明日の法曹を育てよう!! ~司法修習生給費制維持活動ブログ~
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新しい「給費制」創設のニュースです!

おひさりぶりです。
給費制維持活動弁護士改め、給費制実現活動弁護士です。

 

深夜ですが、張り切っています。

 

https://www.bengo4.com/internet/n_5491/

 

新しい「給費制」創設のニュースです!
 

非常に喜ばしいですが、裁判所法が実際に改正されるまで油断はできません!

 

ご支援、ご助力をお願いいたします!

 

昨日のシンポは盛会でした!

こんにちは。
今日もはりきっています。

昨日、京都弁護士会で開催したシンポジウム「司法修習生に対する経済的支援を考える」ですが、非常に盛会でした。
出席者は約120名。
市議や府議の方にもお越しいただけました。
大勢の方にお越しいただき、ありがとうございました!

河野真樹さんには、司法制度改革の全体の流れを踏まえて、給費制と貸与性のの問題をコンパクトかつ鋭く講演いただきました。

また、ビギナーズネットの萱野代表、給費制廃止違憲訴訟事務局の野口弁護士、日弁連の釜井弁護士にもそれぞれのお立場から、個人的な思いも込めつつ、法曹の公益性について語っていただきました。

パネルディスカッションの総括としては、個人的には、概ね次のようになるのではないかと思っています。

・現在、経済的負担から法曹志望者が減少している。
 給費制の復活又は経済的支援策の実現は、経済的負担の軽減策となる。
 ただ、もし弁護士業界の収支が回復したらどうなるのか。
 「貸与制でもなんとかやっていけるならいいじゃないか。」という話になってしまえば、それまでのことになってしまう。

・経済的負担の軽減以外に、法曹の公共的性格や修習の意義から、給費制の復活又は経済的支援の実現のための論拠を確認する必要がある。
 有為な法曹を育成し適切な司法サービスを提供することは、国民の利益となる。

 給費は、法曹の公共的性格を前提としている象徴的な制度である。
 弁護士の仕事の公共的性格についての認識は弁護士毎に異なるが、国民に育ててもらったという経験は、法曹の公共心や「恩返し」の気持ちを生み出すことになる。
 こうした言葉で説明しにくい給費制の隠れた意義を確認していくことも大事ではないか。


今後の活動に生かしていきたいと思っています。

2015/9/2シンポジウム「司法修習生に対する経済的支援を考える」のご案内

お久しぶりです。
久々の投稿ではりきっております。

さて、この度、京都弁護士会にて、2015年9月2日(水)にシンポジウム「司法修習生に対する経済的支援を考える」を開催いたします!

基調講演では法律新聞元編集長・司法ウォッチャーの河野真樹さんにご講演いただきます。
河野さんはこちらのブログでも大変有名です。
元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記

パネルディスカッションでも有意義な議論ができるものと期待しております。

参加無料、事前申込不要です。

ロー生などの法曹志望者の皆さんにおかれましても、ぜひご参加いただきますようお願いします。

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2015/9/2シンポジウム「司法修習生に対する経済的支援を考える」のご案内

●内容
・基調講演
  法律新聞元編集長・司法ウォッチャー 河野 真樹 氏
・パネルディスカッション
  「修習制度の意義とは?」「あるべき法曹の姿とは?」

●日時
 2015年9月2日(水)午後6時から

●場所
 京都弁護士会館(京都市中京区富小路通丸太町下ル)

●主催
 京都弁護士会

●共催
 日本弁護士連合会
 近畿弁護士会連合会
 大阪弁護士会
 兵庫県弁護士会
 奈良弁護士会
 滋賀弁護士会
 和歌山弁護士会
 ビギナーズ・ネット
 ビギナーズ・ネット関西

●問い合わせ先
 京都弁護士会総務・会計課 電話番号:075-231-2336

京都弁護士会HPでの告知はコチラ

ビギナーズ・ネット Blog

直近の給費制復活活動については、下記のブログで更新されています。

是非ご覧ください!


ビギナーズ・ネット Blog

http://beginners-net.jugem.jp/

67期司法修習予定者の皆さんへ ~ 貸与制とは何か~

おしさしぶりです、給費制維持活動弁護士です。
はりきっております。

67期司法修習予定者の皆さん、こんにちは。
司法試験に合格し、期待に胸をふくらませ、あるいは、不安に胸を痛めながら過ごしておられるのではないでしょうか。
法曹業界については、新人弁護士の就職難等、昨今あまり良い話を聞かないので、不安の気持ちの方が強いのではないでしょうか。

そこで気になるのが貸与制です。
皆さんは、その制度の内容についてちゃんと理解されていますか。

最高裁のサイトを丁寧に読めば見ればわかりますが、以下では例年にならい、司法修習集費用が給費から貸与制に移行したことで生じる不利益や負担について私が考える限りでレクチャーすることにいたします。

なお、制度の内容についての記載が正確ではない場合には適宜修正したいと思いますので、
コメント欄でご指摘くださると助かります。


■貸与制の概要について

まず、貸与制の概要についての説明は、裁判所のHPに掲載されています。
こちらをご覧ください。
http://www.courts.go.jp/saikosai/sihokensyujo/taiyo/index.html

■司法修習生はバイトできません。

今では少ないと思いますが、かつては「貸与制になったらバイトすればええやん」という修習予定者が時々いました。
しかし、司法修習生は修習専念義務が課されており、兼業が禁止されているため、バイトはできません。
この専念義務は裁判所法第67条第2項に明記されています。

なお、兼職禁止については既に緩和されています。
また、兼業禁止についても今年の法曹養成制度検討会議において、可能な限り67期の修習生から義務の緩和をするようにとの意見が出されています。
具体的には「司法修習生が休日等を用いて行う法科大学院における学生指導を始めとする教育活動により収入を得ることを認めることとする」という形での緩和が考えられています。
ただ、まだ実際に兼業禁止が緩和されたという情報には触れていません。

しかし、そもそも修習に専念しながら兼業するヒマはないでしょう。
それにローがない地域(あるいはあっても潰れた地域)だってたくさんありますから、ローでのバイトができない修習生は多くいます。
法曹養成制度検討会議のとりまとめでは、さらなる兼業禁止義務の緩和に言及されていましたが、裁判所や検察庁に出入する修習生には高度の公平性、中立性が担保されなければなりません。
兼業禁止義務の緩和には大きな問題を伴うでしょう。

結局のところ、緩和されたとしても、事実上、司法修習生は兼業禁止となり、1年間の間収入の機会を奪わることになるわけです。
その経済的補償として、貸与制が採用されているということなのですが、なぜ貸与制で経済的な補償が十分なのか、よくわかりません。
兼業禁止による収入の機会逸失の補償は、基本的に給費でなければできないのでは?と思うのですが・・・。

