MSX研究所日記
Amebaでブログを始めよう!
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

「The Untold History of Japanese Game Developers」

クラウドファンディングの「KICKSTARTER」をご存知でしょうか?

クラウドファンディングとは「やりたいことがある、しかしそのための資金がない」そんな人が「やりたいこと」を公開して一般の人から広く資金を募るというものです。
売れるかどうか分からないものに対して出資が見込めない、そんな企画に対して広くコンセプトを提示して有志から資金を募るわけです。

KICKSTARTERはこの手のサービスとしては英語圏では既に有名で、色々なプロジェクトの成功例があります。
その内容は「オリジナルデザインの時計を作りたい」とか「CDを出したい」とか「素材にこだわったビーフジャーキーを作りたい」なんてものまで、多種多様です。

ゲーム開発の世界でも昨今の開発費の高騰から、クラウドファンディングによる資金集めが行われるようになりました。
中でも「WASTELAND2」というプロジェクトは目標額を大きく上回る資金集めを完了し、現在開発中と言われています。
「WASTELAND」というのは1989年にAplle2などで出た、MSX2と同世代となる筋金入りのレトロゲームです。国内では販売されませんでしたが、後に「Fallout」シリーズの原型になったことで有名です。「Fallout」は1と2が1997年と1998年に出たもののその後様々な事情からシリーズが止まってしまい、2008年に「Fallout3」が大ヒットして息を吹き返しました(3になってやっと日本語版も発売されました)。その過程で原典たる「WASTELAND」の知名度も上がり、「Fallout」とは異なる系統の続編「WASTELAND2」を作るプロジェクトに注目が集まったというわけです。ややこしいですが。

クラウドファンディングはいろんな形式がありますが、KICKSTARTERでは目標額に達しなければ支払いが発生しないため、それなりに安心です。
資金集めに成功して、プロジェクトが開始してもそれが完了するかどうかは主催者次第なので、「それなりに」ですが。

この方法の特徴としては、一般の顧客が先にお金を払う約束をする、というところでしょう。
必ずしも顧客になるわけではなく、純然たる寄付になる場合もあります。


さて、このblogで取り上げる以上は当然MSXがらみなのですが、そのプロジェクトがこれです。
The Untold History of Japanese Game Developers(語られざる日本ゲーム開発者の歴史)」


英国在住の「John Szczepaniak(ジョン・シュチュパニアック)」氏が日本のゲーム開発について一冊の本にまとめるべく企画を立ち上げたものです。
彼の気合いの入りぶりをMSX的に見てみましょう。

リンク先を下のほうに見ていくと、何やらMSX2版の「メタルギア2・ソリッドスネーク」(1990年)の箱を持った人物が現れます。

お名前は「Toshinari Oka」。この方、「ワイルドモンキー岡」氏をご存知でしょうか?

メタルギア2のオープニングには確かに出てきます。
メタルギア改Dの股間。

より詳しくは、ゲームの翌年に出たCDのライナーノーツを見ると分かります。

MSX版のサウンドトラック。(強調筆者)

岡氏の写真をクリックするとインタビューが読めます。内容はライナーノーツとの重複も多いものの、岡氏単独のインタビューはこれが唯一かと思います。
これはメタルギア関連の企画の一環として行われたもののようで、初代「メタルギア」のプログラマー、大塚氏へのものも見ることができます。「メタルギアソリッド」以降有名になった小島監督へのインタビューはそれこそいくらでもありますが、あえて監督以外のMSX2版やファミコン版のスタッフに注目した例はかなり少ないと言えましょう。

こんな感じで(MSX的にも)大変に期待の持てるプロジェクトなのですが、残り一週間くらいで目標額の80%ともう一息足りない感じです。
5万ポンドに対して4万2千ポンド強ですから、残り8千ポンド(120万円くらい)ですな。

さてKICKSTARTERでは「出資額に応じて受け取れるものを変えられる」というのも一つの特徴です。
もちろん全員を均等に扱うこともありますが、額に応じてプロジェクト完了後に受け取れるものが変化するものが多くあります。
普通のゲームにも「限定版」「通常版」というのが見られますが、出資額を任意で決められるため、より細かいランクづけが可能です。このプロジェクトもそうした要素がありまして、ページの右に書かれているのを簡単に説明すると…。

※£=ポンド、日本円は全て1ポンド150円換算。

£5(750円):本に名前が載ります。
£12(1800円):pdf版のダウンロード権。
£25(3750円):シルバーエディション(白黒印刷)の本が届きます。国際送料込み。
£33(4950円):シルバーエディションの本+pdf版のダウンロード権。
£35(5250円):ゴールドエディション(カラー印刷)の本。
£40(6000円):ゴールドエディションの本+pdf版。
£65(9750円):シルバーエディションの本+DVD。pdfはナシ。
£80(12000円):ゴールドエディションの本+DVD。pdfもあり。DVDにはインタビュー音声や写真などが入る模様。

さらに上には120ポンド(ゴールドエディションの本が2冊+DVD+質問権つき)、500ポンド(本が3冊+DVD+何ページか貰えるらしい)、5000ポンド(インタビューした人全員のサインつき)なんちゅうのもありましたが、このあたりは限定数に達したのでもう締め切られています。

ミリョク的なのは£80以上のDVD版でしょうか。この本、インタビューも本の中では英語になってしまうのですが、元の音声(インタビューそのものは通訳を介して日本語で行われるらしい)が聞ける(かもしれない)、というのは日本人的にもなかなかのプレミアムぶりです。

もちろん、研究所長たる私も出資の申し込み済みです。
以前の記事「MSX Cartridge Shop・買い方編」でも使ったPayPalが使えるので、手続きは簡単です。


KICKSTARTERは日本での知名度が低いせいか、今一つ日本からの出資者が少ない傾向にあります。
というわけで日本のMSXユーザーの皆様、本の値段としては高いかもしれませんが、ここは一つ皆でゼニを出してやっちゃあくれませんか。
もちろんMSXを持っていなくとも、日本のゲーム史を海外からの視点で論じてくれるのに期待する向きは、ぜひとも。

イギリス在住にしてPC-8801でしか出ていない「バトルゴリラ」(クリスタルソフト、1989年)がお気に入りというあたり、渋すぎますよ彼。
ちなみに最後の文章が意味分からんかもしれませんが、「comrade」=同志(ここ参照)、「CHARGE」=突撃という意味です。軍事ネタ。

週刊アスキーMSX30周年記念企画

週刊アスキーは買ってますか?
私は久々に買いました。

65ページ。

「MSX30周年企画・スロット&スプライト」の連載が始まったからです!
しかしアレですね。
1ページしかないんですね。
ページをめくるとそこはもう別世界、OUYA の記事です。ガッカリです。

もはや質をうんぬんするような分量ですらありません。
ぶっちゃけ言ってショボいです。
twitterなどでも「これしかないの?」「少ない!」と言った声が多数聞かれております。
皆さんがアスキーに寄せる声次第では増量とかもあるかもしれません!ここはユーザー一同でアスキーのヘッポコぶりを正しましょう。

この表紙が目印。

しかしアレですね。
実は公式サイトから該当ページ全体が画像で見られるのですが、サムネイルのくせして頑張ると字が読めてしまうというのはナニ考えてるのか分かりません。
電子版が最近始まったことと関係しているのでしょうか。営業妨害的な方向性で。

ところで、ここに気がついた方はいらっしゃるでしょうか。

文のところ。

なんだかとても懐かしい名前が。
いつの間にか公式サイトもなくなっていたのですが、何してたんでしょうねMSXA。
ともあれ、薄いながらもアスキー(とMSXA)が動いた意義は大きいと思われます。
本研究所はアスキー(とMSXA)を応援しています。

Wreck-it Ralph(シュガー・ラッシュ)と日本ゲームのお話(2)

