湿った火薬庫

湿った火薬庫

基本的に1日1本お勧め映画の保管庫。たまに駄文交じり

 お久しぶりです、梶原一郎です。

 

 まずこの記事についての概略を書くと、先月6月28日に映画評論や韓国文化について執筆され活躍されているライター、西森路代さんの韓国ノワール その激情と成熟なる本が発売されました。

 



 この本がとても素晴らしく、各章に渡って選出した韓国ノワール……もとい韓国のアクション映画を多方面から分析、解析されている本で、社会の動きと連動して登場人物の描き方、善悪の基準が変化したり(生き残るための3つの取引〜ベテランの流れ)や女性が主流となる作品を時代の変化と共に紹介したり(コインロッカーの女〜魔女など)俯瞰的に昔から現在に至るまでの韓国アクション映画、もとい韓国ノワールが確立するまでをわかりやすく、かつ楽しく読める素敵なガイドブックになっているんですね。

 

 それでこの本を拝読しながら、僕もまあそこそこ……勿論全然西森さんには遠く及ばないんですが結構韓国ノワール系統の作品が好きなので、今回僕なりに好きな韓国ノワール作品を数作ほど皆さんに紹介したいなと思い、この記事を書いております。

 

 一応古い年代から最近の作品までを選出していますがどうしても知識的にあれやこれじゃないんだ……ってなる点だけはご了承ください。

後、割と好きな作品の系統も中々偏りまくりなんですがこれも個人の主観なのでね……。とはいえ何かしら見てみたいな、となられたのならめっちゃ嬉しいです、宜しくお願いします。

 

 

SOO 

監督:崔洋一

主演:チ・ジニ

配信なし、レンタルor購入のみ

 



物語:裏社会で暗躍する殺し屋、スは久方ぶりに会う双子の弟を目の前で殺される。事件の真相を炙り出す為に弟になりすまし警察に潜入するスだが、それは自身の過去との対峙を意味していた。

 

見所:最近惜しくも亡くなられた邦画アクションの名手、崔洋一監督が唯一韓国資本で撮影したど直球に韓国ノワールらしいバイオレンススリラー。なりすましによるサスペンスから誰が利権を貪り誰が権力の犬か、へとシフトしていく流れは正に崔洋一作品らしさを感じる。

 話の推進力が弱まっていったり、スの味方となる女刑事の役割がふんわりしていたりと製作時のトラブルも相まって迷走を感じる部分もありつつ長回しのカーアクションやラストの壮絶極まる殴り込みの荒々しさは今見ても痺れる。

 

・アンダードッグ 二人の男

監督:イ・ソンテ

主演:ミンホ マ・ドンソク

配信Amazonプライム・U-NEXT

 

 

 

 

物語:その日暮らしで生計を立てる不良グループの一員、ジニルは自身のミスを補う為に詐欺を働いた恋人、ガヨンを救う為に現場に乗り込んだ上についでに車を盗み出す。しかしその車の持ち主、ヒョンソクに捕捉され暴行された上、よりによってガヨンを奪われる。課せられた車の借金とガヨンの身柄を救うという板挟みにジニルは苛まれるが……

 

見所:マ・ドンソクが怖い。元々マ・ドンソクはベビーフェイス(皆大好き新感染や犯罪都市)もヒール(かは微妙だけど悪人伝とか罠とか)も出来る非常に器用な俳優だが、本作の生々しく人を搾取(元を辿ればではあるが)し痛め付けるのを生業とする男の役柄はこんな地味に怖い悪役もこなせるのかと驚嘆する。

 マ演じるヒョンソクもミンホが端正な顔立ちを泥臭く歪ませ熱演する、どうしようもなく切羽詰まっている若年犯罪者ジニルも犯罪を犯しながらもギリギリで人間らしくありたい,という良心に基づくドラマの展開が絶品。ベテランやエクストリーム・ジョブの様な陽の韓国アクションとある種正反対な正義感や仁義が軽薄、ながらもやるべき事をやろうとする人間の意地や矜持を描こうとするアクションも韓国映画は強い。

 

V.I.P. 修羅の獣たち

監督:パク・フンジョン

主演:チャン・ドンゴン

配信 Amazonプライムではchannel k加入で鑑賞可 U-NEXT

 

 

 

 

物語:人間性を疑う猟奇的な殺人事件が発生。警視チェは事件を追う内、捜査線上にかつて国家情報院とCIAの手引きで北朝鮮より亡命した高官の息子、グァンイルが関わっている事に気づく。そこに様々な思惑を抱えた勢力が入り乱れグァンイルを巡る争奪戦が始まる。

 

見所:地獄を煮詰めた様な映画。監督のパク・フンジョンと言えばお馴染み、新しき世界や魔女シリーズといまや韓国ノワールの柱の様な監督だが、そんな人が新しき世界や魔女にあったリリカルさや爽やかさを剥ぎ取ったらここまで使命と復讐と狂気が支配する、兎に角人間関係が渇いたサスペンススリラーを撮るとは……

 青筋立てながら仕事に超一筋なチャン・ドンゴンも藁の楯(実際藁の楯的な話ではある)の藤原竜也ばりに人を逆撫でし続けるグァンイル役のイ・ジョンソクの怖さは夢に出るレベル。良い意味で。パク・フンジョン史的にも一見の価値あり。

 

・ただより救いたまえ

監督:ホン・ウォンチャン

主演:ファン・ジョンミン イ・ジョンジェ

配信 star channelexに加入で視聴可 Hulu

 

 

 

 

物語:ベテランの殺し屋インナムは東京での一仕事を終えて引退を決意。しかし穏やかな余生を送る間もなく、元恋人との仲で産まれた娘の安否の為にベトナムに行かざるおえなくなる。同時期、インナムが殺害したヤクザの従兄弟であり同じく殺し屋のレイもまた、インナムへの復讐の為ベトナムに向かっていた……。

 

見所やはりキモは新しき世界で世界的に名コンビとして知られる様になったファンジョンミンとイジョンジェの再共演であろう。渋みと貫禄で老成な殺し屋を演じる静的なジョンミンに対し、ひたすら衝動的で熾烈、ハイテンションな阿修羅の如きジョンジェの動の魅力は、新しき世界とまた異なる二人の芸達者振りに惹かれる事間違い無い。またインナムが現地で織りなす人間ドラマの情緒と切ない余韻は決してスター俳優の共演にだけに留まらない深みがある。必見。

 

・パーフェクトドライバー

監督:パク・デミン

主演:パク・ソダム

配信:U-NEXT Amazonプライムでのレンタル可

 

 

 

 

