2016年アジアのサッカーシーズンもいよいよ始まります。Jリーグが今週土曜日に開幕するのに先立ち、2月20日にはベトナムのトップリーグ、トヨタVリーグが開幕しました。そこで昨日21日はハノイで行われた唯一の開幕節、ハノイFC対ホアンアンザライ(HAGL)の試合を観戦してきました。
vleague2016opening1さあ、今年も開幕!ハノイFCはピンクのユニフォームがキュートです。

 ハノイにはもう一つハノイT&Tという、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフにも出場する強豪がいるのに比べると、ハノイFCは今年トップリーグに昇格したばかりの若いチーム。まずは一部リーグ残留を目指して欲しいものです。

 そしてHAGLは昨年は人気の若手選手を多く擁して大人気を集めたチーム(リンクのこんな記事参照)。しかし、今年はコンフォンが水戸ホーリーホックに、トゥアンアンが横浜FCに移籍するなど人気の主力が抜け、苦戦が予想されています。しかし、日本の横浜FCからは井手口選手の参加も得て、巻き返しを図ります。その意味ではこの開幕戦は双方チームともに、今年一年どれだけやれるかを図る一戦にもなります。

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バックスタンドはガラガラで、結局5千人くらいの動員だったとのこと。右に見えるHAGLサポの方が団結した感じでした。

 何とこの試合は無料開放!今年二部リーグから上がってきたハノイFCもまずはハノイ市民にお披露目という意味なのでしょう。メインの方はまあまあ入っていましたが…、うーん、無料開放の割にはバックスタンドはやっぱりスカスカでした。まだどうもハノイのチームは地元に根付いていませんね。応援も去年から人気になったHAGLのアウェイサポーターの方がまとまってました。(ちなみにスタジアムに向かうのに乗ったタクシーの運ちゃんも「ハノイ市民だけどHAGLサポ」)

 ハーフタイムには抽選会を行うなど、少し集客に力を入れようという動きも見えました。日本のスタジアムではよく見かけますが、ベトナムでは初めて見ました。まあ残念ながら当たりませんでしたが、賞品は何だったんだろうなあ、番号だけ連呼されて肝心の賞品がアナウンスされず・・・。

vleague2016opening3ハノイFCは大敗も、5点のゴールシーンにハノイ市民は大満足!?でもないかな?


 試合内容はと言えば、前半はゴール近くでの見せ場が少なく、ミスが多い雑なサッカーで0-0。メインスタンドに割と入っていたハノイのお客さんも、一応ハノイFC応援するけど、後半途中あたりからは「とにかくどっちでもいいから良いゴール見せてくれ!」といった雰囲気。そして後半25分にHAGLの綺麗なミドルシュートが決まると皆が大喜び!そこからHAGLのカウンターが次々決まり、最終結果は何と5-0、16分間に5点入るという大爆発。ハノイFCはせっかくのホーム開幕戦を、アウェイHAGLに完全に持って行かれた試合でした。逆に、後半にバシバシ見せた、HAGLの若々しい元気なカウンターはなかなかすがすがしかったです。試合映像などはこちらから。

 井手口選手は守備では効いていたものの、コンビネーションや攻撃に切り替えるところのパスでは正確さに欠ける感じでした。まあ初のベトナム公式戦ですし、今後に期待ですね。

 ともかくも、ベトナムも日本もサッカーシーズンが開幕。湘南ベルマーレも土曜日にホームで開幕戦!「待っているのは最高の週末だ」と行きたいですね!
 10月19日付TuoiTre紙インタビューに答えたベトナム内務省副大臣。記事のタイトルは「若い人材がリーダーになっていくのは喜ぶべきこと」とのコメントを引用。まあ一見どこの国で誰が言っても、「そりゃそうだろうなあ」という至極当たり前に聞こえるコメント。ただ、ベトナム政治の季節にこう出るとその背景も勘ぐってみたくなる。

 そもそもこんなインタビューを内務省がされているのは、クアンナム省という中部地方省で、元同省党書記の息子が、投資計画局という投資許認可権限を持つ重要な局の局長に、30歳という異例の若さで昇進したことがベトナムメディアで話題になっていたからである。こちらツイートでも紹介したように、お父さんまで出てきて「問題ない」と息子の能力に太鼓判を押したものの、メディアを通して大きな話題になったところ騒ぎが収まらず。ついには内務省がその手続きを調査することになった。