■司法修習生は貸与制では無収入として扱われます。

貸与金はあくまで貸付です。
収入ではありません。

ですから、司法修習生は、マンションを借りるときも、クレジットカードに加入するときでも、申込書や契約書には、自分の収入を「0円」と記載しなければなりません。
逆に、ここで「収入がある」と書いてしまうと、司法修習生としては、禁止されている兼業で収入を得ていることになります。
本当に兼業していたら、罷免されるおそれもありますので、注意しましょう。

無収入であれば、クレジットカードの申込み時の審査で弾かれてしまうかもしれません。
まだ加入していない人で、クレジットカードを使用したい人は、バイトで収入がある今のうちに加入しておきましょう。

また、マンションを借りる場合でも、資力の関係で、物件が見つからなかったり、見つかってもかなり限られた物件となったりしてしまうおそれがあります。
マンションを探す時は、業者に対して、司法研修所のHPの貸与制の説明の記述を印刷して示し、司法修習生には貸与金が支払われ、かつ、その返還はマンション退去後になるということを説明した上で、「無収入でも賃料を支払うことができるので大丈夫だ。」と説明しなければならないこともあるでしょう。
あるいは、過年度の貸与制下の修習生が苦労して入居することができたマンションを前年、前々年の司法修習生に連絡して探し、その物件の後釜に入るようするという方法もありますね。

■貸与制では司法修習生に手当は出ません。

貸与金は給与ではないため、給与を前提とした諸手当は出ません。
住居手当も、通勤手当も、大都市手当も、寒冷地手当も、何も出ません。
出るのは、修習に必要な出張等の旅費だけです(配属地への移動の旅費については後述)。

通勤手当が出ないのは、結構きついです。
裁判所から自転車で通えるところにマンションを借りれればいいのですが、地方裁判所はその地方でも割といい場所にあります。
ですので、その近くのマンションも結構賃料はかかります。

■貸与制では修習費用は自己負担です。

修習費用を貸与金から払うということは、要するに、修習費用は自己負担であるということです。

司法修習生の配属地は、希望通りになるとは限りません。
就職活動の利便性から基本的に大都市部に希望が集中し、その希望が通らなかった人は応募が少なく枠の残る地方庁に配属されます。

今まで住んでいた土地から通えない地裁に配属された場合の、引っ越し費用については65期、66期は自己負担でした。
例えば、大阪から、釧路地裁に配属される場合でもそうです。
但し、法曹養成制度検討会議のとりまとめでは、「分野別実務修習の開始に当たり現居住地から実務修習地への転居を要する者本人について,旅費法に準じて移転料を支給する(実務修習地に関する希望の有無を問わない。)。」とされていますので、67期からは幾ばくかのお金が支給される可能性があります。
ただし、配属地から元いた土地に戻るお金は支給はされないみたいです。

修習中、修習に必要な出張等の旅費だけは、所定の基準で出ます。
きちんと手続を把握し、請求できるものはこまめに請求するようにしましょう。

他の費用は全て自己負担です。
寒冷地に1年だけ配属される場合に、耐寒コート、雪用のブーツ等の寒冷地用の服を買う費用も自己負担です。
今まで実家から通っていた場合に、賃貸マンション暮らしを余儀なくされても、その権利金や賃料も自己負担です。
また、上述のとおり、無収入でマンションを借りるのは困難を伴う可能性が高く、修習開始前にマンションを探すべく、交通費をかけて何度もマンション探しに配属地まで行かなければならないケースもあるようです。
その場合の毎回の交通費はもちろん自己負担です。
あと、実務庁での起案はパソコンで行われますが、パソコンは貸与されないので、ノートパソコンが必要です。
デスクトップしか持っていない人は新たにノートパソコンを購入しなければなりませんが、その購入費用も当然自己負担です。  

お金の点を除けば、実際は住めば都ということも多いのですが、自ら望んで行ったわけでもない地方にいくためだけに、年間の賃料等も含めて100万円くらいかかるケースもあるようです。
ビギナーズネットのブログに過去の一例が載っていたので掲載します。
http://beginners-net.jugem.jp/?eid=256

元々下宿していた人でも初期費用だけで30万円前後かかるようですが、自宅通いだった人が下宿になると初期費用はもっと増えるでしょうね。
ノートパソコン、家具、諸々の費用を加えると50万円を超えるキャッシュが必要な場合もあるでしょう。
家具の購入費用や移動の費用を考慮し家具付きのマンスリーマンションを借りるケースは割とあるようです。

貸与制では、以上のような修習によって生じる費用は、全て自己負担となるということです。

なお、地方の修習生が就活のため都市部にいくための交通費もかかります。
その資金繰りも念頭においておかなければなりません。

■貸与制では、国民健康保険・国民年金が基本です。

司法修習生は、給与は支給されないことになるため、裁判所の共済組合への加入資格はなく、社会保険は、国民健康保険・国民年金になります。

なお、健康保険については、家族が加入している保険制度(企業の健康保険組合等)の被扶養者となっている者については、修習資金の貸与を受けることにより、採用後、「被扶養者」としての認定が取り消され、国民健康保険への加入が必要となる可能性があるとのことです。

また、国民保険についても、被用者年金制度(厚生年金等)の被保険者等として第2号被保険者に該当していた者が、採用に伴い企業等を退職した場合には第1号被保険者又は第3号被保険者への変更が必要となり、また、第3号被保険者であって修習資金の貸与を受ける方は、採用後、被扶養者としての認定が取り消され、第1号被保険者への変更が必要となる可能性があるとのことです。

借金暮しなのに「被扶養者」と認められない可能性があるのは不合理ですね。

社会保障の面で給費制が貸与制になることの不利益は重大です。
例えば、持病を持ち、服薬などで定期的に医療費が必要となる司法修習生にとっては、とても酷な事態になると思います。

■貸与申請には連帯保証人が必要です。

一定の資力要件を備えた自然人2名の連帯保証人、又は、貸金業者であるオリエントコーポレーション(オリコ)の機関保証が必要です。
過年度の修習生には、先に社会人になった妹に自然人保証人をお願いせざるをえず、情けない思いをした方もいらっしゃったようです。

保証人を頼める自然人がいない場合は、機関保証をせざるを得ません。
オリコは、債務整理をするときに割とよく出てくる会社名なので、個人的には心理的になんかイヤな感じがします。

なお、機関保証に関する最高裁とオリコとの契約ではオリコは資力についての審査をするということになっています。
ですが、法曹の養成に関するフォーラムでは、最高裁のオブザーバーは、「原則全員機関保証の審査は通る」と説明していました。
過去どうやら審査で弾かれた方はいらっしゃらなかったようですし、今のところ、機関保証を頼んでも貸与金については信用情報には載らないようです。
もし、オリコの機関保証の審査で弾かれたという人がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。