物語:表向きは運送業を営みつつ裏でどんな物や人も迅速かつ秘密裏に届ける運び屋である主人公、ウナはいつも通り仕事をこなそうとした、が依頼人に起きたトラブルに巻き込まれた挙句、その子供と共にあらゆる勢力から追われる事に……。果たして事件の裏側に潜む黒幕とは、そしてウナの命運は。

 

見所:アクション映画の土壌が非常に豊かになって久しい韓国アクション映画だが、現在最新鋭で目を見張るのが本作。路上のみならず立体駐車場や倉庫などの非常に練られたシチュエーションによるカーアクションの格好良さは勿論、ウナの肉弾戦も頭脳戦もヤクザや悪徳警官相手に一歩も引かない気丈さ(またパク・ソダムが名演)は悪女や魔女、コインロッカーの女などの女流韓流アクションの系譜としても素晴らしい。紹介してきた中でも(比較的)陽性な作品な為、韓流ノワールを初めて見る方に強くお勧めしたい。

 

 と、いう訳で長々とご紹介してきましたが、皆さんの気になる作品が見つかれば本当に幸いです。韓流ノワールは去年や今年でも凄い良作話題作がいまだに輩出されている元気さで、佐々木譲さん原作の警官の血や魔女の続編こと魔女増殖、純粋なノワールの定義からはちょっと離れてはしまうんですが主人公周りの文脈にその香りを感じるオオカミ狩り、公開待機作には皆待ってるマブリーの犯罪都市3がありますし、僕が実の所一番待ちかねているのはイ・ジョンジェさんが監督主演を務めるハントなんですよ。

 

 

 

 

 

一応概要はかなり堅めなポリティカルサスペンスの様ですがもう予告の時点から銃撃戦に肉弾戦に多分男同士の拗れ捻る関係性と、多分ジョンジェさん流の韓流ノワール総決算! みたいな内容になりそうで楽しみしかないです。

 という訳でそろそろこの記事を締めようと思います。西森路代さんの韓国ノワール その激情と成熟はまだまだ発売中なのでご興味がありましたらぜひ! 西森さん、素晴らしい学術本をありがとうございました。梶原一郎でした、次回の更新は未定です。

  こんにちわ、梶原一郎です。オオカミ狩りのブログ記事、皆さん読んで頂けましたでしょうか。いや、別に読まれてなくても良いんですが一瞬、一寸でも目に入って貰えてたなら嬉しいですね……。

 

 それはともかく、久々に映画のブログ記事を書いたら長文に対するやる気がほんのり出てきたので、この記事はめっちゃ肩の力を抜いた、言わばウルトラ自分語りな事を皆さんに押し付……お話ししようと思います。

 

 さて、皆さんの中でひいきにしている、いつも気に入っている映画館ってございますか。すぐに足を運べる近場だったり、音響やスクリーンなどの設備が最強だったり、常に会員カード提示で安価で見られたりでぼんやりとでも一つは浮かぶのでは。

 きっと一つに留まらずに色んな所で見てるから、一つだけなんて選べないなんて方もいるかと思います。僕も結構そんな感じ(というか作品によって上映館が限られたりするから余計に……)なんですが、特によく行く映画館というのがあります。

 

 

 ぶっちゃけ上映した作品を提示するとあ、あそこか……となりそうではあるんですが、そこは最近だとレッドロケットとべネシアフレニアという、R18のダメ男のダメサクセスストーリー(めっちゃセックス描写ある)とベネチアを舞台にした結構ひねっているジャーロという、見る人を選ぶ……というかコアな層しかこなそうな作品も上映してくれる(そしてほぼここだけみたいな)映画館なんですよね。ちなみにオオカミ狩りもここで見ました。ありがとうT……とある映画館。

 

 実際どんな伝手で、興行主さんがやり手なのか趣味に走るのか、あそこならええわとなるのかは分かりませんが、変わった映画を好んで見に行く人間としてはこの姿勢は非常にありがたい。何かと厳しい話ばかりを聞く映画館業界ですが、これからも絶対見に行くんでこれからもこんなチョイスを果敢に続けてほしいですね……(見に行ってパンフとか前売り買ったりするくらいだけども)応援しています。

 

 あっ、まだもう少しお話しさせてください。

 

 ここからが本題なんですが、その映画館にはシアター12という箱がありまして、これがもう最高なんですよね……。映画館ってみなさんご存じの通りそれぞれの箱、シアターに数字が区切られていて、中にはIMAXだとかドルビーシネマだとか4DXとか特殊な設備がある物が混在してたりするんですが、じゃあこのシアター12、どんな作りなのかというとですね。

 

 

 別にIMAXみたいにスクリーンが馬鹿デカくて音響が拘り抜かれているとかでも、本当の黒を見せてくれたりする訳でもないんですけど、じゃあ何がって言うと兎に角席と席の間隔が広いし座席数が少ないから、足がグーッと伸ばせるんですよ。いや、多分この文章だけだと別に他の箱の席でも足は伸ばせるだろ、と思われるかもしれませんが違うんですよ。

 

 他の箱は基本的に座席数が100以上、ギッチギチとかまでは言わないんですが、やっぱり(左右に空席が出るなら映画館的には良くないかもだけど割と快適にはなりますが……)微妙な圧迫感があったりするんですがシアター12は一番座席が少ないんですよ。その座席数、54席。

 

 

  これが元より席がそういう設計で作られているのかは定かではないんですが、他の箱の席に比べて(まぁ僕はあんまり飲食はしないんで……代わりにパンフや前売りはめっちゃ買うから許して)ポップコーンやドリンクを置くスペースも広々、足を気兼ねなく伸ばせる位に前後の感覚も広々、そして何よりスクリーンがどの席から見ても近い、ほぼプライベートルーム的な近さ……と、これは真面目に僕が知る千葉県、あっ言っちゃったけど、千葉県の映画館で映画を見るならこの映画館のシアター12が最も最高に映画を楽しめる環境だと思っています。

 

 ここで見たもので色々印象的な物が多いんですが、実の所最も良かったのはハードコアでした。

 

 

 

ご存じの方がどれだけいるかは分からないんですがこの映画、徹底的に、本当に徹底して主観視点で貫かれている映画で、まぁ酔う。これは本来の意味の酔うではなく、マジで近いスクリーン+居心地の良すぎる椅子に座ってみるこれは没入感が半端なくて、良い意味で自分でゲームを遊んでいるみたいな感覚が絶品でした……。ハードコアは死ぬほど激しい映画なんで興奮しっぱなしだったんですけど、最近、でもないんですがケイコ、目を澄ましての二回目はこのスクリーン12でしたね。

 

 

 

 

