女子リベ  安原宏美--編集者のブログ
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知事から保育所を守ってください!続き

 前回エントリー の続報です。

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東京都児童福祉審議会の面積基準緩和(3.3㎡→2.5㎡)の動きに対して、保育園を考える親の会で、ご意見募集フォームを作りました。16日に東京都に持参する予定です。(中間まとめ)お時間のあるときに、書き込んでいただければ幸いです。
この動きは全国に波及しかねない問題ですので、東京都在住の方に限らず、是非、ご協力下さい。よろしくお願いいたします。
http://www.aa.cyberhome.ne.jp/~aki-f/tokyomenseki.html

 弁護士・社会福祉士
 寺町東子(てらまち とうこ)
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http://www.shakyo.or.jp/research/2009_pdf/gaiyou.pdf

 以上リンク先にのっている調査ですが、ここで触れられている「食寝分離」については、以前エントリー を書いたことがあります。これは、今わたしたちがよく使っている「LDK」にもつながるもので、戦争中の「清貧思想」にあらがい、生活の「質」を守るための大切なな基準と考え方です。私たちが、当たり前に使っているものや制度は自然にできあがったものではないものもたくさんあり、先人たちが苦労して守ったものや作りあげたものがたくさんあるわけです。そこを知らずに、「地方分権」だとか「抵抗勢力」だとか「既得権益」だとかいって、一言でかたづけて質を下げようとする人間は上にたつべきで人でははないと思います。

 だいたい橋下知事らが「最低基準を下げたい」という新しい主張をするのであれば、その主張の根拠となるエビデンスを用意して、「立証責任」をはたすのは橋下知事にありますが、やってません。なんの根拠もありません。弁護士なんだから「立証責任」の意味くらいは知ってるでしょう。


 待機児童が大変なら、施設を増やせばよいわけで、そんな大したお金がかかるもんではないでしょう。保育園が独自に部屋借りて、やっていたりするわけで。現場の努力に甘えるんでない!施設増やしてそこで雇用が増えれば、それはそれで雇用対策になるのでは?だいたい、保育園の質があがって怒る国民がどこにいるんだが。


 以下が知事会への省庁の回答です。

http://www.hoiku-zenhoren.org/database/index.php

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加えて、保育所のほふく室の面積基準(3.3 ㎡)については、昭和23 年の基準制定時に、当時の外国の基準を参考に制定されたものであるが、この基準については、諸外国と比較して高い水準と言えないとの最近の研究結果もあり、すべての子どもに良質な成育環境を保障する観点から、最低基準についても「子ども・子育て新システム検討会議」の中で検討してまいりたい。

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「機能面に着目した保育所の環境・空間に係る研究事業」(平成21 年3 月 社会福祉法人全国社会福祉協議会)によると、2歳未満児の保育のために必要な部屋の面積については、「食寝分離」や「単位空間」の考え方に基づき科学的・実証的に検証した結果、4.11 ㎡/人という面積が算出され、現行の最低基準を下回ることは問題であるとの報告がなされている。このことを踏まえると、現段階においては、全国一律の最低基準を維持することが望ましく、特区制度により各自治体に最低基準設定の権限を与えることは適切でないと考える。

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 ここはお上が全力でがんばってほしいです

保育所の子どもを知事から守ってください!

 MLで久しぶりに頭に血がのぼった!ふるふるふるふる(怒)。

 誰か橋下知事の暴走を止めてください!国が自治体に「押し付けている」基準ではありません!

 以下関西テレビの番組とてもよくまとまっています。そもそも戦後の貧しい時期にできた「最低基準」をさらに緩和しようとしています。うちの国は「先進国」基準じゃないの。ええかげんにせーよー!!!サービスの「最低基準」を低下させることで、子どもに目が届かないようになったことで、死亡事故が小泉の改革から増えてます!

 以下転載。〈転送歓迎〉だそうです。

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各位

東京都の児童福祉審議会が、地域主権改革法案が国会を通ってもいないのに、認可保育所の面積緩和3.3平米を2.5平米に詰め込む案で審議しています。3月の専門部会で、決定する方針のようです。専門部会のメンバーは、JPホールディングスの山口洋氏や、学習院大学経済学部の鈴木亘氏らです。
日本で一番金持ちの東京都が、子どもに金をかけて質の高い保育所を作るのではなく、金をかけずに既存の保育施設にギューギュー詰めにして待機児対策をしのごうとしています。
関西テレビが、大阪の橋下知事の暴走に対して、以下のような特集番組を作ってくれました。11分の中に、面積基準の根拠から、橋下知事のインタビュー、現場の声、認可外保育施設で子どもを亡くした親の声、そして、橋下知事に反論する大阪市長の声、など、非常に判り易くまとまっています。
「保育園の最低基準緩和:子どもをギュー詰めに詰め込む方針」
http://www.youtube.com/user/janemay95
是非、皆様にご覧頂くとともに、広げていただければと幸いです。よろしくお願いいたします。

弁護士・社会福祉士
寺町東子(てらまち とうこ)
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 以下はもうちょっとちゃんと書け!って記事だけど、一応新聞記事もリンクしておきます!

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http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20110128ddlk13100266000c.html

深刻な保育園の待機児童問題で都は27日、認可保育所の面積基準の緩和案を都児童福祉審議会専門部会に示した。現在、0、1歳児1人当たり3・3平方メートルとしている最低基準を、年度途中で定員を上回る場合に2・5平方メートルまで下げて、入所を促す。都内の待機児童は3年連続で増加しており、対策が求められているが、同じ面積により多くの児童を受け入れる緩和案には、「詰め込み保育になる」と懸念する声も上がりそうだ。

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警察官の凶悪化(+_+) 

 警察白書を読んでたら、ほんとに、しょうもないことをいばっていたので、半分冗談で“治安悪化する警察署” をエントリーであげてたんだけど、6割増って。ちなみ世間は、例えば、殺人件数は戦後最低を2年連続更新中の安全な日本であります。

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警察官の懲戒処分6割増 50代倍増に「親の介護が背景」警察庁
2011.1.27 10:59
 警察庁は27日、平成22年の全国警察の懲戒処分者数を公表した。処分者は前年比59・1%増の385人で、不祥事続発を受けて警察改革要綱が策定された12年以降、最も高い増加率になった。

 処分の内訳は免職48人、停職70人、減給136人、戒告131人。行為責任は350人、監督責任は35人で、行為責任のうち業務に関連するものは133人、私的行為は217人だった。業務関連では容疑者の逃走事案が3県で15人、不適正経理が4県で17人と目立ったという。

 行為責任の処分者の年齢別では、50代が前年に比べ2倍以上の119人と突出。40代は72人、30代は82人、30歳未満は77人だった。事案別では窃盗詐欺横領等76人、業務不適切57人、飲酒上信用失墜・異性関係55人、特別法犯等54人、交通事故違反40人-と続いた。

 警察庁は「警察改革と逆行する状況で非常に危機感を抱いている。中高年の不祥事の増加は、親の介護や子供の教育問題など世代特有の悩みが背景にあるとみられ、こうした世代の心情の把握に努めたい」としている。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110127/crm11012710590153-n1.htm

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 上は産経の記事。なぜかその理由が「親の介護」や「子供の教育問題」でして以下朝日は「職場ストレス」。

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 同庁幹部は「かつて大量採用した職員が退職する時代となり、残された幹部職員への負担が重なりストレスが増したことなどが推察される。特に幹部職員の職業意識の向上や指導を徹底したい」としている。

http://www.asahi.com/national/update/0127/TKY201101270141.html

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 なんか、やけにお優しいのですが。

 若者の場合だと、ゲーム脳だの、草食化だの“おもしろそうな”言説に飛びつくんだから、警察脳の恐怖とか、団塊世代の道徳離れとか、言ってみても不思議ではないんですが(笑)。なぜ、ここは、いきなり福利厚生の貧困みたいな文脈を使うかな。

