小松博士のエコロジーブログ
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行動科学マネジメント

石田淳氏の著した行動科学マネジメントについての本を何冊か読んだ。

何れも、行動科学のビジネスへの応用について分かりやすく説明してある好著だった。

近年、科学とビジネスとの関連について、ビジネスの側からも関心が強まっていると感じる。

こうした動きは、これまでアメリカが中心だったが、日本でもいよいよ本格化するかもしれない。

面白くなりそうな期待大。

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自爆アリ

マレーシアには、敵に襲われると体内に溜めてある揮発性成分を爆発させ、自爆するアリが存在します。

日本のアリ研究の第一人者である久保田政雄氏のウェブサイトに紹介されています。

「ありとあらゆるアリの話」

http://ant.edb.miyakyo-u.ac.jp/BJ/antStory/AAAnt4.html#5

(このサイトは、自爆アリ以外にも軍隊アリや農業をするアリなど、ユニークなアリの種類をいろいろと紹介していて、面白いです。お勧めです。)


自爆したアリは、腹が裂けて、においをまき散らし、敵の襲来を仲間に知らせます。

自分の命を犠牲にして、巣全体を守るというわけです。


まるで自爆テロや旧日本軍の特攻隊を連想させますが、

こうした自己犠牲的行動が、いったいなぜ進化できたのでしょうか? 

考えると不思議です。

自然選択説によれば、個体の生存・繁殖に寄与する性質は進化するが、そうでない性質は淘汰され、集団中から消失するはずです。

※ここでいう進化とは、生物の集団中に出現した新たな性質が世代を経るにつれて頻度を増やして、ついには集団中に固定する(頻度100%になる)現象を意味します。


こうした自己犠牲的な性質(利他的性質)がなぜ進化できたのか?

生物学界の長年の謎だったのですが、その謎が20世紀後半に解明されます。


(続きます)

美味しいお茶が飲めるのは昆虫のおかげ

多くの植物は昆虫による食害を受けたり、病原菌に感染したりすると、生体防御物質を作り出して、自分の身を守ろうとします。


植物は外敵に襲われても、その場から移動して逃げることができません。

そのため植物は、外敵から身を守る生体防御機構を進化の過程でさまざまに発達させてきました。


そうした生体防御に関連して植物が生産する物質のなかには、人間にとって有用なものがあります。

人間はそうした植物由来の有用物質を薬や嗜好品として昔から利用してきました。


いわば、私たちが植物由来の有用物質を利用できるのは、昆虫と植物の食う食われるの関係を通した進化のおかげです。


一つの例を紹介しましょう。


チャは昆虫であるヨコバイの一種(チャノミドリヒメヨコバイ)に食害されると、ファイトアレキシンの一種のジオールという物質を生成します。

この物質にはヨコバイの天敵であるクモを誘引する作用があります[1]。

誘引したクモにヨコバイを捕食してもらうことで、チャは食害を減らすことができます。


このジオールという物質は、製茶工程中の加熱によりホートリエノールという物質に変換されます。

ホートリエノールはよい香りがするため、美味しいお茶ができるそうです。


「東方美人茶」は上記のホートリエノールに由来する「蜜香」という香りをもちます[2]。

これは、あえてヨコバイに食害された茶葉を用いているからです。

また、ダージリンティーも、ヨコバイに食害された茶葉を用いることで香りをよくしています。


美味しいお茶が飲めるのも、昆虫と植物の共進化のおかげというわけですね。


【参考文献】

[1] Chen ZM,Xu N,Han BY, Zhao DX:茶葉科学,23(増),38-45 (2003)

[2] Kinoshita T,Mizutani M,Shimizu B,Tsai HT,Chen YL, Sakata K:Proceeding of 2004 International Conference on O-CHA (tea) Culture and Science,161-164 (2005)