はい、前回の続きです。
映画「シュガー・ラッシュ」の劇中ゲーム「FIX IT FELIX JR.」はどうやら日本のゲームらしい、というところまででした。

さて、この映画の原題は「Wreck-it Ralph(壊せ、ラルフ)」なんですな。

米国の公式サイトより。

この言葉、映画の中にはほとんど出てきません。(映画館では日本語吹き替えしかやってないので、断言は難しいのですが)
ほぼ唯一出てくるのが、序盤にラルフがサクランボ持って駅に入る際に名乗る時です。「ララ・クロフト」とトボけた後。一応、英語版のトレイラーでは確認できました。

そういうわけなので、「レック・イット・ラルフ」は単に当人の名前である、とも言えるのですが。
映画の題名なんですから、それ相応の意味があると思うのですよ。

この映画、悪役扱いに嫌気が差したラルフが、ヒーローを目指すお話であります。
そんな彼がゲームセンターで自分のいるゲーム機の向かいにあるレースゲーム「シュガー・ラッシュ」で出会った女の子、ヴァネロペとの物語が主軸です。

映画の主な舞台となるレースゲーム「シュガー・ラッシュ」も、日本から来たゲームであるらしいことを製作者が言っています。
インタビューを見ればそれが「マ○オカート」なのが丸分かりですが、そこはさすがアメリカ人。映画の中ではまさに砂糖に次ぐ砂糖、ギトギトのお菓子の山が日本らしさをまるで感じさせない仕上がりになっています。

それはともかく。
日本へのサービスのつもりなのか、日本公開版のみ一人のキャラクターが独自のものに差し替わっているそうです。

「ミンティ・サクラ」。日本の公式サイトより。

「ミンティ・ザキ」。米国の公式サイトより。実は、日本語版の予告編には出ていたことがある。

…すんません、映画を見た後に知ったのですが、この人どこに出てきてましたっけ。「ヴァネロペを無闇にイジメる集団」の中に埋没していて、ぶっちゃけ目立ちません。
そんなサービスよりも、日本語で書いたはずの文字がアップ以外では頻繁に英語に戻っちゃってるほうが妙に気になりました。車体の文字とか、メダルとか。

そらそうと、この映画のキモとなる2つのゲームが日本産(らしい)、というのは大変なことですよ。
残る「HERO'S DUTY」だけは「CALL OF DUTY」のタイトルと「HALO」の世界観を混ぜたようなバリバリの洋モノですが、2/3が日本がらみ。
前回触れた数々の小ネタも、明らかに日本のゲームたちに対してリスペクトが感じられます。

そこまでしてくれているのに、タイトルが「シュガー・ラッシュ」に変えられている。これが残念でなりません。

原題の「Wreck-it Ralph」は本人の名前ですが、この映画を最後まで見ると、ちょっと違った意味が見えてきます。
ゲーム「FIX IT FELIX JR.」を守り、自分の仕事に誇りを持つようにもなれたラルフ。
そんな彼にかけてあげるべき言葉こそ、「Wreck-it Ralph」なのではないでしょうか。

映画の冒頭で、ゲーム「FIX IT FELIX JR.」で壊れたアパートの住人から「FIX-IT FELIX!」とみんなから声をかけてもらいます。
誰も「Wreck-it Ralph」とは言わないんですね。当たり前ですが。アパートの住人からすれば、迷惑行為ですし。
しかし彼らも最後にはゲームにラルフの破壊が不可欠と分かる…のですが、ゲームの中で「壊して!」とは言いません。

で、あるならば。
これは、映画を見た人がラルフにかけてあげるべき言葉なのでしょう。

「シュガー・ラッシュ」になってしまったのは…「覚えにくい」とか色々と理由を思いつきはしますが、やはり変えてほしくはなかったなあ、と思ってしまうのです。
考えすぎかもしれませんが、ラルフの出てくるゲームが「日本のゲーム」かと思うと、余計にそんな気持ちになります。
映画を見た後にいろんな人の感想を読んでみましたが、「ザンギエフは悪役じゃない」とか「コナミコマンド」とかの小ネタへの反応こそよく見かけたものの、「FIX IT FELIX JR.」を日本のゲームとして見たときのツッコミをついぞ見かけませんでした。

ま、本筋には全く関係はないです。素直に見て素直に楽しむのもアリでしょう。所詮は架空のゲームですし。
しかし、これって「日本人が日本の文化に関心がない」という、いつもの構図にそっくりなんですよね。
海を渡った先で30年、一人孤独に苦しむラルフ。彼を送り出した(という設定の)日本人が、彼に一番関心がない。
そんな冷たさ、無関心が、図らずも映画のタイトル改変に現れてしまっている、そんな気がするのでした。


~おまけ~
「シュガー・ラッシュ」の作中では、「バーガータイム」の名前も見かけました。(よく見ないと分かりませんが)
日本のメーカーである「データイースト」の作品ですが、これも近年までオリジナルが動作する環境はほとんどありませんでした。
「バーガータイム」は磁気テープを使う「デコ・カセットシステム」上で動くゲームのため、駆動部分のゴムが溶けるなどしてマトモに動くものはほとんどなかったのです。
(バーガータイムに限っては、磁気テープを使わないバージョンも存在していますが)
これを憂いた日本在住のフランス人が私費で研究し、代替部品を開発するなどして動作させる状態に持って行ったことはあまり知られていません。
興味がある人は、調べてみてください。

Wreck-it Ralph(シュガー・ラッシュ)と日本ゲームのお話(1)

ディズニーが2012年冬に公開した映画「シュガー・ラッシュ」を見てきました。
や、面白かったですよ。綿密な脚本が素晴らしいデキであったと共に、MSXらしさがほんのちょっぴりゴミ箱に捨てられてました。チクショウ。
というわけでMSXのことしか扱わない当ブログのターゲットとさせて頂きます。

さて、この映画は古いビデオゲームたちに焦点が当てられています。閉店後のゲームセンターの筐体の中では、仕事を終えたゲームのキャラクターたちが生活している…というメルヘンチックなお話しなのですが、悪役はなぜか差別されているのでした。
たくさんあるゲームの一つ、「FIX IT FELIX JR.(直して、フェリックスJR)」というゲームの悪役「ラルフ」が映画の主役。
ゲームの中で30周年を祝うパーティが主役のフェリックスを中心として催されるのですが、ラルフは悪役だからみんなに呼ばれない。無理にパーティに行くと冷たい視線を浴びせられる。
そんなラルフが一発奮起してヒーローを目指すというお話しです。

しかし、別のゲームにラルフが行ってしまった結果、ゲーム画面からラルフが消えてしまいます。
結果マトモに遊べなくなった「FIX IT FELIX JR.」はゲームセンターのオーナーからは故障扱いをされ、ゲームの住人は大騒ぎに!
このまま故障とされてしまったら、ゲームセンターから撤去されてしまう!

お前ら、自分たちの仕事を30年間理解してなかったのか!