 まぁ~~~~良かった……。何というんですかね、まぁ気持ちの置きようもあるんでしょうけど、ケイコ自体がとても良い映画じゃないですか。それを家ではまず用意できない大きさのスクリーンで、かつふかふかの椅子に座ってゆったりと前後左右に気を遣わず(勿論マナーを守っているうえで)に、まるでプライベートルーム的な感覚で味わえるの、最高に贅沢な体験になりました。というか事前にネット予約でどこの箱で見れるかは見れるんですが、それを知らないで12だった頃の、喜びっ……! 小さくガッツポしちゃいますからね、映画館に来た上で知ったら。

 

 という訳で、またも長々とよく分からない妄言を書き連ねてすみません、つまり言いたかったのはもしもこの映画館で映画を見る機会があって、その箱当てがシアター12ならばぜひ楽しんでください。それは大当たりです、ご期待ください(映画の内容は兎も角環境が)という事をどうしても伝えたくてこの駄文を書きました。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございます、梶原一郎でした。

次回の更新はまた来年。お元気で。

 かなりお久しぶりです、もとい今年に関して言えば初投稿です、梶原一郎です。かなりサボりましたね更新……。まぁ僕自身転職したり云々で生活が大変波乱に富んだりしていたので落ち着いて文章書く時間とかもなかったりして……。

 

 とかどうでもよくて! 僕が再びブログ記事書かなきゃってなったのは最高に好みに嵌った映画についての雑感をどうしても熱がある内に残しておきたくて、こうしてしばらく廃墟と化していた自ブログに戻ってきた訳です。で、その映画とは何ぞやと言いますと「オオカミ狩りhttps://klockworx-asia.com/pwh/


なる映画なのです。

 

 

 

 

 まぁ熱がある内、と書きながらも大分公開日から時間が経過してしまい(4月7日っていう……)かつ、そろそろ上映終了してしまう映画館もあり、お前全然熱ある内にじゃないじゃん! と突っ込まれても仕方がないんですが、それでも自分の好きだったポイント、ここ良すぎ、良杉田玄白(?)な点を書いておこうと二週間以上経ったけれど記憶に留めたくて、こうして書いている次第です。

 

 また、その上で小狡いんですがキャンペーンに応募したくてね、重大なネタバレ部分にはどうにか触れない、本当にネタに触れる部分にはふんわりとしつつ、自分なりにオオカミ狩りの魅力についてを書いていこうと思います。そしてこの文章を読んでおっ、じゃあ行こうかな……となった方、まだやっている映画館もリストアップしますんで是非! 是非この血祭りに参加してください! お願いします!!

 

 

.出し惜しみゼロの過剰表現

 

 まずもうこれなんですよ。近年、というかもうかなり古びた言い回しになってしまいますが……韓国映画に纏わるイメージというと皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。多分各々で浮かんでくる作品もジャンルも異なってくると思いますが、恐らくパッと浮かぶ大雑把なイメージとして過剰、というのが浮かぶのではないでしょうか。

 

 確かにそれはある一面として正解で、最近4Kリマスター化されましたかの名作、オールドボーイの過剰にして激烈な暴力描写や登場人物の織り成す復讐の顛末のいくら何でもやり過ぎではないか……? となる作りや、あるいはコクソンや新感染などの向かうベクトルは違えど行きつく所まで行っちゃう感じは(監督自身の作家性もあれど)この特色が色濃く出ている作品と言えます。

 

 そういった、良くも悪くも一度アクセル踏み込みだしたらなんかブレーキ壊れちゃった、みたいな系譜の作品の最先端がこれなんですよ。

 

 もしかしたら文章上だけでもアメブロさんに叱られちゃうかもですが、例えばある人物がドアごと押しつぶされた時にえっ、血液って人体の中にこんなにあるの!? ってなる位に色んな液体が全身から溢れ出したり、ただ腕を横払いしただけで人間の両足が奇麗に切断されたりと、宣伝文句の盛り方がむしろ合っててビックリしちゃう位に残酷表現の出し惜しみの無さが素晴らしいのです。

 

 これは例えば他国の映画になるんですが、サム・ライミの死霊のはらわた(特に2)やピーター・ジャクソンのブレインデッドみたいな、あまりに人間の体のあらゆる箇所が脆かったり形容できないくらいぐちゃぐちゃになってるんだけどなりすぎて笑っちゃう、人体破壊が行き着く先に行き着いた、ある種娯楽大作型スプラッタ映画の系譜として非常に優秀な後継者だなって僕は称賛してしまいました。

 

 思えば残酷表現、という点でも韓国映画には過去優秀な作品もあります。前述のオールドボーイやビーデビル、悪魔を見たやインサイダーズ……等新鮮な残酷・暴力表現を追求してきた作品はあれど、ここまでハイテンションに、かつ本当に暴力表現を気持ちよく、快楽的に描き抜いている韓国映画は初めて見ました。

 

 何というのでしょうか、いや、今まで挙げてきた作品は僕自身凄い大好きなんですけど、このオオカミ狩りなる作品の奇特さはフォーマット自身、痛覚を刺激してくる(アキレス腱切り裂いたり首筋グリグリしたりゆっくり心臓にナイフ刺したり)目に見えて嫌な暴力演出はふんだんにあるんですけど、ノリ自体は陽性なんですよね。凄いスパスパ進む。

 

 とにかく登場人物が多い、なんか船に乗せられた囚人&護衛及び監視の刑事&お医者さん等々の一般人枠に……と2時間枠としてやるにはあんまりにも登場人物が多いんだけど中盤辺りには半分以上死ぬという驚異的ハイテンポさで人が無残に死ぬ映画なんですけど、故に展開も早いんで飽きないんですよね。起きている事は陰惨極まるのに、ポンポン人は死ぬしポンポン話も進む、この無慈悲なスピード感。思えば韓国映画の暴力性って勝手な見方なんですけど、ねっとりとしていてヘビーな(そしてこれが魅力でもありますが)、腹にグッと据えてくる持ち味が特色なんですが、オオカミ狩りのサラッとしていて喉越しのいい凄惨さは僕にとって非常に爽快でした。

 

 この点、もしかしたらこの手の作品を見慣れている方したら意外に血糊が足りないな……モツも足りねえな……と若干不満になるかもです。そこは個人差ではありますね……。ただ、自分みたいにとかくパワフルにオラオラ押し切られる血の波にノレる方は多分嵌ります。

 

2.推死……じゃなくて推したくなる人が一人は見つかる登場人物回り

 

 1でこの映画は兎に角登場人物が多いと書きましたが、本当に多いんですよね、この映画。主要回りはまぁお手数ですが公式サイトを見て頂くとして……中心となるのはこの三人。

 