 そこでその調査を指揮した内務省副大臣が「手続き上問題ない」という結論を出したことが、冒頭に紹介したインタビューの背景となっていたのだ。ネット世論でも「本当に能力あるなら良い」という声と同時に「まあこんなのここだけじゃなくて色々なところであるでしょ」なんて冷めた声も。

 それもそのはず。このインタビューが紙面に載った前々日、17日にはグェンタンズン首相の息子、グェンタィンギー氏がキエンザン省という南部地方省党書記、39歳(1976年生まれ)という現時点では最も若い地方省党書記となった。更には末の息子さんのグェンミンチエット氏もビンディン省の共産党常務委員に、何と27歳での選出(当たり前ですが最年少)。まあこれらのニュースの後にインタビューされれば、相当な強者でない限りは「経験のない若手の内に、父親の経歴が故に出世するのはけしからん」とは言えませんわなあ。

 先週にはダナン市でも同じく1976年生まれのが同市の共産党委員会書記に選出された。彼の父親も元中央検査委員会主任のグェンヴァンチー氏というサラブレッド。親が共産党リーダー職を担った(っている)ベトナム版「太子党」(中国政治で共産党高級幹部の子弟たちを指す)の地方人事での躍進、これらはお父さんたち(のお友達?)の来年1月第12期共産党大会での躍進を暗示するものなのだろうか?
15日ベトナムTuoiTre紙記事によると、中国から多くの「合金」偽装をした粗鋼鋼片がベトナムに輸入され、国内製鉄業は不公平な競争を強いられている。

ベトナム製鉄協会によると、今年9月までに約100万トンの「偽」合金が中国からベトナム市場に流入しており、本来払うべき9%の輸入関税を払わずに市場を席巻している。8,9月の2ヶ月だけで約189万ドルが徴税できていないことになる計算。

ベトナム国内製鉄業界も世界的な生産能力過剰の例に漏れず、稼働率の低さに悩まされている。それに加えて、ハティンフォルモサ、ズンクワットなど大規模な製鉄所の稼働開始を控えて、更に生産能力は拡大しそうだ。もちろんそういった大規模プロジェクトが狙うハイエンド市場より課題が大きいのは、中国からのこういった粗鋼との競争も激しい中小の製鉄業であろう。(こちらレポートなど参照)

中国側も一時期の好景気、建設ラッシュが一息つき、国内製鉄需要が少なくなれば、当然近隣国への輸出圧力は相当高まるはず。実際今年9月統計では鉄鋼輸出が伸びているというニュースも。世界の粗鋼生産の半分を占める中国からあふれ出る鉄の勢いを抑えるのは容易では無さそうだ。
 一年前のあの熱気はどこへ行ってしまったのか。その頃のベトナムサッカー界の雰囲気をこんな風に書いたこともあったのだが、最近のベトナムサッカー界は迷走している。

 今月、ハノイ・ミーディンスタジアムで行われたロシア・ワールドカップアジア二次予選で、ホーム2連戦を戦ったベトナム代表。8日、強豪イラクとの対戦では後半アディショナルタイムまで1-0でリードし、「番狂わせか!?」と湧いたところで、ハンドによりPKを与えるという不運なドロー。そして13日、宿敵(とベトナム側は思っている)タイとの対戦では0-3と完敗。最終予選への道はほぼ絶たれたと言っていい。

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2016年は盛り上がるベトナムサッカー界とすることができるか!?

 もっとも、この結果が迷走を引き起こしたわけではない。この試合よりも前から、代表監督の三浦俊也氏に対し、「三浦退陣!」との声が叫ばれ始めていたのだ。大きな声を上げ始めたのはドゥック氏。こちらの記事でも紹介したように、昨年までU-19旋風を巻き起こしたHAGLの金持ちオーナーが「三浦監督は辞めるべき」と公言し始めたことで、代表のサッカーに不満を持つサッカー世論は勢いづいた。ワールドカップ予選での振るわない結果は、この声を更に大きくしてしまったのだ。

 ドゥック氏は手塩にかけて育てたU-19選手たちの代表招集、起用方法に関して三浦監督と意見を違えていたという見方もあり、監督批判はその辺りにも遠因があるかもしれない。ただ、ベトナムサッカー(オーナー)界の大御所かつ圧倒的人気を誇るU-19育成の立役者の発言は大きく、サッカーファンの間でもその去就を巡る議論が激しくなった。

