マスメディア報道のメソドロジー

マスメディア報道のメソドロジー

マスメディア報道の論理的誤謬(ごびゅう:logical fallacy)の分析と情報リテラシーの向上をメインのアジェンダに、できる限りココロをなくして記事を書いていきたいと思っています(笑)

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論理的誤謬のメインリスト [演繹と帰納]

演繹的推論における誤謬のサブリスト [不当立論] [不当原理] [不当資料]

帰納的推論における誤謬のサブリスト [不当立論] [不当原理] [不当資料-1] [不当資料-2] [不当資料-3] [不当資料-4]


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[ロゴ問題]で中華人民共和国との深い関係性が指摘されている自然エネルギー財団事務局長の大林ミカ氏ですが、反原発&再エネ推進の論調を持つテレビ番組にもしばしば登場し、偏向報道に寄与していました。

例えば、大林ミカ氏は。2012年の参院選前にTBS『NEWS23』に出演しています[記事]。TBSは大林ミカ氏の一方的な感想コメントを使って自民党を貶める印象報道を展開しました。この偏向報道に自民党が抗議し、TBSからの取材拒否を宣言したところ、TBSは偏向報道を認めました[自民党website]

反原発・再エネ導入を絶対善とするテレビの大衆操作によって原発停止とFIT制度が実現される中、このような偏向報道によって、日本の世論は電力自由化と発送電分離を熱烈に支持しました。結果として、国民は多くの富を失うと同時に、電気料金は高騰し、不必要な大量の温室効果ガスを排出し、美しい国土は太陽光パネルの設置で破壊されて行きました。

テレビに操作された大衆が支持した反原発・再エネ導入に大きな問題があることは、最近になって顕在化してきましたが、それでも特定のメディアは、不都合な事実を語ることなく、反原発・再エネ導入を絶対善として崇拝する放送を継続しています。

2021年10月20日、テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』は、大林ミカ氏を政府に認められた専門家として出演させ、権威論証を展開しました。

羽鳥慎一氏:今日は再生可能エネルギーについてです。日本は太陽光などの再生可能エネルギーの導入が世界に比べて遅れているのが現状です。なぜ、日本で進まないのか。話を伺ってまいります。自然エネルギー財団事務局長の大林ミカさんです。よろしくお願いします。大林さんは、内閣府の再生可能エネルギー等の規制等の総点検タスクフォースの一員でもいらっしゃいます。

大林ミカ氏:(日本は再生可能エネルギーを)1.5倍から2倍にしていくわけですけれども、世界の各国の再生エネルギーの伸びの動きを見ていくと、けっして難しい目標ではなく、むしろカーボン・ニュートラルとか、46%削減ということを考えると、もっとさらに上乗せが必要と考えています。

浜田敬子氏:なぜ、こんなに最エネ後進国になってしまったのか。

玉川徹氏:今も既に周回遅れなんだけれど、取り戻せないんじゃないかと。エネルギー分野でもどんどんどんどん日本が遅れて行って、貧しい国になってしまうのではないか。更にね。

羽鳥慎一氏:世界は再生可能エネルギー進んでおります。ドイツは再生可能エネルギーは46%です!もう日本が2030年度に目指す目標値を既に上回っています!更にドイツは2030年までに再生可能エネルギー65%を目指すと!そしてデンマーク、再生可能エネルギーおよそ84%!大林さん、ドイツ・デンマークはかなり進んでいますね。

大林ミカ氏:そうですね。目標値がドイツが65%、デンマークは100%の目標を持っています。

羽鳥慎一氏:目標100ですか!