あと、過年度と貸与申請をしなかった人はだいたい15%程度いたようです。
その中で貸与申請をしなかった理由として多かったのは、連帯保証をお願いせざるを得ない事態を敬遠したというものでした。
司法修習生も就職難だし、弁護士になってからも法曹人口増で先行きが不透明だし、それを考えればいくら貸与金が無利息でも不安だということでしょう。
それに、法律を学ぶ時には、かなり早い段階で「連帯保証人にはなるな」ということを教わります。
(連帯保証人になってはいけない理由については、マンガ「ナニワ金融道」を読むとよくわかります。)
「お金を借りるくらいなら」あるいは「連帯保証人になるくらいなら」ということで、
両親や親族がなけなしのお金を工面してくれた、ということだったようです。

■貸与金は無利息ですが、機関保証の場合2%ピンハネされます。

貸与金には利息がありません。
そのため、使わなくても、借りれるだけ借りて、預金しておいた方が得です。
ただ、修習中は色々と要り様ですので、ほとんどの人は使い切ることになるでしょうね。

なお、「貸与金申請をしない者はお金持ちだからだ。」ということを言う人がいますが、貸与金は無利息なので、借金や保証のリスクに対して心理的負担を感じない程度のお金持ちなら、借りることができる分だけ目一杯借りておいた方が得です。
むしろ、前述のように、貸与金を申請しない理由としては連帯保証の心理的負担を回避するためである場合が多いようであり、上記の主張は誤りだと思います。

自然人の保証人2名をつけない場合には、オリコに機関保証をしてもらうこともできます。
その場合には貸与額の2%が保証料としてピンハネされますので、借りることができる分だけ借りた方が得である、とは言えません。

■貸与金は申請した方がいいのかどうか

貸与金を申請した方がいいのかどうかについてはケースバイケースですが、結局は以下のような点が考慮の対象となると思います。

将来の返還能力に不安がない人は、貸与金は無利息なので、自然人2名を保証人として申請しておいた方が得だとも考えられます。

将来返還する能力に不安があるが、当面の生活費が工面できる場合は申請しなくても構わないとは言えます。
ちなみに、この点については、配属地がどこになるかによっても、必要となる当面の生活費の額は変わってきます。
貸与金の申請は、配属地が決まってから行っても初月の支給に間に合うよう配慮してもらえるようですので、念頭においといてください。
http://www.courts.go.jp/saikosai/sihokensyujo/taiyo/taiyo_faq1/index.html#q2
あと、大学や法科大学院で奨学金を借りている方は、確かそろそろ返還を始めなければならないはずです。
修習生は給料がないので、可能であれば奨学金の返済を猶予してもらう方がよいでしょう。
しかし猶予できないということになれば、修習貸与金から奨学金を返済しなければならなくなりますので、貸与金の申請は必要となるでしょうね。
ただ、そうすると働く前から「借金でもって借金を返す」という資金繰りになってしまうわけですが・・・。

将来返還する能力に不安があり、かつ、当面の生活費が工面できない場合には、貸与金を申請せざるを得ません。
その場合、万一破産するようなことになってしまえば、連帯保証人に対して保証債務の履行を求められることになりますので、家族を連帯保証人にしておくと大変です。
保証料を取られることを覚悟した上で、オリコに機関保証をしてもらった方がリスクヘッジが可能であるとの考え方もあり、それを薦める人もいます。

なお、返還能力については、弁護士の大増員や不況の継続により、弁護士の所得は若手を減少傾向にあると言われており、貸与金の申込の段階で将来予測を一般的に立てることは困難です。
各年度の統計の母集団にばらつきがあるため信用性に欠けるものの、こういうデータもありますのでご参照ください。
http://nensyu-labo.com/sikaku_bengosi.htm
結局、貸与金の申込みの段階での確かな返還能力の有無の判断要素としては、借金を肩代わりしてくれる人がいるかどうか、ということでしょうね。

あとひとつ、平成24年の裁判所法改正により、経済的困窮を理由に貸与金の返還猶予が可能となりました。
連帯保証人に資力があっても返済猶予の申請をすることができるとされていますので、貸与金の返還不能による保証人への求償リスクは軽減されたとは言えます。
破産までしてしまうと、さすがにダメですが。

私が今、修習予定者であれば、貸与金は借りれるだけ借りておき、機関保証にすると思います。
2%の保証料といっても返還開始まで長期の据置期間がありますのでその負担感は少ないですし、その一方で貸し倒れリスクを親族に負担させたくはないからです。
あと、修習終了後、自然人保証人が死んだり行為能力を失う等保証人としての資格を失った場合は
新たに自然人保証人をたてるか機関保証をうけるかしなければなりませんが、機関保証を新たに受けるときはその時に保証料を一括して支払わなければなりません。
15年後まで保証してくれる人、といってもなかなかいませんし、どうせ機関保証を受ける可能性があるのなら、今からそうしておいてもいいかなぁ、と思うわけです。

いずれにせよ、自然人保証人をとるか、機関保証をとるかは、人によりけりでしょうね。

■貸与金の返還は、修習期間終了後5年間据置、10年間の年賦払いです。

貸与金の返還は10年間の年賦なので、基本貸与月額23万円の場合は年に27万6000円を返還することになりますね。

また、貸与金の返還は、原則修習期間終了から5年後からです。
これは、大学→法科大学院→司法修習をストレートに通過したときでも、31~32歳の頃です。
これは、一般的には、結婚したり、子供をもったりして、お金が要り様となる時期と重なってくる時期です。
また、弁護士としては、海外留学を考えたり、事務所を独立をし、又は、独立したての時期です。
結構厳しいタイミングで支払がスタートすることになりますね。

なお、事務所を独立した場合、弁護士は完全に個人事業主ですので、貸与金の返還は売上金からではなく、経費を控除した利益から支払うことになります。
貸与金の返還するには、返還額の数倍の売上が必要であるということです。

以上は、人生設計の中で、きちんと念頭に置いておく必要があります。

あと、最終の支払時期は、修習期間終了から15年後。
その時は若くても40歳を超えることになります。
両親に保証人になってもらっている場合は、連帯保証人の資力要件を欠くこととなっていないか、あるいは、そもそも親が亡くなってしまい、自然人保証人を欠く事態となっている場合が考えられます。
その場合は、新たに自然人保証人を立てるか、それがいないならオリコの機関保証を利用する必要があります(さもなくば、後述する期限の利益の喪失事由に該当することになります。)。

