個人的読書
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簒奪 奥右筆秘帳

簒奪 奥右筆秘帳 (講談社文庫)/上田 秀人

¥650
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「簒奪 奥右筆秘帳(五)」
上田秀人・著
講談社・出版/講談社文庫

『書き下ろし文庫時代小説シリーズ』

 最近話題になっている、書き下ろしの時代小説文庫の
一翼を担う、いや、トップスリーの一人かな?
上田秀人さんです。

 財布にやさしい文庫ですが、ちょっと前の新刊を文庫でカバーと
いうのが、出版界の定番ですが。
 連載もすっ飛ばし、書き下ろしでいきなり文庫で出ております。
定年をむかえる団塊の世代のサラリーマンまたは、
、その上の世代に圧倒的に受けているみたいです。
 本書は、上田秀人さんの講談社での奥右筆秘帳シリーズで
(いろんなシリーズを各出版社で書いているんですよ)
実は、本書シリーズの5巻目、、。いきなり飛び込みで読みのは、
ちょっとハードルが高かったか?
 とは、いえ一応どこから読んでもいいように書かれているので、
無理なく楽しめます。
 江戸幕府の奥右筆筆頭を務める立花併右衛門と、
その甥で柊衛悟が主人公。(初期は、併右衛門だけだったみたい。)
 世代の差もあるんですが、併右衛門が、頭脳面担当、柊衛悟は、
アクションシーンというか、剣術を担当といった感じです。
 幕府の奥右筆ということで、早い話、幕府の最高機密を担当する
秘書、いや、記録管理部署。
 この辺に絡む、謎解き、秘話を中心に話は進み、企画として
よくできています。
 本書では、併右衛門は、徳川御三家にまつわる、秘密。(特に紀伊家)
柊衛悟は、縁談から思わぬ剣術の試合に発展。
 実は、主役のこの二人より、敵役の冥府防人(しかし、なんて名前だ)
のエピソードのほうが、断然面白かった。
この人シリーズの初期ではどういう扱いだったのか、わかりませんが、
現在、旧"忍び"組織からの抜け忍みたいになっていて、
シリアスな話が展開していきます。
 文庫ですぐ読めるということもあり、若干小ぶりな印象もありますが、
時代小説の定番は十二分に押さえてある感じでした。


上田秀人さんの公式HP

新世界より

新世界より(上) (講談社文庫)/貴志 祐介

¥760
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新世界より(中) (講談社文庫)/貴志 祐介

¥710
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新世界より(下) (講談社文庫)/貴志 祐介

¥830
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「新世界より」
貴志祐介・著
講談社・出版/講談社文庫

『サイキック成長物&怒涛の戦い』

 本書オリジナルは、貴志さんが、岸さんだったころの作品。
(多分、ずいぶん加筆訂正されていると思う)

 どうやら、現在からずいぶん時代を経た時代が舞台。
 僧侶がいたり名称には漢字がたくさん使われたり日本っぽい世界観ながら、
人々は、呪力と呼ばれるサイキックな力を用いています。
 人以外の生き物たちは、大きかったり言葉をしゃべったり
私たちが知っている姿や能力からは、かなりかけ離れた世界。
 そう、まさに、新世界。
 この小説の世界観を語るのは、この辺でやめましょう。
 前半は、主人公早季(さき)たちの成長物語でして、
サイキックな学園成長ドラマみたいな感じになっています。
 成長=(イコール)自分たちの所属する世界を知ること、
また、自分たちの能力を知ることでして
この辺が、うまくエンタメ小説になっています。
早季(さき)たちの成長を通じて、読者もこの世界について理解していく
仕掛けになっています。
 そういう意味では、あんまりSF色は強くない。
(設定は、強烈ですが)
 