 あとさ、仙台で性犯罪者のGPS監視について、ニュースで報道されてたけどさ、あれこそ、知的障害の福祉の貧困の問題だよ。保護者が徘徊とか失踪防止につけさせたっていう経緯だよね、でまあ、法律的だと、二重処罰の問題とか、「なんで性犯罪者だけなの?」という法の下の平等の問題があるわけですよ。

 まず、警察白書でも、取り調べ室の「可視化」のために、窓つけたとか、机を固定した(机の下で被疑者の脚を蹴らない、バーンとひっくりかえさないため)とか、くだらないことをいばっておりましたけど、まず、処方箋の使い方が違わないですか?警察内にまずつけたら?そいで報道側ももうちょっと考えて出そうよ。権力の「監視」機関なんでしょ。合法的に違法行為ができる人達の違反のほうが、一般人の逸脱よりは怖いんじゃないの?

『解明される宗教』ダニエル・C・デネット

http://www.47news.jp/CN/201101/CN2011012401000689.html

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佐渡のトキ、ドジョウ過食か 保護センター、訓練中断

 環境省は24日、3月の放鳥に向けて佐渡トキ保護センター(新潟県)で順化訓練中のトキ19羽のうち、ビタミンが欠乏した4歳の雄と、右の翼を骨折した1歳の雌の計2羽を治療のために捕獲、収容したと発表した。

 同省によると、4歳の雄は22日以降、首振りなどの不自然な行動をしたり、池に落ちて一時溺れたりした。エサのドジョウの食べ過ぎで、ビタミン不足に陥ったらしい。

 淡水魚にはビタミンB1を破壊する酵素が含まれ、偏食すると飛行や歩行に障害を起こすことがあるという。12日に0歳の雄が同じような症状を示して収容。ビタミン剤を注射して元気になり、6日後に訓練再開した。

 1歳の雌は22日から飛ばなくなり、翼が地面に触れるほど垂れ下がっていた。飛行中にケージなどに衝突して骨折したとみられ、捕獲後にテーピングで翼を固定した。

 環境省は応急措置として、訓練中の残る17羽にビタミンBを混ぜた人工飼料を今後約1週間、与えて様子を見る。2011/1/24(共同通信)

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 関係者は大変なんでしょうが、・・・・いかん・・・・笑ってしまった。ドジョウの食べ過ぎで池に落ちるって、おまえはそれでも鳥か!

 ところでトキの学名「Nipponia nippon」って、なんでこんなザ・愛国心みたいな名前ついてるの?誰がつけたの? トキのことはぜんぜん知らないので、ウィキ見ると、田畑を食い荒らす害鳥だったらしいじゃない。「なお、トキは田畑を踏み荒らす害鳥であった。仏教の影響で肉食が禁じられ鳥獣類が保護されていた江戸時代においても、あまりにトキが多く困っていたため、お上にトキ駆除の申請を出した地域もあったほどである」って書いてあったが。「トキ汁」は赤くて気味が悪く「闇夜汁」と呼ばれていたらしい。いいのか米どころの新潟としては? ドジョウの食べ過ぎで池に落ちるらしいし、そりゃあ絶滅するだろう。もしもトキの放鳥が成功して自然にどかどか増えて米に被害が出たら滅ぼすんだろうか・・・。どうしてこんな鳥にお国の名前をつけたんだろう?カラスとかニワトリとかにつけとけば滅びんのじゃないか。きっと強いよお。カラスはおいしいんだろうか?誰か食べた人はいるんだろうか。


さてと。デネットの去年出た新刊『解明される宗教』を読みました。

解明される宗教 進化論的アプローチ/ダニエル・C・デネット

 

 『ダーウィンの危険な思想 』とか前の本に比べれば、すごく読みやすいんじゃないでしょうか。デネットは神がいようがいまいが、「宗教」は人間の集合的な現象なので、科学の土台にのせましょうってことを言ってるんですが、その、のせねばならんってことを、ほんとにくどいくらい書いています。アメリカが宗教組織が力を持っていて、進化論を信じてない人が多くてっていう事情があってという状況なんでしょうが、いつもいつも大変だなあと思います。
 本は、いろんな人の引用も引っ張ってますが、そこも含めて、デネット節をお楽しみいただける本かと。
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 第二次世界大戦は、確かに多くの人々から良いところを引き出したし、それを生き抜いた人々は、それは自分の人生において最も重要なことであり、それなしには自分の人生には意味がなかっただろうと、しばしば語っている。しかし、これは、また世界大戦をすべきだということを、まったく意味していない。あなたの宗教あるいは他の宗教は美点について「なにがしかの」主張をするために支払わなければならない代償は、あなたの主張が率直に吟味されるのを進んで見守るという自発性である。
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 以下は引用。キューピットという人が、超自然的な痕跡をいっさい除去した宗教ブランドを処方箋としてあげているのが・・・。
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 しかしながら、神のいない宗教になぜ未来があるのだろうか?キューピッドが書きあげた処方箋は、ボールを追いかけずただじっと立っている選手を見るためにサッカーのチケットを買い、スタンドに集まり続けることを人々に期待しているのと、かなり似ている。超自然的存在がなければ、奇跡もないし、救済もなく、祈りはむなしい。〈戒律〉は古い知恵にすぎず、死は終わりである。このような場合、合理的な人は、教会に関係することはないだろう。もっと正確に言えば、合理的な人は、そのような教会のようなものに関係することはないだろう。
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 おなじみドーキンスの引用。
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 現代の有神論者の、〈セム人の豊穣の神〉バアルや〈古代エジプトで崇拝された〉黄金の子牛、〈太陽の神〉のミトラやアモン・ラー、〈雷神〉トールや〈最高神〉ウォーデン、〈海神〉ポセイドンや〈光明神〉アポロンといった話になれば、自分たちが実際には、無神論者であると認めるかもしれない。私たちは、皆人類がこれまで信じてきた神々のほとんどについて無神論者である。
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 メガテンをやってもらって、と。あれ神様が合体材料だからなあ。メガデンで合体遊びしてもらって(たまにスライムになりますが)にしてからお話してみるというのはどうでしょう(笑)。トール怖かったわあ・・・。
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 人文科学のきわめて多くの思想家たちが皆、ポストモダンの、すべては物語だ、すべての真理は相対的だ、という主張は正しいのだと判定してきた点である。敢えて名前を伏すある文化人類学者が、最近学生にこう言った。自分の研究分野で重要なことの一つは、同じデータが与えられても、同じ解釈に至る人類学者はいないことだ、と。これではもう先がない。確かに科学者の間でも、すでに共有され受け入れられているデータの解釈の仕方に関して、そのような意見の不一致は良くあることなのだが、しかし科学者にとって、これは解決へ向けての第一歩なのだ。どの科学者が間違っているか?「真理」を発見してこの問題に答えるために、実験と統計学的分析などがデザインされる(もちろん、真理とはいっても、すべての事柄に関わる大文字の〈真理)ではなく、この個別的な事実上の意見の不一致を解消するための、ささやかな真理にすぎない)。発見されるべき事柄について客観的真理があるという観念そのものを嘲笑するイデオローグたちによって、不可能だとか不必要だとされるのは、意見の不一致の後に続くこの過程なのである。もちろん彼らは、客観的真理のようなものは存在しないことを証明すると、主張することはできないだろう。というのも明らかに矛盾しているだろうし、彼らは少なくとも論理的思考をとても大切にしているはずだからだ。そういうわけで彼らは、依然として真理が存在すると信じている人の厚かましさと素朴さに舌打ちして満足する。この容赦のない自衛的な冷笑が、どんなにつまらないものなのかを伝えるのは難しい。それだから、それに反論する努力をやめてしまって、ただからかうだけで我慢する研究者がいても、驚くにはあたらないのである。
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 ダーウィンほど相対的なものはないんじゃないかと思うがなあ~。
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 結局のところ、私が何よりしてほしいことは、世界中の人々が穏やかにまたしっかりと教育を受けることであり、そのようにして、自分の人生に関して〈正しい情報を与えて上での選択〉を行えるようにすることである。無知は恥ずべきことではない。無知を強いることこそが、恥ずべきことなのだ。
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 町山さんの番組で紹介されていた衝撃作『ジーザス・キャンプ』を観ると、デネットやドーキンスが必死になるのもわかります。これおすすめ。全米8000万人の福音派。原理主義者の子供たちが夏に送られるサマーキャンプを追っかけたもの。妊娠中絶は大反対、同性愛などもってのほか、進化論なんて嘘に決まっている!聖書で学校行けなど言われてないから自宅で母親が教える、と。番組放送を契機に発売が決まったそうで、よかったですね。
 ジーザス・キャンプ ~アメリカを動かすキリスト教原理主義~ : 松嶋×町山 未公開映画を観るT.../出演者不明

