マーケットを戦略的に理解する読書術 〜マーケティング会社の経営者視点で読書してみた〜


BFI安田さんのanotekonoteというwebマガジンに、GlobalPicksと称して「ビジネスに転用できそうな英語ソースの記事紹介」をしていますが、現行の週1回投稿からさらに増やすべく、Spin-Off的にこちらでもたまに書くことにしました。
そもそもこちらが自社サイトですしw

で、anotekonoteではweb記事をソースにすることが多いですが、ここでは、ソースは「王道の英語news(いわゆるニュース)」にしようと思います。
FT(Financial Times)とかWSJ(The Wall Street Journal)とかBBCとか。

今回はこれ。

source:FT(Financial Times)
article:Business Book of the Year Award 2019 — the shortlist
2019年のビジネス書大賞(候補リスト)



FT紙選出の「2019年ビジネス書トップリスト」は下記の通りとなりました。

よって、そっくりそのまま下記タイトルが2020年に日本のビジネス書ランキングの上位に名を連ねることとなりそうです。

ざっくりと、FTの原文からサマっておきます。なお、(カッコ内)の邦題は僕がテキトーにつけた仮タイトルですので、、、。

The Age of Surveillance Capitalism(監視資本主義の時代)
about the implications of how Google, Facebook, and Microsoft treat our personal data
GAFAが市民のパーソナルデータをどのように扱っているか?

Invisible Women(見えざる女性)
on how designers and developers have persistently excluded or played down women in the data they use
いかにデザイナーや開発者が、設計のベースとなるデータの中から、女性のデータを軽視し続けてきたのか?

Kochland(コーク帝国)
on the history and influence of Koch Industries
億万長者のコーク兄弟がいかに今の地位を築いたか?

The Man Who Solved the Market(市場を解読した男)
a narrative biography of Jim Simons, the secretive founder of quant fund Renaissance Technologies
ベールに包まれたファンドであるルネッサンステクノロジー創始者、Jim Simonsの伝記

The Third Pillar(3つめの支柱)
a broad prescription for reform of capitalism
資本主義を救済するための処方箋

Range(レンジ)
which makes the case for generalists in a world of increasing specialisation.
スペシャリスト偏重型の世界の中で、いかにジェネラリストが重要か?

The Age of Surveillance Capitalism 監視資本主義の時代
Invisible Women 見えざる女性
The Third Pillar 3つめの支柱
Range レンジ


あたりは日本のビジネス書として馴染みそうですし、このあたりのキーワードがどんどん使われてくることでしょう。

時代の要請として、もっともビジネスに活かせそうなのは
「Invisible Women(見えざる女性)」
だと思います。

この「Invisible Women(見えざる女性)」について、US amazonのサマリーを見ておきましょう。

Data is fundamental to the modern world. From economic development to healthcare, to education and public policy, we rely on numbers to allocate resources and make crucial decisions. But because so much data fails to take into account gender, because it treats men as the default and women as atypical, bias and discrimination are baked into our systems. And women pay tremendous costs for this bias, in time, money, and often with their lives.

現代社会ではデータが重要だ。
経済から健康から教育から政策まで、数字を根拠にして、資源配分したり重要な意思決定をする。でも、多くのデータがgender(性別)を考慮に入れずに、「男性をdefault(デフォルト)」として扱い、「女性をatypical(非典型)」として扱うので、bias(バイアス)とdiscrimination(差別)が私達の社会システムに刷り込まれている。こうしたバイアスのために、女性は「時間的」「金銭的」さらには「いのち」に対して多大なコストを求められる。

USのamazonのいくつかの書評から類推するに
あらゆる現代社会のデザインや設計のベースは「一般的な男性」のデータを活用して設計されているので、基本的に「女性は様々な不利」を被っている、という事例がたくさんあるので「なぜそうなってしまうのか?」を解き明かしている、という感じでしょうか。
表面的な女性差別ではなく、社会にシステムとして刷り込まれた根本的な「女性軽視」というか「男性基準」についての話、と思われます。

「思われます」というのも、この本は未邦訳で英語版しかないので読んでません(笑)
基本、newsとかcolumnとかredditとかは普通に英語で読みますが、本は流石に日本語で読みたいのです。体感値的に時間が3倍くらいかかるし、60%くらいしか頭に入ってこないので(汗)

20代の半分近くをイギリスで過ごし、当時それこそ四六時中英語で生活していたわけですが、当時も今も英語には「不自由」しています。よく留学経験者が「日常生活では英語に不自由しない」と言ってるのを聞きますが、あれは全然共感できません。

映画観るときも、よく「字幕みてないでしょ?」と言われますがとんでもない。「字幕無いとツライ」です。特に米語の英語だとだと60%くらいしか頭に入ってこないので、字幕無いと「映画の1番面白い細かい部分」が全然入ってこないのです。