大林ミカ氏:はい。他にもスペイン74%、英国68%と多くの国が、国が主導する形で高い目標を掲げて事業予見性を高めていって、事業投資ができるようにしていく。そういったような政策をとって、拡大を進めています。


まず事実として、日本は再エネ後進国ではありません。再エネ発電電設備容量は世界第6位で、太陽光発電量は世界第3位です。


[エネルギーの今を知る 10 の質問 - 資源エネルギー庁]

ちなみに、再エネ導入が最も進んでいるデンマークは、世界一高額の電気料金となっています。しかも、太陽光や風力などの変動性再生可能エネルギーの導入割合が多い国(上図では黄緑で示されています)は、エネルギー危機に滅法弱いと言えます。世界各国の電気料金の変動を示す次の図を見て下さい。


[燃料価格の上昇と主要国の電気料金 電力中央研究所]

デンマーク・ドイツ・スペイン・イタリア・英国など再エネ比率が高い国々は、ウクライナ危機でLNG価格が高騰したことで深刻な影響を受けています。再エネの変動を調整するには火力発電が必要なのです。その一方で、フランス・米国・カナダなど再エネ比率が低い国々は安定しています。

さて、この番組で恐ろしかったのはこの後に始まった中国礼賛です。



羽鳥慎一氏:国という意味では、やっぱり「中国は凄いな!」というところです。中国は石炭が60.8%なんですけれど、再生可能エネルギーも29.1%、今の日本よりも割合高いです!この再生可能エネルギーの中、水力・風力・太陽光などが、多くなっています。割合は29.1ですけれど、発電量で行くと、15年連続世界一位!これが中国なんですね。なんでなのか。国です。国が進めている。政府が産業として後押ししている「金太陽プロジェクト」というのが2009年から始まっておりまして、太陽光発電事業に対して最大70%の補助金を支給しますと。再生可能エネルギーに関する支出予算、去年1.6兆円です!そして太陽光パネルを設置する所でも中国は工夫をしています。設置する広大な空き地に一緒にクコの実を栽培しましょうと。世界最大の水上発電所の所で一緒に魚の養殖をしましょうと。いろいろ工夫をしている。大林さん、中国は相当力を入れていると。国として。

大林ミカ氏:はい。国家戦略として、自然エネルギーを産業として投資して、世界でのリーダーシップをとるということが明確になっていると思います。導入量も凄くて、昨年新しく導入された世界全体の発電設備のうち、8割が自然エネルギーだったのですけど、そのうち半分以上は中国で導入されていると。他の国が20年かけて導入する自然エネルギーの量を1年で導入するというのを、もう繰り返している。産業としても非常に有効で、競争力があるものを世界に提供している。


中国の再エネ比率が日本より高いのは、水力発電の割合が高いからであり、太陽光や風力などの変動性再生可能エネルギーの割合は日本よりも低い値です。日本については、変動性再生可能エネルギーの割合で評価して「再エネ後進国」と罵倒したのに対して、中国様については、発電量で評価して「中国は凄いな!」と絶賛したわけです(笑)。こんなおバカなゴマすり番組は見たことありません。

羽鳥慎一氏:再生可能エネルギーに力を入れると、世界でリーダーシップ取れますよという判断なわけですよね。

大林ミカ氏:はい。結局、自然エネルギーで発電していますから、エネルギーがタダですよね。だから、エネルギーの自給率が高まり、安定性が高まる。で、それを中国も機器を提供することによってビジネスにし、自らも再生可能エネルギーを大胆に増やしていくよいう目標値を中国も掲げています。

玉川徹氏:そうなんですよね。エネルギーの安全保障の問題で言っても、日本って9割以上のエネルギーを海外から輸入しているわけ。だから台湾海峡なんかで問題があったら止まっちゃう。すべて日本の生命線が海外に依存している。

浜田敬子氏:そういうことを、いかに国のリーダーとか自治体のリーダーが決断できるか。やっぱり」中国なんか、停電が問題になっていますが、コロナ後の一気の電力の需要で、すごく難しい過渡期だと思います。再エネを増やしていくのが間に合わないから、いまエネルギーが足りなくて電力不足となっていますが、それでも彼らは歩みを辞めないと思う。そこがリーダーの決断だなと。

羽鳥慎一氏:だから、環境の問題もあり、安全保障の問題もあり、そしてビジネスの問題もありと。ただ脱原発だけじゃないということですね。再生エネルギーを考えるということは。

大林ミカ氏:まさにそうだと思います。


大林氏は再エネが「タダ」と言いましたが、再エネには他の発電形式よりも大きな資本費がかかります。必ずしもエネルギーコストに精通していない国民をバカにした恐ろしいミスリードです。


[電気をつくるには、どんなコストがかかる? 資源エネルギー庁]