 三浦監督自身は「ベトナムの選手は諦めが早すぎる」「ベトナムがタイに追いつくのは時間がかかる」という趣旨の発言を率直にし、ネット上のコメントなどでは「ごもっとも」という冷静な意見も多いが、反発する意見も多く、とにかくコメント数が増えている。更にはファイスブックで勝手に三浦監督を名乗る偽アカウントが、ご丁寧にも英語で「辞任発言」をして、それをなんとも軽率にもメディアが伝え、VFF(ベトナムサッカー連盟)が否定に追われる辞任デマ騒ぎになるという混乱ぶり

 もっとも落ち着いた論評もある。「三浦監督に感謝」という皮肉っぽいタイトルの本日15日TuoiTre記事論評では「ベトナムサッカー全体の問題が代表につながっている。VFFはタイサッカー連盟に遥かに劣っている、国内リーグはタイプレミアリーグのように盛り上がっていない、審判だって重要な試合には海外から招聘しなければいけない状態。こんな状態でタイに勝てる方が真理に反している、そういう状態を見せてくれた三浦監督に感謝」という意味だ。タイトルはともかく、代表だけ、代表監督だけ責めてもしょうがない点は全くそのとおりだ。ネット上の激しいコメントよりも、ベトナムの一般サッカーサポーターはこういった見方をしているように私も感じる。

 ネットニュースに付くコメントを良く見てみると、Likeを集めるコメントが多いのは「三浦辞めろ!」よりも、「大体VFFは今まで責任とったことあんのか!」というコメントに見える。13日のタイ戦完敗後にVFF幹部が「三浦監督が責任を取るべき」とした発言を紹介した記事には、山のように「じゃあ、お前の責任は何なんだ?」というコメントが。混迷の底辺にあるVFF不信の根深さを感じさせる。

 今年のベトナムサッカー界を振り返れば、期待されたU-19出身選手を多く抱えるHAGLにもシーズン後半には残留争いに巻き込まれ、「疑惑の試合」まで出てくる後味の悪い形で国内リーグ戦は終了。盛り上がる国内リーグを期待していたベトナムサッカーファンは、怒りの矛先を探してしまうのかもしれない。悪いことが重なってしまった感じだ。
 
 2016年1月、日本も参加するリオ五輪予選を兼ねたU-23アジア選手権でどんでん返しの大躍進を見せられるか、或いはJ2水戸ホーリーホック入りが噂されるベトナムのメッシCong Phuongが日本で大活躍するか?いずれにせ2015年のモヤモヤを吹き飛ばすような、ベトナムサッカー界の2016年に、ちょっと早いが今から期待をしたい。
 このブログ自体もしばらく更新しておりませんでしたが、再開第一回は、更にその前身の「北京で考えたこと」の好評(??)連載、「ドラマからみた中国」シリーズ、今回は昨年から放映され大ヒットしたと「虎妈猫爸(Tiger Mom)」です。ちなみに前回のドラマから中国エントリーは4年前の8月、もう随分経ったんですねえ。きちんとドラマを見終えたのはその頃以来というから久々です。4年もご無沙汰すると新しい中国語ボキャブラリーも随分あるもので、中国語の勉強にも大分役立ちました。

humamaoba1ベトナムZingTVで見たのでタイトルもベトナム語字幕付きです


 今年5月に放映され始めて中国国内で大ヒットしているこのドラマ。自分が見始めたきっかけは、ベトナム人であるうちの妻が「これ面白いよ」といって薦めてきたこと。今回はZing TVで全て見させてもらいました。ベトナム語の字幕も付いているので相当多くのベトナム人も観ていたよう、まあ便利な世の中になったものですねえ。今後も使わせて頂きます。

 主人公の女優は赵薇、そして董洁と豪華キャスト。個人的には赵薇は(いまだに)「情深深雨蒙蒙」のイメージで今もいる赵薇が、すっかりお母さん役なのは驚きですが、1976年生まれ(自分と同い年)なんだから当たり前といえば当たり前なんですけどね。けど気の強いタイガーママの役柄にはピッタリですね。男性の主人公は佟大为、「八〇後」として紹介した「ドラマからみた中国(6)「80後」を考える「奮闘」と「婚姻保衛戦」の恋愛・結婚模様」でも主役でしたお馴染みの顔です。確かに超ハンサムというわけではないところ(笑)も含めて、ねこパパの親しみやすさを感じます。

humameoba2赵薇もママ役ですかあ、でも変わらぬ美人ぶりです(笑)