小声でそっと、ですが
海外生活経験者が「字幕必要ない」って言っている90%は実は「ウソ」じゃない?
ああ、言ってしまった。。。

控えめに言ってもそれは「英語できます自分!アピール」です。絶対字幕に頼ってますから、もしそんな風にマウントされたら、そっと流してあげましょう。
なお、某超有名オンライン予備校の英語講師の知人(というか後輩)が以前

「映画は、実は吹き替え版を好んで観てます。その方が分かりやすくないですか?(笑)」

と、ぶっちゃけてくれました。

めっちゃわかります、それ。

もとい。
2020年のビジネス書のコーナーには、Invisible Womanが圧倒的に平積みされるでしょう。
邦訳は「見えざる女性」だと普通すぎるので、「黙殺される女性たち」にしておきましょうか。

HNY2020

お気付きの通り、新年なので「何か」を再開してみる、という定番のアレとしてのblogでした(笑)

 

 

最新のGlobalPicksは↓

さて、GWに入ってようやく落ち着いたので、読んだ本を紹介しながら、マーケティング的視点を入れていこうと思います。

不死身の特攻兵〜軍神はなぜ上官に反抗したか〜 著者 鴻上尚史氏

 

 


どんな本だったかという部分は、amazonの「内容紹介」に委ねます(笑)
—amazonより

 

太平洋戦争の末期に実施された”特別攻撃隊”。戦死を前提とする攻撃によって、若者たちが命を落としていった。
だが、陸軍第一回の特攻から計9回の出撃をし、9回生還した特攻兵がいた。その特攻兵、佐々木友次氏は、戦後の日本を生き抜き2016年2月に亡くなった。
鴻上尚史氏が生前の佐々木氏本人へインタビュー。
飛行機がただ好きだった男が、なぜ、軍では絶対である上官の命令に背き、命の尊厳を守りぬけたのか。
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数年前に読んだ「永遠のゼロ(小説)」しかり、この「不死身の特攻兵(インタビュー)」しかり、戦時中に「特攻」を命じられた若者の物語は、気持ちを揺さぶられますね。めちゃくちゃ面白かったですよ。


さて、マーケティング界隈では、一般の消費者を語る時に「世の中の動きやトレンド」について言及することがあり、よく引き合いに出せれるコトバとして、『世間』『社会』があります。

 

得てしてこれらの2つのコトバが、同じ意味合いで、同じコンテクストで使われることが多いのですが、本書での著者の解釈には僕らも耳を傾けるべきだと思いました。
『世間』『社会』を次のように、分けて考えています。2つは別物だ、と。


—本文より(文脈に沿って少し書き加えています)
『世間』とは「現在、および将来において何らかの直接的な利害・人間関係がある、もしくは生まれる可能性ある人達」のことで、職場やクラス、サークル、交流のある隣近所、公園でいつも会うママ友などが、それに当たります。
『社会』とは「現在も将来も直接関係を生まない人達」のことで、道ですれ違った人や、居酒屋で隣のテーブルで飲んでいる人や、お店の知らない店員などのことです。



自分の周囲にいる人すら『世間』『社会』に分かれる。分岐点は、直接の利害関係を生むか否か、という論考です。

世の中は、自分→家族→『世間』→身近な『社会』→遠い『社会』という風に広がる、ということですね。

よく、「日本はムラ社会である」と言われ、狭いコミュニティの中でのコンセンサスを重視するのが日本人の国民性である、と解説されますよね。


この場合のムラ社会とは、実は『世間』のことであって、『社会』のことではないということですね。日本人は『世間』のことを取り分け気にしがちな民族だ、ということです。


僕たち日本人は、数十年前の「NOと言えない日本人」という大ベストセラー以降、「NOと言える欧米人」との違いを、ネガティブな文脈で明示され続けてきました。

それは、ともすると「意思の弱さの象徴」として。


しかし、このように考えると、「日本人がNOを言わない対象は『社会』ではなく『世間』である」ということに気づきます。

日本人は必ずしも『社会』に対してNOと言えない人達ではないのです。

直接関係性のある『世間』に対してはNOと言わないよ、ということですね。
対して欧米人は『世間』に対しても容易にNOを突きつけるのだ、と。

 

 

特攻兵にしてみたら、所属する軍の上官や郷里の同胞や部隊の同僚は『世間』で、他の部隊に所属している兵士や上官は『社会』ということですね。日本人全体も当然『社会』です。

 

特攻を命じられた時、『社会』に対してはNOと言えても、『世間』に対してはNOと言えなかったわけですね。

もちろん、本当は特攻なんてNOと言いたかったのに。



先日、タレントの山口さんが公開謝罪していましたが「被害者個人と世間に対して謝罪する」という内容でした。

ここで彼が意識していた「世間」とは、本質的には『世間』ではなく『社会』のことです。

1タレントからの『社会』に対する謝罪は、曖昧だし効果的ではありません。

 

