宮下誠(みやしたまこと)
一九六一年東京都生まれ。國學院大学文学部教授。スイス国立バーゼル大学哲学博士。早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。専攻は20世紀西洋美術史、美術史学史、画像解釈学、一般芸術学。著書に『20世紀絵画 モダニズム美術史を問い直す』『20世紀音楽 クラシックの運命』(以上、光文社新書)、『逸脱する絵画』『迷走する音楽』(以上、法律文化社)、『パウル・クレーとシュルレアリスム』(水声社)、訳書に『パウル・クレー』『マックス・エルンスト』(以上、PARCO出版)などがある。
新刊!!
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好評発売中!!
『越境する天使 パウル・クレー』発売です
内容に関して僕がああだこうだいうのは今さらという感じがするので、図版制作に関わったものとして言わせてもらうと、モノクロでもよくここまできれいに印刷できたなぁという感じです。生前、先生がこだわった図版の掲載に関しては現実的なところでは最高の到達点と言えるんじゃないでしょうか。聞くところよると、印刷所で宮下先生のために最高のスタッフを揃えてくれたということです。
Amazon 『越境する天使 パウル・クレー』
宮下誠の最後の本
『越境する天使 パウル・クレー』
春秋社より刊行です。
春秋社『越境する天使 パウル・クレー』
●328頁、口絵16ページ+図版120点
●46判上製。
●2800円+税
●12月24日発売!
力なき者がそれでも生き続けるための「悪意と戦略」。
20世紀の暴力に絵筆で挑んだ画家のぎりぎりの闘いを追跡した《批評家》が
私たちに宛てた/仕掛けた最期の《手紙》。
*
「越境する天使」。この言葉からも分かるとおり、筆者は、クレーの芸術は様々
な「プラット・ホーム」を自由に往還する、融通無碍な、しかし常に死と向き
合った深刻な芸術であると思う。
クレーの2つの眼差しは、片方で、混迷を極めてゆく世界を、
或いはいよいよ生き辛くなってゆく世界を、
悪意に満ちた眼差しで見つめながら、
もう一方の眼差しで、森羅万象の不思議を見詰め、考察し、
深い哲学的な思想で再解釈し、イメージとして残そうとした。
クレーの絵画世界は、その記録である。
此岸でわたしを捕まえることはできない。
わたしは好んで死者たちと、
未だ生まれざるものとの領域に
住みついているから。―パウル・クレー
(本文より)
告知
出版は12月下旬予定。
今回は告知のみになりますが、状況などをお知らせしていきたいと思います。
不在の代償
國學院でおはなししました。
「不在の代償」
思わず出た言葉ですが、少しだけ気に入っています。
色々想像してみて下さい。
そこにものがないこと、そのためのセカンドチョイスとしての画像。
いつも一緒にいたいのに、そうもいかない、だから似姿を所有する。
だから画像には常に不在という遣り切れない孤独感が付き纏うのではないでしょうか?
教会、聖堂や貴顕の邸宅から飛び出たタブローや版画は孤児のようにその生き場所を求めます。
しかし一行「終の棲家」を見つけることが出来ない。
常に動揺し、不安です。
美術館はアジル、即ち避難場所、いや、野戦病院かも知れません。
美術館という入れ物、空間は離合集散の場所であり、出会いの悦びと別離の悲しみがクロスする場所でしょう。
どこか寂しげな表情を見るのはぼくの独りよがりでしょうか?
ところで、この不在の代償を絵画的に表現した画家がマグリットであり、遡ってヘイスブレヒツであり、ベラスケスであったと、ぼくは考えます。
「ない」ことの如何ともし難い喪失感、それを表明する勇気を持つものの矜持。
マグリットは「不在」そのものの「存在」を絵画化したといったら良いでしょうか?