ラルフのボイコットまで、気づかなかったアホな連中にとりあえず腹が立ちますね!
もっとも、それを言っちゃあこの映画は成り立ちません。
ひょんなことから迷い込んだ「シュガー・ラッシュ」という別のゲームの中で出会った少女、ヴァネロペとの友情、勝利、そしてラルフの職場復帰までを描いた作品です。


で、この作品は、日本のゲームに対して凄い敬意を払っているのが分かります。
トレイラー(予告編)が公開された時にちょっと話題になりましたが、「パックマン」の敵、グズタや「ストリートファイターII」のベガやザンギエフ、「スーパーマリオブラザーズ」のクッパやらがカメオ出演しています。こいつらはゲーム業界の「悪役の会」とでも言う会合で、寂しく互いを慰め合っておりました。ベガはまだしもザンギエフが悪役というのはおかしいのですが、たぶん見た目で起用されたものと思われます。胸毛とか。

しかしこの世界は思いの外シビアでして、悪役でも仕事があるのはマシなのです。
人気がないゲームは撤去され、失業する運命が待ち構えています。
小島監督のtwitterの発言に、こんなのがありました。

小島監督のtwitter(2013年3月31日)。

私は「シュガー・ラッシュ」を劇場で見ました。見て良かったと思います。
家庭で味わえない劇場の醍醐味の一つは大画面ですが、もう一つ「観客同士の一体感」があります。
知らない人と同じ映画を見て、同じ空間で共に笑い、感動する。「ストリートファイターII」(1991年)のリュウとケンが出てきた時、客席に笑いが漏れました。お父さん世代直撃のゲームですからね。

で、「Qバート」の彼が出てきた時。
私は笑いそうになったのですが…

こんなの。

劇場が、静まり返りました。
理由は分かりきっています。誰も声こそ上げませんが、心の中で思っていたことでしょう。
「誰、コイツ?!」

みんなで見ている映画なのに、なぜか孤独感を味わうハメとなりました。
しかしそりゃまあ知りませんよね「Qバート」。小島監督のツイートにある「『Qバート』のMSX版」というのはこんなです。

MSX版。

中央の白い恐竜みたいなのが主人公なのですが…。そう、上のタコみたいなのとは別物です。
説明書内でも明確に別物と記されています。恐竜モドキの名前は「アップ君」と言うのですが、本来の主人公は…

ひどい紹介。

わけのわからんキャラクター呼ばわりされた上に…

「ちゃんちゃん」じゃねえよ。

経緯がよく分からないまま「アップ君」に差し替えられてしまいます。MSX版の説明書を何度読んでも、交代劇の内幕が見えてきません。
ともかくも、「シュガー・ラッシュ」よりも先にMSX版では失業していたという事実に涙が止まりません。

さてこの「Qバート」、オリジナルは1982年、ゴットリーブ(Gottlieb)というメーカーから発売されたゲームです。
ゴットリーブというのは日本ではほとんど知られていませんが、ビデオゲームよりもピンボールの老舗メーカーとして有名です。
ビデオゲームはいま一つコレといった作品がないのですが、この「Qバート」は古くからアメリカで愛されている作品なのですよ。
しかし日本では前述のMSX版の他に「オセロマルチビジョン」「(初代)ゲームボーイ」、あとスーパーファミコンの「Qバート3」くらいしか移植例がありません。
MSX版以外は割と本家に忠実で、キャラクターもタコみたいなアレです。

「シュガー・ラッシュ」は、日本のゲームに対する深いリスペクトがあるのですが、その反動として作中のゲームセンターで長く生き残っているゲームは日本製、撤去されるものはアメリカ製になってしまっています。そのため、日本の観客に分かりにくい「Qバート」が妙に目立ってしまうという現象が起きているのでした。

さて、主人公のラルフが出てくる「FIX-IT FELIX JR.」。これは古くからゲームセンターで生き残り、栄枯盛衰を見つめてきたゲームとして描かれています。
映画の冒頭で「アステロイドもセンチピードもいなくなった」とラルフが言うのですが、激しく入れ替わるゲームの中で「パックマン」や「スペースインベーダー」は作中のゲームセンターに今も生き残っているんですね。「アステロイド」も「センチピード」も同じくらい有名な古典なのですが。容赦ありません。

そこで気になるのは、「FIX-IT FELIX JR.」は「どこの」ゲームなのか。
もちろん、実在しない、架空のゲームです。
画面を食い入るように見つめると、製造年とメーカーが分かります。
「TOBIKOMI CO.1982」。
筐体には「Tobikomi of America Inc.」ともあります(なぜか、Webサイトのゲーム画面では1983年になっていますが)。

「TOBIKOMI」。「飛び込み」というのは会社名としていささかヘンですが、日本のメーカーのゲームらしいんですね。ディズニー映画なのに…。
しかし、アメリカの会社だったら「オブ・アメリカ」がつくはずもありません。日本のメーカーと言い切ってよいでしょう。

さて、ここまではヨタ話。本題は次回と致しましょう。

ライトノベルとMSX(4)・妹戦記とMSX

皆さんライトノベルは読んでいますか?と、そろそろマンネリにも程がある当ブログです。
さて今回は「中二病でも恋がしたい!」の原作1巻に出てくるMSX描写について語り尽くしたいと思ったのですが、急遽2013年に彗星のごとく現れたMSX小説を紹介したいと思います。

妹戦記デバイシス」(日下一郎・著、スマッシュ文庫)
2013年1月13日発売。

「諸君!よい小説とは何か!」
「MSXが出てくる小説のことであります!」
「よろしい!では出てこない小説は?」
「普通の本であります!」

当ブログが採用している基準によれば、この本はとてもよい本です。
MSXが、たくさん出てきます。
残念ながら表紙だけ見てもMSXらしきものは全く出てこないのですが、表紙の右上を飛んでいる飛翔体。
それこそが、タイトルにもなっている「デバイシス(妹戦機)」です。
あらすじは以下の通り。

デバイシス、それは迫り来る「妹」の侵略に打ち勝つために人類が作り上げた最後の希望である!
そしてその最後の希望には「妹」の影響を受けないように、過去のテクノロジーで作られたMSXが載っているのだ!

どうだ!ワケわかんないだろう!

…ホントにワケわかんないですね。作者の頭はどうなっているのでしょう。
本質は割と真面目な侵略SFなのに、妹とMSXをトッピングした結果としてとんでもなくカオスなシロモノになっています。
ライトノベルにおいて「妹」と言ったらアナタ、まあ家族であったり、信頼できる相手であったり、ほのかな恋心を抱く相手であったりするわけですが、この小説においては敵であり、またそれに対抗する概念として存在しています。
人類側に限定して言うと、ある種の限られた才能を持った男女のペア一組を「兄」「妹」として信頼関係を醸成することで生まれる力で、敵に対抗するのが「妹戦機」です。
MSX版「グラディウス2」における「リークパワー」みたいな、個人の資質に依存する兵器みたいなもんですね(雑な理解)。
しかし、「兄」が「妹」に対してエロい妄想を抱いたりすると墜落するというオモシロ設定が生きています。
説明するのはあまりにもアレなので、このさい買って読みましょう。

さて、MSXの描写について。
「高性能の集積回路ほど奴らの影響を受けやすい」ために「MSXとかいう大昔の化石みたいな国産コンピュータが使われている」(p.14)と、状況設定に応じて使われています。無人機に搭載されるMSXは使い捨て(えー)。中盤では、主人公の搭乗メカのMSXもMSX2に進化!ウソみたいですが本当です。

ちなみに著者・日下一郎氏のtwitter(ichiroukusaka)では、本編に出てこない裏設定が語られていたりします。
「MSX32台同時起動」「実はMSXでゲームも遊べる」とか。なんだそれは。さらにはBGMとしてコナミのSCCモノをお勧めするなど、一般の読者には実現困難なツイートまで。

MSXの出てくるページ。数えるなよという指摘は受け付けない。

当ブログの分析によりますと、今のところMSXを出したライトノベルはことごとく(「偽物語」「這いよれ!ニャル子さん」「それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ」「ベン・トー」等。記事にはしていないものの「中二病でも恋がしたい!」にも登場)、映像化されております。
というわけで、「妹戦記デバイシス」がアニメ化されるかどうかに期待が集まります。

