glamb-log by kan furuya ポケットにアイデアを
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初期衝動をそのままに形に

僕は10年以上洋服を作り続けてきたけれど、作を重ねるほど、デザインにおいて最も大切なことは引き算でないかという思いに駆られるようになった。 色々な要素を削ぎ落とし、極限までシンプルさを追求したデザインこそが至高のデザインなのではないだろうかと。それは僕が学生時代からミッドセンチュリー や北欧家具といったモダンデザインに親しんできたからなのかもしれない。あるいは毎シーズン、新たなデザインや装飾を自分の中から絞り出すことに僕は少し 疲れていたのかもしれない。







 そんな僕の心境に変化をもたらしたのは「詞」だった。実を言うとここ数か月、とある事情から僕は作詞の仕事に取り組んでいる。それは僕にとって、とても 新鮮な営みだった。皆さんもおわかりの通り、僕は詞に関してはまるで初心者だ。はじめこそ詞という形式特有の制限、例えば文字数であったり、一つの単語に 強い意味を持たせるやり方であったりに戸惑いもした。けれど、恥を恐れず僕はひたすらに書き続け、少しずつ自分の言いたいことを歌詞の形に収めることが出 来るようになった。もちろん作詞家を名乗るのに自分が力不足なのは身に染みて承知しているけれど、それ以上に一度ペンを取ると書きたい言葉が僕の中に溢れてくる。詰め込みたいことがありすぎて、洋服の時にはあれほど考える引き算を僕は詞に関しては全く考えない。







 そうして出来上がった言葉を眺めた時、僕はやりたいことを全部詰め込むことは決して悪いことではないと気がついた。おそらく手慣れた作家は僕の詞を見 て、もっと言葉を絞るようにとアドバイスしてくれるだろう。けれど僕は例え不器用に見えたとしても、アイデアの初期衝動をそのままに形にすることを選びた い。そして、それは僕がブランドを始めた頃にやっていたことだった。











 今季、僕はヴィンテージや古着に見られるリメイク技法をデザインとして大胆に取り入れた。自分がいいと思うものを全て詰め込んでやろうという思いだ。例 えば1枚のTシャツがあって、そこにウイスキーのラベルをあしらうのがいいか。あるいはロックフェスティバルのロゴをあしらうのがいいか。それともスポー ツプリントか、ミリタリーロゴか。だったらどれかを切り捨てずに、全てを繋ぎ合わせて1つの洋服にしてしまえばいい。昨シーズンから少しずつやりはじめた 手法を、今回はより推し進めてデザインを広げていった。







 もしかしたらこうして生まれた洋服をやり過ぎと感じてしまう方もいるかもしれない。その感覚を切り捨てるわけではないけれど、今季僕は100人にとって の70点ではなく、20人に対しての120点を目指した。今コレクションは昨シーズンから引き続き、“Festivalism”、すなわち「フェスティバ ルを楽しもう」というメッセージを乗せている。ロックフェス、ビーチ、アウトドア、夏祭り。たくさんのフェスティバルが今年の夏、僕らを待っている。僕は そこに向かう皆さんに70点の洋服でなく、120点の洋服を着てもらいたい。皆さんの感性にフィットするアイテムを1つでも見つけてもらえたら、それだけ で今季、僕は満足なのです。

glamb designer
古谷 完

glamb HP
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