 ストーリーの基本は至って明快、「子どもの教育をどうするか」。幼稚園から小学校に上がっていく年頃の女の子(一人っ子)の教育を巡り、「競争社会を強く勝ち抜いていける強い子ども」を目指す教育熱心なタイガーママと、「小さいころは楽しい子ども時代を過ごせばイイ」と思っている、けど妻と周りの勢いに飲まれる弱い立場のネコ型パパの対立に、双方のおじいちゃんおばあちゃん、親戚一同、昔の彼女や会社の同僚、学校の先生やらクラスメートの親御さんまでガツガツ、ドタバタと入ってくるというお話です。

 古くて新しいテーマだとは思いますが、やはり色々な現代的エピソードが散りばめられています。やはり出てくるのは、現代の都市部中国人からは切っても切れない不動産の話題。特にビックリしたのは「学区房」を巡る話。学区房とは、中国でのエリート校である「重点学校」の学区内にある不動産物件のこと。そういったエリート校に子どもを入れやすくなるということで、不動産物件の「付加価値」となっているわけです。

 ドラマでは「重点小学」に我が子を入れるために、ボロい同校学区のマンションの部屋を買うのですが、価格は平米辺り9万元(180万円)!それまで住んでいた郊外の広々して素敵な部屋を売り払って、父親の両親から60万元も支援してもらい、やっとのこと50平米の手狭な部屋を、つまり約9000万円(!?)の部屋を手に入れるわけです。タイガーママは売り払う部屋を去る際に娘に言います、「手放してしまうこの部屋に報いるためにも、一生懸命勉強しなさい」。6歳やそこいらでそんなこと言われたくないもんですよね。

 ドラマの話題だしホンマかいなと思い中国での各種報道を見ると、この「学区房」現象は結構広くにあるよう。鳳凰網が7月31日に引用したニュースでも、全国の大都市で学区房の値段が上がっており、10万元/平米を超えることも珍しくないと有ります。人民元高のせいもありますが、もう平気で「億ション」のレベルで日本人にもちょっとそっとでは手が出ません。ドラマとはいえ、こういう価格帯がリアリティーのある今の北京、確かにストレスはありそうですね。

 その他にも、重点校に入れるために学校関係者や教育行政関係者とコネを作ろうとしたり、或いは学校に入ってからも「家长会」(保護者会ですね)で学校教育にツッコミを入れまくるタイガーママたち。既に一人っ子政策が長く、少子化が懸念されるまでになった中国の人口構成と、可処分所得の上がる都市経済の中で、子どもの教育熱が相当激しいことが、面白おかしく伺える楽しいドラマでした。

 ドラマにお決まりの結婚だ、離婚だ、或いは「职场剧(職場劇)」と言われるオフィス内での人間関係や利権争いといったエピソードも色々盛り沢山なのは、もちろんのお約束。人気も出たのでか結局全部で45話構成とは、まあ長いのですが、個人的には気に入ったものであれば割と長くなるのは気にならず、感情移入もしやすくなるので悪くはありません。

 最近久々に北京に遊びに行ったのですが、北京の友人も「子どもは一人で十分」と話していましたが、確かにその一人にかけるお金と、そして時間と体力を考えると一人以上は難しいかなと思わされるほどの教育クレイジー振りがドラマでは展開されます。もちろんドラマの筋立てとしては、子どもへの過剰な圧力を諌めるような展開にはなるのですが、中国の、そしてそのドラマを結構見ているベトナム都市部の親御さんたちの中にも、結構過熱してしまっている人が多いからこそ人気がでているのと感じます。タイガーママ的なやり方に皆が疑問を持ちながらも、周りに流されながら子どもに勉強を強いているということなのでしょう。

 中国の現代ドラマは基本的に好きなのですが、都市生活を描いているということもあり、また世代が自分と近い人たちを描いているということもあり、これほどドラマの内容が身近に感じられるのも新鮮でした。自分が初めて中国・北京に行ったのはほぼ20年前、その時は何もかもが異質に見えましたが、最近は同じような問題を、かなり似たような肌感覚で感じているのかなあと感じます。違いはもちろん沢山ありますが、悪い意味で違いばかり、或いは「トンデモ話」ばかりが強調される中国の紹介のされ方、こんなドラマを見たら「そうそう、お互い大変よねえ」なんて世間話が国境を超えてできるような、そんな気がします。