1 最速?!憲法最新判例解説講義!
平成27年12月17日に、2つの最高裁大法廷判決が下されました。
1つは、女子再婚禁止期間違憲判決
もう1つは、夫婦別姓合憲判決
です。
この判決は、憲法14条の判断枠組みやあてはめを検討するにあたって、非常に多くのことを示唆しています。
そこで、今回は、受験生向けに、私なりにこの2つの判決の解説をした動画を作成しました。
しかも、ご要望にお応えして
【無料公開】しております!
※レジュメは
こちらからダウンロードしてください。
なお、この動画では扱っていませんが、千葉勝美裁判官の補足意見は、実務家や研究者にとって、括目すべき研究対象であると思います。
受験生的には、議論の余地があり得るので、とりあえずはよいと思います。
このあたりは、
大島先生との広島大学の講演会でお話することとなるでしょう。
講演会のご参加者は、参加に先立って、先ほどの動画をご覧いただければと思います。2 女子再婚禁止期間違憲判決のポイント
動画を見れる環境にない方のために、簡単に多数意見のポイントを指摘しておきましょう。
まず、判決は、憲法14条が相対的平等であるという判例を確認し、「合理的な根拠」の有無を審査するとう判断枠組みを定立しました。
そのうえで、「合理的な根拠」を検討するにあたって、どの程度の厳格度にするべきかの検討をします。
そのなかで、婚姻制度をどうするかは、憲法からは一義的にはわからない、つまり、原則としてどうあるべきかが導けないので、
立法裁量が認められるとします。
しかし、
①性別による区別であることを指摘し(
※ただし、判決は、後段列挙事由だから厳格に、とは考えていないようですのでご注意ください!)
②憲法24条2項がこの
立法裁量の「限界を画した」として、個人の尊厳と両性の本質的平等により、立法裁量を縛ります。
また、③
婚姻をする自由は、憲法24条1項から十分尊重に値するとして、憲法上の権利保護を認めます。
このように、判決は、後段列挙だけを根拠とせずに、憲法24条により、立法裁量を限定するという手段を採用したのです。
次に、あてはめです。
判決は、目的審査において、目的を
「女性の再婚後に生まれた子につき父性の推定の重複を回避し、もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにある」と認定します。
ここでのポイントは、判決が、目的について、①父性の推定の重複回避のみならず、②父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことまで拡張しているのがポイントでしょう。
そのうえで、父子関係をめぐる紛争が生じるとすれば、子の利益に反するとして、父子関係が早期に安定することは重要であるとして、目的の合理性を肯定します。
これに対して、
100日以内の制限も違憲とする立場からは、科学技術の発達により、重複の推定は容易に判別できるから、目的①は重要ではないとの反論があり得ます。
しかし、判決は、
裁判手続等をしないと法律上の父が定まらないことに着目して、目的①は重要であるといいます。
このように述べたいからこそ、多数意見は、紛争の防止という目的②を重要であると説いたのでしょう。
その他、
違憲とする鬼丸裁判官の意見は、利益衡量により、失われる利益が大きすぎるとも批判しています。
すなわち、得られる利益は、「前婚中に妊娠しちゃった」というごく例外的な場合に限られるため、たしかに「子の利益」は害するものの、そのような事態が生じる可能性は極めて低いだろうと指摘するのです。
他方、失われる利益は、再婚を望む女子が対象ですから、失われる利益の方が大きいだろうと指摘するのです。
これに対し、多数意見は答えていませんが、
補足意見が、「懐胎しいないこと」を証明すれば、本件規定は適用されないような運用を認めることで、失われる利益の大きさを少なくできると指摘しています。
しかし、鬼丸裁判官は、形式的審査権しかない戸籍事務をする人に、実質的な判断はできないんだから、補足意見のような法解釈は妥当でないとして、譲りません。
次に、手段審査です。
このように目的①が肯定される以上、推定の重複を回避するために、100日以内の再婚禁止は、手段として合理性を有するといえるわけです。
他方、100日を超える部分は、不要となり、違憲となったということです。
この判決からは、
目的審査がいかに重要かがわかるでしょう。
すなわち、目的を広くすれば、正当化できる手段も広くなりますし、目的を狭くすれば、正当化できる手段も狭くなるのです。
普段、目的審査を軽視していたとすれば、少なくとも、平等原則の審査においては、重点を置くべきものであるということがわかるでしょう。