気が早い?
この「デバイシス」、なにせPHP研究所のスマッシュ文庫なのでなかなか売ってないんですよね…買ったのは京都・二条駅の近くの本屋でしたが、棚差し一冊だけでした…。
いや、そんなことではいけません。明日への希望を持ってこそのMSXユーザーです。同時刊行の「未刊少女ラヴクラフト」に負けてはいられません!だいぶ向こうに話題をさらわれてますが。
ただあまりにもSFしすぎており、「妹萌え」を期待しすぎると明後日の方向を向いている内容に戸惑うかもしれません。個人的にはロナちゃんは良いと思うんですが。

というわけで、当研究所では日下一郎センセイを応援しています。

ライトノベルとMSX(3)・カセットテープと中学生とMZ-721

皆さんライトノベルは読んでいますか?前回 からわずか3ヶ月ですが、衝撃的な事実が明らかになりましたのでご報告致します。
当然のことながらMSXの3文字が出てくる青少年向けの小説についての紹介となるわけですが、今回はこれまでとは別次元の衝撃であったため、特別編とさせて頂きます。
何が特別かというと、副題をつけてみました。意味がないとか言わないように。さて今回はこちら。

偽物語 (西尾維新・著、講談社BOX)

箱絵の人(主人公の妹)は今回全く関係ありません。

前回も「偽物語」にMSXの記述があることを書きましたが、あちらは上巻、こちらは下巻となります。
説明は抜きにして、率直に行きましょう。161ページの記述がこれです。

「前にあいつの家に遊びに行ったとき、MSX2とかMZ-721とか、そういう古いゲーム機ばっかりあった(以下略)」

たった3行だけですが、画像もつけてみました。文章だけでは誰も信じてくれないのではないか、そんな気持ちが伝われば幸いです。
これは前回 も出てきた中学生「千石撫子」のことを、高校生の主人公「阿良々木 暦」が語るシーンです。
かなりサラリと書いてますが、何が問題だか分かりますか?

MSX2は前回も出てきましたが、問題はMZ-721。これはMSX界のマニア数人に聞いても「何だっけソレ」と言わしめた程のマイナー機です。
MZ-721というのはシャープから発売された「MZ-700」のことです。

MZ-700(シリーズ)の広告。写真に写っているのはMZ-731。

MZ-721というのはMZ-700のデータレコーダ(本体の右上にある、カセットテープのデッキ部分)を内蔵したものを指し、広告画像の「MZ-731」の中央奥側にあるプリンタがないやつです。
他に、データレコーダもないMZ-711というのもありました。ちなみにプリンタもカセットデッキも別売りで買ってくれば、MZ-711/721を後から731と全く同一のものにできます。
これらを総称して「MZ-700」と呼びます。厳密には「MZ-700」という商品は存在せず、型番としてはMZ-711、721、731のいずれかとなります。

しかし、本体には共通して「MZ-700」と書かれています。

広告(部分)の拡大。MZ-731の上面に「MZ-700」と書かれている。左の赤いのは当時のMZシリーズ共通のマーク「アルゴ船」。

さて本文をもう一度見てみましょう。「MZ-721」と書かれています。
データレコーダがある本体を見てさらりと「MZ-721」と分かる高校生。いねえよそんな奴
いや、問題はそこではありません。MZ-721のオーナーはあくまでも女子中学生の「千石撫子」です。
MSX2は(不本意ながらも)ゲーム機と呼ばれるのは割と一般的にあることです。あえて否定もいたしますまい。
しかし、文中ではMZ-721もゲーム機呼ばわりです。これは国内初の快挙ではないでしょうか。

分かりやすく解説しましょう。MZ-700というのがどんな機械であったのか。
MZ-700というのは1982年、MSX1の前年に出たパソコンです。ヘボいと言われるMSXよりさらにヘボいというそのスペック、それを知るには色々と有名な「マッピー」が比較としては適当でしょう。各機種版をご覧あれ。

アーケード(ゲームセンター)版「マッピー」。画面が縦長なのは、モニタを縦に使っていたため。

ファミコン版「マッピー」。画面が横になったので階数は減ったものの、イメージは忠実に移植。

我らがMSX版「マッピー」。いろいろ単色なのはハードの限界。残念移植の代表格の一つ。

MZ-700版。…何というか、すまない。

これを見ればMZ-700がどのくらいヘボいのか直感で分かりますね?!
MZ-700版を見た後なら、一見褒めようのないMSX版すら「ミューキーズがネコの形をしている」と言わしめることが可能である、そんなことにお気づきかと思います。
「アリモノの三角とか四角を組み合わせる他に絵が出ない」仕様であったため、低価格は実現したものの他に色々なものを失ってしまったパソコンでした。
画面にある「テレビ」「カセット」「キンコ.」、文字通り変わり果てた姿のマッピー達、これらを見て涙しなかったものはおりません。
映ってないけど「モナリサ」というのもありました。アーケード版画面の左下に元の姿が見えますが、元々は「モナリザ(の絵)」でした。濁点すら削除が必要だった、かなりの惨状です。
それがために、MZ-700版「マッピー」は今日でも通称「モナリサ」と呼ばれています。嘲笑と同情が半分ずつ込められたこの一言が、21世紀にまで語り継がれているのです。
残酷なことに、MZ-700の翌年に出たMSX1はさらに安く、表現力もやや豊かであったため、MZ-700は短命に終わりました。しかしMSX同様に貧乏人パソコンの常として、ごく一部の熱心なマニアが今も独自のMZ-700界を作り、支え続けています。

それはそうと、この「偽物語(下)」は2009年6月が初版です。時代設定はあくまでも現代で、随所の描写からも第一巻となる「化物語(上)」の2006年をさかのぼることは考えられません。
そこに出てくる女子中学生MZ-700ユーザー。ありえなさすぎます

ついでに言えばMZ-700の市販ゲームはほぼカセットテープでのみリリースされています。
前回 、私めは「MSX2のメタルギアはテープにしかセーブできない」と書きました。率直に言えば、作者がその事実を知らないで適当に小説に書いたのだと思っていました。
違いました。
現代に生きる女子中学生「千石撫子」はカセットテープでセーブもロードも自由自在にできるのです。MZ-721をゲーム機として使う、となればカセットテープは絶対に避けて通れない道です。
恐るべきは西尾維新。メタルギアすら伏線にするとは、さすがは平成のヒットメーカーです。

しかし何でこんな理解の難しい描写を入れたのでしょう。ネットで調べても、MSX2の記述を過去のツイッターに数件見かけたきり。MZ-721に至っては、全く引っかかりません。

-----

仮説1)実は虐待の描写だった。

「物語」シリーズのヒロインは、何らかの形で家庭に問題を抱えています。(離婚、死別、虐待など。後のシリーズですこし崩れますが)
しかし「千石撫子」だけは例外的にそれがありませんでした。むしろ両親と仲良くしているところを他人に目撃すらされています。
さあそんな中でMZ-721ですよ。
平成も20年代の今、MZ-721(MSX2も)をゲーム機として運用するのは並大抵のことではありません。親がこっそりと修理するなど、手間のかかる処置が必要になってきます。
そこまでして娘を近代のビデオゲームから遠ざけたかったのでしょうか。千石撫子の両親はストーリー中にほとんど登場しないためにその心中を推し量るのは困難ですが、だとすれば相当にアブナい人たちです。MZ-721をゲーム機と信じさせる、割と斬新な虐待と言えるのではないでしょうか。

もっとも、最初に紹介したMZ-721の描写の直後に千石撫子がニンテンドーDSを買ったことが書いてあります。それでも親に騙されていたことに気がつかない千石撫子。あまりにもいい子過ぎます。「いい子」というのは後に重要なキーワードになるのですが、そこにMZ-721を持ってきても誰も分かりませんよ西尾先生。

