黒澤公人のドキュメンテーションシステムの100年(1960年-2060年)

黒澤公人のドキュメンテーションシステムの100年(1960年-2060年)

一次情報ダイレクトアクセス時代のドキュメンテーションシステム



サービス原論

 

図書館は、日本主義経済の中で、生き延びるためには、不便さを背負っていかなければならない。

電子図書館、電子ジャーナルビジネスは、図書館相手に、ビジネスをしているので、その利益を保証する必要があるが、紙の図書館と電子図書館が共存、共栄するということは、非常に難しい。両立はできない。

 

 

公共図書館は、市や区、県などの行政組織の1つとして提供される。

大学図書館などは、大学の組織の1つとして構成される。

 

一般の公務員は、月曜日から金曜日まで9:00-17:00勤務で、働き、土日は休みになる。

しかし、図書館は、土日開館、夜間開館が求められるので、勤務時間が複雑になる。休日出勤、夜間出勤のためには、特別な配慮も必要になるので、一般公務員が行うのが複雑になってしまうので、外部委託という方法がとられやすい。

 

大学は、多様な組織の塊なので、人事異動を行って、組織を運営している。すると、図書館だけ、人事異動の対象外にするのは難しいため、専門的な知識を持った人、持たない人などの混在した組織になっていく。

 

大学図書館の場合、かつては、図書館が購入した図書、雑誌が、すべてであったが、雑誌、データベースなど多様なサービスを管理する必要に迫られている。

 自分の勤める図書館のルールを覚えれば済んだ時代から、契約する数十、数百のシステムのルールを理解する必要に迫られている。それは、数十、数百の図書館の塊で、それぞれが、固有のシステムルールがある。

 

数十、数百の図書館を使うのは、大学の先生や学生なのだから、使う彼らが、理解していれば使うことができるが、学生は、通常4年で卒業していってしまうため、紙の図書、雑誌を使うことも含めて、数十、数百のシステムの使い方を覚える必要がある。

 

あまりの複雑さを解決しようと登場したのが、Discovery という機能だ。そこには、数十、数百のシステムを1つにして検索しようというものだ。

 

Discoveryシステムは、電子図書館、電子書籍、電子ジャーナルなどのデータをすべて取り込んで、検索している。データは、Discoveryのインデックスとして活用して、オリジナルデータへ導く。このとき、こちらがオリジナルデータにアクセス権あれば、アクセスできるが、アクセス権がなければ、アクセスできない。

しかし、それでは、パフォーマンスが落ちてしまうので、アクセス権のあるものをまとめて、その大学専用インデックスのサブセットをつくり、アクセスパフォーマンスを維持している。

 

現在の大学図書館において、紙の図書、雑誌は、少数グループになっており、その数十倍、数百倍のデータへアクセス可能になっている。

データには、大学が費用を払って契約しているもののほか、無料で公開されているデータもある。(国会図書館デジタルやJstageなど。)

 

公共図書館にも、電子図書館、データベースなど利用できるものが登場してきた。

コロナの影響で、電子図書館は、急速に普及してきた。公共図書館において、紙の図書館と電子図書館が共存、共栄できるのかは、微妙な問題である。資料の購入予算は限られているので、一方を充実しようとすれば、片方は削減しざるを得ず、共存、共栄は、不可能である。たぶん、紙の図書館が

衰退していくことになるが、電子図書館の契約は、市町村単位に行わなくてもよいかもしれないので、広域大規模電子図書館が登場するかもしれない。すると、電子書籍書店との関係が出てくるので、そこでも難しい問題がでてくる。資本主義経済の中で、図書館生き残るためには、図書館が不便であることは、非常に重要で、便利になった図書館は、資本主義経済から、おいだされることになる。