kyupinの日記 気が向けば更新

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kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)
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精神科病院内でスマホが繋がらない場所と院内Wi-Fiのことなど

これはずっと以前から思っていたことだが、民間の精神科病院はそこそこ広いために大手キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)でさえ、スマホの着信ができないことが良く起こる。

 

僕のスマホは、ここは繋がらないわけはないだろう!と言う場所(目の前に道路挟んで民家が密集)で携帯が着信しない。結局、直接病棟に電話がかかってくる。これは看護師さんが、携帯電話が繋がらないということは多分この病棟にいると予想がつくからである。

 

普通、中核病院では、院内通信ではたぶんピッチ(PHS)を使うことが多いと思うが、常時携帯電話を2つ持つのは重いため、それを拒絶し、直接自分のスマホにかけてもらうことにした。大荷物で仕事をしたくない。携帯電話は重いのとでかいのは悪と思っているので、未だに僕のスマホはiPhone13miniである。院内通信に個人の携帯を使うのは、多分、この方がコスト的にも安価と思うからである。

 

僻地にある超絶大規模な国公立の精神科病院は広すぎて、院内で携帯電話が繋がらないことはよくあった。そういうこともあり、かけたい時は場所を変えて発信していたのである。

 

精神科病院内でも中心部ではなく辺縁なら普通に繋がりそうである。しかし繋がらないのである。病棟看護師さんに聴くと、au、ソフトバンクは普通に繋がるらしい。NTTドコモ大丈夫か?

 

かくして、後でメッセージを見てみると、何回かうちの病院の電話番号の着信履歴が残っているのであった。

 

おそらく天候のせいであろうが、その場所でも稀に携帯が繋がることがある。10日に1回くらい。それでも相手の声は聴こえるが、こちらの声が相手に伝わらないという不十分な繋がり方である。

 

他、繋がらない場所は、病院のほぼ中央にあるトイレの中である。それ以外はほぼ繋がる。

 

そういえば、病院にもよるが、最近は院内Wi-Fiが使えることが増えてきた。かつて、他病院に措置鑑定とか、医療観察法の鑑定にでかけると、外来にWi-Fiのパスワードの記載があった。つまり患者さんは院内Wi-Fiサービスが受けられるのである。これはその病院の患者さんの平均年齢も関係があると思った。その鑑定に行った病院は、中学生から大学生の外来患者さんが多いのである。この病院ではニーズも大きいのだろう。

 

当時は、うちの病院はそれができなかったが、新型コロナパンデミックの頃から院内Wi-Fiが患者さんにも利用できるようになっている。

 

しかし、友人のクリニック(精神科・心療内科以外)では、Wi-Fiを使えるクリニックは全くない。クリニックはそこまで院内Wi-Fiは普及していないのでは?と思った。

 

うちの病院が院内Wi-Fiを整備した理由は、家族のタブレット面会のため必要に迫られたからである。つまり外来のスペースと、病棟の一定のスペースにWi-Fiが繋がる場所があった方が良い。そのために各病棟にWi-Fiが使えるように工事を行ったのである。

 

これも病棟全てではない。たぶん病棟でもナースルームから離れた場所や、ベランダ、保護室内などは繋がらないと思う。

 

今のところ、タブレット面会以外の外来患者さんの院内Wi-Fi利用率はかなり低いと思う。患者さんの平均年齢が高いこともあるだろう。

 

 

 

 

ツムラ漢方防風通聖散と小林製薬のナイシトールZ

 

最近、ツムラ62、防風通聖散エキス顆粒の供給停止のアナウンスがあった。以前もツムラの漢方薬がさまざまな理由で供給が滞る話を紹介している。

 

 

上のリンク記事の中でも防風通聖散の話が出てくる。以下は抜粋。

 

新型コロナパンデミックの際、風邪症状に有効な漢方薬の需要が爆発的に増した。その際、ツムラは生産ラインをこれらの漢方薬に動員したため、風邪と関係がないか薄い漢方薬の生産量が減り納入が難しい時期が続いたのである。

特にうちの病院では防風通聖散(ツムラ62)が不足する事態になった。防風通聖散は、一般に便秘に処方される。やせ薬としても人気が高いため、全国的にはそこそこ処方される漢方薬である。実際、効能効果には、肥満症、むくみが挙げられている。

今回、ツムラ防風通聖散を購入できない時期、クラシエやオースギの防風通聖散に変更して処方してみたところ、ツムラに比べオースギの防風通聖散の方が、便秘に関してはより効くことがわかった。患者さんがそう言っていたからである。

 