-----

仮説2)実は作者がMSX2とMZ-721ユーザーだった。

むしろこちらの方がありえる線かと思われます。今日では考えられない、デジタル保存媒体としてのカセットテープの使いにくさ(遅い、しょっちゅうエラーが出る)に枕を濡らした経験者ということになります。
1981年生まれ(Wikipedia情報)というのはカセットテープ世代としてはいささか若いのですが、親や兄弟が該当するパソコンを持っていれば、特に不自然でもありません。
誰かが気がついてくれることを願って、そっと意識的に、あるいは無意識に自作に織り交ぜた「MSX2」そして「MZ-721」。そんな作者の心のSOSは、講談社の編集部には伝わらなかったのでしょう。
MSX2はともかくも、MZ-721という型番指定は持ってた人でないと絶対分かりません。私も友人がMZ-731を持っていなければ理解できなかったはずです。
まあ当然のように本来の読者層の人も誰も気づかなかったわけですが。私も読んだの最近なので。

2011年6月発売の「囮物語 」では久々に主役を張った「千石撫子」が大変なことになってしまいました。
こんな展開になったのは、もしかしたらこのMZ-721の件を誰にも気づいて貰えなかったせいではないかという気すらしてきます。物語の犠牲になる若きヒロイン、実に悲劇的ですね。
MSX界とMZ-700界のいずれかで早期に気がついていれば、作者を我々の胸で存分に泣かせてあげたのならば、あるいはこうした話にならなかったのかもしれません。大変残念です。

ちなみに「囮物語」にはMSX2もMZ-721も出てきませんでした。私としてはガッカリです
そんな感想を抱いているのは世界でただ一人だと思いますけども。

-----

さて、最初に掲げた「偽物語(下)」の箱絵ですが、丸いシールに「傷物語/製作決定」とあります。
これは大ヒットしたアニメ「化物語」の続編「傷物語」の映画化決定を指しています。
MSX2とMZ-721が登場する「偽物語」はさらにその次の話となるため、アニメ化されるかどうかは今のところ分かりません。

しかし状況次第ではMSX2やMZ-721で遊ぶ千石撫子が見られるかもしれませんよ。
「まさか、それはない」と思うでしょう。
ところが調査の一環として視聴したアニメ版「化物語」では「達急動(たっきゅうどう)」について語る千石撫子の姿が映像になっていました。これは「ビックリマン」のTVアニメ(1987年~1989年)を知らないとギャグが成立しない上、字で読める小説ならまだしも音読されるとまるで意味不明のフレーズであるにも関わらず、きちんと意味不明のまま映像になったのです。

というわけでMZ-721が地上波に乗る日は近いと踏んでいるのですが、問題は制作側が資料不足に悩むのではないかという点です。
MZ-700ユーザーはいつ資料提供を求められてもいいように準備が必要です。美少女フィギュアにMZ-721の1/6ミニチュア付属(withマッピー)、といった夢のある展開も考えられます。チャンスは逃さないようにしましょう!

「青春少年マガジン 1978~1983」とMSX

今回は小林まことのマンガ「青春少年マガジン 1978~1983」をご紹介しましょう。

表紙。最近の版では帯がないのが多いです。

小林まこととMSXの関わりというのはあまりないのですが、マイクロキャビンから「What's Michael?」(ホワッツ マイケル)のアドベンチャーゲームが1989年に発売されていたことをご存知の方もいるでしょう。

MSX2版マイケルのパッケージ。

この「マイケル」のマンガは大ヒットしましたが、このゲーム版は間違いなくクソゲーです。それも割と類を見ないくらいのダメっぷりを誇り、通称「キャビンの版権アドベンチャー」と呼ばれたマンガ・アニメ原作ゲーム(めぞん一刻/めぞん一刻・完結編/うる星やつら/きまぐれオレンジ・ロード)のシリーズ中でも最後発なのに最低のデキと評判でした。私も一応最後まで遊んだものの、淡々とした道中に意味も無くマンガのキャラが通り過ぎていくだけで、失踪したはずのポッポを見つけたら別に事件性はなかったという噴飯モノの作品だったことをかすかに覚えています。「は~りぃふぉっくす」が出た5年前ならともかく、スナッチャーとか出た後にこれはない、そういう意味でだけ貴重な作品です。

さて今回の焦点はマイケルではなく、小林まことの初連載作「1・2の三四郎」が週刊少年マガジンに連載される前後を描いたこのマンガ「青春少年マガジン 1978~1983」です。2008年秋に「週刊少年マガジン」に集中連載されたこの作品は、当時のマンガ界の熱気と週刊連載のマンガというものがいかに命を削るか、ということを当事者が描いた壮絶な内容で、これを読んだらプロのマンガ家にはなりたくならないでしょう。同期の新人が二人消えていく、その過程に声が出なくなる力作です。

そんな中で、デビュー前の序盤に「もろが卓」という新人マンガ家が出てきます。
「青春少年マガジン」単行本32ページより。新人賞の授賞式の後のシーン。

この「もろが卓」氏との出会いは1ページを丸々使って描かれているため、妙に印象に残ります。

同書32ページより。再会を期する二人だが…。

ところが、この後「もろが卓」氏は全く出てきません。何があったのでしょうか。
率直に言って「もろが卓」というマンガ家は全く聞いた事がないので、インターネットで軽く検索をかけてみました。
すると意外な事実が判明。

ガスコン研究所・■青春少年マガジン1978~1983
>「この漫画の中に若き日のガスコン爺も、「もろが卓」という名前で、ちょびっとだけ登場している^^;」

もろが卓=ガスコン金矢氏だったのですね。

良かった!生きてたよ!(「青春少年マガジン」を読むとそう思わざるを得ない)
ガスコン金矢氏は言わずと知れたMSXマガジンの副編集長です。
ブログの当該記事をよく読むと分かるのですが、「才能の限界を感じ」引退して、ということのようです。その先がパソコン誌編集者だったと、そういうわけでした。

で、さらに読み込むとすがやみつる氏がトラックバックをかけています。

読書:『青春少年マガジン 1978~1983』(小林まこと)
>「最初の方に出てきたもろが卓さんとは、原作者として一緒に仕事をしました。」

え、そうなの?!さらによーく調べると、「鶴見史郎」氏がイコール原作者としてのすがや氏に該当することが分かりました。
どうもそっちのスジからマイコン方面の知識が流れたようです。MSXマガジンを支えたガスコン氏の源流はこんなところにあったのですな。

マンガ家という人気商売の厳しさが余すところなく描かれた本作は、そっち方面に行きたい人には必読と言えましょう。
巻末にはデビュー作「格闘三兄弟」と共に、デビュー前の凄まじい情熱を垣間見られる習作の数々が掲載されており、小林まことの才能以上の努力があっての結果であるということも分かります。
よいこは真似しちゃいけませんね

青春少年マガジン 1978~1983(Amazon.co.jp)
青春少年マガジン 1978~1983(楽天ブックス)

ライトノベルとMSX(2)

皆さんライトノベルは読んでますか?前回 の続編となる第2回、2年ぶりのご無沙汰です。

世の中には良い本と普通の本があります。MSXユーザーにとって良い本とは「MSXが出てくる本」のことです。異論は認めない。面白さとは別。
そんなわけで最近は良い本が増えました。いい事です。ライトノベルというのは中高生が読者層の主体のはずなのですが、MSXなんか出してる場合なんでしょうか。それとも最近の中高生はMSXくらい分からないとモテないのでしょうか。ぜひともそうあって欲しいものです。ともあれMSXが意味もなく出てくる「良い本」の特集です。

這いよれ!ニャル子さん (逢空万太・著、GA文庫)



