分析の世界の進歩は著しいものがありますし、効率的にデータを整理できる道具も増えたかもしれません。

そういう成果物を使って、もう一度チャレンジしてみたいと思っているところです。

 

 

(2)数値化への協力サークルを募集中

ただ、OBA-Qではもう1回やってしまって評判が悪かったので、もし他に個々人のクイズ能力の数値化をしてみたいというサークルがあれば、そこと組んで数値化をやってみたいなぁと思っているところです。

ないかな。もしあれば。

 

誤答率とか、出せる正解数の能力値とか、そのジャンル別の数値とかの基本的なデータは、まぁ作れますけど、作戦上はあまり使えません。

作戦で使えるのは特殊な場面に特化したデータ。そしてそれが、メンバー間でも衆知の事実でないもの。

 

多人数に強いか少人数に強いかや、誤答覚悟のトップスピードで正解を取れる能力は、特殊なデータの中の基礎的なもの。

さらに深い部分が欲しくて、何が役に立つのかいろいろ考えています。

 

思いついたのは、トップスピードで押させた場合に、押し負けたのに答が分かっていた率。

トップスピードの押しに強い人は衆知だろうけど、押し負けたのに実は分かってた人って、絶対に衆知じゃないはず。

 

隠れた才能が見いだせるかもしれません。

OBA-Qで言えばトップスピードで押せない代表格は川上ですが、実は答はいちばん分かっていて、分かってんなら押せよ、押す特訓だ!みたいなことにつながるかもしれません。

10分だけ考えてこれを思いついたので、もっとよく考えれば、面白い特殊データをたくさん思いつくかもしれません。

 

団体戦のクイズで勝つのに役立つかどうかは疑問ですが、なかなか面白いデータは取れますので(上のリンクに過去の成果物があります)、そのことだけでも興味があれば。

 

私のメリットは、数値化による効果の知見を得て、OBA-Qでの作戦立案に還元すること。

協力サークルのメリットは、個人の能力の数値化の結果そのもの。

個人的には、メリットは見合っているのではないかと想像しています。

 

割と本気なので、私への連絡方法だけ書いておきます。

このブログへのコメントだと誰からも丸見えになってしまうので、Facebookかmixiのメッセージでしょうか。

 

私の本名はこの連載の冒頭に書いておいたのでFacebookは探せるでしょう。

mixiはこのブログと同じまろりいというハンドルネームで、ジョージ・マロリーの写真をアイコンにしています。

来ないだろうなと思いつつ、いちおう気長に待ってますので。

 

OBA-Qのチームメートから、そんな時間があるなら例会に参加しろよって思われてそう(私は8年無参加の幽霊会員)ですが、私にとってのクイズでの優先順位は、1が作戦、2が企画・出題、3がプレーヤーなので。

 

 

 

これで、OBA-Qの天9『想像』作戦記録、7回の連載と2回のおまけ、全部終了です。

たとえ少人数でも、深く触発された人がいればうれしいです。

 

本ブログはまた、年単位での冬眠状態に入ります(笑)

と思いきや、久しぶりにいろいろ書いて楽しかったので、突然密かに再開するかもしれません。

クイズ大会「天9」の感想(おまけ1 大阪秋の陣の小ネタ)

今回はおまけその1。大阪秋の陣の作戦についての小ネタ。

 


1.大阪と堺に唯一接する市、松原の活用方法

松原が唯一、大阪と堺に接する点に着目した人は多いと思います。

ただ、その利点をどう生かせるかは、なかなか難しい。

 

それほど深く考察してはいませんが、とりあえず私が思いついたのは、大阪・堺の両取りが必要な場合の待機場所として使えるということ。

 

典型的には、54問目で堺に他3チームがそろっていますみたいな形。

松原からなら当然、堺に入ります。堺は他チームが2問正解しないと、取られないので。

逆に大阪に3チームそろっていれば、大阪から取る。

 

天9での実際の場面で言えば、私の想像上の作戦判断では、大阪にいて堺に動きたくない(MQCの堺入りを待ちたい)ので55・56問目を押さずに待たせたのですが、松原に移動できるならそれは必要なかった。

押してよければ、MQCの正解の確率を下げられるので、その方がいいのは確実。

 

