年の瀬の 冷たき空のその先に いつもの笑みと あざやかな明日
みなさん、こんばんは。
一年に一度、誰もが忘れた頃になると、
ツチノコやイッシーや野人のように、
のこのこと出てくる年寄りですじゃ。
…さて、すっかりご無沙汰してしもうたが、
皆さん、お変わりないですかの。
わしはといえば、相も変わらず、
ただのじじいとして、息をひそめて暮らしておりまするが、
なにせ、かようなご時世ですからの、
皆さんもどうか息災であれば…と、陰ながら思う次第でござりまする。
…それにつけても、今年は巷でもいろいろとあったと思いまするが、
皆さんにとっては、どのような年でしたかの。
良きこともあれば、悪きこともあったやもしれませぬし、
出会いもあれば、別れもあったやもしれませぬ。
かく言うわしもですの、なにせこの歳ですからの、
何もなきように見えて、その実、いろいろとあったにはあったのじゃが、
いかんせん、この歳になってくると、
限りある命を、日々、植毛よろしく細々と継ぎ足すので精一杯ですからの。
じゃが、お蔭様でなんとかこうして、
だましだましであっても、また年の瀬を迎えることができた、
それだけでも、自分では上出来だと思う次第ですじゃ。
とかく、年寄りの日常なぞというものは、
傍目には何が愉しいのかわかりづらい、
退屈この上なき日々の繰り返しに映ると思いまする。
ですがの、晩には暖かき布団にくるまり、
夢がさめれば、心地よい朝日を浴びることができまする。
散歩へ出れば、ささいな変化に季節のうつろいを感ずることもありまするし、
見知った顔と出くわして、その無事なる様を見て心穏やかとなりまする。
おはよう、と言えば、
おはよう、と返してくれるひとがいる。
こんにちは、と言えば、
こんにちは、と返してくれる。
それこそ、あまりに何の変哲もなき日常じゃと、
この年寄り、自分でも思いますがの、わしはそれが幸せなのですじゃ。
無事なる日々を、過不足なく過ごせることほど、
有難きことはありませぬからのう。
…さて、新しき年のはじまりまで、いよいよ残り二十四時間をきりましたの。
慌てず、無理せず、争わず。
いつでも欲は、腹八分。
皆さんにとって今日という一日も、
また、明日から始まる三百六十五日も、
無理せず、笑顔でいられる、
そんな穏やかな日々でありますやうに。
それではみなさん、ごきげんやう。
＜避難じいさん＞
- 避難じいさんの今日のおもひで/避難じいさん
- ↑黒歴史の誕生から幾星霜。