フツーの少年・真尋の前にある日突然現れた美少女宇宙人・ニャルラトホテプ(通称・ニャル子)。
一人の少年を複数の女の子が取り合うのが基本のいわゆるラブコメものですが、「宇宙人は地球のオタク文化が大好き」という仕様のため会話はおろか地の文ですら随所にマニアックなネタを仕込みまくるという作風(芸風?)が印象的です。あまりに多数のネタがブチ込まれており、作者にしかその全貌は分からないのではなかろうか、と思うほどです。
私は仮面ライダーなどには弱いので「這いよれ!ニャル子さん 元ネタwiki 」に常々お世話になっております。
自分でも気がついたネタはwikiに反映しておりますが、どうも中高生の取りこぼした古いネタを落ち穂拾いしているような気になってくるのが難点です。

ちなみに設定のベースとなっているクトゥルー神話(MSX2で出ていた「ラプラスの魔」の元ネタでもある)について全く知らなくても問題ありません。さて、MSXは3巻に出てきます。

-----
(P.105)
「……少年、対戦しよう」
 クトゥグアはクトゥグアで、何事もなかったかのような相変わらずのマイペースさでコントローラーをこちらに差し出してくる。今さらMSXで何を対戦しようというのか。そもそも我が家にMSXのソフトは一人用のアクションしかなかったはずだが。
-----

文中の「クトゥグア」(通称・クー子)というのも女の子です。こちらの目標は同性のニャル子を籠絡することであり、真尋はすなわち恋敵となります。ところが3巻の頃には居心地のよさからニャル子ともども真尋の家にいついてしまい、さらにはゲームを一緒に遊ぼうとすらしてきます。なんだそりゃ。
真尋の母親がレトロハードを買い集めるのが趣味で、この3巻には3DOだのレーザーアクティブだのが無意味かつ大量に出てくるのですが、我らがMSXについては描写がいささか具体性に欠けます。この後クトゥグアは一人でゲームを遊んでいるのにタイトルも分からない!「ブラウン管から流れるアクションゲームのテーマ曲」って何ですか万太先生!音が出るのはスピーカーじゃないのか!(問題はそこじゃない)
母親がレーザーアクティブのフルセットを5万円で買ったことを嬉しそうに真尋に報告する場面に比べるとMSX愛が足りません。そもそも「今さらMSXで」とは何事ですか真尋さん!好感度がダダ下がりです!そんなんだからアニメ化されてもFlash止まりなんですョ!


それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ (庄司卓・著、朝日ノベルズ)



覚えていますかヤマモト・ヨーコ。こちらのほうがMSX世代にはストライクかもしれません。つっても私は読んでませんでしたが、友人が大変懐かしんでおりました。「女子高生が未来に呼ばれて戦艦に乗り込んで戦いまくる」という設定が豪快なSF作品でした。
元は1993年から富士見ファンタジア文庫で始まり絶大な人気を誇ったシリーズで、1999年にはTVアニメ化もされています。ただ2001年を最後に本編の刊行が止まってしまい、最終刊が未だに出ていないのです。無理に引き延ばしたシリーズ物にはありがちです。
紆余曲折の末に改めて「完全版」(パーフェクトエディション)と銘打って再び最初から刊行されています。2011年4月現在4巻まで出ていますが、この1巻にMSXが出てきます。
※完全版は富士見ファンタジア版2冊を1冊にしているので、富士見版だと2巻になります。

-----
(P.338)
「あたしはゲーム雑誌なんて『BEメガ』と『ゲーメスト』と『ベーマガ』しか買ってないもの!」
 我ながら渋い趣味だ。ついでに言うと『MSXファン』も買っている。
(※表記は原文ママ)
-----

これは主人公であるヨーコ(ゲームマニアでもある)のお言葉です。「完全版」は2010年に出ていますが、中身は基本的に1993年当時のまんまでした。全編が当時のゲームやアニメなどのネタで埋め尽くされているので、修正不可能と判断されたようです。この2行ですら現代的に直すことがとても不可能なのは、このページを読むようなそれなりのマニアにはお分かりでしょう。
『BEメガ』は「BEEP!メガドライブ」、『ベーマガ』は「マイコンBASICマガジン」ですね。前者は誌名を幾度となく変えて「ゲーマガ 」として今も健在ですが、あとは全て休刊。

MSX・FAN(正しい表記)をゲーム雑誌から除外しているのは好感が持てますね!ベーマガも違うと思うけどまあ許す。
ところがヨーコ本人はX68000ユーザーで、そちらの描写が妙に細かいのが目につきます。自宅のEXPERTにメモリを増設して2MBにしているとか(X68Kは当初1MBを内蔵していたものの、後期の市販ソフトは2MB必要なものが多かった)。
当時(1993年9月)はMSX・FAN本誌には付録ディスク(3.5インチフロッピー)がついて高額になっていた上、MSX市場から市販ソフトも絶滅していた時期です。なぜにこのゲームオタク女はわざわざ買っていたのでしょうか。全くもって理解に苦しみます。そんなんだから最終巻が出ないんですね。


なれる!SE (夏海公司・著、電撃文庫)



ブラック企業で身を削って働くSEの生態を描いた(らしい)作品です。
単行本も3巻まで出ており既になかなかの人気があるそうですが、すみません本編は読んでません
元SEとしては思い出したくないあの頃を思い出してしまいそうです。ライトノベルは中高生に夢を与えるのが役割ですから!いいんです別に!
その割には「休日出勤」だの「深夜残業」といった単語が飛び交っていますが、それでも読みたい人は読みましょう(投げやり)。

さてMSXは本編には登場しません(たぶん)。今回は週刊アスキー2011年3/22・29日号に掲載された「番外編・CASE4」がターゲットです。

問題の誌面。キングコングCF-2000と室見先輩の図。

見開き2ページに渡ってMSXの歴史的ポジションが語られています。一見女子中学生にしか見えない年齢不詳の先輩SE・室見立華がMSXのことを懐かしさと共に褒めちぎるというベタ展開には好感が持てるものの、どこかぎこちなさが感じられます。本来なら諸手を挙げて喜ぶべき描写なのですが、なんでしょうこの書かされてる感。あまりにも定番すぎる紋切り型の褒め言葉が並んでいて、作者はMSXに触ったことがないのに書いているのではないか、そんなもどかしさが感じられます。「アスキー・メディアワークスだからMSXについては書かざるを得ない」という政治的判断でもあったのでしょうか。以前のトランプからはハブったくせに。
実は作者が熱烈なMSXユーザーだったりしたら大変申し訳ないのですが、これでは我々の渇いた心は満たされません。まあ中高生向けの小説に向かって筋違いの客が口を出すのもアレなので、このへんにしときましょう。
ちなみに番外編・CASE1~3にはPC-9801、PC-6001、FM-7などが出てきました。


偽物語 (西尾維新・著、講談社BOX)

右が問題の「千石撫子」。「化物語」DVDパッケージより。

西尾維新と言えば近年のヒットメーカーとしてつとに有名ですが、読んだことがありませんでした。講談社BOXって高いし。
さてそんな折に「ヒロインの一人がMSXユーザーらしい」という不確かな噂を聞いて手を出してみました。どういうわけか西尾維新の本というのは売れてる割にネットに具体的な情報が少ないのです。
以前「らじかるエレメンツ 」(白鳥士郎・著、GA文庫)というシリーズにMSXが出ると聞いて全3巻を読んでみたらよりによって「SM調●師瞳」(※)の間違いだったことが判明してブチ切れかけたことがありました。この「物語」シリーズは1冊が高いので慎重に行きたかったのですが箱入りのせいで立ち読みができないという問題があり、仕方が無いのでお小遣いをはたいて最初から順番に読みました!累積投資額が5000円を超えた頃、ようやくシリーズ4冊目に当たる「偽物語(上) 」にその記述が見つかりました。
(※)スーパーファミコン用の非正規アダルトソフトで、開発過程でMSXを使用したらしいとは言われている。そんな事実は別に嬉しくない。

さてこの「偽物語(上 )」は、「化物語(上 )」「傷物語 」に続くシリーズ3作目となります。高校三年生の主人公「阿良々木 暦」が怪異と呼ばれる一種の化け物と出会ったヒロイン達を助けて回る、というのが大雑把な筋書きとなります。エピソード毎に登場人物が最小限に絞られており、章ごとに主人公とヒロインとほぼ一対一で話が進むのが特徴です。

問題のMSXユーザーは「化物語(下)」が初登場となる「千石 撫子(せんごく・なでこ)」という中学生で、他のヒロインとの関係性が薄い割に突然ブルマ一丁になるなどシリーズ中屈指の販売戦略色の強いキャラクターです。あざといながらも事実として読者人気も高いそうなのですが、年齢設定上「こんな妹っぽい女の子がMSXユーザーのわけがない」と言いたくもなります。しかし心を強く持って読み進め、発見した記述がこれです!