ツムラの国内の工場は茨城県と静岡県にあるらしく、2011年の東北地方太平洋沖地震の際には茨城県の工場が被災して、いくつかの漢方薬が不足する事態になった。

 

今回の供給停止措置は復旧が早く、5月中旬には解除されるらしい。

 

元々、防風通聖散は便秘の薬だが、肥満症にも効果があるとされている。だから、多くの便秘症向けの漢方の中でも人気があるのである。今回の供給停止措置には、小林製薬の紅麹事件が関係しているように思われる。上に挙げたツムラのお知らせにも、4月から急激な需要増があり、生産能力が追いつかないと記載されている。

 

実は、小林製薬はナイシトールZと言う防風通聖散を含む市販薬を発売している。

 

 
上のリンクには以下のように記載されている。
 
ナイシトールZは18種類の生薬を配合した漢方処方
「防風通聖散」を用いた、肥満症を改善するお薬です。
【製品特徴】
・内臓脂肪を分解燃焼し、肥満症を改善します
・脂肪を燃やし、余分な脂質を便と一緒に押し出します
・生薬量最大の28,000mg処方を用いた濃縮エキス!
※日本薬局方防風通聖散エキス内
 
つまり、ナイシトールZを服薬していた人が、小林製薬の紅麹事件により不安を感じ、ツムラ防風通聖散に流れたのではないかと。ツムラの方も防風通聖散は良く売れる漢方薬なので、早急に対応し一時供給が滞るが、約1か月くらいで増産可能な体制が整うと判断しているのであろう。
 
参考

 

 

 

28歳くらいの梅毒の患者

今回の記事は、僕がまだ31歳頃遭遇したものである。驚愕すべき臨床体験。

 

ある28歳の男性患者さんは、梅毒に罹患後、症状が出たものの中核病院で治療を終えていた。その時は既に梅毒トレポネーマは体内にはなかった。

 

この患者さんの不思議なことは、まだ感染後2年くらいしか経っていない上、梅毒に対する抗生剤治療も完全に終わっているのに、精神が既に荒廃していたことである。

 

いつも保護室で診察していたが、いつも無苦慮にへらっとした印象で、よくポケットに大便を詰め込んでいた。おかげで指と爪の間には便がつまり悪臭を放つような状態である。

 

統合失調症の人にも弄便が診られることがあるが、実際にはそのレベルまで荒廃する人は稀であり、そう診られるものではない。過去ログに便だらけになる患者さんの話をアップしている。

 

 

このセンテンスの最も器質性疾患っぽい(つまり統合失調症らしくない)ポイントは、「へらっとした印象」だと思う。

 

とにかく、回復する見込みがなかった。

 

ところが、民間精神病院は自院の重症の精神病患者は、他病院に転院させにくいと言う心理が働く。

 

その理由は、民間精神病院は常に一定数の処遇困難な患者を持っていて、ある種の民間精神科病院全体で苦労を分かち合うという暗黙の了解のようなものがあるためである。そもそも自分の病院でここまで悪化した患者を他病院に押し付けるのは気の毒というのもあるし、心証も悪く今後の病院間の関係にも影響する。それが簡単に許されるなら、自分の病院は精神医療の楽な良いとこ取りだけしている感じになる。

 

そのようなこともあり、余程の理由がないと、この記事に出てくるような重症の患者さんは他病院に転院などさせられない。

 

当時、この男性患者は、時間的には梅毒の四期のはずはないが、何らかの免疫的な脆弱性があり、このような荒廃に至ったのかもと思っていた。それが正しいかどうかはともかく、梅毒の最終病態はこのようなイメージだったからである。

 

既に四期の梅毒患者はなかなか診られない年代になっていたこともある。

 

そして、「梅毒の四期であるはずはないのに、極めて特殊な病態を呈している」とのことで中核病院か、あるいはもう少し施設が整っている大規模な民間病院に転院させることになった。そのあたりは、僕は主治医ではなかったので経緯の詳細は知らない。

 

その患者さんはその後も経過は良くなかったらしい。「この良くなかったらしい」という期間は数ヶ月であり、その後の詳細は全く知らないのである。

 

その後、僕は毎週リエゾンをするようになった。僕は医療観察法の仕事とリエゾンは非常に縁があり、延べのリエゾンの経験年数は精神科医のキャリアから比してもかなり多いほうだと思う。そのようなこともあり、稀な症例を経験している。

 

その梅毒患者さんに極めて似た症例を後に数度、リエゾンの現場で経験することになったのである。例えば、この梅毒の男性患者さんに似た病態のある女性の基礎疾患はSLEであった。

