明け方の道は、走行する車もまばらで

家には、いつもより早く着いた。




家に入り、歯磨きをしていると

私の携帯電話が鳴り響いていた。





相手は見なくても分かる。




「・・・・ミサキ・・・

どこにいるの??」




消えてしまいそうな声だった。




「・・・・帰った。」



「なんで??

なんで、そんな事するの??」




翔の寂しそうな声が、私を罪悪感の渦に陥れる。

今にも消えそうで・・・・

それでいて、泣き出しそうな声だ。




「一人でね、考えたい事もあるんだよ。」




「なんで黙って帰るの??」



翔は、時に女の子のようになる。

いや・・・普通の女の子より可愛いだろう。



悲しそうな話方は、私が一生掛かっても

真似できないだろう。




黙って帰ったのは、私が悪い。

でも、その時同じ空間にいる方が

きっと悪いほうへと考えが向かうばかりだろう。




私は、話題を変えた。



「あ~、今日ねお布団が届くから

お昼からは、お家にいてね。」



引っ越し祝いを兼ねて、ネットで私が注文した布団が

届く日だった。




「・・・・・もうミサキは来ないの??」




「お昼くらいには行くつもりだよ。

今日、お泊りしてもいい??」




私の言葉に、翔はかなり驚いていた。

が、実は・・・言った私の方が

自分の言葉に驚いた。




「ホントに来てよ!!」



そう言う翔は、本気で可愛い。




帰ってしまった事を謝って、少し話をした。




別に帰るつもりは無かった。

きっと、まだ起きていると思ったから・・・・。

でも、私の足は自然に外に向かっていた。




「黙って出て行ったのは、私が悪いけど・・・・

一人になりたかったんだ。

帰り道、いろいろ考えたよ。

・・・・


やっぱり、彼女には負けた気分だったし・・・・。」




「ミサキとは職種が違うじゃん!!

なんで気にするの??」




「なんでだろうね??




今までね、自分の仕事には自信とプライドがあった。

その辺の子には絶対負けないって!!

彼女の話を聞いて思った。

やっぱり、彼女は凄いよ。

だから、もう翔とはやっていけないって思ったの。」




「・・・ぇ・・・・・。」



翔の言葉が途絶えた。




「でもね・・・・思ったんだ。

これで翔とは最後だって決めたのは私じゃん。

それなのに、私まだ何も頑張ってないって!!

ちゃんと、頑張ってから終わりにしようって!!」




素直な気持ちを翔に告げた。





安心したのか、翔が話し出した。




「パッと目が覚めたら、ミサキが居ないじゃん!!

俺、かなり焦ったよ!!

とりあえず、コンタクト付けに行って・・・・



あんなにうろたえた姿、絶対ミサキには見せられないよ。」



私には、狼狽する翔の姿が目に浮かぶ。





いつも翔は優しい。

どんなに酷い事をしても、私を責めるでもなく・・・・

ちゃんと話を聞いてくれる。




このままじゃダメだと分かっているのに

止まらない妄想が私を苦しめる。





始まったばかりの恋なのに・・・・

いつも火が消えそうな事ばかり・・・・。


すっかりブログも怠け癖が出てしまい

更新しない日々が続いています。





いつも2人の私が葛藤しています。





このまま書かなくてもいいよ、ほっときな!!





ダメだよ。自分で書くって決めたんだし

気分が乗るときだけでも書きなよ~!!






戻れない路の中の私は

もう過去の私です。




過去に拘ってるから、今も

キチンと前に進めていないのかも・・・・・。





そんな風に思う事もあります。





過去を清算するために書き出したブログが

過去にとどまる理由になっているのかも・・・・





そんな風に思ってしまったり・・・・・。





私は、あの頃から今も・・・・・

いつまで経っても矛盾して生きています。





気が付けば、また夏ですね。





大好きだった夏だし・・・・・

大嫌いになった夏でもあります。





色んな想いが交差する中で

出逢いがあり、別れもある。





泣いて笑って、やっぱり泣くけど

なんだかんだで私は今も笑って生きています。





戻れない路・・・・・

自分の中で、いつまで続くねん!!って

気持ちを隠しきれないですが・・・・・




これからも、お休みばかりで

あまり更新しないかもしれませんが・・・・・





もしかしたら、途中でやめちゃうかも知れませんが・・・・・





どうぞ、これからも宜しくです!!