こんなことを言い出す人物が、再生可能エネルギーに関する規制見直しを目指す内閣府のタスクフォースで発言していたことは、日本国民にとって極めて大きなリスクですし、テレビがこのようなバカげた発言へのチェック能力が皆無なことにも恐ろしさを感じます。

何よりも、エネルギー安全保障を問題視するなら、迂回可能な台湾海峡有事ではなく、大林ミカ氏が提案する「アジアスーパーグリッド構想」でしょ(笑)。また、先述したように再エネ比率を高くすると、化石エネルギーの価格高騰にも滅法弱いです。さらに言えば、停電をものともせずに再エネに突き進むなど、精密製品を取り扱う工業国の日本には到底できません。おバカも休み休み言って下さい(笑)

ちなみに、羽鳥慎一モーニングショーでは、2023年02月01日にも大林ミカ氏を権威とする次のようなコメントがありました。

玉川徹氏:結構多くの方が「そんなに再エネ再エネと言ったって賄えるわけないじゃないか、そんな太陽の光とか風で」と思っている人がいるが、実はここに出ているのは、環境省の出している資料です。環境省が発電能力のポテンシャル、要するにどれくらいの潜在能力があるか、それも、ただ単にここは風が一杯吹いているところを全部やればということではなくて、事業可能な範囲内でのポテンシャルを試算している。その資産に関わった自然エネルギー財団の大林さんに話を伺ったが、今どれだけ使っているかというと、大体1兆kWh、日本で1年間に1兆。では事業可能なポテンシャルはどれだけあるかと言えば、ポテンシャルを上回っている。




このような「kWhの年積算量」をもって「100%補うことは十分可能」などという無責任な暴論をいまだに言い続けることに対して、科学的・工学的常識を疑いますし[記事]、このような国民に大きな経済的損失を与えかねない無理やりのミスリードを放送することに何かしらの隠蔽された目的を感じざるを得ません。

極めてナイーヴな知識しか持ち合わせていないにも拘らず、日本のエネルギー行政に口を出して、社会を破壊する日本の活動家とテレビには、本当に強い欺瞞を感じます。つい最近もTBSで大林ミカ氏出演の[再エネ崇拝放送]がありました。こんな放送をして喜ぶのは、地球環境を破壊し続ける一方で、日欧などの意識高い系の国に対して環境ビジネスを展開している中華人民共和国だけです。日本国民を大衆操作するのは、いい加減やめていただきたく思います。




大谷翔平選手の右肘靭帯損傷につきましては本当にお気の毒です。ご本人もご家族もご友人も、そして世界中の野球ファンも大変心配されているものと推察します。肘が十分に完治して再び素晴らしい投球をされることを心からお祈りするとともに、しばらくは世界一の打者として活躍されることを期待する次第です。本稿では、大谷翔平選手の打撃に関して極めて論理的な点を示し、皆様と共有できればと思います。(冒頭の画像は、MLB.com YouTube 映像から引用)

今年の大谷翔平選手は過去最速のペースでホームランを量産しています。ホームランだけでなく、OPSも打率も最高の結果を示しています[MLB公式統計データ]。まさに、現在の世界最強の打者であると言えます。

なぜ大谷選手の打撃はこんなにも大爆発しているのでしょうか。私は、その要因として、スウィング(スイング)の軌道と打撃点(ヒッティング・ポイント)によるところが大きいと考えます。大谷選手の打撃はホームランを打つのに極めて理に適った幾何学的条件を呈しているのです。以下、順に説明して行きたいと思います。

[2021年記事 大谷翔平選手の打撃はどこが他の選手と違うのか]


アッパー・スウィングという誤解

大谷選手のスウィングは、しばしば「アッパー・スウィング」と表現されますが、この表現にはかなりのミスリードが含まれています。まずは、大谷選手に限らず、野球のバット・スウィングについて幾何学的な観点から一般化します。

野球のプレイ経験もない私が最初から衝撃的なことを言って申し訳ないのですが、プロでもアマチュアでも、バットを水平に振るという「レベル・スウィング」なるものは、可能ではありますが、実在していません。