「精神医学と疾病概念」

「松嶋×町山の未公開映画を観るTV」は好きな番組でして前回は「ORGASM Inc」をやっておりました。
http://www.matsumachi.com/
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 女性の性感を高める新薬「女性版バイアグラ」の開発に躍起の製薬業界。そんな製薬会社の実態とその信憑性のないデータを、ひとりの女性監督が追う。女性の性的機能不全とは、果たして事実なのか、それとも製薬会社のでっち上げなのか?
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 かなり笑えたんですが女性の“性機能不全”、つまり、「イケないのは病気だ!」と煽る製薬業界とお医者さん、「そんなもんは病気ちゅう!」と戦う識者や団体の攻防戦を追ったもので、最終的にはアメリカではFDAに認可されなかったという話。FDA(アメリカの食品医薬品局)が「イケるかイケないかより心臓発作という副作用の懸念を無視できるかい!」(意訳)とかがんばっておりましたね。松嶋さんは「ところで愛はどこにいったんですか?」ともっともな突っ込みしてたり、町山さんが「セックス依存症も、“ただの浮気者”だと言い訳にならんからねー」みたいなこと言ってましたが、自己責任の思想が強くて、訴訟が多い社会っていうのは、最終的に自分を救済するためには、「病気のせい」にすがるしかなく、その「病気」は誰が決めるかというと、お医者さんや社会が決めるわけで、境界線が微妙な「病気」が多い社会っていうのは、ほんとは自己責任社会じゃないのかもなあと思いました。ある種のセーフティネットなんだろうな、と。

 以前も「慢性ライム病」のドキュメントをやっていたんだけど、アメリカで突出して数が多いのは、「慢性ライム病」(ライム病は実在します)とされている多くがどーもウソっぽい(患者が神経系や心理面の問題は抱えているのは事実だけどそれは慢性ライム病ではないのではということ)。そのウソかホントかでアメリカ医学会まっぷたつみたいな話でこれも面白かった。

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http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_11/k02_11.html
 欧米では現在でも年間数万人のライム病患者が発生し、さらにその報告数も年々増加していることから、社会的にも重大な問題となっている。
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 さて。以下の本とてもおもしろかったです。
 特に「精神」が絡む病気というのは以上のような議論がよくあるわけなんですが、これは70年代の精神科医たちの討論を復刊したもの。
精神医学と疾病概念 (精神医学重要文献シリーズ)

 当時70年代は非人道的な精神医療の実態が告発されたり、「白い巨塔」のように医局制度が攻撃もされていた時代。

 「反精神医学」と考え方というのは簡単にいうと、「そもそも精神病なんて、医者や社会が貼ったレッテルであって、そんなものは存在しない!」というこれはこれで極端な議論なんですが、医療現場を攻撃したり、「権威」ある先生を攻めるにはちょうど便乗しやすい議論だったという面もあります。


 以下の討論部分で、臺(ウテナ)先生が、「反精神医学」的立場からすると批判される側、土居先生は、「「甘え」の構造 」が有名ですね。荻野先生もどっちかいうと「反精神医学」のほうの立場の模様。臺先生は私は読んでると、とても当たり前のことを何度も何度も言ってます。

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土居 ・・・・しかし、新しい言葉なのか、古い言葉なのか、新しい歌なのか、古い歌なのか、と私は問いたい。
荻野 ある意味では僕は古い歌だと思います。私にとっては。
臺 わからない(笑)
土居
 ちょっと臺先生にわかるように説明していただきたい。
荻野 何かね、人間、長い間人類が一番大切にしてきたものがね、それが今日、完全な技術主義によって一つ一つむしばまれてると思うんですね。土居さんの言葉で言うが、秘密がなくなりつつある。例えば友情だとか夫婦生活だとか、いわば都会の祭典、祭とかですね。そういうものまでが技術によって支配されつつある。そういう中で、一番の犠牲者、一番とは言わないけど、統合失調症もその犠牲者のひとりじゃなかろうかと思うわけです。・・・・・・そういうふうな現代文明観がというものが私の根底にあるわけですね。ですから、そこからのtransということが新しい方向と言われれば、新しい方向ですね。しかし、それは古いものの打破かと言われれば、古い歌の想起でもあるわけです。
内沼 私は治療的共同体ってあんまり知らないし、またあんまり興味もないんですが、先生は平等の精神で貫かれている共同体うんぬんと書いておられますけど、そういうものが先生にとって非常に古い歌になるわけなんですか。
荻野 それはそのまま古い歌じゃないんですけど、古い歌への志向、そういうものものいろんな場所で文学とか、いろんなところで見られますね。で、こういうもののなかにもそういうものを見たいを思ったんです。そういうふうに理解したいと思うんです。・・・・
内沼 私はこういう言葉を聞いただけで、げんなりしちゃうんですよ(笑)
荻野 げんなりする人多いかも・・・・。
内沼 なぜげんなりすると言うんでしょうかね。ともかく感覚的にげんなりしちゃうんです(笑)
臺 
実際にね私、クラークさんのところに行って見てますとね、そんな新しい感じはちょっともしないいんですよ。----
松沢病院でやっていたこととちょっとも変わらないんですね。・・・・
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 「共同体復活♪」みたいな言葉が出てきて、ここでは全員「げんなり」(笑)。この“げんなり”ってわかるなあ。でも、80年代や90年代のような心の議論のみが蔓延している状況よりは、「げんなり」はしてるだけマシかなあと思ったんですが。

 臺先生はほかの本(下にリンクしてます)では、精神病院を、私立に押し付けて、「商品」にしてしまい、少ない職員でたくさん見れるような、「治療」じゃなくて「管理」にしちゃったのがいけないんじゃないの?っていうふうに言ってるんですか、そういう話はならない。「反精神医学」チームは「社会」「社会」っていってるんですが、実はあんまり見れてないわけです。