松原に入れれば、MQCが堺に入るか、シンサクールが裏側から大阪に入るか、入った方を選択して消しにいくこともできた。

実際の天9ではシンサクールが56問目に誤答していますが、これが正解だったら大東に来て大阪まで1手になり、シンサクールから大阪を防衛し、MQCから堺を防衛するという2正面作戦を強いられ、窮していた。

松原にいれば、この2正面作戦にもある程度対応できたでしょう。

 

このように、最終盤に正解した場合に、どっちから取るかを自由に選択できる形で使えるというのは、最低限、あるでしょう。

他にも面白い使い方があるかなぁ。

 

 

2.欲深いと帰ってこられなくなる枚方迷宮と千早赤阪迷宮

枚方方面と千早赤阪方面の形って、すごく面白いんですよ。

枚方3.4、千早赤阪2.0と大きいから、どうしても取りたくなる。

 

そこまではいいのですが、そこまで行くとどうしても、枚方の場合は交野→四條畷、千早赤阪の場合は河南→太子と稼ぎたくなる。

枚方や千早赤阪から大阪までは3手。交野、河南、太子を稼ぐと、手数は減ってなくてまた3手。

 

3手って大きいです。下手したら第3セットの20問全部かかります。

後半に行きそうな市町村で大阪から3手あるのって、枚方、交野、千早赤阪、河南、太子の5つだけ。

 

私は枚方迷宮、千早赤阪迷宮と呼んでます。欲深い人を奥へ奥へと誘い込み、大阪に帰れなくする罠。

さりとて、欲望を断ち切って交野、河南、太子を稼がずに寝屋川、富田林に戻るという判断はなかなか難しい。怖い怖い。

 

 

3.いつも空白地で残る市町村の救済

藤井寺、忠岡、熊取、田尻の4つは、いつも空白地として残ってしまいます。

熊取や田尻は封鎖されて暇になった岬が取るかもしれませんが、意味がありません。

 

いつも呼ばれないなんてかわいそうじゃないですか。

人間将棋では、香車も全部動かすのが暗黙のルールなのに。

どうやったら意味ある形で取られるのか、考えてみました。

 

分かりやすいのは忠岡。

柏原が岸和田に先着し、岬が岸和田を奪い返した後、岬と柏原が忠岡への1手を競争します。

柏原が取れば封鎖完了、岬が取れば脱出。

 

熊取は柏原が北に全振りして南に誰も来ない場合の、ちょっとした小遣い稼ぎ。

岬は最後ギリギリの勝負になるので、熊取0.9は大きい。

でも北から飛んできたら早いので、勇気のいる1手。やれたらすごい。

 

藤井寺は接している関係的に、取るイメージがわかない。

取られることはほぼ皆無でしょう。なのに真ん中近くにあるので、そういう存在だと気づいてすらもらえないのが、さらに悲しい。

 

田尻はもう本当に絶対に取る理由がなくて、誰もがそうと分かるから、何となく存在自体が面白い。

OBA-Qの荻島君が、ルールを変えれば面白く利用できると力説してくれました。

泉南・田尻・泉佐野を全部取ると、次は空を飛んで豊中に移動できるというもの。

 

岬→阪南→泉南→田尻→泉佐野→豊中→大阪。

なるほど。大阪と堺の両取りは必要になりますが、封鎖されてすることなくて悲しい岬の救済になりますね。

面白いけど、人工的なルールがないのにバランスが取れているのが美しいので、こういう特殊ルールは却下かな。

 

 

4.柏原が不利という問題の解決

大阪秋の陣という企画を1回限りではなく永続させるなら、4つのスタート地点のゲームバランスが取れている必要があります。

気になるのは、柏原が弱いこと。何とかうまい機動を見つけて他のスタート地点と互角にしたいところです。

 

天9が終わった後もいろいろ考えていたのですが、ついに決定版を見つけた気がします。

今後も天シリーズで使われ続けるなら隠しておきたいほどですが、そうはならないと見て、公開してしまいます。

 

柏原の不利の理由は2つ。

1つ目は、北と南の2正面作戦が必要で、ムダな手数がどうしてもかかること。(南方作戦だけでは面積が足りない。北方も東大阪まで何としても取りたい。)

2つ目は、せっかく河内長野を取っても、奪い返されてしまうこと。

 

その解決策は、どちらも意外なほどシンプル。

1つ目の不利は、いっそ北に全振りしてしまえばよいのです。

北に2者いるから南に行きたくなるけど、北は意外と近い。

 