スウィングは回転運動です。どんな打者も、バットのヘッド(先端)をストライク・ゾーンよりも上方に位置させて構え、バットを回転させながらその位置をストライク・ゾーンの上限よりも下方に位置させることで、ストライク・ゾーンの内部を通過する投球を打つことになります。


[出典:probaseballinsider.com]

このとき、バットの回転は打者から見てホーム・ベース側に傾いた円盤状の軌道を描くことになります。

ストライクゾーンは脇よりも下方に存在するため、バットを水平に振るという「レベル・スウィング」を行うには両肘を曲げたままのスウィングとなるため、全く力が入りませんし、そもそも、低めの投球を「レベル・スウィング」で打つなど至難の業です。バットのヘッドは、スウィング時に必ず上方から下方へ移動し、最下点に達した後、再び上方に移動していくのです。

野球のスウィングもゴルフのスウィングもバット/クラブのヘッドの上下動のシークエンスは全く変わりません。いずれも、バット/クラブのヘッドを振り下ろす過程と振り上げる過程で構成されます。野球とゴルフの違うところは、ゴルフの場合にはクラブのヘッドが最下点に達する時にボールを打つのに対し、野球の場合にはバットのヘッドが最下点に達する前にも後にもボールを打つことができるという点です。


理想的スウィングと打撃点

次の図は、数学サイト[GeoGebra]で作成した<投球とスウィングの幾何学的関係>を示した模式図です。



動画表示


この模式図は、通常の3次元デカルト座標において、yの正方向から負方向に移動する投球をxの正方向に位置する左打者が打つという状況を描いたものです。簡単のため、投球はy軸の真上でy軸と平行な運動(水平方向の運動)を呈するものと仮定します。この場合に、円盤状のバットの軌道はxの負の方向に向かって傾きます。また、この円盤の法線方向がスウィングの回転軸になります。

ここで、打撃の基本として、バットが投球をとらえやすくする(バットが投球に当たる確率を高める)ためには、投球を点でとらえるのではなく、線でとらえるようにスウィングすることが重要です。このために必要な幾何学的条件は、スウィングの回転軸が投球と直交することであり、このことはスウィングの回転軸がxz平面内に存在することを意味します。スウィングの回転軸がyの正方向に傾いた場合、あるいはyの負方向に傾いた場合には、バットは投球を線でとらえることができず点でとらえることになります。つまり、投球にバットを当てやすくするためには、スウィングの回転軸を投手側あるいは捕手側に傾けてはいけないということです。

米国では、スウィングの回転軸が投手側に傾いた場合をスウィング・ダウン(ダウンス・ウィング)と呼び、捕手側に傾いた場合をスウィング・アップ(アッパー・スウィング)と呼んでいます[スウィング・ダウンとスウィング・アップ]

ここで、ホームランを打つにあたって重要な技術があります。それはヘッドを一旦振り下げた後に振り上げる過程において投球をバットに当てることです。このヘッドを振り上げる過程でとらえた打球はホームランの必要条件であるフライになります。ちなみに、ヘッドの最下点でボールをバットに当てると、打球はライナー(ライン・ドライヴ)となり、ヘッドを振り下げる過程でボールをバットに当てると、打球はゴロ(グラウンダー)になります。したがって、ホームランを量産するためには、スウィングの回転軸をxz平面内に存在するようスウィングしてボールを線でとらえると同時に、ヘッドの上昇過程で投球を打つことが重要になります。


世界のホームラン打者

いつの時代もホームラン打者は、上述のスウィングと打撃点でホームランを量産しています。スウィングの回転軸は、投手側にも捕手側にも傾くことなく、フォロー・スウィングまでブレることがありません。ヘッドを振り下ろした後に振り上げる過程でボールをとらえるタイミングも見事です。

ベーブ・ルース選手


ハンク・アローン選手


バリー・ボンズ選手


マイク・トラウト選手


アーロン・ジャッジ選手


王貞治選手


ちなみに、有名な王選手の日本刀の素振りの[映像]はダウン・スウィングを想起させるミスリードであり、実際のゲームでの王選手は、ヘッドを振り下ろす過程において投球をとらえることなく、かなりの高確率でヘッドを振り上げる過程において投球をとらえています。