■貸与金の返還は納付日は毎年7月25日です。

貸与金の返還納付日は毎年7月25日。
10年間の年賦払いなので、基本貸与月額23万円の場合は
27万6000円を毎年7月25日に納付する、ということになるはずです。

雇われ人の場合は、「夏季賞与で払え」ってことですね。

一方、個人事業主となっている弁護士の場合には、この時期は、雇用している事務員やイソ弁の賞与の支払い時期や、色々な税金の支払い時期の後となります。
資金繰りが破綻しないように気をつけましょう。

■貸与金には期限の利益の喪失事由が定められています。

貸与金には、期限の利益の喪失事由が色々とあります。
期限の利益を喪失した場合には、請求による喪失の場合は最高裁判所の請求に基づき、当然に喪失する場合は直ちに、貸与金全額を返還しなければなりません。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.courts.go.jp/saikosai/sihokensyujo/taiyo/taiyo_guide2/index.html

「強制執行を受けたとき」や「破産手続開始の決定又は再生手続開始の決定を受けたとき」などが当然に期限の利益を失う事由とされているのは、基本的には理解できます。

ただ、司法修習を修了することができないことが確定した場合(要するに、二回試験に三振してしまった場合)にも、期限の利益が当然に喪失することには要注意です。
二回試験のプレッシャーは増えますね。

あと、留学や海外での仕事等で「被貸与者が3年を超えて本邦外に居住することが確実となったとき」も、期限の利益が当然に喪失します。
「確実となったとき」が具体的にどういうことなのか、また、途中に一時だけでも日本国内に戻ってきたら上記事由に該当しないことになるのか等については、詳しいことは分かりません。
ただ、いずれにせよ、この事由に該当する場合には、繰り上げ返済をしてからでないと海外に行くことができないという事態も考えられます。
海外にうって出ようとする法曹には明らかに障害となりますが、これでは日本の法律家の国際競争力を失わせることになり、司法制度改革の理念に反しているような気がしてなりません。

■貸与金の返還を延滞した場合の延滞利息は14.5%です。

貸与金の返還を延滞した場合の延滞利息は14.5%と定められています。

■貸与金の返還の猶予・免除について

貸与金の返還猶予については、「被貸与者が災害、傷病その他やむを得ない理由により返還が困難となった場合」のほか、平成24年の裁判所法改正(施行日は平成24年11月3日)により、「修習資金の貸与を受けた者について修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるとき」に、返還の期限を猶予することができるとされています。

猶予が認められるのは、以下の場合です。

① 給与所得(俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。)以外の所得を有しない者(以下「給与所得者」という。)については,返還期限前1年間における収入金額(法科大学院における修学のための借入金(配偶者又は3親等内の親族からの借入金を除く。以下「借入金」という。)を当該期間内に返還したときは,その返還額を控除した残額)が300万円以下であること。
② 給与所得者以外の者については,返還期限前1年間における総収入金額(借入金を当該期間内に返還したときは,返還額を控除した残額)から必要経費を控除した額が200万円以下であること。

随分と長くなりましたが、おおむね以上です。

様々な不公平さ、不合理が認められる貸与制ですが、過年度のさまざまな活動により、すこしずつ是正されてきている状況にあります。
ただ、国が修習生に専念義務を課してまで法曹を要請しようとしているのは、司法権の確立のためにそれが必要であるからです。
そこのところを見落とし、「所詮は個人の資格なのだから、自己負担でいいじゃね?」というところに貸与制の基本的な問題があると考えています。

67期の修習予定者の皆さんには、そういった問題意識を持ちながら、修習を過ごしていただきたいと思っています。

京都弁護士会会長声明

こんばんは、給費制維持活動弁護士です。
はりきっています。


京都弁護士会の会長声明をご紹介します。
ぜひご覧ください。




1 政府の法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)は、2013年(平成25年)6月26日、関係閣僚会議に提出する「取りまとめ」を公表し た。また、政府は、同年7月16日、検討会議の意見等を踏まえ、「法曹養成制度改革の推進について」と題する法曹養成制度関係閣僚会議決定(以下「関係閣 僚会議決定」という。)を公表した。
関係閣僚会議決定では、司法修習生に対する経済的支援の在り方について、司法修習費用を貸与制とする前提の検討会議の取りまとめの内容をそのまま是認した。
また、この取りまとめでは、司法修習生に対する具体的な経済的支援施策として、貸与制を前提とした上で、可能な限り第67期司法修習生(本年11月修習開始)から、次の措置を実施すべきであると提言している。
(1)分野別実務修習の開始に当たり現居住地から実務修習地への転居を要する者本人(関係閣僚会議決定においては、「本人」が削除されている)について、旅費法に準じて移転料を支給する(実務修習地に関する希望の有無を問わない。)。
(2)集合修習期間中、司法研修所への入寮を希望する者のうち、通所圏内に住居を有しない者については、入寮できるようにする。
(3)司法修習生の兼業の許可について、法の定める修習専念義務を前提に、その趣旨や司法修習の現状を踏まえ、司法修習生の中立公正性や品位を損 なわないなど司法修習に支障を生じない範囲において従来の運用を緩和する。具体的には、司法修習生が休日等を用いて行う法科大学院における学生指導をはじ めとする教育活動により収入を得ることを認めることとする。

2 しかし、取りまとめ及び関係閣僚会議決定は、そもそも貸与制を前提としている点で不当である。
本来、司法修習生は、進路が不明な法科大学院生と異なり、司法試験合格者から法曹になることを前提に最高裁に採用された者であり、将来、三権分立 の一角たる司法の人的インフラを担うことが予定されている。しかも、それは、将来、弁護士が裁判官、検察官の給源になるとの法曹一元の理念(現在、弁護士 任官の形で具体化)に支えられている。そのため、司法修習生はアルバイト等の兼業が禁止され、修習期間は修習に専念する義務を負うことが当然とされてい た。その代わりとして、修習生の生活の基盤を確保し、身分を安定させるため給与が支給されてきた。
これにより、①司法修習生は経済的理由にかかわらず、修習に専念することができ、法曹の質の向上に大いに資することとなった。②また、国から給与 をもらうことで、修習生は「法曹三者」が国民のための公共的な仕事であることを自覚し、「自分たちは、今後、国の司法制度の一翼を担っていくのだ。」とい う使命の自覚と高い公共心を醸成する機会が得られた。③さらに、裁判官や検察官になる者だけでなく弁護士になる者についても、全く同じ待遇で平等に給与を 支給することは、法曹一元実現に向けての契機になってきたとともに、法曹三者の一体感を醸成し、裁判官、検察官になる者が過度に特権的・官僚的性格を持つ ことを防ぎ、司法の独立を保つ上で効果があった。
すなわち、司法修習は司法制度を担う法曹を育成するための国の根幹をなす制度であり、給費制はそれを経済的に裏付ける重要な制度なのである。司法 修習生の生活費の問題といった単なる個人的利益を図るものではなく、司法修習の実を上げ、社会の人的インフラを整備するという公共の目的のため、給費制が 存在していたのである。
したがって、司法修習費用を私費負担とさせるべきものではない。

