朝、散歩していると何処からともなく金木犀の甘い香りが風に乗って飛んできた。今年は季節のめぐりがいつもの年より少し早いような気がする。
ここ数日、夢中になって読んだ本がある。たまたまブックオフで買ったものだ。その本の題名は「火怨-北の燿星アテルイ」(高橋克彦著、講談社文庫)である。西暦700年代の後半に起きたエミシ(東北地方北部の住人)と大和朝廷の数度にわたる戦いを小説にしたものである。主人公はアテルイとモレ、そして敵将の征夷大将軍・坂上田村麻呂。
当時のエミシは人間扱いされていなかった。獣、鬼扱いだった。この屈辱を晴らし、人間としての尊厳を回復するため、アテルイとモレを中心としたエミシ軍は勇敢にも朝廷軍に立ち向かった。最後は歴史の事実が示すとおり、征夷大将軍・坂上田村麻呂の前に屈することとなるが、兵の数的に不利なエミシ軍が奇策を凝らし圧倒的な兵力を誇る朝廷軍に挑んでいく姿に感動した。
私は北三陸の出身である。私の遠い祖先はエミシだったかもしれない。そういう事情もあり、自然とアテルイとモレに共感することとなる。読んでいて何度も目頭が熱くなった。
それにしても高橋克彦という作家は凄い。流石に直木賞作家である。こんなにも他人を感度させる小説を書けるなんて!!この本をたまたま買ってよかった。