-----
(P.74)
「じゃあ、テレビゲームもあんまりやらないのか。今はテレビがなくてもポータブルな奴でできるけれど」
「うん。あんまりやらない……有名どころを、ちょっとだけやるくらい」
「そっか。で、たとえば有名どころって?」
「メタルギアとか」
「あーあー」
「MSX2で」
「ああっ!?」
MSX2ユーザー!?
そんな中学生いるのかよ?!
相変わらず意外性のある女子だ。
-----

いや、これは凄い。記述は正確なのですが、ツッコミどころが満載です。
ここに至るまでの経緯からして、どうやら千石さんは主人公の阿良々木君に対して淡い恋心を抱いているらしいことが読み取れます。しかしながら見ての通り阿良々木君はドン引きです。しかもMSX2とわざわざ補足する必要がない。さらにこの後千石家のリビングにMSX2が常備されているらしい記述があるのですが、どういう家庭環境なのでしょう。「そんな中学生いるのかよ」と突っ込んでますが、そこに突っ込める高校三年生というのも物凄く無理がありませんか西尾先生。

さらにMSX2版メタルギアと言えばカセットテープにしかセーブできないというシロモノなので、我々MSXマニアをもってしても実機でのプレイにはかなりの困難を伴います。現代を舞台とした小説のヒロインに遊ばせるゲームとしてMSX2とメタルギアを持ってくるのは意外性を超越して意味不明です。
「MSX2」とわざわざ2回書いているのも見逃せませんね。いや、別に「MSX」だけでいいと思うんですが。

ちなみに「化物語」はTVアニメ化されておりますが、この「偽物語」は後日談の位置づけなのでこのシーンは今のところ映像化されていないようです。しないほうがいいと思うけど。



さて、4作品について解説してみました。いかがだったでしょうか?
どうでもいい?まあそう言いなさんな。
前回 の記事と合わせると、ここに一つの傾向が浮かび上がります。

「ベン・トー」「這い寄れ!ニャル子さん」「それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ」「化物語」、全て本編中にMSXが出てきます
そしてこの4作ともアニメ化されている、というのは決して偶然ではないでしょう。ベン・トーはまだ放映されていませんが、既に公式サイト があります。
「パララバ」と「なれる!SE」はそれぞれインタビューと番外編なのでノーカウントとすると、アニメ化率100%
アニメ化といやあアナタ、ライトノベルとしては一つの上がりというやつですよ。週に何十本というアニメが放映されていますが、それであっても作品がアニメ化されるというのは一握りの作品群のみ…となれば、もうお分かりでしょう。

結論:MSXを出しておけばアニメになる

言ってるそばからウソくさいですね!でもまあダメ元で一つヨロシク!なに、出すと言っても本編に関わりなく一瞬出て消えるカメオ出演以下の扱いで十分なのです。もしもMSXを出したのにアニメ化の気配がない、というのであれば、さらにシリーズを続けることによっていつかはアニメ化されることでしょう。信じるものは救われる。あなたの周囲にライトノベル作家がいたら、忘れずにこの事実をお伝え下さい。

こう書いておけば今年の秋以降からお守り代わりにMSXが無意味に出るような小説が増えるに違いありません。我々MSXユーザーはいたいけな少年少女がMSXに少しでも興味を持つことを祈りつつ筆を置きたいと思います。

俺の死因がチャック・ノリス!「ゲームになった映画たち 完全版」~買い占め騒動の巻~

「デマに惑わされないようにしよう」「不要な買い占めはやめよう」

震災後初めての更新となります、MSX研究所長です。
常に社会の規範となるべきMSXユーザーは買い占めなんてしてませんよね!
私は普段から(外に出たくない時に備えて)カップ麺やお米などはある程度買い置きしているので、当然ながらそのようなことは

右のは2008年版。

ない、はずだったんですが…。
想定外の事態が。

[言い訳編]
どうしても欲しい本ではあったものの、もともと1冊しか買うつもりはなかったんです。去年からAmazonで予約してたんですよ。
発売直前まで「予約してるから平気だもんね」と余裕をかましておりました。
以前に紹介した2008年版 にしてからが、売り切れまで1年以上かかっています。内容的にも「時間をかけてじっくり売れる」タイプの本と言えましょう。
ところが。

3月31日の発売日に届かない。発送もされてない。
 ↓
この時点でAmazonは「一時的に在庫切れ;入荷時期は未定」の危険シグナルが。楽天ブックスなどでも品切れ。
 ↓
twitter上では「去年予約した人がAmazonからキャンセルされている 」「3月に予約を入れた人では届いた人がいる」など、情報が飛び交う。
 ↓
僕の予約も発送される様子がない。そんな折、一瞬だけAmazonに在庫が復活。即購入。2冊届いても構うものか。
 ↓
「予約分のキャンセルは結局発送されない可能性が高い」という情報をtwitterで見る。ピンチ!
 ↓
秋葉原の書泉ブックタワーでは売っている 」という情報が。
 ↓
予約は諦めて秋葉原へレッツゴー。ブックタワーで無事1冊確保。
 ↓
帰宅。メールを見たら2冊とも発送済みに。
 ↓
翌日の朝と夕方に1冊ずつ届く。
 ↓
入手困難となった本が3冊僕のお手元に。
 ↓
著者の吉田氏、twitterでコメント「買い占め無双野郎だけには気をつけておくれ
 ↓
え~し~(公共広告機構)

MSX研究所長(買い占め無双容疑)「ついカッとなってやった。今は反省している」

下が2008年版。上が完全版。厚いよママン。

文字通りデマに惑わされて買い占め。しかも3冊
いつか「買わなきゃ男がすたる」本だと書きましたが、この買い方で僕の男がすたりました

著者と懇意で帯にコメントも寄せているチャック・ノリス (合衆国における死因No.2)に抹殺されても不思議はありませんね!
研究所長(すたれた男)が東京湾に浮いたら死因をお楽しみに!

本のほうはあまりの密度に息が詰まりそうなくらいの内容で、まだ全然読み込めていません。
前回なかったタイトルとしてMSX版アタック・オブ・ザ・キラートマト 』のパッケージや画面が拝めたりしますが、こんなもんが存在するとは恥ずかしながら全く知りませんでした。伝説のカルト映画をカルトPC向けにゲーム化するなどどこに需要があったのでしょう。企画時点で既に全く面白くなさそうですが、一目見るために世界の果てから発掘してくる著者の執念に頭が下がります。
内容についてはまた今度紹介します(生きてれば)。


とりあえず、購入はこちらを参考にして下さい。
ゲームになった映画たち 完全版(Amazon) …慢性的品切れ中。たまに数冊入るらしい?
ゲームになった映画たち 完全版(BK1) …まだ買えます。
書泉ブックタワー (書店・通販なし)…4月13日時点で7階のゲーム関連フロアに3冊残ってました。発売日近くには20冊くらいあったんですが。

「MSX Cartridge Shop」ご紹介(その2)・買い方編

さあ2回も別の話題を挟んでしまいましたが、第2回です。
今回は「買い方編」と題して、サルでもできるMSXカートリッジの注文法をまとめてみました。
英語は一切書かなくても大丈夫です。住所と名前がローマ字で書ければ平気!