3 しかも、検討会議は、約1か月にわたってパブリックコメントを公募したが、3119通もの意見が寄せられ、うち法曹養成課程における経済的支援に関する意見数は2421通にのぼり、その大多数が「司法修習生に対する給費制を復活させるべきである」との内容であった。
しかしながら、検討会議では、給費制復活を求める大多数の意見が無視され、同時にパブリックコメントを考慮しない形で取りまとめ案が提出された。 そして、従前どおり貸与制を前提とする取りまとめが公表されたのである。このような同検討会議の態度は、司法修習の意義を理解せず、公募されたパブリック コメントをないがしろにするものであり、極めて不当である。
そして、検討会議においては、このような大多数の給費制復活の意見を一顧だにせず、貸与制ありきの結論を前提として、旅費の支給や研修所への入寮 配慮、修習専念義務の緩和といった付け焼き刃の施策を論じるにとどまっている。もっとも、研修所への入寮については、入寮希望者が入寮できない場合もある ようである。
旅費の支給だけでは抜本的対策としては不十分であるし、研修所への入寮配慮についても既に行われてきたことである。また、修習専念義務の緩和は、 司法修習の期間が短期化され、充実した修習を行うことが困難となっている現状に照らせば、司法修習の質をより低下させることにつながり、法曹養成の改善策 としては本末転倒のものである。
このような検討結果は、検討会議が司法修習生を取り巻く環境の実情や司法修習・給費制の意義について真に理解しているのか疑問と言わざるを得ない。

4 当会は、貸与制を前提とした取りまとめ及び取りまとめの内容を是認した関係閣僚会議決定に抗議するとともに、公募されたパブリックコメントを 速やかに公表することを求める。また、貸与制は、「給費制は国民の理解が得られない」という理由で導入されたのである。今になって給費制を求めるパブリッ クコメントを無視することは妥当ではない。政府がパブリックコメントの結果を尊重し、司法修習生費用の給費制を復活するよう強く求める次第である。

2013年(平成25年)8月29日

司法修習生の給費制廃止違憲訴訟提起

こんばんは、給費制維持活動弁護士です。
はりきっています。


平成25年8月2日に司法修習生の給費制廃止違憲訴訟が全国4地裁に一斉提訴されました

全国合計で原告は211名。
代理人は463名です。

提訴された地裁は,東京,名古屋,広島,福岡です。

以下の弁護団ホームページには,訴状の要旨の他,提訴当日の動画などもアップされています。

http://kyuhi-sosyou.com/

裁判を通じて,貸与制の不合理さを明らかにするものです。
経済的理由が法曹への道を閉ざすことのないよう,給費制復活の運動も頑張っていきたいと思います!!!


三重弁護士会の会長声明

こんばんは、給費制維持活動弁護士です。
はりきっています。

三重県弁護士会の会長声明をご紹介します。
ぜひご覧ください。


 平成25年6月26日、政府の法曹養成制度検討会議(以下、「検討会議」という。)における取りまとめが公表された。これにより法曹有資格者の活動領域、今後の法曹人口、法曹養成制度の在り方などについての検討結果が明らかとなった。
 また、同年7月16日、政府は検討会議の取りまとめの内容を是認し、「法曹養成制度改革の推進について」と題する法曹養成制度関係閣僚会議決定(以下「関係閣僚会議決定」という。)を公表した。
 検討会議は、法曹人口について「法曹に対する需要は今後も増加していくことが予想され、全体として法曹人口を引き続き増加させる必要がある」とし、司法修習制度については司法修習生への貸与制を前提とした上での経済的支援措置を講じることを提言する。
 しかし、以下に述べるとおり、検討会議の上記取りまとめ及び関係閣僚会議決定は、法曹志願者の減少や司法修習生の就職難、新人弁護士のOJTの機会の不足などの様々な問題への対応としては極めて不十分と言わざるを得ない。特に緊急性を要すると思われる法曹人口の抑制と司法修習生の給費制復活に絞って言及する。

第1 今後の法曹人口の在り方について
 検討会議は、司法試験年間合格者数3000人という数値目標は現実性を欠くとしつつも、法曹有資格者の活動領域の拡大を図りつつ全体として法曹人口を引き続き増加させる必要があるとし、関係閣僚会議決定は数値目標を立てないとしたうえで法曹人口についての必要な調査を行い、その結果を2年以内に公表するとしている。
 しかし、諸問題の解決のためには、今更法曹人口についての調査を行う必要性は乏しく、まず大幅な司法試験合格者数の減少が不可欠である。
 法曹人口、特に弁護士数の急増にもかかわらず、民事訴訟事件数や法律相談件数は増えず、法曹による法廷以外の分野への進出も限定的である。他方、法曹志願者にとって法科大学院の履修や司法修習に要する時間的・経済的負担は極めて大きいものとなっている。その結果、学生の法学部離れ、極端な入学者の減少による法科大学院の募集停止の続出、司法修習辞退者の増加、著しい就職難など法曹養成をめぐる負の連鎖がますます深刻化し、法曹志願者の減少傾向に歯止めがかからない事態に陥っている。
 三権分立の一翼である司法の担い手となる法曹から有為な人材が離れていく現状は深刻であり、速やかに抜本的な法曹人口対策を講じる必要がある。
 検討会議は、法曹の活動領域の拡大を図る方策を提案するが、新たな法曹養成制度開始以来10年間で検討会議が提案するような活動領域拡大にめざましい点はさしてなく、深刻な就職難が生じている実情を踏まえれば、法曹人口の増加分を吸収できるような活動領域が拡大することは想定し難い。また、数値目標を立てないで法曹人口についての必要な調査を行い、その結果を2年以内に公表するとの関係閣僚会議決定は、現状認識が甘く、事態の切迫性を正解していないというべきである。
 以上のとおり、法曹人口の急増による弊害は看過できない状態となっており、法曹需要の拡大も当初の想定ほどではなく、弁護士の就職難が深刻となっている現在、法曹人口の増加を堅持すべき理由はもはや存在しない。
 以上より、適正な法曹人口の在り方に関しては、法曹人口急増の政策を転換すべきであり、具体的には司法試験合格者数を1000人以下に減少させるという対策を速やかに講じるべきである。