さらにこれらのホームラン打者に共通しているのは、いずれもスウィングの回転軸をホーム・ベース方向に大きく前傾してスウィングしている点です。この場合、スウィングの軌道が高角度になるので、[バレル](=ホームランになりやすい打球角度)が発生する確率が上昇、すなわちホームランを打つ確率が上昇するのです。ソフトバンク・ホークスの[柳田悠岐選手]のスウィングも逸品です。勿論それは、アッパー・スウィングではなく、スウィングの回転軸は投手側にも捕手側にもけっして傾きません。

そして、本論の対象である大谷翔平選手も、このようなホームラン打者の特性をすべて持ちあわせています。大谷選手の特に素晴らしいところは、打撃の直前にノーステップで僅かにスウェー(並進移動)して回転軸を固定すると、以降は全くブレないことです。これは芸術的なレベルです。大谷選手はまさに模式図に示したような安定した回転軸で美しい円盤を描くようにスウィングしているのです。


MLB Network

なお、以上のようなホームラン打者とは異なり、変幻自在にスウィングの軌道と打撃点を変えてフライ・ライナー・ゴロを打ち分けることでヒットを量産した不世出の大打者がいました。誰もが知っている世界の安打製造機イチロー選手です。

イチロー選手


イチロー選手は投球のスピードとベクトルに合わせてスウィングのスピードと打撃点を変えるという離れ業を発揮してきましたが、この究極の技術によって可能な限り投球を線でとらえることが可能となり、打率を高めたものと考えられます。イチロー選手のバットがテニスのラケットのように見えるのはそのためです。


大谷選手 2021 vs 2023

2023年にホームランを量産している大谷選手ですが、MVPを獲得した2021年もホームランを46本打っています。2021年と2023年で大谷選手の打撃に変化はあったのでしょうか。


[Baseball Savant] より引用

答えは「明らかに変化した」です。2021シーズンと比べて2023シーズンは打率が格段に上昇し、空振りが減り三振が減少しました。打球の方向は、右方向の引張り中心から広角に変わっています。何がこのような変化に寄与しているのでしょうか。

大谷選手ホームラン 2021


大谷選手ホームラン 2023

MLB.com

映像を観れば気が付かれる人もいらっしゃるかと思いますが、大谷選手は、右投手/左投手に対する打撃戦略を明らかに変えています。次の表は、2021年と2023(8/27時点)年の全本塁打に関する投手の左右別と打球方向を示したものです。



2021年の大谷選手は、右投手に対しては左右に打ち分けていますが、左投手に対しては右中心にホームランを打っています。

2023年の大谷選手は、左投手に対しては左右に打ち分けていますが、右投手に対しては右中心にホームランを打っています。ちなみに、大谷選手は左投手に対してオープンスタンスをとっています。

次の表は打撃成績を比較したものです。


[Baseball Savant] より引用

以下、幾何学的に分析します。


対右投手

2021年において、大谷選手は右投手にも左投手にも最初の模式図で説明したようなスウィングを行っていました。しかしながら、現実の投球は模式図に示したような単純な水平の軌道を描きません。ピッチャーは高いマウンド上から投球し、高い位置でボールをリリースし、さらに万有引力もあるので、ストライク・ゾーンに向かう投球の軌跡は捕手側に傾斜して上下動(いわゆる「お辞儀」)することになります。また、右投手の場合には、打者から見て左から右方向に投球が傾いてストライク・ゾーンに入ってきます。この時、当初に設定したスウィングは投球を線でとらえられなくなり、点でとらえることになります。



このような投球を線でとらえるようにするには何をすればよいかというと、スウィングの回転軸を、投球ベクトルと直交するように、z軸の反時計回りに回転すればよいのです。これは、線形代数でいう座標の【一次変換】にあたります。また、このような回転軸の回転を行ってスウィングの振り上げ過程に打撃点を持ってくれば、投球の上下動にも対応しやすくなります。

実は、大谷選手は2022年シーズンからこの一次変換を実際に行なっているのです。MLBが新たに導入した【トラッキング・テクノロジー tracking technology】で大谷選手のスウィングの軌道を見れば、ヘッドの最下点が体の中心ではなく、捕手側に位置しているのが一目瞭然です。