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臺 ・・・・十何年も前に「ロビンソン・クルーソーの病気」という小文を書いたことがあるんです。ロビンソン・クルーソーの物語では、彼は風邪をひいて熱を出したくらいで、ラムかなにかを、酒に入れて飲んで治っちゃうんですが、精神病にはならないんですね。しかし、進行麻痺になったとすれば、あの話はできなくて、彼はもう死んでしまうからこれは問題ないんですが、ロビンソン・クルーソーが統合失調症にならなかったとしてもおそらくあの話は出来上がらなかっただろうと思えるんです。たとえば、フライディが出てきたときに彼は被害的になって撃ち殺したかも知れない、彼はフライディの助けて一緒に暮らしたということのために、彼はその後にイギリスに帰れる道を開いているわけです。彼の島には、野蛮人や反乱船員が攻めてきますからね。で、先ほど狂った状態は不健康ではないと土居さんは言いましたね。
土居 
狂っているということと不健康であるということは同一の範疇ではない、という意味で言ったのです。
臺 私は狂った状態というのは不健康であろう、不健康と言えると言いたいのですね。
たとえば、ロビンソン・クルーソーが狂ったら、彼はその後の危機に対して、適切に処理することができなくて、あの島で死んだでしょうね。・・・・狂った状態というのは不健康であるのが普通だと僕は思いますね。・・・・(略)

臺 だけど疾患という言葉が出てくる前にですね、われわれが統合失調症と言っているような状態がたった一人の島で起こったとしても、やはりそれは不健康な状態であって、彼はロンドンには帰れないと十分予想されると。

土居 そういうふうに先生は判断するわけで、その判断は判断なりに価値があるわけですけれど、しかし、狂っているという概念自体はノルムがあって、ノルムから狂っているという正常・異常の分け方ですね。たしかに正常・異常という相補的なcomplementary な概念は精神医学にずいぶん入っています。これと、健康・病気というcomplementary な概念は全く違うものです。このほかにもうひとつ別に善悪という概念があるわけですね。これも精神医学のなかに知らず知らず入ってくることがあるのですが、以上3つの相補的概念は全然別のものであるということは私は言いたいのです。

臺 それはいいんですよ。不健康のなかに病気があると僕は前に申しましたがね、全部が不健康、即病気とは言えない。
土居 不健康が即疾患と言えない、というならわかりますけれど、健康と病気というのは相補的な概念なんだから、健康でないっていうのは・・・・。
臺 そうじゃないの。健康と不健康は相補的だけど、病気とは正確には相補的ではない。
(略)
吉松 ・・・われわれの立場としては、目の前にいる患者をどう見るかということですね。だから、ロビンソン・クルーソーが医者にかからなければ、今言ったようなことはあまり意味がない気がします。

臺 そうでしょうか。しかしロビンソン・クルーソーが狂ったら、おそらくフライディとは共同生活はしませんね。そしてフライディはそばにいなかったら、その後の危機を乗り越えることができないわけです。

吉松 だから、ロビンソン・クルーソーの生活史にとっては意味がある。しかし臨床医にとっては。
臺 
でも医者はいないんだもの。
吉松 でも逆に医者がいるからこそ、臨床医学が出てくる。いろいろな判断概念が出てくるのではないかという気がします。
臺 だから僕が言いたいのは、医者が出てきて判断する前に、医者がいようがいまいが、ロビンソン・クルーソーが一人で島にいたときに狂った状態に、しかも病気で狂った状態でいるということがあり得るだろう、とこう言っているんです。そしてもし彼がそういう状態になれば、生きてロンドンに帰れないと言っているわけです。(略)
土居
 
それはイギリスに帰ることが幸福であるという前提のもとに立ってのことですね。
 
今は幸福という問題は言っていないんです。

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 何度も臺先生は同じこと言ってるんですけど、「イギリスに帰ることが~」はいちゃもんにしか見えん。土居先生の突っ込みがあさっての方向に~!!!

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土居 それは再発ということを、非常に悪いことであるという考えがどこかにあるということです。再発してもかまわないじゃありませんか。再発の自由も奪っちゃ、気の毒な気がする(笑)。
 いいことじゃないんですね。患者にとっても医者にとっても。

土居 しかし、失敗はないでしょう。

 失敗じゃないですか、少なくとも。

土居 いや、もしたとえば先生の疾患概念によるならば、それはそれこそ、オートマティックに起きることなのであって・・・・。

臺 いやそんなこといってないですよ、ちっとも。疾患と患者の生活を同一視しないでください。だから僕は、統合失調症者の運命的なものであって宿命的じゃないといってるでしょう。

土居 ですから、そこで失敗という受け取り方をすることには、僕は非常に抵抗を感じますね。失敗というふうに見たら、患者も救われないな。医者も救われないし。そこから成長の可能性もなくなってしまうと思う。

臺 僕はそれはちょっと・・・・。土居さんも無理していらっしゃいませんか(笑)。(略)

臺 それから、たとえば、失敗というと極端な場合を考えればいいんですよ。患者が自殺しちゃうということがあるわけですよね。これはどう見たって失敗としかいえないんじゃないですか。

土居 それは医者の失敗というなら、僕はまだわかるんですがね。

臺 当人にとっても失敗でしょう。自殺してしまえば、成長もないでしょう。

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 「再発する自由」ってなんだよ!ですが、ほんとにこういうことが大真面目に語られているんですよねー。私は病気になったらぜったい臺先生に診てもらいたいです。臺先生は入院されてた患者さんが病院を抜け出したとき、お医者さんや看護婦さんと総出で探し、そして電車に飛び込み自殺をされていた方を、看護婦さんがそのバラバラ遺体を拾ってきて泣いているのを見て、自分も拾いにいけばよかったと悲しんでいる先生ですから、よく怒らずに聞いてるなあと。

 臺先生は日本の「反精神医学」の嵐(+全共闘運動)のときにご自身の研究が「人体実験」と糾弾された方なんですね。内容は「反実証的」な医療過誤訴訟のようなものです。そして、当時は例えば大野病院の訴訟のときのように守ってくれる動きがほとんどなかった。学会あげての吊るしあげ。

 小熊英二さんの「1968」では全共闘の学生が、研究書などを焼き払ってますが、精神医療現場での「運動」はもっとひどい。精神病院にたてこもり、もっとも弱い患者を盾にして、「自主管理」を要求。臺先生は機動隊を拒否します。それはストレスにとても過敏な精神病の患者たちを守るためでしたが、それさえも「自主管理運動」をかばっているとも批判されました。

誰が風を見たか―ある精神科医の生涯/台 弘

 例えば、今は難治性のパーキンソン病などでは、脳の深部に電極を入れる深部脳刺激療法(DBS)がされたりしますが、私は、こういった医療の実績や脳科学の研究から、タブーとされていた「精神外科」は戻ってくるのではないかと思います。でも臺先生の研究がきちんと進められていたら、日本の精神医療はもっとすすんでいたのではないかと残念でなりません。

 この当時の「反精神医学運動」を“理不尽な部分も多々あった医療過誤訴訟みたいなもの”と考えると、そののちの「精神医療」が精神分析やら、占いと大差ないような“療法”に傾倒することになったのはわかる気がします。箱庭療法やら、マンダラではまあ患者は死なないでしょ。“安心安全な医療”(それは医療ではないと思いますが)にのみ精神科医が押し込まれていったのではないかと思います。

 精神分析で有名なフロイトももともとは「コカイン」を研究してたようです。患者を中毒にもしちゃったようですね。非難もされました。そういう苦しみもあって、患者がその療法によってまず死なない、非難されない“精神分析”になっていたのかもしれないなあと思います。

監獄レストラン

 熊にどんぐりって、イベリコ豚を見習って、ペジョータ熊牧場を作っておいしくいただきましょう♪地域活性につながりますよんって話かと思ったら、違ったのね・・・。残念だわ。ちょっとそれはおいしそうかもなあと思ったもので。まあトトロも食べられたらおいしいと思う。