ヘイスブレヒツはもっと意地悪く、不在によって画像の存在理由(レゾンデートル)を裏切ろうとしているかに見えます。
ベラスケスはもっと尊大に、「だからこそ画像は、他のものに優越し高尚なのだ、何故なら目に見えないものの表象化なのだから、謂わば神の御手による創造にも匹敵する技こそ絵画なのだ」とでも言わんばかりです。
各大学の諸君、来週はこのことを中心に考えてみたく思います。
コピーして持ってきて下さいね。
まずはマグリット
ヘイスブレヒツ
そしてベラスケス
〈略歴〉
1985年 早稲田大学第一文学部美術史学専修卒業
1988年 早稲田大学大学院文学研究科芸術学(美術史)専攻修士課程修了
1992年 スイス国立バーゼル大学哲学部美術史学科大学院修士課程修了
1993年 スイス国立バーゼル大学哲学部美術史学科大学院博士課程単位取得博士論文執筆資格取得退学
1994年 早稲田大学大学院文学研究科芸術学(美術史)専攻博士後期課程単位取得退学
1999年 別府大学大学院文学研究科文化財学専攻助教授
2000年 國學院大學文学部哲学科助教授
2006年 國學院大學文学部哲学科教授
2007年 スイス国立バーゼル大学哲学部美術史学科大学院博士課程修了
〈書評〉
「Victor I. Stoichita, A Short History of the Shadow, 1997 書評」『西洋美術研究』、2003年、第9号、190-198頁
「『芸術の宇宙誌-谷川渥対談集』書評」「図書新聞、2971号、2004年3月27日、6頁
〈分担執筆〉
『世界の古書店Ⅱ』、丸善、1995年、85-92頁
『クレー』、朝日新聞社、1995年、85-95頁
「20世紀の美術100- ドイツ」、『美術手帖』、2000年12月号、59-63頁
「20世紀美術の思想47人」、『美術手帖』、2001年6月号、18-21頁
『20世紀の美術と思想』、美術出版社、2002年、53-58頁、126-129頁
『パリと陽光あふれる南フランス』、トラベルジャーナル、2002年、16-23頁
「ドイツ表現主義と新表現主義とをつなぐ敗戦の歴史」、『美術手帖』、2003年12月号、44-49頁
「パウル・クレー特集」、『芸術新潮』、2005年12月、新潮社、総152頁うち80頁を分担
「『梨のかたちをした三つの小品』あるいは音楽におけるタイトル論への一視座」、『現代詩手帖』、2006年3月号、48-54頁
「表象の地獄あるいは無限に自己参照するユートピア - ジョルジュ・ペレックの転倒するエクフラシスに寄せて」、『水声通信』、2006年4月号、104-111頁
「TOKYO/BERLIN oder BERLIN/TOKYO 創造的ニアミスの11階梯」、『美術手帖』、2006年4 月号、98-103頁 「ダヴィンチ・コードの○と×」、『芸術新潮』、2006年6月、新潮社、総160頁うち34頁を分担
「ものがたられる創造/創造されるものがたり」、『美術手帖』、2006年9月号、182-183頁
『絵画の制作学』、谷川渥+藤枝晃雄編、新教出版、2006年、(「パウル・クレー」、「タイトル」、「完成と未完成」、「西欧における風景画の「不」可能性」、「芸術と狂気」)
〈翻訳〉
展覧会カタログ、『特別展-百済観音』、東京国立博物館、1988年
展覧会カタログ、『ジャン・アルプ鑑賞展』、現代彫刻センター、1991年
マンフレッド・シュパイデル/セゾン美術館、『ブルーノ・タウト』、リブロポート、1994年
マルクス・シュテークマン、「領域横断的展覧会の試み」芸術学論叢(別府大学文学部芸術文化学科)、第14号、 2001年、3-26頁
マリアンヌ・ヴァッカーナーゲル、「保存するということ:作品収集、作品管理、保存と修復の問題」芸術学論叢(別府大学文学部芸術文化学科)、第14号、2001年、27-34頁
マリアンヌ・ヴァッカーナーゲル、「美術館教育:展覧会、出版、広報活動」芸術学論叢(別府大学文学部芸術文化学科)、第14号、2001年、35-47頁
マルクス・シュテークマン+クラウディオ・モーザー、「『声』-スイス現代芸術と日本」『國學院雑誌』、2003年、第104巻、第5号、7-25、36-52頁
〈学術雑誌等に発表した論文〉
「『雪の上に横たわる犬』から『虎』へ - フランツ・マルクとキュビスム(1)」『美術史研究』(早稲田大学)、第26冊、1989年、1 - 20頁
" >Tierschicksale< und der nächtliche Wald - Franz Marc und der Kubismus (2) - " (独文)『早稲田大学大学院文学研究科紀要別冊第17集』文学・芸術学編、1990年、73 -90頁
「戦略としての批評? - 1925年、パリ、Vavin-Raspail画廊のパウル・クレー展とその周辺 - 」『美學』、1993年、第175号、12 - 22頁
「批評史の射程 - クレー小論」カローラ・ギーディオン・ヴェルカー(宮下誠訳)、『パウル・クレー』 PARCO出版、1994年、195- 202頁
「『抽象画家』としてのラファエロ - 二十年代リアリズムに於ける具象的形象を巡る批評環境 - 」『國學院雑誌』、1994年、第95巻第12号、16-26頁
「画家パウル・クレーの造形思考に於ける具象的形象の意味」『國學院雑誌』、1995年、第96巻第7号、13 - 26頁