 

今から考えると、その若い梅毒の患者さんは身体疾患に由来するカタトニアだったと思う。

 

カタトニアはGoogle検索すると狭い範囲の概念しか記載されていないので、それは違うだろうと思うかもしれないが、こういう病態もカタトニアと言って良いのである。ポイントはカタトニアは症候群であり、原疾患は必ずしも同じ疾患ではないことであろう。

 

このように考えると、当時の治療のベストの選択肢はECTであった。病状の規模的に1択と言って良かった。

 

しかし、当時それを見抜くことができず治療機会を逸してしまい、しかも他院に送ってしまったのである。

 

彼は、今も残念に思う患者さんの1人である。

 

「花粉症とクロルフェニラミンOD6㎎錠発売中止の話」への読者さんのメッセージ

 

 

上記の3月12日の記事に関して、不正確な部分があり読者さんからメッセージを頂いています。読者さんの了解を取り、以下にアップしました。(青の部分)

 

kyupin先生のブログをいつも楽しみに読んでおります、ありがとうございます。

私は保険薬局の薬剤師で、精神神経科の処方せんも応需しているので、ブログで勉強させていただいております。

2024年3月12日のブログ「花粉症とクロルフェニラミンOD6㎎錠発売中止の話」の抗ヒスタミン剤のトータル1日薬価についての考察は、興味深いものでした。

後半にあった「これ(クロルフェニラミン2㎎錠)はたくさん飲めるが、OD錠ではない」の記述について、メールいたします。

文中のOD錠の語は、徐放錠が正確かと思います。

ODはOrally Disintegratingの略で、OD錠は口腔内崩壊錠の意味になります。

2023年7月に販売中止となった抗ヒスタミン剤は、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩徐放錠6mg「武田テバ」です。

今は、先発品のポララミン錠2mgも、その後発品「武田テバ」、同「NIG」も流通が滞っておりますので、皮膚炎に対しては、アタラックスに切り替えた処方せんも見るようになりました。

   アタラックス錠(規格10mg/25mg、ヒドロキシジン塩酸塩、分子量447.83)
   アタラックス−Pカプセル(規格25mg/50mg、ヒドロキシジンパモ酸塩、分子量763.27)

   効能又は効果(ともに)
   蕁麻疹、皮膚疾患に伴う瘙痒(湿疹・皮膚炎、皮膚瘙痒症)
   神経症における不安・緊張・抑うつ

末筆ながら、kyupin先生のご健勝をお祈り申し上げます。

 

なお、クロルフェラミンは眠い薬だが向精神薬を飲みなれている人にはあまり眠くならない。かなり重症なアレルギーの人で、アレグラ(フェキソフェナジン)やザイザル(レボセチリジン)で全然効かない人はクロルフェニラミンを希望する。特に医療関係者はそうである。

 

そのような人に、クロルフェニラミンは眠くならないですか?と聴くと、時間が経てば慣れていくと言う。

 

市販の睡眠改善薬にドリエルという薬があるが、これは抗ヒスタミン薬の眠さの副作用を利用したものである。主な成分はジフェンヒドラミン塩酸塩で、これも時間が経てば慣れる傾向がある。ドリエルとクロルフェニラミンは同じような薬といえる。

 

 

ドリエルやクロルフェラミンのような抗ヒスタミン系の薬を睡眠薬として服薬することは推奨されない。新しいタイプの睡眠薬、デエビゴ、ベルソムラ、ロゼレム(市販されていない薬)のようなタイプがずっとマシだと思う。

 

 

風格のあるサバトラ猫

 

体が大きく風格あるサバトラ猫。少しわかりにくいかもだが、右耳がカットされていてオス猫である。多くの地域猫の耳のカットを見ていると、平均してオス猫の方が体が大きいのがわかる。

 

 

最初こんな風に近づいてきた。

 

 

目つきは鋭いけど、周囲の猫との様子を見ると性格は穏やかだった。

 

 

サバトラとは、シルバーグレーの毛にブラックの縞模様があるネコである。キジトラはよく見るが、サバトラはさほど多くはない。珍しいかどうかは知らない。

 

 

僕の目の前を悠々と歩いていく。実に落ち着いている思った。

猫には個性があり、いつも落ち着きなく動きが多い猫と、このように落ち着いている猫もいる。

 

 

お腹に少し白い部分がある。このように腹のところに白い毛が少しだけ入っているサバトラは、サバ白と呼ばれるらしい。

 

このサバとは魚のサバである。またサバトラは正式な猫の種を言っているわけではない。

 

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