・殺人・強盗・強姦その他罪が数えきれない凶悪犯ジョンドゥ

・タフな刑事長、ソグ

・ソグの部下である優秀な女刑事ダヨン

 

 の三人が中心となっており、ここにやけにクールな謎めいた青年や不遜な別動隊の隊長、酒好きの看護師や足の悪いお爺ちゃんの囚人、船の地下にいる謎の二人組……等々多分パッと誰が誰だか(パッと見すぐにヤバい奴と分かるジョンドゥ以外)頭で追いきれないと思います。僕もそうでした。

 

 ですが、名前などはパッとわからなくても何となく特徴的なセリフや外見から、多分見ている最中「この人だけはなんか生き延びてほしいな」「こいつは早く死にそうだけど頑張ってほしいな」となる人がきっと一人や二人出てくると思うんですよ。これがまた面白くて、そういうキャラが話が進むにつれて増えていくんですね。

 

 だけどこの映画、まぁ予告とかでもう出てるからバレではないと思いますが……一応正体は伏せるんですけど「怪人」なる存在が現れてから怒涛の勢いで、一気に在庫一斉処分的に数多のキャラが殺されていくので全く誰が生き延びそうで死ぬのかが分からなくなります。

 

 だから主要人物っぽいキャラでさえ油断が全くできない。えっ、この人ここで死ぬの?! って言えないけれどそんな瞬間が結構起きるので最後の最後までマジでハラハラします。なのでそういう意味でも楽しめる作品かと。ちなみに僕の推しはゴツい入れ墨入れていて実際厳つくて怖いんだけど、死体には線香代わりに煙草を差したり、姉御と慕う女囚人には頭が上がらないゴンべさんです。

 

 良いキャラしてたんだよなぁ……。こういう脇キャラも少ないシーンでも印象深い見せ場を用意するの、愛を感じる。アイフル。そこに愛はあったんや。結果は兎も角……。という所でそろそろ締めに入ります。

 

3.これがしたいという確固たる意志

 

 さて、ここまで暴力描写というビジュアル面、キャラが善人悪人関係なくボコボコ死ぬから先が読めないというストーリー面の両面について褒めてきましたが、実の所僕がこの映画を好きだと思う、君が好きだと叫びたいなとなった大きなポイントはここなんです。

 

 本当に身も蓋もない、お前キャンペーンに応募する記事でこんな事を書くのかという事を書くと、この映画何か心に残るかと言えば全く残りません。俗に言う、これは人生に影響を与えてくれる……とか、目を見張るような技巧さが……みたいなのもありません。

 

 ただ、そこにあるのは(本当に僕が勝手に思っているだけなんで作ってる方からすれば迷惑極まりないかもですが……)めっちゃ悪い奴らと使命感ある刑事が熾烈な命の駆け引きしてる……のを圧倒的な”暴の力を持つモノ”が嵐みたいに滅茶苦茶にするのが見たい、みたいみたいみた~い、から作ったよ!! っていう欲求の現れです。

 

 それを完璧なまでに映像化してるのが素晴らしい。エクセレント、ありがとうございます……と思わずスクリーンを拝んでしまいましたね。実際この思い切り、潔すぎる構成に慄いてしまったんですよね。ジョンドゥ周りのいかに囚人達が船内を掌握するか、それに刑事達がどう対抗するかのドラマだけでも滅茶苦茶面白いのに、もそれを「怪人」が映画全体を壊しかねない、いや、実際パワーバランスが大逆転する辺り壊れてはいるんだけど、うガラッと何の何の何!? って勢いで暴れまくりの殺しまくりで乱舞するのが面白すぎてね……。

 

 この表現が伝わるかは分からないんですけど、ちいかわ、あるじゃないですか。アレに出てくるオデって物凄い強烈なキャラがいたんですが怪人のベクトルはそれです。本当これ。もうこいつには囚人も観客もワァ、ワァッ…!ですよ。

 

 

 

(マジでこのノリ)

 

 非常に個人的な話になるんですが、僕は映画を見る際、その映画自体が面白いか、完成度が高いか、って評価軸の前に監督がこれをどうしてもやりたいんだ、これをしたいんだってのが滲む作品があっ、これはもう好きとなってしまう悪癖があるんですが、これはそれに当てはまる所があり過ぎました。

 

 まぁ結果的に良くない方向でそれが出ちゃっているという点もあるはありますし、冗長だな……とあるキャラの死以降思わない事もないです……が、がですよ。

 

 圧倒的な腕力を持つ怪人のほぼ素手での殺戮劇! とか密室空間での拳銃対改造ライフルの壮絶な銃撃戦! とかあるキャラとあるキャラが交わす一撃必殺を狙うナイフファイトみたいな、全体通して大味でも要所要所でギラギラ光る俺はこれがやりたいんだよと黒光りする主張の強さ、そしてそれを全力で多分資金や技術力を投じてやり抜くガッツ、サービス精神にクラッと来てしまったので僕の負けです。本当に、良い物を見せてくれてありがとうございます……でした。

 

 という所で結局ほぼ褒めている感想になってしまいましたね……。でも好きな映画は好きだから仕方がないね、思いの丈を吐き出したら痺れたぜ、一服したい気分だ。まあ非喫煙者なんでココアシガレットで我慢しますが……。

 

 好きポイントを書き連ねたら凄い読みづらい文章になってしまいましたね、申し訳ない……。ですがこう、オタクの早口的な感じで受け取っていただけたなら幸いです。最終的に僕がオオカミ狩りを勧めたい、こんな人に見てほしいってのを纏めると

 

・景気とパワーに富む、映画だからこそ見れる凄惨な物が見たい

・誰が生き延びて誰が死ぬか先の読めないサバイバルアクションが見たい

・倫理も常識も通用しない怖い人たちが見たい

・ちいかわのキャラでオデ好き

 

 などが一つでも心当たりがあるのでしたら、是非に……! と思います。後まぁ、こんな事わざわざ言及する必要もない気がしますがこれ、R15区分だし予告編で散々血肉吹きすさぶ様な映画ですよと告知はしてるんでそういうジャンルが苦手なら向かないと思います。けれど少しでも苦手ではあるけど興味あるかも……って方はこの規制緩めたバージョンの予告で

 

 

 

まず耐性チェックしてからの方が良いかもしれません。本編はこれの100倍は激しいシーンばかりなんで自身の精神とご相談でお願いします。

 

 最後の最後になりましたが、全国でまだ上映中orこれから上映してくださる映画館をざっとリストアップしました、最寄りの映画館でやるかお確かめください!