「マックス・エルンストと受容美学」ロタール・フィッシャー(宮下誠訳)、『マックス・エルンスト』、 PARCO出版、1995年、235 - 244頁
"Der dialogische Blick - Die Leerstelle und Betrachter bei den in den Werken Paul Klee" (独文)『美學』国際版、1996年、第7号、107 - 120頁
「パウル・クレーと同時代の音楽」『洗足論叢』(洗足学園大学)、1997年、第25号、65-79頁
「たくらみとしての絵画 - 受容美学的観点から見たクレー作品における具象的形象の機能」『女子美術大学紀要』、1997年、第27号、21-35頁
「両次世界大戦間パリに於ける画家パウル・クレー受容とメカニズム-マックス・エルンストとの関係を中心に」『鹿島美術研究年報』、1997年、第14号別冊、408-418頁
「トリスタン・ツァラとパウル・クレー-パウル・クレーとダダ(1)」『國學院雑誌』、1998年、第99巻、第12号、26-37頁
「テオドール・ドイプラーとヴァルデマール・ヨロス-パウル・クレーとシュルレアリスム前史(1)」『別府大学紀要』、1998年、第40号、119-128頁
「線描のエクリチュール-ヴァヴァン=ラスパイユ画廊の第一回パウル・クレー展(1)」芸術学論叢』(別府大学)、1998年、第13号、75-95頁
「『どの一点でまじわるとも知れない線また線の迷路のなかへ』-『第一回シュルレアリスム絵画展』とアンドレ・ ブルトン、そしてパウル・クレー(1)-」『別府大学大学院紀要』、1998年、第1号、43-52頁
「マックス・エルンストからの三通の書簡-パウル・クレーとダダ(2)」『國學院雑誌』、1999年、第100巻、第1号、74-86頁
「M. Imdahl の "Giotto" に見る Panofsky 批判」『ARS UNA 日独芸術学研究会会報』、1999年、第4号、5-6頁
「パウル・クレーとシュルレアリスム-『シュルレアリスム革命』誌第三号に見るイメイジ戦略-」『デアルテ』(九州芸術学会)、1999年、第15号、16-35頁
「フェルッチオと二人のパウル、あるいは『新しい古典性』について」『ARS UNA 日独芸術学研究会会報』、1999年12月1日、第5号、2-3頁
「レオポルト・ツァーンとヴィルヘルム・ハウゼンシュタイン-パウル・クレーとシュルレアリスム前史(2)-」『別府大学紀要』、1999年、第41号、87-103頁
「操作されたエクリチュール-ヴァヴァン=ラスパイユ画廊の第一回パウル・クレー展(2)-」『別府大学アジア歴史文化研究所報』、2000年、第18号、15-41頁
「『それどころか、私が見はじめる目に見えないものまである』-第一回シュルレアリスム絵画展とアンドレ・ブルトン、そしてパウル・クレー(2)」『別府大学大学院紀要』、2000年、第2号、35-50頁
「分析・解体・復讐 -クレンペラー晩年のテンポを巡って」『國學院大學哲学会会報』、2000年、第20号、1-5頁
「アイギストスの断末魔」『國學院雑誌』、2000年、第101巻、第8号、28-30頁
「ヘルマン・フォン・ヴェダーコプとヴィル・グローマン-パウル・クレーとシュルレアリスム前史-」『國學院大學紀要』、2001年、第39巻、1-21頁
「音楽評論家としてのパウル・クレー」『國學院雑誌』、2001年、第102巻、第3号、1-13頁
「『私がかつてこの欄で言及したシュルレアリストたちがピエール画廊を騒音で埋め尽くした』-第一回シュルレアリスム絵画展」とアンドレ・ブルトン、そしてパウル・クレー」『國學院雑誌』、2002年、第103巻、第1号、62-75頁
「エクリチュールの行方-ヴァヴァン=ラスパイユ画廊の第一回パウル・クレー展拾遺」『國學院雑誌』、2003年、第104巻、第1号、1-13頁
「スイス現代美術の諸側面-國學院大學文学部講演会『「声」-スイス現代芸術と日本』に寄せて-」『國學院雑誌』、2003年、第104巻、第5号、1-6頁
「せめぎ合う言説-フレヒトハイム画廊のクレー展から」『國學院雑誌』、2004年、第1005巻、第8号、1-15頁
「恍惚の技法-アインシュタインとクレー」『國學院大學紀要』、2004年、第42巻、147-178頁
「批評におけるイメージの力-パウル・クレーとシュルレアリスム断簡」『アートフィールド』、2005年、第2巻、48-54頁
「収斂する言説 - シュルレアリストとしてのパウル・クレー」『國學院雑誌』、2005年、第106巻第9号、1-9頁
Die Neue Klassizität: Klee, Buzoni und Hindemith,Ausst.kat. Paul Klee und Rhythmus, Zentrum Paul Klee Bern 2006, S.177-189.
Die beiden ersten Paul-Klee-Ausstellungen 1925 in Paris und der Surrealismus,Ausst.Kat. In Augenhöhe: Paul Klee Frühe Werke im Blick auf Max Ernst; Max Ernst Museum Brühl,2006; S.124-139.