遭遇


こっちに引越して来たときの初感想はへんな町だなぁだった。


日中に出歩くとアチコチで体が不自由な人にあう。

その頻度が尋常ではなかった。


犯罪も事故も多い。


とんでもない所に引越してきてしまった。


失敗感が漂う。


大分慣れてきたある日

一仕事を終えたるともう深夜。

24時間営業しているスーパーは近くになかった。


そこで


町のはずれにあるスーパーに仕方なく買い物にでかけた。


駐車場は深夜だけあってガラガラ。


スーパーに入って直ぐに何か感じる。

低く身を屈め、背中を反り、突き出した脚の先に見える爪

そんな獣のただならぬ気配。


こっちは草食動物のように耳をピンと立て緊張が走る。


私の前から、


キャスター付買い物籠にもたれかかる白いモヘアニット×ミニスカート

の女性が床を蹴りながらキャスターを滑らせる。


店がガラガラなだけあって自由だ。

モヘア女とすれ違う。


女装した男ではない。

間違いない女性だ。

刃物も持ってなさそうだ。

そう思うと一気に緊張がとけた。

完全にすれ違うとモヘア女が「あぁ疲れた。」ともらす。


何てことない一言。

その一言に

不覚にも振り向いてしまった。


スラッと伸びた脚の先にはスカート・・・・・・

ない。全然ない。


おパンツすら・・・・・・


お尻と黒い茂みがドーン

はい、いっらしゃーいとご開帳している。


な、何てことだ。

見てしまった。


イヤ、見てない。


絶対見てない。


開帳なんてことはない。


見間違い、見間違い。


翌日も仕事が遅くなって同じスーパーに。


またいる。

昨日のモヘア女だ。


すれ違い・・・・・・


昨日の悪夢を確認した。


あぁ~

モヘア女め。


まさかのスーパーで、そんなのあり?


5回0-10のコールドゲーム。

もうどうしようもないすごい敗北感。

一気に疲れが押し寄せてくる。


それから3度同じスーパーで同じ時間に

私を待つモヘア女


いつもご機嫌にご開帳。


彼女の時間だと悟ってから私は、深夜に二度と行くことはなかった。