のらくら農園 の のらくら日記

  のらくら農園 の のらくら日記

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 土を使って作物を育てようと思ったら,土を良い状態にしておかなければなりません。いわゆる土づくり,ということをする必要があるわけです。

 どんな土づくりが理想的なのか,正解は分からないまま。手探りでやっているというのが現実です。

 今やっている土づくりで念頭に置いていることの1つは,土の中の善玉菌を増やそうということです。

 きっかけは,竹炭を使い始めたことでした。
 「竹炭利用の可能性。」(当ブログ2013年6月28日の記事) に関心を持ったのが9年前。それ以来,ウチ栽培方式の中にどう組み込むのが効果的なのか,また現実的なのか。そんなことを考えながら,少しずつ改善を加えて竹炭の利用を繰り返してきました。

 

 始めるに当たっては先輩農家さんに教えを請うたわけですが,残念ながらいちごの土耕栽培で竹炭を使っておられる方はまだおらず,自分自身で手探りでやるしか方法がありませんでした。

 考えたのは,立てた畝の中に竹炭と堆肥を埋め込むことでした。いちごの根が地中に伸びたその先に竹炭と堆肥がたっぷりある。広がった根がたっぷりの土とともに竹炭と堆肥をふんわりと抱きかかえる。そんな状況をイメージしています。

 土づくりに竹炭を使うことの意味はいくつかありますが,その1つが有用微生物(善玉菌)の住み処になりやすいということ。竹炭は小さな穴がたくさん空いた多孔質だからです。善玉菌が土の団粒化を進めてくれることで根の張りが良くなったり,病原菌(悪玉菌)より優位に立つことで病気を発生しにくくしたりしてくれる。そんな効果を期待しています。

 収穫を終えた後のいちごの株も土づくりに活かします。ハウスの外へ持ち出したりせず,そのままトラクターで土の中へ鋤き込み,土に返すのです。夏の間,太陽熱を利用して土壌を「リセット」するのですが,その時に,いちごの株は微生物に分解されて土に帰ります。大量の堆肥を投入すると同じことになります。

 この時,地元産の「米ぬか」と「太陽熱土壌処理用発酵材」を一緒に混ぜ込んで,畑の土の中に善玉菌を追加投入します。これにより「太陽熱処理」に「発酵熱」が加わって,熱に弱い悪玉菌をより効果的に抑え込みます。鋤き込んだいちごの株と米ぬかとが善玉菌のエサになって,ハウス内の土全体を発酵させるようなイメージです。

 収穫後のいちごの株を廃棄物にせず,堆肥化して土に返す。竹炭や米ぬかといった地元産の資材を使って善玉菌を増やす。活性化した善玉菌で悪玉菌を抑え込む。化学肥料や化学農薬の使用量を減らすことにもつなるでしょう。

 もっとうまいやり方もきっとあると思います。これからもじわじわと手探りで,より良いやり方を目指していきます。

 のらくら農園は「土耕栽培」でいちごを育てています。近年は,鉄パイプなどで作られた棚を利用する「高設栽培」が増えていますが,昔ながらの「土耕栽培」にこだわっています。

 脱サラして就農し,いちごの栽培を始めようと検討し始めた頃は,僕も「高設栽培」で,と考えていました。まだまだ農業のこともいちごのことも何も知らなかったので,世間の流れを素直に受け止めていたのです。

 しかし,僕の研修を引き受けて下さった師匠のいちご栽培は当時「土耕栽培」で,地元で高い評価を確立しておられました。今も素晴らしいいちごを生産しておられ,僕などまだまだ足元にも及びません。

 1年間の研修を経て,いよいよ独立しようというときに,何かと助言をしてくださっていた県の農政担当職員Mさんが,「土耕栽培」でスタートすることをアドバイスしてくれました。「高設栽培」が当たり前のような気持ちでいたので,戸惑いましたが,「高設栽培には設備投資も要る。まずは土耕栽培でスタートして,技術を身につけてから,高設栽培に切り変えてもいいんじゃないか」というアドバイスでした。

 もちろん前提を覆されるようなアドバイスに戸惑いも感じましたが,そもそも土から切り離された環境で農業を行うことについてぼんやりとした違和感がずっとありましたし,師匠の下で体験させてもらった土耕栽培に奥深さを感じてもいたので,Mさんのそのアドバイスに素直に従うことにしました。それから11回。土耕栽培でいちごを育て,今年も土にまみれて12回目のシーズンの準備をしています。改めてMさんのアドバイスは,僕の性分に合った,的確なアドバイスだったなぁと,心から感謝しています。

 「土耕栽培」は体力的にしんどいと思われがちで,確かに「楽ちん!」というわけにはいきません。しかし,定植も日常的な株の管理も収穫も,座ってこなせる作業台車があれば,さほど苦にはなりません。高設栽培には土耕栽培に無い作業もあるので,年間の作業をトータルしたら,実は「土耕」のほうが楽なんじゃないか? とすら思っています。

 「土耕栽培」にこだわっている理由は他にも有ります。

 1つは,必ずしも暖房を焚かなくても栽培できるということです。土耕栽培では「地温」が生かせますから,ここ濃尾平野あたりの温室栽培であれば,暖房無しでも大丈夫なんですね。宙に浮いている「高設栽培」だとそうはいかないので,どうしても暖房を焚かなくちゃいけない。

 ハウスでの暖房使用を全面的に否定するつもりは,今のところまだ無いんです。でも,地球温暖化のことを考えると,やはり全面的に賛成という気持ちには正直なれないんです。だから僕自身は,やれることなら無暖房でやりたいな,と。そう思っているんです。もしかしたら,暖房を焚いてもその分いちごの光合成が活発になって二酸化炭素の排出量はゼロ,なんてことがあるのかもしれないですけれど,ま,よく分かんないから今のところ止しておこう,と。

 もう1つは,農業はやっぱり土でやりたい,という思いです。土を使わなくてもできる農業があることも知っています。すごいな,とも思います。でも,やりたいか,と言われたら,それはやりたくないんですね。好みの問題です。昔からこの地に生きてきた人たちが耕し続けてきた農地が目の前にあって,そこに問題なく使える土があって,そこで僕が農業をやるんだったら,やっぱりその土を使ってやりたい。そう思うんですね。

 だから,のらくら農園はこれからも,のらくらと土を耕して,いちごを作っていこうと思っています。