島本が吹田を欲張った裏を突きます。

島本は吹田経由だと寝屋川まで5手(茨木→摂津だと4手、高槻→摂津だと3手)、柏原は寝屋川まで4手。この勝負。

 

八尾→東大阪と動き、島本が「それは定石ね。次は大阪で南に向かうんでしょ」と考えて吹田に入った隙に、次の正解で大東を急襲! 「しまった、寝屋川狙いか」と気づいたときにはもう遅い。

寝屋川が取られると、島本は枚方、交野、四条畷のすべてを一気に失い、南に向かうしかなくなります。

「寝屋川寝耳に水作戦」と名付けました。

 

2つ目の不利は、いっそ河内長野なんて取らなければいいのです。

取ったところでどうせ奪われるのですから。

「岬町民や能勢町民にはそこら辺の河内長野でも食わせておけ作戦」と名付けました。

 

【理想的な機動】

柏原→八尾→東大阪→大東→寝屋川→(安全策なら門真→寝屋川→)四條畷→交野→枚方→高槻奪い返し→寝屋川→門真→大阪(10問正解。安全策なら12問正解)

 

【寝屋川が取れなかったら】

柏原→八尾→東大阪→(大東)→大阪→松原→羽曳野→富田林→千早赤阪→(河南→太子)→富田林→(大阪狭山)→堺→和泉奪い返し→堺→大阪(11問正解。手数が余れば4手分まで増やして稼ぐことも可能)

(※)奪い返しを河内長野ではなく和泉で使うのは、再度奪われるリスクを下げるため。

 

【寝屋川が取れないケースで、11問正解ができそうもなくなったら】

柏原→八尾→東大阪→大阪→松原→羽曳野→富田林→(11問正解をあきらめ)→羽曳野→松原(最終盤まで待機)→大阪・堺の都合のいい方

 

理想的な機動の場合の高槻奪い返しは、これが決まる頃は島本は千早赤阪あたりにいるでしょう。

「高槻探題の滅亡」と名付けることにします。

 

松原で待機して、都合のいい方に攻めかかる作戦の名前は、2択で悩んでいます。

地理的に近い筒井順慶か、待機場所の松の字が重なっている小早川秀秋か。

筒井順慶は史実とは違うそうですので、「名将・小早川秀秋、松原山で高見の見物」と名付けることにします。

 

いちばん上は大阪を取れば余裕を持って勝てるはずです。

2番目は大阪を取ってギリギリ。

3番目は松原の利を生かして、大阪・堺の両取り狙い。

 

1番目から2番目、2番目から3番目への移行がスムーズにできるのもいいところ。

移行の際にムダな手数がかかりません。

 

れで、柏原を持ってもいいかなという気になってきました。

 

 

5.ルール上の課題

OBA-Qで事前対策をしていて、チーム内でルールの解釈が悩ましいと議論になったのが、奪い返しのボタンを押せない「市町村を選択するまでの間」の定義。

大人なんだから大抵はほどほどのタイミングで押しますが、2点、どうしてもギリギリのタイミングを攻めないといけない局面があり、どこがギリギリかで議論になりました。

 

1つは、能勢と島本のどちらかが3連答して、相手を失格に追い込める場合。

攻めている方が奪い返せば相手は失格、攻められている方が奪い返せば生き残るので、お互いに退けません。

もう1つは、60問目終了時点で複数チームが奪い返しを残していた場合。

これも奪い返しの押しの先後で勝敗が分かれる場合があり、退けない。

 

主催者に質問しようかという案もありましたが、かえってそういう争いを激化させる可能性があり、オウンリスクでギリギリを攻める方が得策という結論になりました。

正解の場合は、市町村の発声の直後だろうと。

 

自分が発声する場合は、「市」「町」をつけずに「高槻/」「豊能/」が有利。「とよのう」ではなく「とよの」だと確認しました。

さらに念入りに、茨木を「茨木市」と呼んで相手に「市」を待つ気にさせて、「高槻/」とやればさらに有利。

相手が発声する場合はその逆。こういうところまで気を配られたら、まず勝てません。

 

明白なフライングがあったら、一体どうなるのだろうと心配もしました。

もう1回やり直しと言っても、何をスタートの合図にすればいいのか。

「豊能/町」で発声しない側が押したら、それはセーフなのかアウトなのか。

これはアウトだとして、じゃあ「たかつきS/I」だったらどうなのかとか、いろいろ心配しました。

 

