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出会いの連鎖-RENSA-を求めて。

メディアの旅人はあなたです。

<当サイトについて>



実際に観覧や体験したものを紹介していくスタイルになります。

映画・舞台・ライブ・イベント・メディアすべて原則ネタバレです。

それぞれのジャンルに沿って各作品ごとにスレッドを立てます。

観覧記録やセットリストなどを速報版で順次更新していきます。

その後の感想等は追記の形で更新していきます。


なお実際に発表されるセットリストとは表記が違う場合もあります。

基本的に実際の現場で記憶・メモしたデータがベースになります。

一部詳細不明なものはネット上の情報を参考にして補足します。

その他、誤記や表記ミスなどはその都度訂正していきます。



◆お知らせ◆


約20年前に始め、ここ数年サボっていた寺社仏閣めぐりを2017年より再開しました。

ひとまずライブ観覧やイベント参加の折には、最寄りの寺社を調べて参拝したりしています。


そのため寺社仏閣めぐりの記事が増えておりますが、すべてはメディアとのかかわりの延長線上にあるとの認識ですのでご理解ください。


ただ訪問先が多岐にわたるため、更新はかなり遅れております。
忘れたころに記事を追加していますが、更新日時は一応時系列のままになっていますので、新規記事として表示されないことをご了承ください。


リンク先としては<TRAVEL(WALK)>もしくは<PRAY(SHRINE/TEMPLE)>のテーマになっています。


よろしくお願いします。







なお、日々徒然やコラム等は、メインブログで更新しています。

 <「あ」…安倍なつみに端を発するエトセトラ > 更新休止中



明らかに当該記事と関係ないブログ等の宣伝目的のコメントについては管理人の判断で削除させていただきます。


SKE48 大場美奈 2018年世界選抜総選挙 8位 ありがとうございます。



「悪は存在しない」(2023/Incline)

 

 監督:濱口竜介

 脚本:濱口竜介

 音楽:石橋英子

 

 大美賀均 西川玲 小坂竜士 渋谷采郁 菊池葉月

 三浦博之 鳥井雄人 山村崇子 長尾卓磨 宮田佳典

 

 おすすめ度…★★★☆☆ 満足度…★★★★☆

 

 

 
この映画についてネタバレ回避で語るというのは実に難しい。
 
薄暗い森の空を見上げて歩く(おそらく)冒頭の長回しのシーン。
その空からは木漏れ日が差し込むどころか、どんよりとした白い空だった。
 
もしかしたらあの最初の数分がすべての答えだったのかなと思った。
 
作品を観終わったときの何とも言えない胸くその悪くなるような虚無感は、あの短いエンドクレジットの時間だけでは薄められない。
きっとスクリーンを後にした観客のほとんどがそんな感覚だったのではないか。
 
キーワードとなるのは<半矢の鹿>のエピソード。
野生の鹿は人間を襲わない、ただし半矢の鹿は我が子を守るために…。
 
長野県のある自然豊かな村で暮らす巧と一人娘の花。
その日常はひたすら薪を割り、湧き水の流れる小川から水を汲んで運ぶ。
それが当たり前の日課。
 
そんな村に東京からグランピング施設の誘致のためにある芸能事務所の担当者が説明会にやってくる。
しかもグランピングのノウハウもなくコンサルタントに丸投げのコロナ禍の補助金目当ての事業展開だ。
 
説明会の担当としてやってきたのは、本業は芸能マネージャーの高橋という男と介護職から転職した女性の薫。
二人は巧たちの真摯な意見に耳を傾け、この事業そのものが間違っているのではないかと感じる。
 
東京に戻ってのミーティングでは社長とコンサルタントから事業の継続を押し付けられ、巧をグランピング施設の管理人になってもらうよう説得を試みる。
 
そんな二人を地元の水を活かしたうどん店に誘う巧。
自然を守るためにはまず水が大切であり、その水は上流から下流へと流れるのだから、山で暮らす人間にはそのすべてに責任がある。
 
後半は高橋と薫が巧たち山で暮らす人々に共感を抱き、逆に村での生活に思いを馳せるようになる。
作品のタイトルである「悪は存在しない」はそういうことかと納得しかけたところで花の失踪事件が起こる…。
 
ラストシーンの解釈は難しい。
 
すべては観客に委ねられたのかと思うが、それまでのストーリーの中で明示された事実の検証かもしれない。
 
前述の<半矢の鹿>のエピソードがここで思い出される。
巧が認識していた現実と実際に目の前で起こった事実との乖離を埋めるための行動か。
 
そもそもあのラストシーンのその後は分からない。
それを証明するように男は一度立ち上がってから倒れる。
 
ただしあのラストシーンがオープニングの白い空と連動しているとするとストーリー構成としては合点がいく。
 
そもそも映画はただ楽しむだけのではない。
映画は暗闇の中で虚構を観て考えるものであり、自らの人生の写し絵として再考する過程で、スクリーン上で自らと重ね合わせた登場人物たちを解き放つカタルシスを熟考するものだと思う。
 
そういう意味ではこの「悪は存在しない」という作品は実に不親切だと言わざるを得ない。
 
好きな作品だけど、何度も観たい作品ではない。
 
主人公の巧を演じた大美賀均はロケハンで濱口監督と同行したスタッフだと聞く。
一人娘の花を演じた西川玲はきっと数年後には素敵な若手女優になっているか、このまま第一線から退くかのどちらかではないだろうか。
 