 しかし、後半は、怒涛の究極の戦いの展開に、、。
文庫解説の大森さんに指摘されるまで、生物の進化や、
生物が内包する、同じ種族への攻撃抑制の問題はハッキリ言って
明確には気がつきませんでしたが、
 この世界の仕掛けと理由から、”敵”の存在が明らかになると同時に
壮絶な戦いへとこの小説は展開していきます。
 そして、ホラー作家としての貴志さんの本領も存分に発揮。
 敵の存在からこの重いテーマは主人公たちのシビアな戦いとともに
容易に理解できるとい思います。
 ちょっとティストは違うのですが、若者たちが、わけのわからない
敵(IT)と戦う、S・キングのITに近いものを私は感じました。
 
 すこし、"くせ"が強く、読者を選ぶ、作品かもしれませんが、
内容、分量といい、怒涛の作品だと思います。

SFでリアルロボット物、「ダイナミックフィギュア」

ダイナミックフィギュア〈上〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)/三島 浩司

¥1,890
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ダイナミックフィギュア〈下〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)/三島 浩司

¥1,890
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 読めていないんだけど、いつもの強行偵察というか、
本屋でチェックです。
 リアルロボットアニメの洗礼を受けている
私としては、チェックしないわけにはいきません。
 本格SFでリアルロボット物、、ファーストコンタクトなんかも
からめて書いてあるそうです。
 同じ版元のSFマガジンでも全面でプッシュしていたし気になります。

 アニメを小説化するラ・ノベなんかでは、もうこの手の作品は出ていると思うけど、
一体どんな仕上がりになっているやら、、。

暗闇の蝶

暗闇の蝶 (新潮文庫)/マーティン ブース

¥820
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「暗闇の蝶」
マーティン・ブース・著/松本剛史・訳
新潮社・出版/新潮文庫

『新ジャンル エッセイ・ミステリ』

 本書ですが、ミステリに新ジャンル発生かもしれません。
主人公は、イギリス人ミスター・バタフライと呼ばれています。
イタリアのとある片田舎で隠棲し蝶の絵を描くことで生活しています。
 しかし、その生活の実態はよくわからず、近所の人からいろいろうわさされる
ことも多々あります。
 そんな彼ですが悠々自適の生活ながら表ではいえない
どうやら裏家業に通じているようなのですが、
怪しい人影が忍び寄ってきます。
  
 一言、渋い。ほとんど出来事が起こらない。
全編、主人公の語り、それも文明論、国家論、人生論、etc
また、いろいろなことに関する薀蓄多数。
 現代風の刺激的なミステリをお望みなら、放り出してしまう人もいるかもしれませんが、
これが、結構というか、なかなか読ませます。
 早い話、主人公中心の自制的内省的なミステリなのです。(ミステリというよりHBかな?)
初老のイギリス人のおっさんが、クララという女子学生(しかも娼婦)とつきあい
過去の女を思い出し、そして薀蓄を語りと、これ、著者の夢ですな。
 ちょっと違うかもしれないけど、池波さんの剣客商売にちかいかも、、。
(ちがうか)
 ラストは、一応盛り上がりを見せますが、
実はみたいなサプライズがミステリとしてほしかったかなぁ、、。

<ネタバレ>

直球勝負で、このまんま、終わっていきます。
 
 おっさんワールド全開でした。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

それでも、日本人は「戦争」を選んだ/加藤 陽子

¥1,785
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「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」
加藤陽子・著
朝日新聞社・出版

『ルソーと当時の人への思いやり』

 タイトルから、想像するに割と過激な右よりの歴史本かと思いきや、
中身は少し違いました。
 著者が栄光学園(高校)(学生の受け答えから推測するにけっこう偏差値高そう)
でおこなった、高校生向けの日本の近・現代史の
講義を活字に起こしたものである。

