「四月になれば彼女は」という名前の映画が公開されたようです。
私たちの年代、あるいはそれ以上の方の中には、このタイトルを見るとサイモン&ガーファンクルの「4月になれば彼女は」を思い出す方も少なくないでしょう。
ただ、この日本語タイトルは誤訳ではないかとの指摘もあります。
もともとのタイトルは "April Come She Will" です。前半の2つの単語が「4月になれば」で、後半が「彼女は」に相当するということでしょう。
前半は April が主語で Come が動詞(述部)です。When she come の when が省略されているという解釈で、「4月になれば」という訳になったと考えられます。
後半は she が主語で will が述部ですが、動詞が省略されているので、「彼女は」で止まっていると考えられます。willが未来を表すことは、前半の「になれば」に反映されていると思われます。
この日本語タイトルが間違いだという指摘の根拠は come にあります。お気づきになった方もいらっしゃると思いますが、先ほど挙げた When she come は文法的に間違いですよね。三単現のsが抜けています。正しくは、When she comes です。
なぜ come に三単現のsが付いていないのか?これは、実は come が will に続く動詞だと解釈すればすっきりします。will は助動詞ですから、後続の動詞は原型になります。つまり、she will come がもともとの形で、このうち come が倒置で前に出てきたと考えられます。
つまり、April Come She Will は April Come と She Will に分かれるのではなく、April と Come She Will に分かれることになります。日本語にするなら、「4月、彼女はやってくる」です。「"April" は "In April" じゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、口語では前置詞がなくても不自然ではないでしょう。日本語の「4月、彼女はやってくる」の「4月」も「4月に」としなくても問題ないですよね。歌詞を公開しているwebsiteの中には、April, Come She Will のようにカンマを入れているものもいます。このほうがわかりやすいですね。
先ほど come は倒置で前に出てきたと書きましたが、歌詞の続きを追うと、その理由がわかります。
5月以降はこうなります(必要な部分のみ書き出しています)。ぜひ声を出して読んでください。
May, she will stay
June, she'll change her tune
July, she will fly
August, die she must
気づいたと思いますが、月をあらわす単語とフレーズの最後が韻を踏んでいるのです。Mayとstay、Juneとtune、Julyとfly、Augustとmustという具合に。だから、4月は willを最後に置き、April と韻を踏ませているのだと言えます。8月もdieを前に出すことで、Augustとmustが韻を踏むようにしています。
ちなみに9月は
September, I will remember
となります。ここでも September と remember が韻を踏んでいます。
サイモン&ガーファンクルらしい、印象深い曲です。ぜひ一度お聞きください。そして、歌ってみてください。