誤答の場合は誤答のブザーが鳴り終わった直後と考えました。

これは、ブザー中はボタンが反応しないので、反応するようになって最初に押した人ということで、紛れはなさそう。

連打は禁止ですね。

 

ルールを改良しようとしてもなかなか難しく、例会で自分が企画する場合にどうするか、考えあぐねているところ。

クイズ大会「天9」の感想(その5 まとめ 〜団体戦クイズにおける「作戦」の可能性〜)

5.まとめ 〜団体戦クイズにおける「作戦」の可能性〜

その後、準決勝ではまた玉Qとの対戦になり、勝ったらしい。

決勝では、Qwestというチームとの対戦になり、負けたらしい。

それらの戦いについて、私が書くべきことは何もない。

 

 

(1)「大阪秋の陣」における作戦の可能性の限界点

以上、私が現場にいて「大阪秋の陣」の第3セットに出場していたら、こういうことを考え、行動していただろうということを書きました。

どう感じられたでしょうか。

 

クイズの正解数の方が圧倒的に大事で、こんなことをしても勝敗には関係ないと感じた方もいるでしょう。また、勝利を目指す上で逆効果な策だと感じた人もいるかもしれません。

本当にこれができたのか?と疑う方もいるでしょう。

 

前2者は本質的で重要な問いなのですが、もはや価値観の違いということになってしまうように思います。

私もクイズの正解数の方が大事だと思いますが、私が書いたような細かい作戦判断も、正解数が均衡していれば、勝敗にある程度のプラスの影響があり、突き詰める価値があると思っています。

この意見・価値観の相違は、それ以上論じても得るものは少ないように思います。

 

次は後者について。私は本当にこういう判断ができたのか。

この問いに対する私の答はこうです。

私がこの文章で本当に書きたかったことからすれば、私ができたかどうかは、どちらでもいいことなのです。

 

前章は読み物としての面白さの都合上、私がやった体で書きましたが、私が書きたかったのは、「私なら」こうしたとか、こうできたということではなく、「誰か」できる人がいるのではないですか、という問いかけなのです。

 

たとえ私にはできなくても、誰か1人でもできる人がいるのであれば、「大阪秋の陣」のルールにおける作戦の可能性の限界点は、そこにあることになります。

(より正確に言えば、そこ「以上」にある。私には想像すらできないことをやってのける人もいるでしょうから。)

 

前章で想像上の作戦参謀である私がしたことを大枠で整理すると、次の3点になります。

・どういう条件が整えばどういう行動を取るかを整理した「作戦の書」を事前に作成する

・現場では事前に整理した条件が整ったかを判定し、その判定結果に沿って作戦を指示する

・各チームの面積を暗算し、自分が大阪を取り他チームが堺を取った際の優劣を判定する

 

興味のある方は、前章を改めてそういう観点で読んでいただきたいのですが、この3点以外に私がやっていることは1つもありません。

事前に準備していなかったことを、現場の即興で考えてやったとは書いていないはずです。

その場では、事前に考えた、ある行動をするための「条件が整ったかの判定」のみを行っています。

 

53問目の押して(大阪に入っても)OKの判断、55・56問目の押さない(MQCの堺入りを待つ)の判断、57問目の押してOK(もうMQCの堺入りを待たない)の3つの判断。

いずれも多少の状況の違いはあっても、そういう判断が必要になる可能性は「作戦の書」に記述されています。

そのタイミングも、1つ目が「55(54かも?)」と、2つ目が一例として「55・56」と、3つ目が「57」と書かれています。

 

これらの判断が、勝利する確率を高める方法として本当に正しいかどうかは分かりません。

大事なのは、正誤はともかく「条件が整ったかの判定」さえできれば、実行はできたということです。

 

では次に、その「条件が整ったかの判定」が、問題の短いインターバル間にできたのか。

これは、問題の正誤の結果が出た後に考えたのでは間に合いません。

なので、4チームのどこが次の問題に正解したときにどの条件が整うかは、問題が出る前に4つの分岐全部を判定しています。

(誤答の分岐まではあまり考えないが、考えることが必要な場合もあるだろう。)

 

その結果、問題の正誤の判定の結果が出た瞬間には、もう考えるまでもなく、実行すべき作戦は決定されています。

問題のインターバル間に行うのは、それをチームメイトに伝達するだけです。

(加えて、次の問題にどこが正解したら……というのを考える。即座に次問の作戦を指示し、その後に余った時間で次問の結果を踏まえた次々問の作戦を考える、というリズムが重要です。)