 さて。

 あら、赤木さん ネタにしてくれてたのね。ありがとう。

 刑務所や保護観察所が作られるとなると、地元で盛大な反対運動が起きてしまったり、赤木さんもコメント欄で書かれているけど、「加害者に金遣うなー食いぶちは稼げー」と元気のよろしいコメントが入ったりするわけですね。

 もちろん「福祉施設」として対応しないとまずいという認識もあり、施策もやっとこさ進んでおるような状況でしょうか。以下のようなニュースがございます。

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 http://mytown.asahi.com/areanews/kagawa/OSK201010020110.html

 高松刑務所のバリアフリーの収容棟が完成した。部屋と廊下に段差がないなど車いすでも移動しやすくしているのが特徴。全国的に60歳以上の受刑者が増え、刑務所も高齢化対策が迫られている。

 バリアフリー棟は3月に完成し、6月から利用が始まった。1階には広さ30平方メートルほどの部屋(共同室)が20室あり、1室に受刑者6人が寝起きしている。ドアを開けると、廊下と室内に段差はなく平ら。同刑務所の宮沢広・庶務課長は「車いすや足の不自由な人でも部屋に入りやすい設計」と説明する。

 室内には畳が敷かれ、奥に置かれた洗面台の水道の蛇口はボタン式。「握力が弱まり蛇口をひねることが難しい人でも、手のひらでぽんっと押せば水が出る」と宮沢課長。トイレは足腰に負担がかからない洋式だ。

2010/10/3

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 塀の中でバリアフリーってギャグみたいですが、部屋と廊下の段差が越えられず、蛇口をひねることのできない握力では、どうやっても凶悪な犯罪を犯しようがないんで、地域住民の方にはみてもらうのが一番なのではないかなあと思います。


 そして、「加害者なんだから、自分の食いぶちくらい自分で稼げ!」みたいな威勢のよい人には、こういうニュースはどうでしょう。まあ、日本も若い受刑者がいないわけでもないし、少年刑務所もありますからね。


 こちら、イギリスの監獄高級レストランThe Clinkです。

http://www.theclinkonline.com/

 何重にもセキュリティを通って表れる超高級レストランのテーブル&チェアも囚人が作ったもの。サービス係も囚人です。過剰セキュリティ体験も(ほんとはそんなにいらないんでしょうが)オーウェルの小説世界の雰囲気を体験できるのがおもしろいんでしょう、世界各国で報道されていて評判になっているようです。そして公的機関なので一食1000円以下。かなりお得。

 上がHPですけど、The ClinkはスターシェフAlberto Crisci氏が受刑者の更生を願って、英法務省といっしょに運営しているレストラン。受刑者のなかにはミシュランの星を狙うよ!って意気込んでいる人もいるとか。日本だったら料理の鉄人が教えているみたいなもんでしょうか。日本でも丸獄グッズとか網走のご飯とか人気だったんでしょ。地域にも好かれるんじゃない?私は近所にあったら行くな。個人的な希望ですが、民間が絡むなら、夢のあることもやってほしい。日本のPFIの美祢刑務所なんて、セキュリティレベルでいくとあそこはセコムがおとして最高品質なんだから、まずは脱獄ゲームとかやってみるとか(笑)。

 冗談はさておき、Crisci氏のメッセージがかっこいいんだな。

 The Clinkっていうのは日本語だと「カチン!」みたいな音のことですが、こう書いてますね。

----I want The Clink to be the sound of chains being broken

 鎖を壊す音になりたい

 私は、「自分の食いぶちくらい自分で稼げ!」という人よりかっこいいと思うが。

エコ・テロリズム―過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ (新書y)/浜野 喬士
 頭のイベリコ熊おいしそかもー(笑)に戻りますが、過激化するエコ運動に関して、どうしてそんなに過激化するのかと書いた読み物。手軽な値段で読める本のなかでは一番おもしろかったです。エコキチガイめーみたいな本じゃないのでご安心を。そうそう、今年の警察白書でさまざまな運動団体の数が書いてあったんですが、もー圧倒的ですよ、ミドリな人々。労働問題のグループなんてかわいいものでした。

民間刑務所ガラガラ

 サンプロのあとにはじまった「サンデーフロントライン 」ですが、選定委員がニュースの優先順位を決めてそれを集計してニュースを報道するという番組。これ、それぞれの選定委員の偏り具合はよくわかっておもしろい。結果的にはわりとバランスのよい優先順位なんじゃないかなあーと思ったのですが、最近、ニュースでクマクマうるさい。「不審者に襲われるよりクマです、スズメバチです♪」とか冗談で言えなくなるじゃないの。ほんとにもー。熊は怖いですが。以下日本最悪の獣害事件の小説です。

羆嵐 (新潮文庫)/吉村 昭

 トップ10にクマ入れてるの誰だ?

 鳥越 俊太郎氏 

 7位 ここも、あそこもクマ出没

 大谷 昭宏 

 7位 ここも、あそこもクマ出没

 ははは。


 さて、今日のニュース。治安悪化で騒いだ結果。

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民間刑務所ガラガラで食材費5億円余が無駄に 会計検査院が指摘

 刑務所の過剰収容が問題となった後、平成19年度以降に相次いで設立された「民間刑務所」が予定より収容人員が少なく、食材費が余ったのに事前の一括払い契約にしているために約5億3千万円が無駄になったとして、会計検査院は26日、精算払いにするなどの方法で無駄をなくすよう法務省に求めた。

 検査院の調査対象となったのは、19年度以降にPFI方式で運営された美祢(山口県美祢市)、島根あさひ(島根県浜田市)、播磨(兵庫県加古川市)、喜連川(栃木県さくら市)の4つの社会復帰促進センター。

 センターはいずれも事業費の中に刑務所の収容者に出す食事の食材費を含め、毎年度四半期ごとの均等払いとし、19~21年度に19億351万円を支払っていた。ところが定員に達すると見込んでいた時期の収容人員は美祢が477人(47・7%)、島根あさひ908人(45・4%)、播磨704人(70・4%)、喜連川1146人(57・3%)でいずれも定員割れだった。

 その後も定員割れの状態は続き、実際にかかった食材費は約13億7169万円で、支払った額との差額約5億3180万円が無駄となっていた。

 検査院は新たに既存の刑務所の一部を民間事業者に委託した静岡、笠松、黒羽などの刑務所のケースでも実績に応じた精算払いとなっていることから、4つの社会復帰促進センターについても同様の契約方法に見直すよう法務省に求めた。

 2010.10.26 産経新聞

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101026/fnc1010261718019-n1.htm

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 2006年に浜井浩一先生が書かれていた民間刑務所について。

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 現在、政府では過剰収容対策として刑務所拡充が実施されつつある。

 PFI方式(公共施設の建設、運営等において、民間のノウハウや資金を活用すること)を利用した刑務所の新設も実施に移されようとしている。刑務所の元幹部職員の私としては、現場で働く刑務官のためにも、収容定員の拡大と職員の増員は早急に必要な措置であることに異論はない。

 しかし、ここで、少し考えてみる必要があるのではないだろうか。PFI方式の刑務所においては、比較的更生の可能性の高い初犯受刑者を収容するとされているが、松山刑務所内の大井造船所のように開放的処遇を実施している多くの施設で、適格者の確保が困難な状態にあることを考えると、一定レベルの作業能力のある受刑者を確保することは容易なことではないと思われる。