もう、翔が何を言っても頭には入らなかった。





腕をつかまれ、強引にキスされた。





時刻は、午前4時だった。





あと少しで、夜が明ける。





「・・・・もう、寝ようか!!」



今の状況では何も変わらない。





私の言葉に、翔は



「ホント??寝る???」



頷いた私を見て、安心したかのように

ベッドに行った。




腕枕をしてくれる彼に背を向けて・・・・・目を閉じた。






でも、眠れるはずなんて無かった。





翔は、私のワンピースのチャックを降ろしながら



「ねぇ ミサキ・・・・寝ちゃうの?」




その言葉に、返事はしなかった。





目を閉じたまま動かない私の背中に

翔は何度かキスをした。





でも、あっと言う間に、彼は眠っていた。









私は、そっと体を起こした。

いろんな事が整理できないまま

頭の中で渦巻いていた。





翔は、眠っているというよりも

ただ目を閉じてじっとしているだけ。




寝息もたてない彼は、とても綺麗な寝顔。

そんな寝顔が、羨ましいと思った。






その寝顔を見つめながら、私は立ち上がり・・・・・

そして、カバンを持った。





ドアをそっと閉め、玄関で靴を履く。





玄関の鍵をゆっくり回し・・・・扉を開けた。





一度後ろを確認してから・・・・・ドアを閉めた。







気が付くと、車に乗っていた。





運転しながら、考えた。





私は、どうしたいんだろう・・・・・・。

私を、突き落としたのは翔がした彼女の話だった。




翔と彼女は、名古屋のホストクラブで出会った。




その時、翔はその店のNo.1ホスト。

その頃、私は翔の店にはもう行かなくなっていた。



ちょくちょく連絡があったが

私が、彼氏が出来た。

そう告げた日から翔から電話は来なくなった。




その頃、翔にもたくさんの彼女がいたのだろう。




ホストを辞めた話は3年前に聞いていた。

誰の為に働いているのか分からなくなり

バカらしくなって、辞めたのだ。




と言うよりも・・・・・翔は飛んだ。





そして、名古屋から出て関西に来た。



元々彼女は、いろんなホストクラブでツケをたくさんしていて

どこの店でも、追い込みが掛けられるほどだったらしく

翔が、彼女を先に関西に来させていた。



翔のエースは、他にいたらしいが・・・・・

翔は、彼女を選んだ。




名古屋では、No.1ではなかった彼女も

今では、高級店の看板らしい。




翔は、名古屋を捨ててこっちに来て

彼女と暮らし始めた。




そして、彼女からお客さんの話を聞いては

「この客には、こうしろ。」

アドバイスをして、たちまち彼女は、

高級ソープで売れっ子になったらしい。




毎週、チップに100万円を置いていく客がいたり・・・・

お客さんに貰うプレゼントは、半端なかったらしい。





私が落ちた理由は一つ。




私だって、クラブホステスだ。

今まで、自分の仕事にプライドと自信を持っていた。

お客さんの数も売り上げも・・・・。




それが一気に崩れた感じだった。




職種が違うと言われれば、そこまでだが・・・・

同じ、女で勝負しているには違いない。




私のプライドが傷ついた。




そんな女と今まで一緒に暮らしてきたのに・・・・

私には、何が出来るんだろう・・・・・。




冷静に考える事が出来なくなった私には

もう無理だと思うほか無かった。

思考回路が、止まってしまったのだから・・・・。





もう、翔の言葉なんて耳に入らない。





どうすれば・・・・・。





翔から離れる方法ばかり考えていた。

それは、とても暑い日だった。




夕方に、翔の家に着いた。

部屋に入った私を見て、翔が言った。




『ミサキのワンピース姿見るなんて

2回目くらいだろうなぁ~。珍しいね。」



最近、翔に会うときはジーンズばかりだった。




「今日、暑かったから~。」




そう言った私に対して・・・・・




「ワンピースって涼しいの?」



素朴な疑問が返ってきた。




まぁ ジーンズよりは涼しいだろう。






しばらくして、ご飯を食べに出かけて・・・・・

なぜか、喧嘩になった。






と言うか・・・・・

私がまた一方的に”無理”と言い出したんだけど・・・・。





原因は、翔が何気なくした彼女の話だ。

もしかしたら、聞いたのは私なのかも知れない。

墓穴を掘った。





いつもなら、食事をした店で結構長く飲んでいるので

そのまま家に帰るんだけど・・・・・




その日の翔は違った。




「もう一軒行こうよ!!」



「もう帰ろうよ。」



私の言葉なんて耳に入っていない。




「いやだ!!

このままじゃ帰れない!!

もう一軒行くんだ!!!」



駄々っ子のように引き下がらない翔と共に

もう一軒バーに行く事にした。




私は、もう翔が何を話していても

ただ通過するだけで、言葉が頭に入ってこなかった。





行ったお店も3時でラストオーダー。

やっとお店を出る事が出来た。




帰り道、いつものように手を出す翔。

私は、見てみないふりをした。




壁際を歩く私。

翔のいる方にカバンを持つ。




なぜか喧嘩をすると手を繋げない。

生理的に無理になるんだ。




仲直りしたいはずなのに・・・・・

ここで手を繋げば、いつもの2人に戻れるのに・・・・





無理だった。




翔のマンションに入るのは躊躇いがあったが・・・・

入らないと、翔とその場で言い合いになるのは

目に見えていた。




部屋に入り、壁にもたれていると翔が・・・



「無理ってなんなんだよ!!

無理じゃないだろ??」



話をむしかえした。



「彼女には、敵わないと思ったんだよ。」




そう呟いた私の心は

初めて味わう彼女への敗北感でいっぱいだった。