 

・北海道地区

サツゲキ劇場 上映中

 

・関東地区

埼玉 MOVIX三郷 5月4日まで

東京 新宿バルト9 上映中

    MOVIX昭島 5月4日まで

神奈川 あつぎのえいがかんkiki 5月12日から5月25日まで

 

・中部地区

長野 長野松竹相生座 5月19日から6月1日まで

静岡 静岡東宝会館 5月5日から5月18日まで

    CINEMAe_ra 5月26日から6月8日まで

    シネマサンシャイン沼津 5月26日から6月8日まで

愛知 ミッドランドスクエア シネマ 5月4日まで

    MOVIX三好 5月4日まで

 

・近畿地区

京都 TJOY京都 上映中

大阪 TJOY梅田 上映中

    シネマート心斎橋 上映中

    MOVIX堺 5月4日まで

兵庫 kino sinema神戸国際 5月11日まで

    MOVIXあまがさき 5月4日まで

    塚口サンサン劇場 5月19日から5月25日まで

和歌山 ジストシネマ和歌山 6月2日から6月15日まで

 

・中国四国地区

愛媛 シネマサンシャイン重信 5月5日から5月18日まで

 

・九州沖縄地区

福岡 TJOY博多 上映中

熊本 熊本ピカデリー 5月4日まで

宮崎 宮崎キネマ館 4月28日から5月11日まで

 

 

 以上、公式サイトさんからざっと抜粋しましたがこれから上映が始まる劇場もあり、特に中部や近畿にお住まいの方は割かし公開館が多いのでもしも自分のブログでご興味が湧いた方がいましたらちょっとこう、涼みに……真っ赤な花火でも見に行くつもりで行かれると楽しいのではないかなと、思います。

 

 という所で、長々とダラダラとした文章で本当すみませんでした、ここまでお付き合い誠に感謝です、梶原一郎でした。まぁ4,000字費やしましたが……オオカミ狩り最高!って気持ちだけは伝えたかった。それだけは真実。次回の更新は全くの未定です。

梶原一郎です。


こちらの方ではかなりお久しぶりかもしれません。何分飽き性な物でちょっと書いたらすぐ満足しちゃうんですよね、継続こそ力なりとはいうけど……とかそんな雑談の種が無いから天気の話をしようみたいなどうでもいい前置きは良いんですよ。

 

力ですよ皆さん。力、好きですか?



 

9月、と言えば皆さん連想されるのは何でしょうか。じっくりと腰を据えて読めていなかった本を消化していく読書の秋でしょうか、秋刀魚やお野菜などの美味しい物が出そろうから堪能しよう、となる食欲の秋、あるいは過ごしやすい季節となるからこそ、外で活発に体を動かそうというスポーツの秋でしょうか。

 

違います、暴力の秋です。9月はなんかよく分からないけど凄い暴力……と流石にそろそろこの人危ないのか? と思われそうなのできちんと説明すると、何の巡り合わせか9月9日からに掛けてアクション・バイオレンス映画が集中的に公開し始めるんですよね。

だからもう祭りです、夏は終わって(いまだクソ猛暑だけど)はいますが劇場はめっちゃ熱いです。なので今回の記事は個人的な観点から、公開中からこの先控えている物まで、これは中々の暴力指数が高いな……!って映画を星取表と共にご紹介していきます。

 

あらかじめ、取り上げる作品やお勧めポイント、並びに星取表は本当に僕自身の独断と偏見なので解釈が違うとかどこ見てんだこいつ、と思われる点もあるとは思いますがそこら辺は生暖かい目で見て貰えると……いや、文句がある感じでしたら別にいいんですけど僕自身は穏便に生きたいんで……暴力は映画の中だけでこそってスタンスなので……。

 

<星取表>

それぞれ私見で

・アクション度

・バイオレンス度

・作品に関する目安度

 

を星(☆★)で示します。右側の黒星が多いほど、その要素が恐らく高い作品になります。

作品の紹介はそれぞれあらすじ・見所・個人的な注目しているポイントをそれぞれ記載していきます。

 

・ブレットトレイン

公開日:絶賛公開中


・アクション度
★★★★☆
・バイオレンス度
★★★★★
・サムライサムライブシドー度

★★★★★


ストーリー:驚異的な運の悪さを持つ殺し屋、レディバグは久々の職場復帰としてブリーフケースの受け渡しの仕事を受ける。仕事は非常に簡単に済む筈、だったが……。


見所:既に予告の時点で日本(架空の憧れとしての国)描写が打ち出されている本作ですが、兎に角特色は新幹線内というシチュエーションを最大限に活かした狭い場所&小道具のわちゃわちゃアクション。ブリーフケースを身軽に使ったブラッドピットの攻防一体の殺陣を始め、そこらの日用品が獰猛な凶器になるバトルシーン、またあらゆる意味で日本らしいモチーフ(ヤクザとか刀とか)が暴走しまくる悪乗りっぷりも人によるかもだけどこのノリに乗れるなら滅茶苦茶楽しい道中になる事請け合い。


個人的ポイント:ワンアポやフューリーとかの渋く格好いいブラピと正反対の生きるのに必死、戦うのに必死なブラピを終始一貫浴びれるのがこの映画の利点。後、人間の可能性って凄いって思えるシーンがあります。人間やろうと思えばやれば拳でアレは割れる!

 

・HIGH&LOW 

 THEWORST X

公開日:9月9日


・アクション度
★★★★★
・バイオレンス度
★★☆☆☆
・相変わらずジャパンとは思えない治安の悪さ度

★★★★★


ストーリー:様々な高校が覇権を争う一大不良時代、主人公の楓士雄はその中でも特に恐れられている伝説の高校、鈴蘭に足を踏み入れていた。その裏で楓士雄の属する鬼邪高校を狙い、瀬ノ門高なる新規勢力が暗躍しだし……。


見所:LDHの送る一大ブランド、HIGH&LOWから独立し、すでに熱狂的な支持を得ている新シリーズ、THEWORSTの待望の完全新作。初登場にしてはあまりに数が多すぎる新キャラ!新勢力!と良い意味で混沌さが増していながら、純粋な殴り合いから凶器、レスリング、籠城戦とシチュエーションを更に増して正に続編らしい喧嘩祭りを堪能できる。敢えて関係性は伏せておく。


個人的ポイント:本当に雨後の筍みたいに新キャラが出すぎて一寸混乱するんですが、そこは流石のハイローなので気づけばすんなりあのキャラが好き、このキャラが気になるって人が出てきます。またキャラ同士の関係性という最強の特色についてですがこれはもう見て貰うしかないのでここでは触れません。ヒントを出すとしたら姫と執事、ですかね……。

 

 