第2 司法修習生の経済的支援の在り方について
検討会議及び関係閣僚会議決定は、司法修習生の経済的支援の在り方について「貸与制」を前提とし、弥縫策に終始している。
しかし、本年4月、5月に実施されたパブリックコメント(以下「パブコメ」という。)には1ヶ月の間に3119通もの意見が寄せられ、うち法曹養成課程における経済的支援に関する意見は2421通にも達し、その大多数が「司法修習生に対する給費制を復活させるべきである。」との内容であった。また、検討会議では複数の委員から給費制を復活すべきとの意見が出された。
ところが、検討会議は、給費制復活が妥当であるとの大多数のパブコメに真摯に向き合うことなく座長試案をもとに議論を進め、ほとんど訂正を加えることなく、取りまとめに至った。これはパブコメという手続の趣旨を没却し、幅広い国民の声を軽視するものであり看過することはできない。
そもそも司法修習制度は、三権の一翼を担う司法における人材養成の根幹をなすものであるから、その制度負担は本来私費負担とすべきものではない。
現在の貸与制を前提とした司法修習制度は、司法修習時における債務負担の重圧が法曹を志す者の意欲を減退させ、就職難とも相まって、法曹志願者減少の大きな要因ともなっている。
また、検討会議及び関係閣僚会議決定は経済的支援としては修習専念義務の緩和により一定の場合には兼業を許可することなどの措置を提案する。
 しかし、兼業を認め修習専念義務を緩和することは、フルタイムで密度の濃い修習に励む司法修習生にとって何ら支援策とはならない。そればかりか、修習の実を上げるために必要不可欠な修習専念義務を骨抜きにし、司法修習の意義を損なうおそれがある。
良質な法曹を養成するためには、司法修習生に対する給費制の復活が必要不可欠である。

 以上より、司法修習生の経済的支援、法曹人口・司法試験合格者数の2点に対する検討会議の取りまとめ及び関係閣僚会議決定は極めて問題が大きく、当会はこれに抗議するとともに、司法試験合格者数を速やかに1000人以下とすること及び司法修習生に対する給費制を復活させることを速やかに実現するよう強く求める。

      平成25年7月26日

                      三重弁護士会
                      会長 向  山  富  雄

山口県弁護士会の法曹養成に関する会長声明

こんばんは、給費制維持活動弁護士です。
はりきっています。

山口県弁護士会の会長声明をご紹介します。
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平成25年7月19日


山口県弁護士会 会長 大田明登

  山口県弁護士会は、先日、公表された政府の法曹養成制度検討会議の「最終取りまとめ」を受けて、以下のとおり、会長声明を発表する。



第1 声明の趣旨

1 司法試験合格者数を当面1000名程度に減少させ、その間に全国的な需要調査を実施すること。

2 司法試験の受験資格から「法科大学院課程修了」の要件を削除すること。

3 受験回数制限を完全に撤廃すること。

4 司法修習生に対する給与の支払いを復活させること。

5 司法試験の受験資格から「法科大学院課程修了」の要件を削除するまでの間、予備試験合格者と法科大学院修了者との間の司法試験合格率が同程度になるまで予備試験合格者を増加させて、司法試験受験の機会を与えること。

を国に対して要望する。




第2 声明の理由

平成25年6月26日、政府の法曹養成制度検討会議は、「最終取りまとめ」を発表した(以下「最終取りまとめ」という。)。

しかし、「最終取りまとめ」は、近年の司法制度改革を見直す方向性を打ち出したが、合格者数を含む司法試験制度、法科大学院制度及び司法修習に対する給費制の面で特に不十分である。


1 司法試験合格者数を当面1000名程度に減少させるべきこと

(1)年間合格者数3000人の数値目標に実証性がないこと

司法改革が当初目指した、司法試験の年間合格者数3000人の数値目標は、法曹有資格者の活動領域の拡大を前提としていた。しかし、その前提としていた活動領域の拡大は、需要調査も経ない何ら実証性のないものであった。

この3000人の数値目標に関し、中国地方弁護士会連合会は、早期から実証性がないことを問題視し、平成19年10月12日の第61回中国地方弁護士大会において、「司法試験の合格者数を適正水準まで削減するよう求める決議」を行い、国に対して、法曹に対する需要の予測と司法試験の合格水準の検証を求めた。それにもかかわらず、需要調査が行われないまま、司法試験合格者の増加は続いた。

この度の「最終とりまとめ」に至り、ようやく司法試験年間合格者数3000人の数値目標は「現実性を欠く」とされたが、反面で「法曹に対する需要は今後も増加していくことが予想され」、「全体として法曹人口を引き続き増加させる必要があることに変わりはない」との展望が述べられている。しかし、この展望も依然として具体的な需要調査を経ない何ら実証性のないものである。

(2)訴訟事件数に基づく適正な法曹人口の検証

司法試験合格者数の数値目標の設定については、具体的な需要を踏まえた検討をすべきである。そして、その検討方法の一つとして弁護士数の増減と訴訟事件数の増減を比較するという方法が考えられるが、その検討結果は以下のとおりであり、法曹人口をこれ以上増加させる必要性はないという結論を導くものとなっている。

 ア 弁護士数の増加と全国的な事件数の減少

日本全体の弁護士数(日本弁護士連合会会員数)は、平成12年4月1日時点では1万7126人であったが、平成24年4月1日には3万2088人にまで増加した。

他方、司法統計によると、全裁判所(最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所)に新たに係属した民事・行政事件の件数は、平成12年の305万1709件から、平成23年には198万5298件に減少している。また、全裁判所に新たに係属した刑事事件のうち略式事件を除く訴訟事件の被告人数は、平成12年の11万9105人から、平成23年には10万0846人に減少している。

このような全国的な訴訟事件数の減少傾向からすれば、法曹人口を増加させる必要性は乏しい。

 イ 山口県における弁護士数の増加と事件数の減少

当会においても、平成12年4月1日時点での会員数(弁護士数)は67人であったが、平成24年4月1日には133人、平成25年4月1日には146人にまで増加した。

しかし、訴訟事件の減少は、全国傾向と同様である。司法統計によれば、山口県内の地方裁判所及び簡易裁判所に新たに係属した民事・行政事件の事件数は、平成12年の4万4681件から、平成23年には1万7688件に減少している。また、山口県内の地方裁判所及び簡易裁判所に新たに係属した刑事事件のうち略式事件を除く訴訟事件の被告人数は、平成12年の1364人から、平成23年には820人に減少している。

以上のとおり、山口県内の状況としても、弁護士数の増加を必要とするだけの訴訟事件数の拡大はなく、むしろ減少している。また、弁護士の増加を必要とするだけの活動領域が、訴訟事件以外の分野で大きく拡大しているという事実もない。