社名を受けて再び山村へ車を飛ばす高橋と薫の道中の会話は「ドライブ・マイ・カー」を彷彿とさせる。
 
ただ今回は一人も著名な役者が登場しない作品であり、どこか監督の自主映画的な雰囲気も感じられて、1970年代以降の低迷期から長年日本映画を観てきたひとりとして、こういう映画がもっと話題になるようになってほしいと改めて思った。
 
こういう作品と出逢うたびにつくづく思うのは昨今のシネコンシステムの弊害。
 
ゴールデンウイークは映画業界の興行のために生まれたことは知っているけれど、そんなゴールデンウイークの期間にシネコンのスクリーンを席巻するのはアニメーション作品やハリウッドのエンタメ作品ばかり。
 
いまさら憂いても仕方ないのかもしれないけれど、映画の楽しみ方をもっと多くの人に知ってもらう術はもうないのだろうか。
 
関東エリアだけ見ても都内ですら二館のみ、我が群馬は幸いにして前橋と高崎の二館で上映。
前作でアカデミー賞をとった監督の作品なのに…。
 
 
 前橋シネマハウス シアター0

 

「四月になれば彼女は」(2024/東宝)

 

 監督:山田智和

 原作:川村元気

 脚本:木戸雄一郎 山田智和 川村元気

 

 佐藤健 長澤まさみ 森七菜 仲野太賀 中島歩

 河合優実 ともさかりえ 竹野内豊

 

 おすすめ度…★★☆☆☆ 満足度…★★★☆☆

 

 

 ユナイテッド・シネマ前橋 スクリーン4

 

「異人たち」

 “ALL OF US STRANGERS”

  (2023/英=米/ウォルト・ディズニー・ジャパン)

 

 監督:アンドリュー・ヘイ
 原作:山田太一
 脚本:アンドリュー・ヘイ
 
 アンドリュー・スコット ポール・メスカル
 ジェイミー・ベル クレア・フォイ
 
 おすすめ度…★★☆☆☆ 満足度…★★★☆☆
 

 
大林監督がメガホンをとった映画「異人たちとの夏」はスクリーンで観た。
山田太一の原作も同時に読んだ。
 
あの山田太一の原作がイギリスで映画化されて話題になっているというネットニュースを見たのはつい最近だった。
 
本作「異人たち」は原作の舞台をロンドンとその郊外の住宅地に移して、都会で一人暮らしの独身脚本家の孤独な生活と同じマンションに暮らすもう一人の男との交流をベースに、12歳の時に死別した両親と再会した脚本家が自分自身の人生ともう一度向き合う物語。
 
主人公アダムは30年前に事故で他界した両親の思い出をベースにした脚本を書こうとしていた。
ある日両親と暮らした郊外の町へと電車で向かうが、そこには家族で暮らした家が当時のまま残っていた。
 
そこでアダムは死別した両親と再会する。
両親は亡くなった歳のまま若く、大人になった息子の成長を喜んでくれた。
 
大林監督の「異人たちとの夏」(1988)では風間杜夫演じる主人公が幼少期を過ごした浅草で両親と再会する。
父親役が片岡鶴太郎で、母親役が秋吉久美子だった。
 
この母親役をずっと池脇千鶴だと思い込んでいた。
年齢的にもバランスが合わないのになぜ?ということだろうけれど、実は後に舞台化された「異人たちとの夏」を2009年に観ていて、この時の母親役が池脇千鶴だったからだろう。
舞台版では主人公を椎名桔平、父親を甲本雅裕が演じていた。
 
今回の「異人たち」が日本版と大きく違うところがある。
映画でも舞台版でも主人公はマンションで出会った孤独な女性と恋仲になる。
 
しかし本作では相手は孤独な男性である。
つまり昨今のLGBTQの問題から主人公がゲイであることが明らかになる。
 
現在のイギリスでは同性婚の法制化も進んでいるようだが、10年ほど前まではかなり差別意識が強かったらしい。
法制化の流れの中でそれだけ社会的な関心事となっているのだろうか。
 
一方の日本では同性婚の国レベルでの法制化は進んでいない。
かといって差別的であるかと言えば、むしろ無関心というべきで、当事者以外にとっては実はあまり社会生活上で意識するテーマではない。
 
だから山田太一の原作にあえてLGBTQの問題を掛け合わせた製作サイドの意図は分からないけれど、原作も映画も知っている側からしたら、それでは全く別物だよと思えてしまう。
 
もっともストーリー展開も知っているうえで観ているので、落としどころがどうなるんだろうというところに関心があったけれど、意外と静かな終わり方だった印象。
 
やはり日本の夏=幽霊という落としどころがあるから夏の浅草というシチュエーションも嵌ったのは確か。
もちろん日本の夏は死者が帰ってくるというお盆の季節だ。
 
死別したはずの両親との再会の日々の描き方も、日本の夏のそれとは違うものの、欧米人にとっては琴線に触れるものがあるのだろう。
 
それにしても大林監督は死者との再会の物語が多い。
新尾道三部作の「ふたり」(1991)では交通事故で亡くなった姉が幽霊となって妹を見守る。
同じく「あした」(1995)では客船の遭難事故で亡くなった人たちが一夜だけ甦り、残された者たちに別れを告げる。
いずれも個人的にも好きな作品だ。
 
久しぶりに原作を読み直そうと思ったらどうやら引っ越しの過程で処分してしまったようだ。
 
大林監督の「異人たちとの夏」も観なおしたくなったので探したらレンタル落ちで手に入れたVHS版が残っていた。
VHSレコーダーはまだ動くはず…。
 
 

 ユナイテッド・シネマ前橋 スクリーン6