・グッバイ・

 クルエル・ワールド

公開日:9月9日


・アクション度
★★★☆☆
・バイオレンス度
★★★★★
・企画の無謀というかチャレンジ度

★★★★★



ストーリー:人生が行き詰まっている元ヤクザの安西を始め、一夜限りで結成された強盗団が資金洗浄中のヤクザを襲撃。正体も知られず後は穏やかに終わる筈の強盗計画だったが、ヤクザの間の手は近くに迫ってきて……。


見所:地方都市(察するに)を舞台に展開される、銃と罵声が飛び交う、有名俳優を起用してここまでベタなクライムアクションは中々ないのではないか、と思う位にストレートなクライムアクション。西島秀俊氏を始め大ベテランからニューフェイスまで陰鬱な世界観の中最も悪い人間は俺や!と熱演する様は必見。


個人的ポイント:やっぱり映画の中、あくまで映画の中でですがどうしようもない人間達の足掻きって最高に見ていて楽しいですからね……。そこら辺が好きな人にはとても楽しい一本だと思います。後、意外な俳優さんのとんでもない演技が見れるのでそこもお楽しみに。まぁ……ぶっちゃけ主役食っちゃってんだけど……。


 

 

・ビースト

公開日9月9日


・アクション度
★★★★☆
・バイオレンス度
★★★☆☆
・パパが勝てる気しかしない度

★★★★★


ストーリー:悲しい出来事からの傷を癒すべく、娘を連れてアフリカへと旅行しに来た医師、ネイト。穏やかな自然に迎え入れられ楽しい一時となる筈だったが周囲に不穏な影が潜む。


見所:かのパシフィック・リムの司令官を始めタフでクールな役柄を多く演じている事で高い人気を誇る名優、イドリス・エルバ氏が凶暴なライオンと真っ向勝負を挑む、という概要から面白くない筈がない内容。上映時間90分という丁度良さ、シンプルなストーリーラインに脇がシャールト・コプリーと気軽に楽しめる娯楽大作として最も楽しめそう。


個人的ポイント:ポスターの圧が凄い(イドリスさん余裕で殴り倒せそう)のが印象的で出オチみたいな作品なんですが



監督がジャンル物で堅実な秀作(2ガンズやエベレストなど)を残している方なので実の所満足感は高いんじゃないかなと思います。

 

・人質 韓国トップスター誘拐事件

公開日 9月9日


・アクション度
★★★☆☆
・バイオレンス度
★★★★☆
・ジョンミンさんまた大変な目に遭ってる度

★★★★★



ストーリー:名実共に韓国が誇る大スター、ファン・ジョンミン氏。新作の華やかな発表会見後、自宅に帰る途中で非常に素行の悪い若者達に絡まれてしまう。変な奴らだなと思っていた矢先、その若者達がジョンミン氏を襲い……。


見所:コクソンやアジョシ、ベテランなど等々……出ている作品がほぼ大ヒットする名優、ファン・ジョンミンがファン・ジョンミン自身を演じるトリッキーな設定ながら、そこは細部にまで異様なほど力を込める韓国映画。滅茶苦茶凶悪で不気味な犯人像の書き込みからカーアクション・ガンアクション、謎解きにまで兎に角""があり90分の上映時間とは思えない密度の高さにいい意味でグッタリする。それとジョンミンのスターとは思えない虐げられっぷりも涙が出そうになるほど凄い。本当に凄い。


個人的ポイント:題材が題材故に三角飛び蹴りとかの派手な方向のジョンミンさんのアクションはお預けなんですが、とはいえ腹筋使っての椅子アクションや山を転げ落ちる激痛アクションと、役柄も相まってここまで生々しく痛々しいジョンミンさんを見れるのは本作くらいかなと。個人的に最も必見! な作品です。

 

・ヘルドッグス

公開日:9月16日


・アクション度
★★★★★
・バイオレンス度
★★★★☆
・岡田さんなら安心しかない度

★★★★★

 


ストーリー:悲劇的な事件からアウトローに走った元警官、兼高は極秘任務として黒社会への潜入捜査を命じられる。相棒は相性度98%な狂犬、室岡。困難を極まる任務に、黒社会の闇が牙をむく。


見所:SPや散り椿、燃えよ剣に至るまで現代劇から時代劇とあらゆるフィールドでアクション映画愛をその驚異的な身体能力を持って体現するジャニーズ1のアクション狂、岡田准一氏が暴れん坊な潜入捜査官を演じるというかつ丼にハンバーグがくっ付いたみたいな内容。監督の原田眞人氏も和製活劇に長けており、物語は未知数ながらアクション面は間違いなく期待大。


個人的ポイント:燃えよ剣の自分でアクション設計(⁉)するくらいに兎に角この人にアクション映画が大好き、という岡田さんがあの原田監督と組むならこれはもう80点以上は確定かなとは思ってます。個人的に岡田さんは得物を持たせる(日本刀とか とより凶暴性が増すのでそこを期待してます。

 

・クリーン ある殺し屋の献身

公開日:9月16日


・アクション度
★★★★☆
・バイオレンス度
★★★☆☆
・いぶし銀で応援したい度

★★★★★



ストーリー:人目につかず毎日を淡々と暮らすゴミ収集車の運転手、通称クリーンにとって、近所に住む少女ディアンダとの交流はささやかな楽しみになっていた。そんな折麻薬取引を主な売買とするギャング、マイケルの息子がディアンダと関わり……。


見所:戦場のピアニストからプレデターズまで、文学作品から純粋なジャンル物まで割と手広く華を添えているエイドリアン・ブロディ氏が意外に初? の言わば舐めていた相手が滅茶苦茶ヤバい奴だったムービーに遂に踏み込む。ブロディ氏が特徴的な潤んだ目で次々と結構残虐にギャングや不良を半殺ししまくる様は必見。ついでにヒゲ有り/無しの2パターンも拝めるのもファンには嬉しいかも。


個人的ポイント:これ、個人的には意外な拾い物でした。なんか全体的に病んでいる雰囲気の独自性もさる事ながら(まぁ結構見にくい場面もあるけど……)どんどん得物がエスカレートしていくギャングとの抗争がとてもいい。やっぱり男は殴り込み!