[MLB.com tracking technology]

大谷選手のスウィングの最下点は体の中心線よりも捕手側にあります。理論的には、この真上に大谷選手の回転軸が存在するのです。そして、大谷選手のスウィングの打撃点は体の中心線よりも投手側にあり、投球の僅かに下側を叩くことによってバレルを形成しています。

2023年の大谷選手は右投手のストレート(4シーム)に対して4割を超える驚異的な打率を残しています。投球をより高精度に線でとらえているのですから打率上昇は当然の結果です。そして、右投手からのホームランはそのほとんどが右中間です。大谷選手は、ストライクゾーンのどこに投球が来ようが、打撃点をこの相対的位置に定めてスウィングするスキルを完全に会得しています。2021年の段階で、右投手への対応はまだまだ手探りの状態でしたが、2023年は製造技術を確立してホームランを大量生産しているものと考えられます。ホームラン時の打撃挙動は至極安定しているのです[例1] [例2]


対左投手

一般的に、左打者にとって左投手はボールが見難いので、可能な限り投球を見極める態勢で対処することが重要です。大谷選手は、2021年に左投手を力でねじ伏せていました。ホームランの殆どは右方向であったと言えます。2023年は左投手の球筋に対してオープンスタンスをとり、ミートの確率を改善しています。打球方向は左方向に打つ傾向が強まっています。

左方向に打ち返したケースのトラッキング・テクノロジーを参照すると、軌道の最下点を捕手側に回転移動した上で、打撃点を体の中心線よりも後ろにずらして投球をとらえています。



[MLB.com tracking technology]

もちろん、打撃点はスウィングを振り上げる過程にあり、投球の内側かつ下側を叩いてバレルを作っています。左打者に対しては、2021年と比較して必ずしもホームラン数の向上には至っていないものの、チェンジアップに対する対応力が向上しており、今後の更なる打撃爆発が期待されるところです。


大谷選手の打撃に見られるイチロー選手&トラウト選手の影響

ちなみに、大谷選手が2023年からバットの回転軸をz軸の反時計回りに回転したことを裏付ける証拠があります。それは2023年に打撃妨害が頻出したことです。内訳は、右投手2回 [1] [2]、左投手3回 [3] [4] [5]です。また、世界の速球王であるアロルディス・チャップマン投手との対戦では、103マイルの速球をギリギリ捕手側でとらえてヒットにしたことから[映像]、大谷選手が最後の最後まで投球を見極めてスウィングしていることがわかります。

この打撃スタイルこそイチロー選手の打撃の神髄そのものです。



大谷選手の打撃は、イチロー選手のようにフォロースルーに入るまでけっして左足が投手側に向くことがなく、投手に対して最後の最後までけっして胸を見せることはありません。おそらく大谷選手のスウィングは、イチロー選手の打撃を見て盗んだもの、あるいはイチロー選手から直接指導を受けたものと推察する次第です。

さらに言えば、大谷選手のスウィングの軌道は、マイク・トラウト選手のスウィングの軌道と類似してして、回転が始まってからインパクトまでの腕のシークエンスもそっくりです。



おそらく、大谷選手がメジャー移籍先としてエンジェルスを選択したのはトラウト選手の打撃を修得するのが目的であったと考えられなくもありません。「野球のことしか頭にない」とされる大谷選手ならあり得ることです(笑)


大谷選手の選手としての最大の魅力

プロの強打者は、必ず対戦相手から研究され、欠点を突かれますが、論理に適った打撃を行っている大谷選手には、付け入るスキは小さいものと考えられます。一般的に大谷選手は身体能力の高さが評価されていますが、同時に注目する必要があるのは、極めて論理的な打撃スタイルです。

力学的に言えば、大きさと向きを持つベクトルとして表出する野球のパフォーマンスは、身体能力というスカラー量を幾何学的な戦略に基づいて有効なベクトルに変換することが重要になります。大谷翔平選手の選手としての魅力は、身体能力だけでなく、幾何学的な戦略も持ちあわせている点にあります。まだまださらなる進化を遂げられるのではと期待を抱く次第です。