 ウ 弁護士過疎地域の解消

司法制度改革は、国民の法的サービスに対する利便性の向上の観点、すなわち弁護士過疎の解消も目的とされていた。

この点、いわゆる「弁護士ゼロ地域」は既に解消されており、国民の法的サービスに対する利便性は向上している。

山口県内でも、平成25年4月1日現在、山口・防府圏域(人口31万3924人)で51人、萩・長門・阿武圏域(人口10万9799人)で4人、宇部・小野田・美祢圏域(人口26万7484人)で11人、下関圏域(人口29万3347人)で40人、岩国・玖珂圏域(人口16万1037人)で12人、柳井・熊毛郡・大島郡圏域(人口9万3770人)で3人、周南・下松・光圏域(人口26万6524人)で25人の弁護士がそれぞれ活動しており、山口県内のどの圏域でも弁護士への需要に対して十分に応えられる体制が整っている。

(3)法曹人口が供給過剰の状態となっていること

司法試験の合格者数の増加に伴って、司法修習を終了して法律事務所への就職を希望する者は、累積的に増加している。法務省の法曹養成制度検討会議によれば、平成24年12月に司法修習を修了した者(2080人)のうち、363人が、平成25年1月10日時点でも、裁判官や検察官に任命されず、かつ、弁護士登録もしていない。

弁護士登録をしない原因は、主として就職できる法律事務所がなかったところにあると考えられ、このことは、弁護士の供給過剰の状態を端的に物語っている。

(4)小括

以上から、司法改革による司法試験合格者数増加を一旦停止して、それ以前の合格者数である1000人程度に戻し、需要調査を実施したうえで、目標とする合格者数を検討するべきである。




2 司法試験の受験資格から「法科大学院修了」の要件を削除すべきこと

(1)「最終とりまとめ」における法科大学院の位置づけ

「最終取りまとめ」は、法科大学院を法曹養成制度の中核として位置づけ、司法試験受験資格を原則として法科大学院修了者に限定する制度の維持を前提とする。

しかし、法科大学院の存在意義については、さらなる見直しが必要である。

(2)法科大学院の存在意義が失われていること

法科大学院の存在意義について、「最終取りまとめ」の「第3」では、「現在の法曹養成制度は、司法試験という『点』のみによる選抜から、法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナル・スクールである法科大学院を設け、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた『プロセス』としての法曹養成を目指して導入されたものである」とされている。

しかし、旧制度における「点」と評価されていたのは司法試験合格時点のみであって、司法試験合格後は2年間の司法研修によって「プロセス」としての法曹養成が実施されていた。法科大学院制度は、司法研修における「プロセス」の一部を肩代わりすることを目指して導入された。それ故、法科大学院の存在意義を検証するには、法科大学院が司法修習の代替たり得ているのかとの観点が重要である。

しかし、以下のとおり、教育の内容、結果(司法試験合格率)のいずれの面においても、法科大学院の教育力の乏しさが明らかとなっており、司法修習の代替とはなり得ていない。


ア 法科大学院での教育の内容については、「最終取りまとめ」において、法科大学院での「ソクラティックメソッド等による双方向性の議論を重視した授業」が、「優れた教育」の実践例として取り上げられている等、一部には、工夫された授業の存在が報告されている。

しかし、他方、法曹養成制度検討会議では、法科大学院の授業を担当する教授の中には、法体系をわかりやすく説明する指導を怠って、自らの興味の範囲に極端な比重を置く教授が存在することも報告されている。


イ また、法科大学院での教育の結果(司法試験合格率)について検討してみると、平成24年度司法試験における合格率は、予備試験合格者が68.2%であったのに対し、法科大学院修了者は25%に過ぎなかった。

(3)法曹志望者の負担が過大であること

ア 法科大学院制度発足前、法曹志望者は、全国各地で各自のペースで勉強し、各自の必要に応じて、各自の自由な判断で、参考書や予備校の授業料等の費用負担をしていた。また、受験資格に制限はなく、大学を卒業しなくても司法試験を受験することができた。

ところが、法科大学院制度発足後、法曹志望者は、原則として大学及び法科大学院を修了しなくてはならなくなり、その学費を負担することを余儀なくされた。しかも法科大学院が大都市に偏って設置されたため、法曹志願者の多くが、法科大学院の設置された大都市での生活を余儀なくされた。

平成24年の総務省の調査によると、法科大学院課程修了者のうち、学費及び生活費も含めて法科大学院に入学してから修了するまでに600万円から800万円を要した者が26.8%、800万円から1000万円を要した者が25.2%、1000万円以上を要した者が17.1%となっている。法曹を目指す者は、このような極めて高額な経済的負担を余儀なくされている。


   イ また、上述のとおり、法科大学院制度発足前であれば、法曹志望者は、大学卒業前であっても司法試験を受験することが可能であった。

ところが、法科大学院制度発足により、司法試験を受験するためには、原則として、4年間かけて大学を卒業し、さらに2年間から3年間をかけて法科大学院を修了することが求められることになった。

法曹志望者にとっては、この時間的負担も、無視できない重大なものである。


(4)社会人入学者数の激減

社会人を含め多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹界に迎え入れることは司法制度改革の重要な課題であり、法科大学院制度の目的の一つでもあった。

ところが、法科大学院に入学した社会人は、平成14年の2792人(入学者数全体の48.4%)から年々減少し、平成23年には764人(入学者数全体の21.1%)にまで激減した。

社会人の入学者が減少した背景には、第1に、上述した経済的及び時間的負担の問題があると考えられる。

第2に、法科大学院発足当時、法科大学院修了者の司法試験合格率が80%程度に至るといわれていたにもかかわらず、実際には20~30%の合格率で推移したことがあると考えられる。合格率の低迷により、社会人は、仕事を辞めて法科大学院を目指す決断ができなくなったのである。なお、仕事を辞めざるを得ないという社会人のリスクは、夜間学部が充実していれば回避できるはずである。しかし、夜間学部を設けた法科大学院は、ごく一部に留まった。

第3に、弁護士数の増加による就職難などのリスクを考慮して、法曹への道を断念した社会人も存在すると思われる。

(5)法科大学院志望者数の減少と予備試験受験者の増加

法科大学院の入学者は、初年度の平成16年度は5767人であったが、その後減少を続け、平成25年度には2698人にまで減少した。これに対して、平成25年度には、法科大学院を修了せずに司法試験の受験資格を得られる予備試験の出願者が1万人を超えた。