 

条件というのも、それほど複雑にはなっていません。

今回のケースであれば、他3チームが大阪まであと何手か、我々が大阪を取り他3チームが堺を取った場合の優劣、今何問目か、ほぼこの3つだけです。

1問ごとに大きく動く条件ではないので、一度判定すれば、1問での差分だけ考えれば済むものです。

 

最後に、個々の市町村の面積の記憶と、その足し算の暗算ができたのか。

 

暗算は、第3セットに入ってボタンについてからではなく、観戦以外にすることがない第2セット中盤に始め、MQCが八尾を取った39問目で基本的に終えています。

(東大寺が新たに千早赤阪を取った分だけは、第3セットになってから加える必要があった。)

この条件であれば、できる人はいくらでもいると思います。

 

個々の市町村の面積の記憶もそれほど難しくありません。

平方キロだと難しいでしょうが、パーセンテージに換算しておいたので覚えやすい。

手元に白地図もあるので、小さな市町村の面積があやふやでも、見た目の大小でそれほど狂わない数字は出せたでしょう。

 

東大寺とMQCが取った市町村は、私にとっては頻出で、記憶が鮮明なものが多かった。能勢パッケージ、河内長野、高槻、茨木、吹田、摂津あたり。

記憶があやふやな市町村の多くはシンサクールが取ったので、誤差の多くはシンサクールに集約されていました。

 

足し算の暗算についても、我々が大阪を取った場合の28.6は、28.0は岬パッケージと大阪を足したものとして記憶していて、大阪狭山0.6を足しただけです。

東大寺とMQCも、足す数が少なかったので、それほど難しくないと思います。(計算結果は、東大寺は27.8、MQCは29.6)

 

シンサクールは多数の市町村を取っていたので、難しかったかもしれません。

ただ、あれだけ取っていれば、河内長野が奪われても、さすがに負けてそうだとは思ったでしょう。(正確には30.1で確かに負けていた。)

 

以上、私にできたかどうかはともかく、「作戦の書」が事前に書ければ、条件の判定や暗算は「誰か」できる人は当然にいただろうと思います。

そして、「作戦の書」は確かに事前に書かれていました。私に書けたのですから、他にも書ける人は当然にいます。

 

よって、「大阪秋の陣」のルールにおける作戦の可能性の限界点は、私が前章で書いたこと以上のところにあることは、確実だと思います。

 

「大阪秋の陣」において、私が前章で書いた作戦上の判断を実行できる人は、存在し得る。

クイズの勝敗に、作戦はこれだけの影響力を持ち得る。

それだけの価値のある団体戦クイズの作戦というものに、関心を持つ人はいませんか。

それが、私が言いたかったことです。

 

 

(2)「大阪秋の陣」のルールの素晴らしさ

私が「大阪秋の陣」のルールを読んだときの第一感は、これは4カ所のスタート地点には有利不利のかなりの差があるだろうというもの。

人工的に差がないように作ったのならともかく、大阪府の現実の地図ですからね。

 

「ディプロマシー」という、第一次大戦前のヨーロッパ列強7か国を模して、軍隊を地図上で移動させていくボードゲームに似ていると思いました。

ディプロマシーは地図を使ってはいますが、エリアの分割やどことどこが接しているかは人工的に作ることで、ゲームバランスを維持させています。

 

そのゲームバランスのよさに感心しているだけに、現実の市町村の分割と接し方をそのまま使って、ゲームバランスが取れている訳がないだろうと考えたのです。

 

しかし考えても考えても、明確な有利不利が出てこないのです。第一感は柏原>島本>岬>能勢。

封鎖されない安全さや選択肢の多さにが目に付いたため。

ですがその後考察を深めるにつれ、柏原・島本の手数の長さや2正面作戦の不利が気になってきて、どうしても結論が出せませんでした。

 

今も結論は出せていません。

(暫定的に、能勢>島本>岬>柏原だと思っています。)

 

その他にも、各市町村の面積、配置、接し方などが、まるでこのルールでクイズをやるためにあつらえたかのように思えてしまいます。

高槻と大阪を唯一1手でつなぐ摂津とか、岬から5手目岸和田までは逃げ道がなく6手目和泉には逃げ道があるけど3手(忠岡、泉大津、高石)もかかるとか、広い枚方や千早赤阪がいちばん奥にあり手数がかかる迷宮のようになっているとか。