その他、国賠法上の違法性についても当てはめをしていますが、この記事では割愛させていただきますので、動画をご覧いただければ幸いです。
3 夫婦別姓合憲判決のポイント
夫婦別姓合憲判決のポイントは、既に
東洋経済オンラインにて解説しておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。
要点をかいつまむと、
氏名は「人格的利益」ではあるため、私法上は法的保護に値するが、
氏の変更を強制されない自由は、憲法13条で保障されない
たしかに、氏の変更をしているのは96%女性だが、
法律は女性のみに氏の変更を強制しているわけではないから、憲法14条には違反しない として、憲法13条、14条については、あっさり判断しました。
もっとも、憲法24条は、婚姻制度について、個人の尊重と両性の本質的平等という要請で、立法裁量を限定しているとして、女子再婚禁止期間違憲判決と同様のことを述べます。
そして、憲法13条、14条に違反しないとしても、これらの人格的利益や、氏の変更をしているのは96%が女性であることについて、立法府は考慮しないといけないと述べるのです。
ただし、
氏の変更は、婚姻により生じる「効果」にすぎないので、婚姻の自由を直接制約するものではないとしています。
このように、婚姻の自由を直接制約する女子再婚禁止期間違憲判決と、事案を区別するのです。
、
しかし、
この説示は、はっきりいって意味不明です。
違憲とする岡部裁判官意見も、
氏を決めないと婚姻届けが受理されないんだから、婚姻の自由に対する制約でしょ、と突っ込んでいますね。
あてはめでは、判決は、
氏の有する家族としての識別機能を重視して、合理的であるとします。
この点については、違憲とする木内裁判官意見が、
氏が一緒でも家族とは限らないでしょ、と突っ込みます。
たしかに、伊藤正己裁判官、伊藤真先生、そして、伊藤たけると、憲法好きに伊藤が多いというネタもありますが、いずれも親族関係にはありません。
次に、氏の変更が強制されると、
氏名の同一性が失われるという不利益や、アイデンティティの喪失につながるとの指摘に対して、
「通称が使用できるからいいじゃないか」と述べます。
これに対し、岡部裁判官は、
通称は法律上の制度ではなく、公的文書では使えないこともあることや、今度は通称と戸籍上の氏名との同一性確認という問題が生じるとして、通称は代替手段にはならないと述べます。
多数意見は、婚姻の自由に対する制約を認めなかったことから、緩やかな判断枠組みを採用しているため、合憲という結論となりました。
他方、違憲とする意見は、制約を認め、厳しめに判断しているということもできそうです。
4 BEXA判例百選に学ぶ規範と当てはめ
このように、判例学習をするためには、
① 規範(判断枠組み)
② あてはめ(目的・手段審査など)に区別する必要があります。
そして、
①規範を導く理由づけ
にだけに目が行きがちですが、
判例学習でより重要なのは、
②あてはめも学べることでしょう。
このような意識を持って、判例学習をすることが極めて重要になるのです。
しかし、
判例百選は、その「百選」という名ばかりであり、実際には200以上の判例が掲載されています。
いっそのこと、「判例二百選」にするべきではありますが、
いずれ、
某有名Twitter弁護士(ビジネス系スター弁護士)の「判例八百選」とかぶってしまうという事態も十分想定されます。
一部報道では、当該「判例八百選」は、有斐閣からお墨付きを得ているとの情報もありますが、もしや、判例百選の名称を「判例八百選」にするための布石なのでは・・・とも勘繰りたくなるところです。
話を元に戻すと、要するに、判例百選を一人で読み込む作業は、かなり大変です。
そこで、
(私のたるんだボディとは異なり)大胆にメリハリをつけた講義こそが
「判例百選に学ぶ規範と当てはめ」シリーズなのです!
先ほどの、動画は、実はその講義の抜粋(第3回の冒頭部分)なのです。
この判例は、最新判例ですから、かなりガッツリと動画で解説しておりますが、他の判例は、
(私のたるんだボディとは異なり)大胆にメリハリをつけています。
当初、BEXA側より「全9時間でお願いしたい」といわれましたが、(デブなので)自己管理ができず、結局は11時間になってしまいました。
しかし、
憲法の流儀では扱いきれなかった細かい判例の内容について、きちんと解説していますので、
相乗効果が期待できるはずです。
ここだけの話ですが、
他の科目よりも、憲法がずば抜けて売れているようです。
きちんと判例百選を読んでいる人とそうでない人との差は歴然です。
たったの11時間(倍速なら5.5時間!)で終わりますから、直前期の今だからこそ、一気にやってしまうのも1つの手段かと思います。
ちなみに、
憲法だけなら1万4800円(しかも税込!)です。