 

・渇き偽り

公開日:9月23日


・アクション度
★★★☆☆
・バイオレンス度
★★★☆☆
・チェックしておきたい度

★★★★★



ストーリー:連邦捜査官、フォークは自殺した旧友の葬儀の為久錆に地元へと帰ってくる。そこで旧友の潜まれた過去を辿る内に土地に纏わる闇の正体に気づいてしまう。フォークが突き詰める、旧友の死の真相とは。


見所:NY心霊捜査官等、いぶし銀な作品に数多出演しグッと作品の質を高める事に評判がある演技派、エリック・バナ氏が地道に謎に迫るサスペンス大作。作品のカラー故に派手なアクションなどは無さそうではあるが、演技派であるエリック氏の渋格好いい姿が十二分に拝めそう。


個人的ポイント:今まで紹介してきた中でもちょっと異端? というかドラマ性が強そうな作品。こういう腰を落ち着けてじっくりとスクリーンに向き合うのが楽しそうな作品こそ映画館で観たいですね……。

 

・LAMB/ラム

公開日:9月23日


・アクション度
★☆☆☆☆
・バイオレンス度(推測
★★★★☆
・ろくな事起きなそう度

★★★★★

 


ストーリー:アイスランド。そこで静かに羊たちと暮らしている夫妻は羊が羊ではなく、得体のしれない「何か」を羊が出産したのを確認する。最初は気味悪がっていた夫妻だが、次第に愛着が湧き出し……。


見所:アクションでもなくそもそもジャンルはホラーだがなんか予告の時点からとてつもなくヤバい暴力が見れそうなので最後に選出。クローネンバーグやリンチを思わせるシュールな設定に、夫妻のそれとなく厭な感じのドラマが絡んで良い意味で最悪な気配しかしない。


個人的ポイント:映画好きな人には(いや、ホラー色薄い作品もたくさんあるけれど へレディタリーとかの厭なホラー輩出会社でお馴染みなA24の新作だから多分そういう事だと思います。見終わった後ラム肉食べたくなる作品だといいな。何だそれ

 

 

……という訳で、一気に作品を紹介してきましたが一つでも皆さんの興味に引っかかる、これ見てみようかな、って作品がありましたら幸いです! 個人的な、完全に趣味(というか僕がファン・ジョンミン氏が大好きなだけではあるんですが……)ですが、皆さんに激推ししたいのは人質ですね。

これはジョンミンさんの必死すぎる熱演が見れる、ってだけ以上に90分間と言うランタイムにあらゆるアクションがめっちゃ詰まりまくってて凄い物を見た……って満腹感が堪らなかったので。

勿論それ以外にもブロディ大暴れが気持ちいいクリーンやザワ好きなら絶対見てほしいザワクロス……とどれもそれぞれ別方向で秀逸なので、宜しければぜひ全制覇して貰えれば……まぁ僕の方からは特に何も出ないんですが……。

 

という所でこの長々とした記事を終わろうと思います。最後まで読んでいただき大変ありがとうございました、梶原一郎でした。次回の更新は未定です。

 

 

おまけ:紹介作品の一覧表

 

・現在公開中

ブレット・トレイン

HIGH&LOW THEWORST X

グッバイ・クルエル・ワールド

ビースト

人質

ヘルドッグス

クリーン ある殺し屋の献身

 

・23日から公開

渇きと偽り

LAMB/ラム

梶原です。

 皆さんいきなりですが春って好きですか? 美しい桜が舞い、温かな陽気と陽の光を浴びて新入生や新社会人の健やかで賑やかな新生活が始まる素敵な時期とかうるせ〜〜〜! 知らね〜〜〜!! どうせ今年も代わり映えしない歯車の様なモダン・タイムスライフだよこの野郎! ……となっている

 

これを読んでいる貴方

 

 

 

 

 そう、そこの貴方に向けて今回この記事を送ります。自分で書いていて凄い恥ずかしいからそろそろこのノリもやめますが……後ネタにしてすみませんレトさんつまりこういう時期って春の新生活応援として普通、夢見る社会人や学生な背中を押す、明るい前向きな映画を紹介するのが定番な気がするんです。

  けどまあ、世の中そう陽の、陽の当たる人ばかりじゃないし僕はだいぶ前から人の心を無くしてしまっているので逆に、逆に僕みたいな人に向けて春の季節とは真逆な気分の、どうしようもない、にっちもさっちもいかない、生き地獄みたいな状況に追い込まれている人達が出てくる映画を独断と浅見でずらっとご紹介したいなと思います。


 これらを見て人間ってやっぱり愚か……! 愉悦……! と後ろ暗く悦に浸るもよし、または自分はまだ代わり映えしない歯車みたいな日常でもマシだったんだな……と安堵するもよし。好きにご活用ください。     

 またこの手の記事だととほほ、紹介されてるの結局ミストとかファニーゲームか……。みたいな、味のしないガム噛まされるんじゃないかと不安な方もご安心ください。

 無駄に映画だけは割と見てる暇人なので、今回紹介する7本は最新作、近年公開されている作品に絞れています。煽る様な事書いたけどミ、ミストもファニーゲームもネットで擦られる様な作品は故に名作ですからね……!(無意味なフォロー)

 
 また各作品には作品の紹介と私的にここが見どころなワンポイント、配信やソフト化、映画館で公開中かの情報を付記しております。ここら辺知りたいなと思っても書いてないとちょっぴりイラっとしますしね。長々と書きましたがもうそろそろ本題に移りましょう。皆さんが春の陽気さに負けないくらい鬱々します様に……。

 

注意書き

・これから紹介する作品には陰鬱な展開や過度に残酷・凄惨な描写が多く含まれています。精神的、または肉体的に調子が悪い時は鑑賞を控えてください。
・個人に寄りますが鬱々としている時には無理に映画なんて見ず好きな趣味や温かい風呂やご飯を摂取して自分に優しくしてください。映画はいつでも見れるけど不健康は中々治りません。
・ここまで書いといて言い訳がましいけどこの記事はあくまでジョークです。ジョークアベニューです。

 

・空白

 

あらすじ:とある地方のスーパーで、万引きの疑惑を掛けられた女子中学生が道路に飛び出した瞬間、車に轢かれ死亡する事件が起きる。衝撃的な事件に湧く世間で、その少女の父である充はどうしても娘の事故死、並びに万引きしたという情報が信じられず、個人のプライバシーの領域を超えて娘を捕まえた店長の青柳に迫る……。

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見所:兎に角全てが嫌になる、ある意味完璧な映画。事件の内容の陰鬱さもさる事ながら、万引き犯を捕まえた青柳の清廉潔癖……とは言い切れない後ろ暗さや、周囲の人の意見や制止も聞かずに暴走し続ける充のヤバい親父っぷり、青柳にご執心なパートのおばさんや自分の学校の生徒が死んだのになぁなぁで済まそうとする学校関係者と、嫌な意味でリアリティに富むサブキャラも秀逸。しかし最も嫌なのはまさにその事件の真相が二転三転するあやふやさ、決定的な瞬間が空白故に拗れている物語かもしれない。ひと先ず手っ取り早く陰鬱になりたい人に強く勧めたい。

 

・ライトハウス

 