この場面を切り抜けるために必要だったストーリーは、「被害者個人」及び、クライアント・事務所・他メンバー・ファンという『世間』への謝罪だったんだと思います。

 

対して、今回の謝罪は、被害者個人と『社会』全体に対する謝罪の中で、定型的・お約束的に『世間』への謝罪を付け加えた形だったのではないでしょうか。

繰り返しますが「世間に申し訳ない」の"世間"は『世間』ではありません。『社会』です。


ゆえに、100点の謝罪じゃないという「いちゃもん」を『社会』から突きつけられます。

被害者個人と『世間』に大変なご迷惑をおかけしたことを『社会』に対して公開謝罪の形でご報告する、というパフォーマンスが必要だったわけです。
なお、この場合『社会』に対して謝罪すべきは、管理者である事務所だったと思います。

タレント本人が「被害者個人」と『世間』に謝罪し、事務所の経営陣が『世間を含めた社会』に対して公開謝罪すれば「いちゃもん」は少なく終わったと思います。

※と知ったかぶりしてみましたが、マーケティング文脈上の1つの「解釈」ですので(笑)正解かどうかは分かりません。

そして、個人的には、大手既成メディアのこうした「いちゃもん」には、毎度毎度反吐が出る思いです。


なお、多数の特攻兵にとって、特攻を命ずる上官と、共に特攻に出る仲間は『世間』ですから、この『世間』に対しては「特攻なんて行きたくない」とNOが言えなかったわけです。

対して、本著に出てくる「不死身の特攻兵」は、『世間』に対してもNOと言って、「特攻に行っても何度も生きて帰ってきました」という物語です。繰り返しますが、めちゃくちゃ面白い本です。

ということで、『世間』『社会』の違いについて、著者の論考を踏まえて考えてみました。

この本からは、『世間』『社会』という概念をPick Upしましたが、これ以外にも、『集団我』という概念が論じられているので、これは次回考えたいと思います。

 

 

 

(ご案内)他のメディアでの直近のPost

BFIマガジン

http://brand-farmers.jp/blog/gp_005/

→「トレーサビリティ」について

 

CSPサイト

http://citation-sp.daa.jp/archives/105

→「仮想通貨」について

 

 

 

Brand Farmers Inc.webマガジン「anotekonote」で、小出のもう1つのBlog(GlobalPicks)の兄弟企画みたいな連載をしています。

http://citation-sp.daa.jp(シタシオン ストラテジックパートナーズのHP内にあります)


毎週土曜に配信されますのでよろしくお願いします。
[http://brand-farmers.jp/blog/]

 

Business News Daily紙が選ぶ「2018年版 きっとうまくいくsmall business トップ12」を紐解いてみる(第3回)
が、配信されました。
http://brand-farmers.jp/blog/gp_003/

 

 

3回目の今回は、アメリカで流行っているフードトラックを、日本で「どのような形で展開すればビジネス化できるそうか?」を考えています。
安田佳生さんのアイデアも面白いですので時間あれば見てみてください。

 

先週から、安田佳生さん達がやっているwebマガジンで、連載型のコラムを書き始めました。
外国メディア発信の外国語情報を日本国内のビジネスにどう活かすか?みたいなテーマでやっていこう、ということになっています。

(BFI Magazine/ anote konote) GlobalPicks 〜海外の情報を読み解いて、ビジネスに付加価値を投薬する方法〜

過去の経緯的には、このBlogもなかなかpostできない僕ですけど、「誰かと約束している」とか「誰かに依頼されている」とか「誰かに迷惑をかける」みたいな、制約条件があれば、きっと続けられる、ということをここで示してみたいと思います(笑)

なお、この前ご紹介したシタシオングループの新会社(シタシオン ストラテジックパートナーズ)でも、このコラムと同タイトルで少々連動させていくつもりですので、機会があればのぞいてみてください。

(CSP Blog/ GlobalPicks 〜海外の情報を読み解いて、ビジネスに付加価値を投薬する方法〜

先日、シタシオンジャパンの体制変更および、私の社長退任についてご報告しました。

引き続き会長職に専念することでコミットし続けることもご報告した通りです。

追加となりますが、グループ経営を、引き続き万全にする手立ての一環として、シタシオングループの新しい業態の会社を設立しましたので、こちらもご報告です。

株式会社シタシオン ストラテジックパートナーズ
[http://www.citation-sp.co.jp]

シタシオンジャパンの取締役陣がそのまま発起人となって登記しました。


「よりコンサルティング部分に専念すること」「マーケティングだけではなく、HRや財務もコンサルティング対象とすること」に存在意義を持たせようと思います。

しばらくは、私が代表を務めるつもりです。シタシオンジャパンと連携しながらうまく存在価値を高めたいと思います。

コンサルティング業を中心に置いているのですが、もう一つ注力しようとしているのが、「高付加価値情報提供サービス」です。

これについては、別途ご案内したいと思います。