アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

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本年(2017年)10月4日、すなわち ゆるめるモ!結成5周年の記念日にリリースされたこのEP盤は、5周年という節目にふさわしく、ジャケットデザインはロック史に残る名盤、トーキング・ヘッズの『REMAIN IN LIGHT』のパロディという大ネタ使い。しかも(これまでの作品もそうであったのように)裏ジャケから帯に至るまで完璧なオマージュを披露。つかみはバッチリである。

そしてリスナーは、冒頭の「NEW WAVE STAR」を聴いて、いきなり、彼女たち(とプロデューサーの田家大知氏)がいかに本気であるかを思い知るだろう。Aメロや間奏パートは完全にトーキング・ヘッズを摸したサウンド。筆者は度肝を抜かれた。しかもこの曲では、メンバー自身が初めて作詞に取り組んでいる。各メンバーが出し合った歌詞を組み合わせて作られたようだが、ナンセンスなようでリズムや韻を整え、投げやりなようで本質を突く言葉の数々が、もう完全にモ!のセンスというか、メイン作詞家である小林愛氏のセンスであることに驚かされる。タイトルの「ニューウェーブスター」が彼女たち自身を表していることは明らかで、自分たちのアティテュードを宣言するかのような痛快な歌詞だが、最後の「なくさないで」「終わらないで」との言葉が切なく響き、複雑な余韻をもたらしている。

続く「あ!世界は広いすごい」は、モ!のバックバンドでドラマーを務めていたオータケハヤト氏(ex.ROCK'A'TRENCH)の提供曲。ウィーザーを思わせるパワーポップに太いシンセが絡んだサウンドと、それに素晴らしくキャッチーなメロディを乗せた、これまでのモ!には無かったスタイルの曲だ。「旅」をテーマにした歌詞は、日本各地のみならず海外へのツアー敢行しているモ!の活動とのシンクロを感じることがきる。(実際リリース後の11月に、韓国と台湾へのツアーを予定している。)「怖くないのは あなたみたいな笑顔に会えるから」等の歌詞が、メンバー4人から私たちファンに向けられているようで、泣けてくる。

最後の曲は、現在のモ!の代表曲にしてライブ定番曲である「idアイドル」を作詞作曲した後藤まりこ氏(ex.ミドリ)の2度目の提供による「永遠の瞬間」。ライブにおける「湧き曲」という立ち位置とは裏腹に、アイドルの心の闇を抉ったような歌詞が印象的だった前作だが、氏は今作においても、その独特のセンスを存分に発揮。可愛らしいメロディとドリームポップ的なサウンドでありながら、恋愛における屈折した心理を描いたと思われる歌詞は毒気を感じさせる。加えて、前作と同様に、アイドルが自身の内面を独白していると解釈することも可能だ。「ずっとみていてね ロマンティックな消滅の瞬間」との言葉をライブで聴けば、より切実な、生々しいリアリティをリスナーは受け取ることだろう。
ちなみに、この曲ではメンバーの「あの」ちゃんがギターで参加。シューゲイザーテイストを加えるそのプレイにも注目だ。

ゆるめるモ!はこの後、約2年ぶりとなる3rdフルアルバムのリリースを11月29日に予定している。それに対する期待を否が応でも高めてしまう、今回のEP盤だった。ちなみに、1曲目以外はiTunesやLINE MUSIC等の配信サイトで聴けるので、気になった方はぜひ気軽に聴いてみてほしい。