テロリズム称賛発言

安倍晋三元首相の暗殺事件をめぐって「何ら一矢報いることさえできなかったリベラル市民として、せめて暗殺が成功して良かった」と発言して炎上した島田雅彦氏は『夕刊フジ』の質問に回答する形で反省の弁を述べましたが、その内容は「誤解」という【被害 damage】を社会に与えたことについては認めたものの【責任 responsibiliy】については認めない典型的な【弁解 excuse】と言えるものでした。<冒頭写真はKyodo Newsより引用>

テロの成功に肯定的な評価を与えたことは公的な発言として軽率であったことを認めます。殺人を容認する意図は全くありませんが、そのように誤解される恐れは充分にあったので、批判は謙虚に受け止め、今後は慎重に発言するよう努めます。


「暗殺が成功して良かった」という島田氏の発言は、言論に対する暴力的封殺であるテロリズムの結果を肯定する発言であるばかりか、人殺しを称賛するものでした。この簡潔な主張に「誤解」を招く余地など存在せず、「慎重に発言するよう」努めたところでその内容は変わるものではありません。島田氏はすぐに弁解を開始します。

ただ、安倍元首相襲撃事件には悪政へ抵抗、復讐という背景も感じられ、心情的に共感を覚える点があったのは事実です。山上容疑者が抱えていた旧統一教会に対する怨恨には同情の余地もあり、そのことを隠すつもりはありません。

さらに政権と旧統一教会の癒着を暴露する結果になったのも事実です。今回の「エアレボリューション」での発言はそうしたことを踏まえ、かつ山上容疑者への同情からつい口に出てしまったことは申し添えておきます。


思考停止のルサンチマン

日本の左翼は「リベラル」を自称しますが、実際には【リベラリズム liberalism】の真逆と言える存在であり、偏狭な道徳を振りかざした【モラリズム moralism】で相手を叩きのめすだけの論理薄弱な情弱に過ぎません。彼らは権力を職務上行使できる者を【悪 evil】と断定する一方で、権力を職務上行使できない自分達を【善 good】と断定する【ルサンチマン ressentiment】を振りかざすだけの幼稚な凡人に過ぎないのです。

民主主義国家の日本の主権は国民にあり、政府はマンスリーに発表される内閣支持率に敏感であるため、その権力の行使には極めて慎重です。例えば、安倍政権は8年間にわたって選挙に大勝し続けましたが、最後まで持論の憲法改正については議論すらしませんでした。そもそも、リベラルな安倍首相は一貫して【格差原理 difference principal】に従い、庶民に豊満な社会保障を提供する弱者の味方であり、サイレント・マジョリティから圧倒的に支持されていました。左翼が妄想するような、民主主義を揺るがして弱者に危害を加えるような「悪政」の構成要件は全く存在しなかったのです。それにも拘らず、左翼はひたすら安倍首相を民主主義の敵として悪魔化し罵り続けました。安倍首相が悪の存在でなければ、ルサンチマンが全てである彼らの存在意義はなくなるからです。島田氏はさらに続けます。

一方で、安倍元首相暗殺事件や岸田首相襲撃事件を言論に対する暴力と捉える場合、これまで政権が行ってきた言論、報道への介入、文書改竄、説明責任の放棄といった負の側面が目立たなくなるということもありました。

また民主主義への暴力的挑戦と捉えると、国会軽視や安保三法案の閣議決定など民主主義の原則を踏み躙るような行為を公然と行ってきた政権があたかも民主主義の守護者であったかのような錯覚を与えるという面もあります。


左翼はあたかも日本において「報道の自由」「言論の自由」が束縛されているように主張しますが、そんな事実は存在せず、完全なデタラメです。日本では「報道の自由」「言論の自由」か完全に確立されているばかりか、政権に対する「偏向報道の自由」「ヘイトの自由」まで完全に確立されているのです。