あらすじ:高波と変わりやすい気象が襲う孤島。そこにポツンと佇む灯台を管理するために二人の男が着任する。片や独善的で傲慢なベテランの男、片やド新人の寡黙で不愛想な青年、初っ端から相性の悪い二人の最悪な職場に、自然現象による脅威も加わり……。

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見所:孤島、閉鎖的な灯台、仲が超絶悪い男同士、何も起きない筈がなく……と良くないネットミームを使ってしまったけど、本当にそういう話。モノクロの色調に環境的にどこにもいけない閉塞感と次第に精神に異常を来し出す登場人物が相まって、ずっと居心地の悪いまま、とんでもない場所へと放り投げられる映画体験が出来る。今回紹介する中でも特に陰鬱なので見る時は体調を考慮すべし。

 

・屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ

 

あらすじ:1970年代にドイツに実在した連続殺人鬼、フリッツ・ホンカの凶行と破滅までを丁寧に再現する地獄の人間ドラマ。挙動や性的志向、意外に社会に馴染む姿まで、最悪の殺人鬼として描きつつ一人の人間としてのフリッツ・ホンカの内面に迫る。

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見所:今回紹介する中で唯一の史実物、ながらこんなに厭な話が現実にあるのかと見ながら驚愕する事必死。今の世の中あまり外見を揶揄するのも良くないのだが、それでも一目であっ……となるホンカの外見や立ち振る舞い、初めて殺人を犯す時の衝動的な雑さにどうしようもない人間ってこうなんだな……と身に包まされる。ホンカが立ち寄るバーの面々のネジの外れ方に加え、ホンカが携わる人々の善性が最悪の形で空回りする様まで最初から最後までしっかり厭な気分になれる地獄のトッポ。一度食べてみてほしい、臭いけど。

 

 

・アンカットダイヤモンド

 

あらすじ:イケイケオラオラで順調にのし上がってきた宝石商のハワードはヤクザや芸能人と渡り合いながらもギリギリ成功を収めていた。しかしとあるトラブルにより予期せぬ借金を背負う羽目に。ハワードの鬼気迫る一世一代の勝負が幕を開ける。

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見所:人生が一番うまくいっている、有頂天な時にこそ魔が差すとはよく言われるがこれはそれの完璧な映画化。紹介している中では比較的、本当比較的に主演のアダム・サンドラーの神がかったテンパリ芸のお陰で明るい作品だが、それでもにっちもさっちもいかなくなり前後不覚になりながらも、一度始めた事をやめられないし後もない人の辿る運命の怖さは随一。何とは勿論言えないがえっ!??っとなるラストも必見。

 

・アオラレ

 

あらすじ:自動車に乗る人ならもしかしたら一度は出くわしているかもしれない煽り運転。主人公のレイチェルはちょっとしたイラつきで注意代わりのクラクションをとある車に強く鳴らす。その車の運転手が頭も体力も殺人術も常軌を逸した殺人鬼だと知らずに……。

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見所:変な運転してる奴を注意したら、中から出てきたのは目が血走ってるラッセル・クロウだった……。という出オチみたいな映画に思えるが言葉が通じるのに全く話が通じない人間がよりにもよって粘着質な殺人鬼だったという、最悪の満漢全席みたいな作品。あまりにもラッセル(劇中に名前が出てこないという小粋な設定 が無敵すぎるという突飛さが笑えてくるが、この設定自体は無茶でも仮に自分がこういう状況に陥ったら……と考えると底冷えしてくる。上映時間的にも気軽に見れるのでお勧め。

 

・悪なき殺人

 

あらすじ:フランスの雪深い山中で一人の女性の失踪事件が起きる。時間軸を交錯させながらこの女性に纏わる歪んだ人間関係、とある人物は不貞を働き、とある人物は犯罪に走り……と各登場人物の業と罪を描きながら、なぜ女性が姿を消したのかの真相が観客にだけ明かされる。

視聴可能サイト:アマゾンプライム(内の配信チャンネル、スターチャンネルにて独占配信中

見所:個人的に(配信関係のアレさやレンタルがないっていう一番見にくい作品なのがアレですが……)一番勧めたいし見てほしい作品。主要人物達の欲望の下世話さ、まともな面をしてるが内実おぞましくドロドロなのが次第に明らかになる作りの意地悪さに黒い笑いが溢れる、し、何よりそんな作りながら皆愛や金とかに飢えてて必死、という切実さにどうしようもない話なのに不思議と胸がすく、本当不思議な映画。しばらく頭に残る。

 

・ナイトメアアリー

 

あらすじ:田舎より上京し、いかがわしいカーニバルで雇われた男、スタンはとあるきっかけで読唇術をマスターする。意中の女性と結ばれはるばる都会で出世を目論むスタンの前に謎めいた女性が現れ……。

現在絶賛上映中

見所:皆大好きパシフィック・リムやヘルボーイなどのファンタジックな名作で知られるギレルモ・デル・トロだが、そんな彼のダークサイド、人間の浅ましさや驕りが招く最悪の事態を描く方面(デビルズ・バックボーンやパンズ・ラビリンスとか)を新たに更新した一本。誰しも出世欲や金銭欲には少なからずドキッとしてしまうが、スタンの成り上がろうとする姿とそれが気づけばもっと強大な力に絡めとられていく様は足元が竦む。凄いタイミングで急に出てくるグロ描写のインパクトも凄い。

 

                 ーーーー――


 という訳で忙しなく書いてみましたがいかがでしたでしょうか。一つでも皆さんが気になった、見てみたいなと思える作品が見つかりましたらとても幸いです。個人的ならばまあ、本当気軽に見れないのがアレなんですが悪なき殺人が特にお勧めなんですよね。凄い悪人らしい悪人は出てこないけど、登場人物皆それぞれ生々しい悪意や軽薄さがあって、それが結果的に人を死に追いやるリアルさが本当居心地悪くて。

 他に正に陰鬱らしい陰鬱さなライトハウスやじっくりねっとりと嫌な気になる空白もいいし、逆にアッパーに最悪なはちゃめちゃが押し寄せるアンカットダイヤモンドも……まあ全部いいので体調と精神と要相談しつつ気になった物があれば是非。正直、正直に言えば陰鬱で陰惨な気分になりたいなら今の社会情勢やニュースを見れば嫌でもそうなるんですが……創作物だからこそ逆に、暗い作品特有の後ろ向きなエネルギーとかもあるので、自分はそういうのが好きでこの手の作品を見ている節もあります。皆さんもこれら以外の、自分の中のそんなエネルギーが貰える作品を見つけるきっかけにこの記事が少しでも役立てれば嬉しいです。それでは梶原一郎でした。ブログ、書きたい事がこれで大体尽きたのでまたしばらく冬眠します。また来年までお元気で……さようなら。