なお、クレジットカード必須です。
「MSX Cartridge Shop」では銀行振り込みにも対応しているのですが、振込先が「Caja Madid」というスペインの銀行で、いろいろ調べてみましたが日本から振り込むと手数料が超高い(3,000円~)のと、振り込む手続きが非常に分かりにくいらしいので、パスさせて頂きます。
かつてヨーロッパへ通販を挑んだMSX界の偉大なる先人たちは国際銀行送金の壁を乗り越えて、あるいは現金を封筒に入れる(ブラジルなど、銀行送金不可の地域への唯一の方法だったそうな。当然パクられたら終わり)といった手法に頼ったと言い伝えに残っていますが、今はラクちんかつ安全なのでPayPalを使いましょう。

1.PayPalへの登録
PayPalのサイト にアクセスします。
「アカウントの開設」→「パーソナル」→「個人情報の入力」と進み、住所や名前を入力します。
この時、全てローマ字で入力しましょう。
ローマ字での表記の例があるので簡単だと思います。
クレジットカードも登録します。
このへんは企業のサイトなので大丈夫でしょう。
PayPalから届く完了メールでは「PayPalアカウントの認証」が薦められますが、送金額に制限がつくだけなので、特に必要ありません。
ちなみに制限があっても30万円くらいは問題なく送金できます。

2.MSX Cartridge Shopへの注文
MSX Cartridge Shopのサイト にアクセスします。
注文と同時に代金を支払うわけではありません。先方からのメールを待ってPaypalでの振り込みを行います。ご安心を。
トップページ。
まずは左の「Games」をクリックして、注文したいゲームを探しておきましょう。
「Flash」は何なのかは僕に聞かないで下さい。これが何なのか理解できる方ならどうぞ!

注文したいゲームが決まったら、「Order」をクリックします。
Orderページ。
①Name。ローマ字で入れましょう。例:「西和彦」→「Kazuhiko Nishi」。
②E-mail address。メールアドレスです。携帯のは避けた方が無難でしょう。自動応答の確認メールは来ないので、間違えないように!
③Choose product。どれが欲しいかプルダウンメニューで選び、「Add to list」をクリックすると下の「Order list」へ一つずつ追加されていきます。
 間違えたら④「Clear list」を押せばいいんですが、いくつ入っていても全部消えます。終盤で間違えても泣くな!涙を拭いてやり直せ!
⑤Payment。支払い方法です。「Paypal」にします。他は知りません
⑥Shipping address and comments。発送先とコメントですね。ここ一番大事。
 発送先は英語方式で書きましょう。番地から逆に書いていきます。
 例:「〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7」→「7, Nagatachou 1 cho-me chiyoda-ku, Tokyo 100-0014, Japan」 ※ちなみにこれは国会議事堂の住所。
 番地以下が「1丁目2番地3」だったら、「2-3, 1 cho-me」でOK。

 まあ分かんなければ「Japan」と書いてあれば日本には来るはずなので(超適当)、後は日本郵便の中の人に読めればなんとかなります。
 だからと言って漢字で書かないように。読むのはスペイン人だ。
 コメントは特に不要。
最後に「⑦Submit Order」で完了、メールが彼の地へと飛んでいきます(イメージで)。

3.注文確認
数日待つと「MSX Cartridge Shop」からメールが届きます。
前回注文したときのメール(現物)。
個人情報に属するところはボカしています。
①に「128 euro」とあるので、ここでは128ユーロを次の行の末尾にあるメールアドレス(②)に対して支払えばOKです。
このメールは人力応答らしく、「Majikazoが在庫切れなのでちょっと待っててね」みたいな事が書かれています。

4.PayPalから支払い
ログインしたら「送金」タブをクリックします。
「送金」ページ。

①は相手のメールアドレス。上のメールの②に書かれているやつです。「msxcartridgeshop.com」のほうではありません
②は振込額。上のメールの①の額そのままで。右のプルダウンは当然「EUR-ユーロ」にしておきます。
③は「商品」を選びます。
最後に④を押せば完了。PayPalからメールが届きます。

で、あとは待っていれば発送されます。
私の時は小包の番号を書いたメールがこの後で来ました。

5.荷物の追跡
これはオマケだと思って下さい。
Correosのサイト。
Correosというのはスペインの郵便業者です。Wikipediaによると 創業300年超(!)。
日本の郵便のように、サイトで小包番号を入れると現在の状況が表示されます。
サイトは地元業者であるため容赦なくスペイン語ですが、一応英語にできます。右上の①をクリックしましょう。

これは英語にした状態ですが、なんか下のほうにスペイン語が残っています。これは仕様っぽいです。
②がスペインでの受付、③が私のところへの到着です。(これは受け取った後の状態)
注意点としては、スペインは年月日の表記が「日/月/年」だということです(フランスやベトナムと同じ)。アメリカとかだと「月/日/年」ですが。

ちなみにここでは1週間程度で着いていますが、スペインに詳しい人のサイトを読むと「スペインから日本への発送は早ければ5日、遅ければ3ヶ月かかる」というテキトーぶりなので、ココロにゆとりを持ちましょう。表をよく見ると分かりますが、スペイン国内で待ってる時間が一番長いようです。


6.FAQ
Q)送料は事前に分かりませんか?PayPal fee(+5%)って何?
A)分かりません。日本どころかヨーロッパ宛ですらサイトに書いてません。ぶっちゃけると送料もフィーもあちらさんの言い値です。僕の時はカートリッジ6本の代金に20ユーロが乗っかってました。ただ、送料としては妥当な額だと思います。

Q)メールが返ってきません。
A)もしかしたら入力したメールアドレスが間違っているのかもしれませんが、知る手段はありません。あるいは単に忙しくて返事ができないだけかもしれません。まあ2週間くらいは待とう。サイトは立派ですが、相手もアマチュアです。

Q)発送されたけどなかなか届きません。
A)上にも書きましたが、どのくらいで来るかはかなり運がからみます。東洋のとある島国の宅配便なるサービスは全国翌日配送とか当たり前ですか、世界的にはクレイジーの部類です。相手はお昼にシエスタを取って全く仕事をしないことで有名なスペインだということを忘れずに。現地を見てきた友人は「まさかあんなに働かねえとは夢にも思わなかった」と語っておりました。

Q)今はユーロが安いっていうけど、どのくらい安くなったの?
A)2010年11月に注文したら約1万5千円でしたが、4年前の2008年頃だと2万円くらいだったはずです。ユーロ暴落バンザイ!まさに今がチャンスですよ奥さん!(誰だ)

Q)何かあった時の問い合わせは?
A)サイトにメールアドレスが書いてあるので、英語で頑張りましょう!文法とか適当でも何とかなります。多分。

Q)英語を全然書かなくてもいいなんて、素敵ですね!
A)そうですね!でも届いたらその事を(英語で)伝えてあげると日本人への好感度がアップするかもしれません。あとは日本のMSXで動いたかどうか、なども喜ばれます。多分。

Q)ところで所長宛のメールの「Regards,」の上がボカしてあるのは何ですか?
A)よく気がつきましたね!なんと相手は僕の本名だけで身元を当ててきやがりました
 ここには、遠い遠い昔(15年くらい前)に僕が作ったMSX2向けクソゲーのことが書かれておりました。
 ドキュメントには確か本名をローマ字で書いてましたが、Web検索にも出てこないような東洋人の名前を覚えてるとは!世界は広いのに、世間が狭いです。

オチがついたところで、おしまい。みんなもROMゲームを買おうぜ!
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>