久々のブログ更新、久々にラピュタ阿佐ヶ谷。
隣にマンションが建ってるわ、ラピュタギャルズ、ボーイズはヘッドフォンマイクをつけてるわ、椅子が布貼りからビニール(革?)製になってるわで、申し訳ない、俺はどんだけ行ってなかったんだと感慨に耽りつつ、前田陽一特集で2本観る。
「ちんころ海女っこ」
淫蕩な血筋という呪縛と、色と欲にまみれた人々から逃れ、閉鎖的な島を出ようとする中村晃子がひたすら美しい。というのが本作のテーマだったり、やりたいことだったりしたのだろうが、まぁ酷い。色欲まみれのエピソードがまぁつまらない。なんでこんなことなっちゃったの?くらいに辛い。
ちなみに初見だと思って観たら、始まってすぐに観ていたことに気づき、絶望したのだった。
ただやっぱ中村晃子が超キュート。
で、ブログを久々に書く気になったのは、初見の「スチャラカ社員」が素晴らしかったからで、これはなんかすごい嬉しかった。
「オッペンハイマー」とか「オーメン:ザ・ファースト」とか「ブリックリンでオペラを」とかつまらん映画ばっかり観てて、頼みの綱の韓国映画も「ビニールハウス」はもぉただ鬱になるばかりだったし「貴公子」は既視感ありありだったしで、俺は映画が好きじゃないんだと思っていたからで、そこにこの「スチャラカ社員」。これは嬉しい。
でも、結構レアなもんを観たと思ってたんだが、amazonプライムとかで簡単に見れるのな。
ちっ。
とはいえ、そんなすげぇ映画ではない。どプログラムピクチャーの中の上くらい。でも嬉しい。
始まってすぐに、エレベーターに乗っている「スチャラカ社員」たちを横並びに捉えるショットから快調で、それはエレベーターの動きを照明だけで示してるとか、そーゆーシネフィリーなことではなくって、シネスコ画面に長門勇、中田ダイマル、ラケット、ルーキー新一が横並びに顔を揃えるそのワクワク感が素晴らしいのだ。いや大したことはないんだが。
そして何よりこの映画が素晴らしいのは、いや大したことはないんだが、この映画がスラップスティックを志向し、脈絡なくいろんなギャグが繋がれ、それがすごく頑張ってるからだ。
レコードの回転が速くなるとバレリーナが早回しになる、とか、大阪が独立国家となりそれを伝えるNHKのアナウンサーが関西弁を喋り出す、とか、ここはペットをレンタルする部屋ですと藤岡弘(!)が扉を開くと、ライオンとかゴリラとかの動物園の映像が挿入される、とか。うむ頑張ってる。
そしてクライマックスはパイ投げならぬスパゲッティ投げで、宮崎駿とキューブリックが本作に影響を受けている。
そんなギャグの連続(いや大したことないんだけど)の中に、長門勇の(多分)アドリブが効く。
私は映画で笑うことは滅多になく、喜劇不感症みたいなとこがあるんだが、長門勇の(多分)アドリブで少なくとも二度笑った。
さらに、事務員を演じる新藤恵美が超キュート。藤岡弘の絵に描いたような二枚目と祇園祭の京都を歩くシーンは、ほんの短いシーンなんだけどすごい印象に残る。
というわけで、全然大したことないんだが、日本映画では珍しい、ちゃんとしたギャグでつないだスラップスティックでありました。
そしてこの2年後に前田陽一は小林信彦と組むこととなる。
小林の名エッセイ「和製B級映画はどう作られるか」と今やカルト作「「進め!ジャガーズ 敵前上陸」、その素地が本作にあったことに感動した。
ただ、小林信彦はテレビの「スチャラカ社員」については「てなもんや三度笠」と共に多く言及しているのだが、映画版の本作については何も書いていないように思う。
小林は「新宿のバーで」前田陽一「が大島渚と篠田正浩にカラんでいるとき、そばにいた」のが初顔合わせだったという。
「ちんころ海女っこ」1965年(S40)/松竹大船/カラー/83分
■原案:富永一朗/脚本:石堂淑朗、前田陽一/撮影:小原治夫/美術:佐藤公信/音楽:山本直純
■出演:中村晃子、ホキ徳田、扇町京子、春川ますみ、南道郎、左卜全
「スチャラカ社員」1966年(S41)/松竹/カラー/79分
■原作:香川登志緒/脚本:若井基成、前田陽一、沢田隆治/撮影:竹村博/美術:今保太郎/音楽:萩原哲晶
■出演:長門勇、ミヤコ蝶々、中田ダイマル、中田ラケット、ルーキー新一、新藤恵美、藤岡弘