 だから、というか、著者の優しい言葉とともに、近・現代史を理解するには、
大変解りやすい一冊となっています。
 近・現代史で日本が行った戦争を
どこからが侵略戦争でそうでないかといった議論は本書でも
明確に答えていませんが、当時の時代情勢、世界情勢をつかむには
読み安いし最適の一冊だと思います。
 冒頭に、著者が上げているルソーの、
「戦争とは、(中略)国家と国家の関係において、
主権や社会契約に対する攻撃、つまり、
敵対する国家の憲法に対する攻撃というかたちをとり。
戦争の相手国の社会の基本的秩序、
広い意味での憲法に手を突っ込んで、
それを書き換えるのが戦争だ。」という言葉。
この言葉の意味においてなら、
アメリカは日本に対して完全に成功したと言えると思う。
 この意味においてなら、
日本人は、タイトルのとおり戦争をあえて選択したいえるだろう。

 私は、歴史は事実を把握するとともに明確な史観を自分で持ちえなければ
いけないと思っていましたが、
 それ以前に、当時の人に対する想像力(ある意味、思いやり)をきっちり持って
考察しなければ、いけないものだと本書では、教えられました。
 一番響いたルソーの言葉と当時の人に対する思いやりにあふれた一冊でした。
  

バルキリーズ セカンドソーティ 天神英貴マクロス画集

バルキリーズ セカンドソーティ 天神英貴マクロス画集 (KOBUNSHA HINOTAMA I.../天神英貴

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「バルキリーズ セカンドソーティ 天神英貴マクロス画集」
天神英貴・画
光文社・出版

『超絶画集第二段』

 天神英貴さんのマクロス関係の画集の第二段が出ました。
天神さんは、ずーっとバンダイのボックスアートで活躍していたのですが、
(現在も)
あるときから、河森さんところのスタジオ・サテライトの
3DCGのテクスチャーなんかを製作するようになり
スタジオ・サテライト委託の美術マンみたいな感じで仕事をされていました。
 で、気がついたら、もうサテライトのプロパーで
テクスチャーのみならず、美術も担当されているみたい。

 というわけで、バルキリーをデザインした河森さんが認めているぐらいだから、
日本で一番、バルキリー、マクロス関係をかっこよく描ける
第一人者なのです。
 その天神さんですが、画風が若干変わってきました。
飛行機関係は、よりテクが高度になっていっている感じですが、
陸物のイラスト時は、スタイルがこれまた、プラモデルのボックスアートの
第一人者、高荷さんに質感の面で似てきたような、、
と思っていると、本書を読む限りやっぱり
イラストを描き始めたころから高荷さんにあこがれていたとか、
巻末に高荷さんとの、対談が掲載されています。
ちなみに、本書の宣伝の帯も高荷さんが書いています。

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー/万城目 学

¥1,260
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「鴨川ホルモー」
万城目学・著
産業編集センター・出版

『とにかく、楽しい。』

 映画化までされた、話題の一冊ですが、
評判に違わぬ面白さ。一気読みでした。
京都を舞台にしたというより、京大生モロですね。
その彼らのちょっとファンタジックな
クラブ活動!?。いや、祭事!?。それとも神事。いや、大学対抗戦!?。
を描いています。
 テーマとか、プロットとか紹介すると同じく京都をホームフィールドに
して妄想系作品を描いている森見さんとなにかと比較されそうですが、
(万城目さんは、とあるインタビューで
 森見さんの作品を数作読み京都がもうすでに焼け野原になっとると
 言ったそうです)
まぁ、文壇に登場した時期といいある面では、比較されて仕方がないと思う。
 でも、今回読んで思ったけど、明らかに資質は違う。
森見さんにも「夜は短し、、」みたいな、ポップな作品があるけど、
万城目さんのほうが、明るめですね、、。

 書評家の北上次郎さんは、万城目は、ストーリーテラーではないので云々、、
みたいなこと言っていましたが、なんでしょうね、このおもしろさは?。
 大学生活の多分それが若さなんだと思うんだけど、
変なテンションの楽しさ愉快さが、読み手にしっかり伝わるように書けています。
 レナウンの歌が出てくる場面があるのだけれど、
私もリアルタイムで知っているわけじゃないけど、
なんか、面白いというより楽しくなってしまいました。
この辺のセンスも才能なんでしょうね、。
とにかく、面白かったです。