予備試験出願者数と法科大学院入学者数とが逆転したことは、法科大学院が法曹養成の機関としてもはや機能していないことを示している。

(6)小括

以上のとおり、法科大学院の存在意義は失われているのであるから、法科大学院の修了を司法試験の受験資格とすることの正当性も失われているというべきである。

したがって、直ちに法曹養成制度を検証するとともに、それまでの間、司法試験の受験資格から法科大学院修了の要件を削除すべきである。また、その間、司法修習の期間を、法科大学院制度発足前の期間に戻すことも検討されるべきである。



3 司法試験受験の回数制限は完全に撤廃すべきであること

「最終取りまとめ」では、受験回数制限制度を存続させることを前提として、法科大学院の修了又は予備試験合格後5年以内に5回まで受験できるように、その制限を緩和すべきであるとした。

しかし、そもそも、受験回数制限そのものに、合理性が認められない。

「最終取りまとめ」は、受験回数の制限が「受験者本人に早期の転身を促し、法学専門教育を受けた者を法曹以外の職業で活用を図るための1つの機会ともなる。」とするが、そうした転身を決断するかどうかは、個人の自己決定権に属する問題であり、国が介入すべきものではない。



4 司法修習生に対する給与の支払いを復活させるべきであること

「最終取りまとめ」は、貸与制の存続を前提としつつ、①実務修習開始時における転居費用の支給、②司法研修所敷地内の寮への入寮要件の緩和、③修習専念義務の緩和など一定の配慮をしている。

しかし、「貸与制」の下では、法科大学院の学費等の費用に加えて司法修習中の生活費等の負担に耐えられる経済的に恵まれた者だけが法曹資格を取得できることになりかねない。かかる過大な経済的負担は有為な若者に法曹への途を断念させる結果を招きかねず、司法そのものを脆弱化させかねない。良質な法曹に支えられている司法制度は、法の支配の確保と国民の基本的人権を保障するための重要な社会的インフラである。したがって、法曹養成は国が責任を持って行なうべきものである。弁護士を含む法曹が社会正義実現の担い手として地域社会の各方面で公共的な役割を果たしていることも、国家国民の負担により養成された者としての自覚の現れである。

したがって、平成25年3月26日に当会が発表した「司法修習生に対する『給費制』の復活を求める会長声明」のとおり、司法修習中の生活費等の必要な費用を国費から支給する「給費制」を復活させるべきである。


5 司法試験の受験資格から「法科大学院課程修了」の要件を削除するまでの間、予備試験合格者と法科大学院修了者との間の司法試験合格率が同程度になるまで予備試験合格者を増加させ、司法試験受験の機会を与えること

「最終取りまとめ」は、「予備試験の結果の推移、予備試験合格者の受験する司法試験の結果の推移等について必要なデータの収集を継続して行った上で、法科大学院教育の改善状況も見ながら、予備試験制度を見直す必要があるかどうかを検討すべき」とする。

問題は、予備試験制度の見直しの方向性である。

政府は、平成20年3月25日付け閣議決定において、「法曹を目指す者の選択肢を狭めないよう、司法試験の本試験は、法科大学院修了者であるか予備試験合格者であるかを問わず、同一の基準により合否を判定する。また、本試験について公平な競争となるようにするため、予備試験合格者数について」「予備試験合格者に占める本試験合格者の割合と法科大学院修了者に占める本試験合格者の割合とを均衡させるとともに、予備試験合格者数が絞られることで、実質的に予備試験受験者が法科大学院を修了するものと比べて、本試験の機会において不利に扱われることのないようにする等の総合的考慮を行う」と決定した。

ところが、平成24年の司法試験の合格者中、予備試験合格者の合格率は68.2%、法科大学院修了者の合格率は25%であった。これは、予備試験合格者数が絞られたからに他ならず、上記閣議決定に反している。法曹の給源の多様性の確保及び公平の原則からも、少なくとも予備試験合格者の司法試験合格率と法科大学院修了者の司法試験合格率の不均衡が是正されるよう、予備試験合格者数を増加させるべきである。


  6 結語

よって、当会は、以上のとおり、法曹養成制度の改善を国に対して要請する。

以  上

仙台弁護士会の法曹養成制度関係閣僚会議が貸与制を前提とした「取りまとめ」を是認したことに抗議する

こんにちは、給費制維持活動弁護士です。
はりきっています。


仙台弁護士会の法曹養成制度関係閣僚会議が貸与制を前提とした「取りまとめ」を是認したことに抗議する会長声明を紹介します。




 平成25年7月16日、政府は法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)の意見等を踏まえ、「法曹養成制度改革の推進について」と題する法曹養成制度関係閣僚会議決定(以下「関係閣僚会議決定」という。)を公表した。

司法修習生に対する経済的支援の在り方について、関係閣僚会議決定では、「はじめに」において貸与制を前提としている検討会議の「取りまとめ」の内容を是認している。

しかし、本年4月、5月に実施されたパブリックコメント(以下、「パブコメ」という。)には1か月の間に3119通もの意見が寄せられ、うち法曹養 成課程における経済的支援に関する意見数は2421通にのぼり、その大多数が「司法修習生に対する給費制を復活させるべきである」との内容であった。ま た、検討会議では複数の委員から給費制を復活すべきという意見が出された。

パブコメが実施されたということは、当然その後の議論において、パブコメに寄せられた声を踏まえることが予定されているところ、検討会議は、給費制 復活が妥当であるとの大多数の声に反する座長試案をもとに議論を進め、ほとんど訂正を加えることなく、取りまとめに至った。これはパブコメという手続の趣 旨を没却し、実質的には国民の声を無視するものである。

また、取りまとめ及び関係閣僚会議決定では経済的支援策の一つとして兼業許可基準の緩和を挙げているが、これはフルタイムで密度の濃い修習に励む司 法修習生にとって何ら支援策とならない。そればかりか、修習の実を上げるために必要不可欠な修習専念義務を骨抜きにするおそれがある。

これまでも当会は、経済的困窮を理由に法曹志願者がその道を閉ざされることがないよう、また、市民の権利擁護を担う人材を国が責任を持って育てるた め、給費制の復活を強く求めてきた。また、学生の法学部離れ、極端な入学者の減少による法科大学院の募集停止の続出、司法修習辞退者の増加、著しい就職難 など法曹養成をめぐる負の連鎖がますます深刻化する中で、給費制の復活は、これ以上の法曹志願者の減少を食い止めるために直ちに執るべき対策である。

当会は、貸与制を前提とした「取りまとめ」及び「取りまとめ」の内容を是認した関係閣僚会議決定に抗議するとともに、政府が新たな検討体制において パブコメの結果を反映させて司法修習生に対する給費制を復活し、現在の法曹養成制度の問題の抜本的解決に向けた具体的な施策を速やかに検討し実現するよう 強く求める。

2013年(平成25年)7月17日

仙台弁護士会 会長 内 田 正 之


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