 

現実の地図を使ってこれというのは、本当に奇跡的なことだと思います。

他にも、機動の戦略の多様さとか、あちこちで見つけられるちょっとした小技とか、大阪と堺の絶妙な面積差とか、作戦を考え出したら終わらない面白いところは、書き出したら切りがありません。

 

このようなとても深い考察を要求する「大阪秋の陣」というルール、本当に素晴らしいと思います。

私のクイズ人生(それほど広くも深くもないですが)で出会った中でもダントツに面白いルールで、長く記憶に残ると思います。

 

「天」や「天by天by天」が天シリーズの定番企画として定着したように、「大阪秋の陣」も何らかの形で今後も残らないのかなぁと期待していましたが、主催者の意向は、今回限りの一期一会ということのようです。

残念ですが、仕方ないのかもしれません。主催側にも参加側にも、負荷が大きいルールですから。

 

それでもとりあえず私だけは、この企画に感動したので、感謝の気持ちを込めて、来年1月にOBA−Qで9年ぶり!に企画する際に、1コーナーとして採用するつもりです。(私は参加すること自体も8年ぶりの幽霊会員なのです。)

オープン大会でやるには表示やら何やら大変でしょうが、内輪の例会でやる分には、大抵のことはセルフ管理で済ませられるので、それほど負荷はかかりません。

 

他にもまだやり足りない人、いないのかしら。

前日に参加が決まって準備不足だったシンサクールさんとか、悔しい負け方になったMQCさんとか、市川君とか、作戦をいっぱい考えたのに参加できなかった1ラウンド敗退チームの方とか。

 

「大阪秋の陣」が好きな人たちが集まって、1日それだけをする「大阪秋の陣祭り」(←発音はヤマザキ春のパン祭りと同じで)とか、すごく楽しそうなのに。

と妄想だけを書いておきます。私はとりあえずOBA−Qの自分の企画で細々とやります。

 

 

(3)「天」シリーズと私

天5の文章を書いたときもそうだったのですが、作戦のことをどう文章で表現しようか考えると、いつも同じところにたどり着きます。

私は何のために作戦をあれこれ考えているのだろうか、ということです。

 

真面目な話は天5の時に書いたので、もう書きません。さすがにあれを2回書くのは恥ずかしい。

今回は、不真面目な話を付け加えてみます。

 

テレビの「天」を除いた天2〜天9の8回で、OBA−Qは天2・天5・天9の3回、決勝に進出しています。

3回とも参戦した人というのはたくさんいるのですが、その3回「だけ」参戦したというのは、私しかいません。

つまり、私は今のところ、OBA−Qが決勝に進出するための必要十分条件なのです!

 

チームメイトから、いろいろ突っ込みが聞こえてきます。

天3(1回戦敗退)のときもいただろ?

天3のときは私は作戦の検討はあまりしておらず、作戦参謀たる私の主観としてはノーカウントなのです。

 

たまたまだろ?

そりゃそうです。たまたまです。OBA−Qが決勝に進出するための必要条件は、たぶん外部からの大物助っ人の参入。

天5には大村さんがいましたし、今回はA(あ)の予選敗退により、片岡君と内田さんが来てくれました。それがなければ、どちらも決勝進出は難しかったでしょう。

 

自己満足してるだけなので、たまたまの疑似相関でもいいんです。

だって、決勝まで勝ち上がって盛り上がったことしか経験がないんですよ。すごくないですか?

 

今後も、必要十分条件を満たし続けるために、外部から大物助っ人参入の噂を聞きつけたら参戦し、ちょこちょこっと作戦を考えて、決勝に進出できたらちょこちょこっと文章を書く、ということを続けてみようかなと思っています。

 

なお、天2→2回空けて天5→3回空けて天9なので、次は4回空けて天14の予定です、と言ったらなぜかチームメイトに怒られたので、次はいつにしようか思案中です。

 

 

 

以上をもって、OBA−Q 天9『想像』作戦記録、計7回の連載を終了します。

 

あと2回分、おまけを書くつもりです。

1回は「大阪秋の陣」の作戦のバリエーション。柏原が不利という問題の解決と、いくつかの楽しい小技の紹介。

もう1回はクイズの作戦概論。「大阪秋の陣」について事例報告したことを、もう少し一般化してみます。

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>