息子は忙しい。休みは週に二日はあるが、日曜はボクシングのトレーナーのバイトで一日いない。それでは孫が寂しがるので、平日を一日休みにした。孫も保育園を休みにして、わたしも掃除のバイトはあるが、それは9時で終わるので、それから三人で出かけようかとなる。前々から、横浜の動物園に連れて行ったらとわたしは息子に言っていた。そこは駅から近いし、入場無料なのだ。さすが横浜市だ。別に離れた郊外にズーラシアという大きな動物園もあるが、それはまたの機会にして、天気のいい平日をねらって、親子三代で電車で横浜に出た。

 

 久しぶりの電車で四歳児は喜んで窓から眺めている。わたしはいろいろと教える。もうすぐ大きな観音様が見えるよと大船観音、大きな公園があるよと二人で車窓にしがみつく。

 横浜駅で乗り換えて桜木町で降りる。そこから野毛を歩いて行くのだが、動物園までは15分くらいか。地下街があるので、そこでドリンクとおやつを買う。わたしはそこのレトロな地下街は好きだったが、なんと半分もテナントが撤退して寂しい。

 坂を上がると、野毛山公園があり、桜は満開。新聞でも横浜は満開とあったので、花見がてらだ。息子も野毛は若いときに来たとか。瀬谷区の社員寮で暮らして、こちらの会社に二十歳前から勤めていた。20年ぶりで来たとか。よく、野毛で仲間たちと飲んだと話していた。

 動物園は孫は初体験。テレビと図鑑でしか見たことのない本物のライオンとキリンには興奮していた。実物を見るのが初めてだから、大喜びだ。青森には動物園がない。だから、生まれてこの方、動物園というのを知らない。孔雀が羽根を広げている。レッサーパンダも可愛い。虎はお休みで、白熊も不在。園内は工事中で、いまは動物さんたちも少し少ない。

 

 そこから歩いて駅まで戻り、電車で石川町まで行く。わたしは二十歳前にこの駅を利用していた。こんなに賑やかではなかった。中華街の裏の四畳半で学生時代に少し暮らしていた。息子とわたしも横浜市民であった。それも同じ二十歳ころにいたなんて。わたしのときはもう半世紀以上も昔なので、こんなに商店街なんかなかった。

 そこから歩いて中華街に入る。ランチはどこにしようか。四川料理は辛いから孫はダメだろう。広東料理なら甘いからいいかと、適当な店に入る。どこも700円から五品七品くらいセットでつくから安い。それと外れがなく、だいたいはどこも美味しい。息子とわたしは七品で980円の定食にする。食べられるかな。孫はちゅるちゅると麺にした。

 食べた後なのに、みんな若い人たちが食べ歩きをしているので、食べたいと、大きな肉まんと鶏肉の大きな手羽先か、揚げたものを食べたいと、食べながら歩いて山下公園へ。

 そこもすごい人で、平日でも外国人観光客だけでなく、いつもそうだが、修学旅行の生徒たちで混んでいる。ツアーも来ていて、みなさん写真を撮っている。ベンチで日向ぼっこ。温かい。大型のクルーズ船はいない。大桟橋にベイブリッジ。氷川丸の真ん前で写真。孫はスナック菓子を食べてこぼしたら、鳩たちが群がる。それもまた面白いらしい。

 そこから歩いて、フランス山に上るところにあるメガドンキーで買い物してゆく。息子の若いときもあったが、半分もない小さなドンキホーテであったようだ。元町の入口もあり、そこはいま店も少し閉めて、どうも繁栄の裏には暗い影もある。

 

 お買い得だけ買って帰る。もう歩き疲れたと、孫は座り込んで泣く。息子も普段は運動不足で疲れたと。わたしのほうが歩いている。息子も万歩計をiPhoneに入れているが、見たら17000歩もすでに歩いている。それでは四歳児は泣くだろう。抱っこおんぶが始まり、足が痛いよう、もう歩けないと。地下鉄の駅がすぐ近くなので、そこまで歩かせた。地下鉄も初めての経験で、トンネルばかりに驚く。乗ったことがない。どこまで行っても暗いんだ。不思議そうに暗い車窓を眺めていた。

 横浜駅からは東海道線は遅れもあってホームもすごい人で、電車は座れない満員。孫は床に座ったまま寝ていた。いい体験をしたろう。これからもいろいろと連れて行きたい。体験学習が一番いい。冒険と探検と男の子はそれが好きなのだ。