SFが読みたい! 2011年版

SFが読みたい!〈2011年版〉発表!ベストSF2010「国内篇・海外篇」/著者不明

¥788
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「SFが読みたい! 2011年版」
早川書房編集部・著
早川書房・出版

『上田早夕里とマイクル・フリン』

 ちょっと遅れましたが、早川のSFが読みたいが出ました。
国内と海外の去年のSFのランキングが掲載されているのですが、
 国内の一位は、
『華竜の宮』上田早夕里 。
こちらは、短編「魚舟・獣舟」の長編バージョンなのですが、
すごいことになっているみたい。
 短編のほうは、読みましたが、大傑作でSF史上に残る出来でした。

海外の一位は、『異星人の郷』マイクル・フリン。
 すごい読みたいです、、、。

 記事としては、上田早夕里さんのロングインタビューが面白かったですね。
影響を受けた作品と作家としては、やっぱりSFをあげていらしたのですが、
SFブーム第一世代筒井康隆や、小松左京さんがバリバリ書いたいたころの
後半(このへんが、微妙)をよく読んだといっていました。
そんなに、SFマインドあふれる感じでもないとおもっていたのですが、、。

 ラストには、SFなら、ゲームから、マンガ、映画まで扱う「SFマガジン」を出している
早川らしく、
 SF映画のオールタイムベストを掲載していました。
 一位は当然というか、やっぱりというか、
「ブレードランナー」
まぁ、本当はディックのコンセプトととは、若干違うしリドリー・スコットの
狙いとも
ちょっとずれているんだけどイメージ、コンセプト、すべてで
圧倒のSF映画だと思います。
 このSF映画のランキングが、眺めているだけで面白い。


「SFが読みたい! 2010年版」の記事へ

樋口毅宏って何者!?。

さらば雑司ヶ谷/樋口 毅宏

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民宿雪国/樋口毅宏

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日本のセックス/樋口 毅宏

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 この三冊が、密かに話題になっているんだけど
樋口毅宏って何者!?。
 さらば雑司ヶ谷は、本の雑誌の年間ランキングに
入っていたし、、。

 後、もう一人謎の作家がいます。
「忍び外伝」と「完全なる首長竜の日」という
ぜんぜん違うジャンルを書いている乾緑郎、、。
 一応チェックしとこう。

インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日

インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日/中村 安希

¥1,575
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「インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日」
中村安希・著
集英社・出版

『ユーラシア、アフリカ大陸横断』

 本書は、一人の何の権力も財力もない女性が
(地の文中、そういう表現がある)
ユーラシアとアフリカ大陸を横断した旅行記です。
そして、「開高健ノンフィクション賞」を受賞。

 とにかく、全編すごい。

 旅行を完遂するため、偽装結婚すること一度ならずも二度、
しかもその相手も行きずりの韓国人男性。
 旅行というより、ちょっとした冒険で、
アフリカでの荷台にひたすらしがみつくトラックの旅など、
まさに冒険小説顔負けです。

 世界を知るための冒険としてというより、
読んでみるとそんなおもしろさより、考えさせられることいっぱいでした。
 場所柄、ボランティアのNGOの方などとご一緒されるのですが、
現地の人のための本当に必要とされる援助とは?とか。
 貧困とは、都会にのみ存在するとか、、、。
また、キラキラおめめの子供たちとのふれあい。
(子供たちの純粋すぎる質問に爆笑)
これが、地球としてでなく、人の存在する世界を知るということなんだろうか、と
一歩も動かず、ページを繰っているだけなのに思いました。

 世界の多様性、複雑さを主に描いている(だって、まさに大陸の端から端)
わけですが、逆に、人間と言う意味でその同一性というか、シンプルさを
感じた気もします。
 どこでも人は生きていけるし、人として根本的なところは同じなんだと。
なんかわからないけど、そういう芯の強さも感じました。
旅行記ってあまり読みなれていないのだけれど、
 最近読んだノンフィクションの中でも、かなりのヘビー級の一冊でした。

中村安希さんのブログ"安希のレポート”へ

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