今回は日本証券新聞さんにコラムを書いた第二回目です。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を書くつもりが、いわゆるガラパゴス化とシャープの「ガラパゴス」の説明で終わった、という場当たり的な内容です(笑)。
下にも書いてありますが、ダーウィンの「生き残る種とは、最も強い種でもなければ、最も頭が良い種でもない。最も変化に適応できる種である」って言葉、好きだなぁ。好きだけど、ガラパゴスって実は「最も強い種」を目指しちゃって、失敗しちゃいそうな端末だよな、って気がしてならないんだよなぁ。
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『ガラパゴス化の日本にガラパゴスを投入のシャープ』
ガラパゴス諸島ってご存知ですか。南米エクアドル領で、本土から九百キロも離れた太平洋上に位置しています。絶海の孤島ですから独自の進化を遂げた生物が多く、ゾウガメなどが有名です。実はネット業界では少し前からこの「ガラパゴス」という言葉が大流行りとなっています。生物学的に有名な島と時代の最先端を行くネット業界とはおおよそ無縁ですよね。では何故この島の名前がネット業界で流行ったのでしょうか。
それは日本の携帯電話が世界と隔絶した独自の進化を遂げたためです。ガラパゴス諸島に生息する様々な固有種と状況がとても良く似ているのです。そこから日本の携帯電話や携帯サービスが置かれている状況を「ガラパゴス」「ガラパゴス化」と呼ぶようになったのです。
おサイフケータイやワンセグなど日本独自の機能が付いているいわゆる普通のケータイはガラパゴス・ケータイ、略して「ガラケー」と呼ばれているくらいです。独自の進化と言えば聞こえは良いのですが、換言すれば世界に通用しない、世界標準規格からかけ離れている、とも言えます。そのためガラパゴスという言葉には自嘲的な意味合いが強くこめられています。
そうしたやや残念な響きのガラパゴスをなんと商品名にしてしまった企業が現れました。シャープ(6753)のタブレット型情報端末「ガラパゴス」です。これはアップル社のiPadに良く似ていますが、より電子ブックを意識した中身となっています。iPadで経験された方も多いと思いますが、電子ブック(特に画像の多い雑誌系)は表示に時間がかかり、とても快適な閲覧とは言い難い状況にあります。
ガラパゴスはあらかじめ設定した時間にダウンロードする方式もあるため快適な表示が予想されます。この方式は新聞や雑誌など定期的に購読するコンテンツにとても向いています。定期購読ですと課金もしやすいというメリットもあります。書籍フォーマットは「XMDF」と呼ばれるもので、日本語特有の縦書きやルビなどに対応したものです。こうした日本独自のものに対応しているという点も「ガラパゴス」というネーミングに合っていますよね。
ダーウィンはガラパゴス諸島で進化論の着想を得たと言われています。そのダーウィンはこう言っています。「生き残る種とは、最も強い種でもなければ、最も頭が良い種でもない。最も変化に適応できる種である」と。
日本のデジタル商品は技術的には素晴らしいのですが、汎用性に欠けたものが多く、特に最近のインターネットの哲学である「ユーザみんなで作り上げる」と言う思想からは遠く離れたものばかりでした。ガラパゴスが日本独自の書籍文化を尊重しつつ、「変化に適応できる種」になることを大いに期待したいところです。
さてどんなにハードウェアが優れていてもコンテンツが揃っていなければただの箱です。今年の十二月には電子ブックコンテンツ約三万冊を揃え、来春には映画や音楽まで揃える予定となっておりますが、その主役がツタヤを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC・4756)です。シャープと共同でコンテンツストア「ツタヤ ガラパゴス」を開設します。CCCについては来週お話しましょう。
(たぶん2010年10月11日付け日本証券新聞掲載)
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■今だとこんなふうに思ったりとかとか■
思った通りと言えば失礼だけど、やっぱり売れてないんですよね、ガラパゴス。電子書籍機能メインじゃきついですよ、そりゃ…。せめてソニーのReaderくらい割り切っていれば、どうにかなったかもしれませんけど。ハードウェア的にてんこ盛りだもんなぁ。Readerも割り切っているとはいえ、AmazonのKindleとの比較とかがんばっちゃってるもんね。
こういう比較表を見ると、ユーザがe-Bookに何を求めているかが分かるよね。日米の差はあるだろうけど。XMDFも日本人的には考え抜いた規格だっていうのは分かるし、何よりもユーザというより出版側の人たち的には、「ルビの問題解消してくれて超助かる~」って話かも知れないけれど、それで独自規格かよ、っていうのがユーザの本音だと思うよなぁ。
じゃ、割り切りのReaderやKindleと比べて、どれだけPC的に便利なの?っていうと単に無線接続できるカラーの電子ブックに過ぎないわけですから、PC的な便利さ――つまりアプリを色々入れ替えして…的な使い方は難しいでしょうね。
OSはAndroidですが、Android Market にはつながりませんので、いわゆるアプリというものはない(もともと付属の書籍管理アプリとかライトゲームアプリとかありますが…)と考えた方が良いわけです。少なくともiPadのCMを見た人が、電子書籍メインのタブレットを買うとは思えないもんなぁ。これで100万台目標でしょう?う~ん、ちょっとあり得ないよなぁ。
何でこんなの出したんでしょうねぇ。シャープは昔から「Sharp Space Town」っていう元々プロバイダサービスだったんだけど、途中からポータルっぽくなったサービスを運営してまして(というか過去形ね)、そこにも随分と電子書籍を置いたわけですが、何て言いますか、その意地みたいなもんだったんでしょうか。一方でうがって考えると、日本の出版って利権とかでガチガチなんで、まずはこういう端末を出さざるを得なかったとか…。我が国最大の書店でもありますCCCも絡んでますから、ま、色々あるんでしょうねぇ。
ただ、紙の書籍をベースにネットビジネスを考えると、やはりトンチンカンなものが出ちゃいがちですし、何よりもビジネススピードが遅くなるんですよね。あっち調整してこっち調整して、はい、やっと新サービス出ました!ってなるわけです。実際、ツタヤガラパゴスだってそろそろ映像・音楽配信サービスが始まっていないといけないはずですが、まだそういう話を聞きませんものねぇ(もともと今春の予定、ま、まだ春ですけどね)。
いずれにせよ、ポケコンファンだったこともありシャープには頑張ってもらいたいものです。次回は、CCCについてです。