 そもそも、現在、刑務所に収容されている受刑者は、本来、刑事司法の中で刑務所が設計された際に想定されていた人たちなのだろうか。

 過剰収容下にもかかわらず、次々と送られてくる受刑者をさばき続けながら、私が見た刑務所は「治安の最後の砦」ではなく、「福祉最後の砦」になっている姿であった。

 「犯罪不安社会 誰もが「不審者」? (光文社新書)/浜井 浩一」  213~214頁
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 想定していたような働ける受刑者がいなかったってことね。きちんと数字見てる人の言うこと聞いたほうがよいねー。

『冤罪法廷』

 前回のエントリーについて、読者の方から「ほんとうに机叩いたりしているのかなあ~」、「検察の取り調べの可視化っていうのも話題になるべきだと思います」とメッセージとコメントをいただきました。

 村木厚子さんの冤罪事件での証拠ねつ造について大々的に報道がされましたが、魚住昭さんの本が出版されてます。帯は緊急出版と銘打っておりますが、かなり追いかけていらっしゃったのだと思いますので、村木さんの事件だけではなく、特捜のほかの事件や、その問題点、歴史的な特捜の位置づけなどの分析と併せて読んでいただきたい本です。警察だけではなく検察官も机も叩いてます。というか裁判で検察があっさり認めてます。(ほかの事件だと机叩いているどころの暴力じゃないむごいのもありますが)、そして検察の取り調べ可視化も話題になるべきだと思います。

冤罪法廷 特捜検察の落日/魚住 昭

 村木さんの裁判で坂口英雄副検事(20年余り検察事務官を務めて副検事に任官したベテラン)の裁判でも尋問。「取り調べ中に机を叩いたことはありますか」という検事の質問に対して。

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 「取り調べ中に机を叩いたことはありますか」

 「何回かあったと思います」

 (略)

 坂口が机を叩いた事実を認めたのは、多少机を叩いたぐらいで調書の任意性が疑われるはずがないという計算が働いたからだろう。少しは不利益なことも認めて、裁判官に証言態度の真摯さを信じてもらうことが大切なのである。

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 ほかのところの証人尋問でも。

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 「そのとき検事は声を荒げたりしたんですか」

 「まあ、個人批判になるんでやめておきます。でも、私が否定すると『そうじゃないだろ!』と尋常じゃない感じでした。こういう調べを警察官がやるのはわかりますが、まさか検察官がやるとは思わなかった。『ウソをつくな!これは事実なんだ!』と机を叩くんですから」

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 じゃあ親切な検事はどうかというと。村木さんの関与を迫るために、関与がないという主旨のことをいっている上村氏に・・・。以下は裁判でも出された被疑者ノートの内容を紹介しているところです。

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 村木の関与について全く聞く耳を持たない。毎回毎回バカバカしい。検事はいつも「ここからは想像でしかないんだけどね」と言って私に聞いてきて、それをパソコンに打ち込み、それが調書になる。いつもこのパターンで架空の調書を作りあげる。「ちゃんと眠れている?」とか「心配事があったらなんでも相談して」とかいうが、調書作成のときには、私の言っていることに耳を貸さない。その割り切りを見ていると、機械のようだ。

 もう無駄なことはやめよう。きちんとした供述を書いてもらえない。また逮捕されて20日間拘置されたら困るから。

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 それで検事はいっしょにトランプで遊ばせているんですよ。こんなことするんなら早くちゃんと取り調べてほしいと書かれていました。

 検事の取調べ可視化も話題になるべきだとコメントいただきましたが、魚住さんは検事調書の「特信性」を問題にしています。

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 第321条1項2号(検事調書の特信性)。被告以外の者の供述を記録した員面調書や検事調書は被告の同意がないと証拠として法廷に出せないが、検事調書に限っては公判供述と比較して「信用すべき特別の情況」があれば証拠として採用できるという規定だ。つまり証人が法廷で検事調書の内容を覆す証言をしても、裁判官が調書のほうが信用できると判断すれば法廷証言を無視できる。

 一般の人は法廷で真実を述べれば調書の内容を訂正できると思いがちだが、現実には検事調書の「特信性」を否定するケースはごく稀にしかない。

 だから検察にとって刑訴法第321条1項2号は有罪判決を得る大きな拠り所になる。とくに物証の乏しい贈収賄事件などではそうだ。

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 こういう有利さがある調書なので、それをどうやって作ったかというのは非常に重要だと思います。ちなみに取り調べメモも捨ててたりするんだけど、そこも追及されています。この事件は、FDの日付のところが大々的に報道されていますが、読めば読むほど、それだけじゃないですね。

 魚住さんが元特捜検事の郷原信郎さんにインタビューをしててそれも掲載していますが、ここで郷原さんが出している「金沢事件」があまり問題にされなかったことを問題にしてますが、私も知りませんでした。これは机を叩くどころじゃなくて検事の拷問じゃない。

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 壁に向かって長時間立たせたうえ、質問に答えられなかったりすると、後から繰り返し腰のあたりを蹴り、額や腹部を壁に激突させた。「豚野郎」「猿野郎」「半殺しにして帰してやる」などと大声でどなりつけながらわき腹やももを蹴った。

 調べがうまく進まないときは、靴のままで正座させ、土下座の状態で首や後頭部を繰り返し踏みつけ、額を床にぶつけさせた。また顔を数十回平手で殴ったため、口のなかから出て血が机のうえに飛び散った。これらの暴行で専務は口や耳、首、腰などに1週間のけがをした。

 郷原が続ける。

 「今から振り返るとあのころから大変なことが起こりつつあったんですね。金沢検事だけの問題ですませてしまわずに、そのときに本当に問わなければならなかったことがあったんです。そうした取り調べが金沢検事に限らず、特捜検察の捜査手法から生まれるきわめて構造的なものではないのか、ということです。」

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 警察白書は机の固定化とか遮蔽板設置をいばって書いてますが、警察どころか検察がこれなんだから、ここからかよ!な状態なのかもあー。机や窓の改善のみで「ご安心ください」と言ってしまう白書の無神経さが余計怖いなあと思いますよ。

 この事件で出てくる村木さんをはじめ、証人の方たちは、ご本人達がかなり優秀だし冷静だとも思いました。防御能力も会話能力も一般の人からしたら、ものすごく優れているほうの人たちだと思います。それでもかなりの参りようです。犯罪を疑われたりする人の多くは、金がない、教育がない、コミュ能力がないといった防御能力の低いひとが多いわけです。「おまえがやったんだ!」と言われたら、「記憶がないし、忘れてるからそうなのかもなあー、こんな怖い現場にいたくない」と思って作文に署名してしまうんでしょう。



今年の警察白書でいちばんおもしろかったところ-危険な取り調べ室

 今年の警察白書を眺めていて、数字は全体的に落ちているので、日本って安全ねーと思っていたのだが、しかしなかでも危険だなと思ったのは以下の写真の頁でした。見たい方は平成22年度版警察白書の80頁をご参照ください。

 足利事件などで、取り調べの適正化が言われて、私も可視化はどうなってるんじゃーとか思っているんですけど、警察白書で、足利事件などを踏まえて、こんなにがんばってます!と主張している頁ね。

 以下のように「窓をつけて」、「カーテンをつけて」、「机を固定化して」、「机の下に遮蔽板を作って」こんなに努力してます!自浄作用がありますと主張してました。なんでこんな低レベルなことを写真つきでがんばって主張してんのなあ・・と不思議に感じました。
女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

女子リベ  安原宏美--編集者のブログ
 窓はまあ意図はわかりますが、机の固定化と遮蔽板は、なんでこうしたのかという説明がない。まさか、机の下で蹴るとか机をがーんと倒すとかドラマみたいなことしてるの? いやあ、いくらなんでも警察官がそんなねえ、刑事訴訟法も勉強してるんでしょ、あっそうか、たまに被疑者に蹴られたりするのかなあーと警察のほうに都合よく考えたりもしてあげたんですけど、報道を調べてみるとそのまさかだったのね。