それが証拠に、マスメディアも野党も左翼活動家も、安倍首相に対しては常軌を逸するほどに非難を続けました。彼らは、安倍首相が組織的な選挙妨害に一言意見すれば一斉に袋叩きにし、安倍首相がテロに斃れても全く同情することなく、安倍首相を暗殺したテロリストの主張を一斉に大宣伝し、安倍首相の国葬に一斉に反対し、その国葬当日には一斉に安倍首相をコキ下ろしました。それだけではありません。活動家はブルドーザで安倍首相のマスクを踏みつける儀式を行ったり、ナチスの軍服を着た安倍首相の合成写真を造ってデモで罵倒したりしました。もちろんこれは人権蹂躙のヘイト行為です。それでも安倍首相は笑って受け止め、反論すらしませんでした。彼らがやっていることは、リベラリズムの否定であり、偏狭なモラリズムに他なりません。


反リベラリズム

リベラリズムの正義とは、各個人がもつ善に従う自由を尊重し、その自由の行使が他者の善に従う自由の行使に危害を与える時のみ、その自由の行使を、国民から負託された権力を使って国家が制限するものです。基本的には、各個人は、法律に違反する危害を他者に与えない限り、その自由を行使できます。これがミルの【危害原理 harm principle】であり、善に対して正義が優越することになります。ちなみに、日本の法律は、米国のリベラルな法哲学を具現化した日本国憲法が謳う「公共の福祉」という危害原理を法哲学の主要理念とするものです。日本において、個人の自由および権利は公共の福祉に反しない限り保障されています。

これに対し、モラリズムの正義は、個人がもつ善を他者に強制させる、あるいは個人の悪を他者に禁止させるものです。各個人は、道徳的に不快な行為を他者に与えてはならないとする【不快原理 offense principle】に基づきその行動を制限されるのです。「危害」とは異なり、「不快」には制限はなく、恣意的に偏狭な道徳を振りかざせば、無制限に自由を束縛することができます。

テロリズムはその極致であり、個人が不快と考える他者の自由を殺人という形で奪う行為です。例えば、安倍首相は統一教会の関連団体の集会でスピーチしましたが、これは他者に危害を与えるものではない合法的行為です。山上容疑者はその合法的行為を不快に思って安倍首相を暗殺しました。島田氏は、危害原理で守られる安倍首相の人権を完全に無視して非難した上で、極めて勝手な不快原理の乱用によって人殺しを行った山上容疑者をあたかも被害者であるかのように同情したのです。日本の左翼の人々が真のリベラルであるのなら、批判すべきは島田氏に他なりませんが、批判の声は全く聞こえてきません。


日本に蔓延る偏狭な反リベラリズム

日本社会の自由と権利に対する無知は深刻であり、最近の「食用コオロギ問題」も偏狭な反リベラリズムが暴力的な結末を生んだ典型的な例であったと言えます。これは、徳島県の高校生が自由な意思に基づき、専門家の安全指導の下でコオロギパウダーを使った給食を作り、それを希望者が食したという行為に対し、日本社会のヒステリックな【パターナリズム paternalism】が突如発動されたのです。

パターナリズムとは、相手の利益を思いやるという名目で他者の自由に介入する反リベラリズムの一つです。高校生の行為は、誰にも強制することなく誰にも危害を加えることなく個人の自由を行使しただけなのですが、この行為に対して、SNSが不快原理に基づいてヒステリックに批判するという事態が発生しました。さらに不快原理に基づく偏狭なモラリズムが暴走し、コオロギパウダーを使用したパンを一部商品とする食品メーカーの不買運動に発展し、陰謀論が飛び交う中、バッシングを受けた食品会社が[コオロギ生産を中止]するという事態に至りました。この食品会社も誰に強制することもなく、誰に危害を与えることもなく、ただ自由に商品を作っていただけですが、反リベラリズムの介入を受けて生産中止に追い込まれたのです。

日本社会には偏狭な正義を振りかざしながら他者の自由に介入したがる人物が伝統的に存在します。彼らの主要なモチベーションは承認欲求であり、不快な相手を攻撃してマウントを取ることで自分が正義の存在であることを他者にアピールしたいのです。日本の自称リベラルはその典型と言えます。反リベラリズムで暴走する彼らにとって、悪政の事実の存在やイデオロギーなどはもはやどうでもよく、他者を説教して承認欲求を満足させることが目的化しているものと考えられます。彼らに正義などこれっぽっちもありません。