 広島のニュースですけど。

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産経新聞
県警が改良した取調室を公開 広島
2008.9.1 01:58
http://sankei.jp.msn.com/region/chugoku/hiroshima/080901/hrs0809010157001-n1.htm
 広島県警では今年7月、県警本部総務課内に「取調べ監督室」を設置。9月1日から試験運用を始め、県警本部と広島中央署、広島南署の取調室で、捜査に携わっていない警察官が実際に取り調べを監督。不適正な捜査が行われていないかを調べるとともに、運用上の問題点などを探る。

 この日県警は、県内の警察署に先駆けて改良を加えた県警本部内の取調室を公開。監督官が室内をのぞけるマジックミラーがついた30センチ四方の窓が設置されており、被疑者への自白の強要や暴行などの問題行為がないかをチェックできる。また、被疑者の足をけるなど、監督官の目に届かない問題行為を防ぐため、机の下には被疑者側と捜査員側の間に遮へい板が設置されている。

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 ほかのニュースも探してみたけど、蹴ってるぽい。抜き打ち検査のニュースでも蹴ってるなあ・・・。暗数もあるよね。

 「暴力はふるって証拠を集めてはいけません!」からお勉強なのか。

 こんなレベルの低い防止策を考えなくてはならない監察官も大変だなあ・・・・・と思ったので、可視化したほうが、机とか窓とか小手先でがんばらなくていいんじゃないかと思います。

 取り調べ室で拳銃発砲されて被疑者が死亡した戸部署事件みたいな怪しい事件もあったしなあ・・。治安はおおむねよいんだけど、危険な取り調べ室を実感した今年の白書でした。

 

『沖縄だれにも書かれたくなかった戦後史』佐野眞一著

 暑い毎日が続きますね。

 エコポイント続ければいいのに。私もエコポイント申請して総額4万円くらい戻ってきたのでこのお得感は非常にうれしい。システムがもったいないよ。自給率アップポイントとか、国内旅行ポイントとか、あと限界集落引っ越しポイントとか社会保障番号取得ポイントとかなんでもいいけど。子ども店長の声で宣伝して政策にどんどん使えばいいのに。基本的にポイント制度は顧客とダイレクトにつなげる基本システムなので、いったん作ればほんとにいろいろできるんだけど。

 なにより洗濯機が入ってないのがおかしい。こんなしょぼい冷蔵庫にもついているのに(正しくエコな商品ではあろうが)!

サンヨー 47L 1ドア直冷式冷蔵庫 SR-51T(W)エレガントホワイト【エコポイント対象】

うちの洗濯機はまだそんなに古くないし問題なく使えるからポイントついてなかったら買わないけど、ポイントついてたら買い替えるなあ。炊飯器もつければいいのに、最近の高いし。 なんか15万円 のが出るらしい。おおー踊り炊きってなに?  


 さて、厚い本なので1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景 と同じく読もう読もうと思ってしばらく放っておいてしまった。続けて読んだせいもあるでしょうが、戦後史に興味がある人なら、こっちの本が断然おもしろいんじゃないかなあ。これで1995円って安すぎると思います。

 「鉄の暴風」に晒された被害者としての沖縄、奄美差別や霧社事件・ベトナム戦争の基地となった加害者としての沖縄、音楽と青い海の島という楽天的な沖縄というはっきり色のわかる話ではなく、戦後日本のありとあらゆる矛盾と葛藤が緻密に賽ノ河原の小石のごとく積み重なっていく状況を映そうとされています。死人、悪党、チンピラ、政治家が入り乱れたまさに百鬼夜行。佐野さんの好みでもあるんでしょうけどただのいい人はあんまりでてきません。基地問題もそうですけど、ズカズカとただのいい人、おぼっちゃまな政治家が入っていったら、そりゃあガラガラガッシャーンとなるなあ。山中貞則さんが生きていたら、今の基地問題はどう言うんだろうね。

沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史/佐野 眞一

 まず1章が沖縄県警の話です。1章から濃い。後藤田さんには聞けなかったのかなあと思っていたんですが、わざわざあとがきにひとりだけ特筆されていました。

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 沖縄で会って話を聞いた関係者の名刺をあらためて数えてみると、4百枚近くになった。唯一の心残りは、沖縄復帰時の警察庁長官だった後藤田正晴が、雑誌連載開始直前の05年9月に91歳で死去したためインタビューできなかったことである。もしも後藤田にインタビューできたなら、琉球警察から沖縄県警という警察組織の歴史的移行にまつわる最高責任者としての興味深い話が絶対に聞けたはずである。それを思うと、その機会を永遠に逸したことはかえずがえすも残念であった。

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 ほんとにそれは残念です。佐野さんなら聞けたかも。表現規制反対のオタクのみなさんにはおなじみの竹花豊氏も出てまいります沖縄県警ですが、佐々さんの本を読んでいても、沖縄県警のだめっぷりにがまん、がまんとふるふる拳を握りしめてる様子だったので、後藤田さんの話は聞いてみたかったなあ。佐々さんの菊の御紋章と火炎ビン―「ひめゆりの塔」「伊勢神宮」が燃えた「昭和50年」 だと、不思議なほど後藤田さんのことは出てこないんだよね。

 本書では沖縄のヤクザのルーツを「戦果アギヤー」と「空手」としてます。「戦果アギヤー」というのは米軍の豊富な物資を盗んで横流ししたり輸出したりする人たち、やらないと食っていけないので大勢の人が「戦果をあげ」ていたというかんじで罪の意識はなかった。『はだしのゲン』みたいな世界。ゲンは原爆で亡くなった人の骸骨売ってましたけどね。吉村昭の東京の戦争 などでも、戦後の電車の中のつり革がある日、全部切り取られていて、それが闇市でバッグの持ち手になっていたことを書いていたが、“いけないことだというより頭いいなあと思った、おしゃれだった”(大意)と書いてあったなあ。空襲で焼け野原のなった土の中から電柱を掘り出して、薪にして売っている人もいて(エネルギー不足で薪を持っていかないと遺体も焼けなかったから)感心していた。

 映画『海燕ジョーの奇跡』(原作 佐木隆三)のモデルとなった人とのその後も書かれる。時任三郎かっこよかったけど今観るとどう感じるんだろうなあ。よい保護司さんにめぐりあえたよう。ヤクザ稼業からは足を洗っていた。

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 「(略)学歴もなく、財産もない、無一文の人間がもしかしたらのしあがれるチャンスをつかむことができるのは、そこしかなかったんです」(略) 

 「(略)僕は15年も刑務所にいて、いっぱい本を読んできたから、こういう言葉で表現できますが、あの当時の気持ちで言えば、要するに偉くなりたいの一心でした。僕ら中学卒の人間は、地位とか権力とか、そういう小難しいことは頭の中で理解していなかった」(略)

 隣室からは人には言えない過去を持つ男たちから神様のように慕われる保護司が薬膳料理のアヒルの煮込みで、私とHをもてなす酒盛りの支度をする物音がもれてきた。

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 そして沖縄金融史のところ。沖縄県前副知事の牧野浩隆(元琉球銀行、調査部長)の話。

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「そこで沖縄の米軍当局は、外資を導入して沖縄の産業振興をはかろうとした。外資は軍票が流通しているようなところに入ってくるわけがありませんからね。ドルの沖縄の法定通貨にすればドルが欲しくて外資が入ってくるだろうと」

「ええ、そうです。もうひとつ重要なポイントは、ドル通貨に切り替えると同時に、沖縄の貿易を完全に自由化したことです。自由に入ってきて儲けたら、自由に出ていっていいですよ、とやった。1958年当時の日本の貿易自由化率は20%です。国内産業保護の立場から輸入制限していた時代です。」
 --それが沖縄では完全自由化ですか。

「その結果、沖縄にはドルも入ってきたがそれをはるかに上回る、夥しい商品が入ってきた」

「欲しい商品がなんでも入ってきたことは、消費者にとってはプラスでした、けれど、製造業は育ちません。本土の製造業の割合は二十数パーセントありますが、沖縄はわずか六パーセントです。これはいまいったような歴史的しがらみがあるからです。」

「これを金融面でいうと、貿易が黒字にならない限り、通貨は増えない。戦前の金本位制と同じです。ですから沖縄では慢性的な金融ひっ迫の状態が続きます。沖縄経済の基礎体力がつかなかったもう一つの理由は独占禁止を国是としたアメリカの政策です。自由競争の世界を沖縄につくるという政策のもと、こんな小さな島の中に琉球銀行に対抗する沖縄銀行をつくり、沖縄生命、琉球火災に対抗する琉球生命、沖縄火災をつくる。自由競争ばかり重視してスケールメリットは意識されませんでした」

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 「保護貿易」も「自由貿易」も事情ってものがあるんだよという、先進国もやったくせに発展途上国の事情を考えずに「自由」を押しつけてもねえーという意味で以下参考になる本。ケンブリッジの大学の先生が書かれています。自由競争の急速な導入は国内産業をつぶします。フィリピンのようにグローバル派遣社員型国民になるならいいですけど、という話。

はしごを外せ―蹴落とされる発展途上国/ハジュン チャン

 そして本書のなかでは沖縄に魂を注いだ山中貞則議員の話もたくさん出てきます。まずは山中ダラー作戦。

 衆議院での追悼演説 でも触れられていますね。

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 昭和四十五年には、第三次佐藤内閣の最重要課題であり、戦後、日本の最重要課題であった沖縄返還の掌にあたるため、先生は請われて総理府総務長官に就任されました。沖縄の祖国復帰が終わらない限り、我が国の戦後は終わらないとの佐藤総理の決意に応えるべく、先生は全身全霊を傾けられたのであります。
 沖縄返還には、数々の難問が待ち受けておりました。その一つが円・ドル交換問題であります。昭和四十六年のいわゆるニクソンショックによる変動相場制への移行が、ドル経済下にあった沖縄の人々の暮らしを根底から破壊してしまいかねない事態を招いたのであります。先生は、辞表を懐に、危機回避の陣頭に立ち、一ドル・三六〇円を国の責任で保証するという、一つ間違えば、日米交渉の行方にさえ悪影響を与えかねなかった大胆な方法で通貨切り替えを断行し、沖縄の人々の生活を安堵したのであります。(拍手)

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 本書では以下のように書かれています。

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 復帰まで秒読み段階に入ったその沖縄に、変動相場制をもしそのまま適用されれば、沖縄の経済が莫大な損害の蒙ることは火を見るより明らかだった。

 山中は大蔵省やアメリカ政府が猛反対するのを承知の上で、公然と差額の補填政策を命じた。これに真っ向から反対していた時の大蔵大臣の永田三喜男は、これ以来、山中と一言も口をきかなかったという。

 沖縄の日本人が所有するドルに限って1ドル360円のレートで交換する作戦は、極秘に進められた。もしこの計画が事前に漏れれば、各国の投機ドルが差額を求めて沖縄に殺到し、大混乱に陥る。1971年10月8日、沖縄の全金融機関が抜き打ちで封鎖され、翌9日から離党を含む約350ケ所でドルのチェックが行われた。

 1ドル360円で交換と発表したその前日、山中は記者会見でわざとらしく涙を流し、「1ドル360円の交換レートは断念」と発表する芝居までうった。

 金融機関に集められたドル紙幣の確認作業には、紙幣に鉛筆の尻の消しゴムで朱印を押す原始的な方法がとられた。最初ドル紙幣に証紙を貼る案やスタンプを押す案も検討されたが、アメリカ側が紙幣損壊罪にあたるとクレームがついたため取りやめになるという一幕もあった。(略)山中はこのときのことを回想して、次のように述べている。「当日は琉球政府の警察官を動員して沖縄の全金融機関を封鎖、空港でも警察官が外国人のドルを一時保管した。しかも、日本人だけが対象で、駐留米軍は除くということだったから、実施後に米政府から『国際法違反』だとして二度も抗議が来た」

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 自民党の税調は山中さんが亡くなって影響力が低下したみたいですが、なぜここでも後輩を育ててないかなあ。ご本人も世襲を拒否。まあ子どもだったらマックロクロスケなところは歩きたくない、親は歩かせたくないとは思うかもしれんですが。口蹄疫、沖縄の基地問題、消費税と、最近は山中さんにドンピシャな政治課題があがっていますが、生きていたらどういう(裏)技を使ったんだろうと思いまする。あと「優秀」な政治家はできるだけ目立たぬようにコソコソやるんじゃないかと思うのですが(目立ってるときはうしろで別件がなんか動いている)前原さんとかなぜあんなブチ上げるんですかね。

 そして基地問題。佐野さんは不動産屋さんの「軍用地」のパンフレットを以下のように引用されています。

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 世界遺産の首里城にほど近い那覇市内の不動産屋に入り、軍用地について聞きたいのですが、というと担当者はまずこれをお読みくださいといって、軍用地についてまとめたという薄いパンフレットを差し出した。

 〈「軍用地」とは?

 沖縄県内在住の方には、「軍用地」は聞き慣れた言葉だと思いますが、県外の方には「軍用地って何?」と思っていらっしゃる方がほとんどだと思います。ここで、この軍用地のご説明とその活用法についてお教え致します。

 「軍用地」とは沖縄の自衛隊基地・米軍基地の事を指しますが、その基地のほとんどは、国が個人の土地を借地(強制使用)しているのが現状です。

 この借地料は沖縄で年間900億円を国が地主さん達に支払っています。

 昨今話題になっている米軍基地の問題ですが、この「軍用地」は基地問題という一面も持ちながら、戦後の沖縄の経済を潤滑した収入物件でもあります〉

 この説明を読んでひどく感心させられた。軍用地について書かれた本も何冊か読んだが、いずれも左翼的言説のオンパレードで、途中で投げ出したくなるような代物ばかりだった。

 それに比べ、このパンフレットは軍用地の本日を実に的確に言い当てている。

 パンフレットの二項目目には軍用地の年間借地料について説明が書かれていた。

 〈年間借地料とは国が地主に支払う土地代(土地使用料金)を指し、その利率は“年々上昇”しています。借地料の目安になる土地の1㎡あたりの借地単価は、毎年、国と沖縄県軍用地主連合会の間で話し合われ、その結果、翌年分の借地料の値上がり分の金額が決定します〉

 (略)パンフレットには懇切丁寧に、こんなことまで書かれてあった。

 ≪メリット≫管理は国にお任せですから煩わしさがありません/担保価格が高く確実な収入が毎年入ってきます/換金性が高い土地です/固定資産税が安く、相続税も有利です。

 ≪注意点≫返還される見込みのない土地を買うこと。地域によっては返還されるところもあるので要注意。

 ≪こんな型にお勧めです≫老後の安定した収入物件を探されている方/沖縄移住後に収入物件をお考えの方/金利の高い安心できる貯蓄先を探されている方・・・

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 まず池上さんに、どれほどの利害が対立しているとかフリップで説明するところからはじめてもらうとか・・というしょうもうないことしか言えません。

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