ヒト・モノ・アソビ... 人生を楽しく快適にしてくれる素敵なものたち

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サイクルと山遊びのオキドキライフスタイルから発信

ここ2~3年でマスプロメーカー車にも「マレット仕様」が採用されるなど一般的になってきました。マレット仕様とは前後で異径のホイールを装着したマウンテンバイクのことです。具体的にはフロントに700C(29インチ)、リアに650B(27.5インチ)などを採用したフロント大径の車両です。26インチも含めて考えれば組み合わせとして、29x26も、27.5x26なども「マレット仕様」といえるでしょう。

特殊な用途を除き、これまでは「前後同一サイズ」が一般的だった自転車においては目新しい試みですが、「前後で車輪の径が違う」はフォーミュラーカーのような競技車、農用トラクター、荷役フォークリフト、輸送トラックなど4輪でも、あるいはオフロード系のオートバイなどでもむしろ一般的な手法です。これらはいずれの乗り物でも前輪と後輪でその役割が異なることから、太さ(幅)を含め外径、ホイール径もそれぞれの目的に適したサイズが選ばれているという当たり前の仕様です。むしろ、前後の車輪で役割が明確に異なり、さらにシビアな効率を求めるスポーツ自転車で頑なに「前後同一径」が守られてきたことの方が不自然だったのかもしれません。しかも多くの場合でタイヤパターンも太さ(幅)すらも同一に揃えられ、ただ「漫然」となのか何かの目的や合理性があってなのか。つまり、前後でサイズの異なる「マレット」は前後輪の役割がはっきりと異なる乗り物「自転車」に採用されるのはむしろ当然の成り行きだったのです。

では、マレットに、前後で異なるホイールを装着することのメリットは何か?について考えてみます。
荷重を受けて転がる、という車輪の役目で考えるとタイヤは「大きければ大きいほど」転がり抵抗が小さくでき、丈夫で、速く走ることができます。一方で大きくなることで、空気抵抗が増え、重量が増え、と駆動するためのエネルギーが増えることが起こります。外径を大きく保ったまま、重量や投影面積を少なくしようとした結果、「幅の小さい(細い)大径のタイヤ」これがマウンテンバイクよりも高速で走るためのロードバイクのタイヤの形です。しかし、低圧にしてグリップを稼ぎ、そのためにエアボリュームが必要なマウンテンバイクでは細くすることには限界があり、その結果が従来の「26インチ」だったはずです。空気抵抗は考慮する必要のないマウンテンバイクですが、フレームやホイール素材の改良、軽量化によって大径化による重量増が大きなデメリットでなくなって来たことでマウンテンバイクの「29インチ化」が進みます。29インチの大径化によって転がり抵抗が減って走破性が向上したマウンテンバイクは高速性能も向上して「良いことづくめ」となります。ポジション面を除いては… ポジション?正しくは「ディメンジョン」でしょうか。つまり幾何学的な問題。前輪に関してはフレームサイズによって変わりますが、後輪の位置と駆動装置の位置関係については走行性能や操作性に大きな影響を与えます。乗車状態の自転車において「乗り手」の荷重(体重)がどの配分で後輪に作用しているかは推進力、トラクション、旋回性、対障害物に対して非常に大きく影響します、特にマウンテンバイクの場合は。小さくなって太いタイヤで大径化されたリアホイールをフレームに納めるためにはチェーンステイ(リアセンター)つまり、乗り手の体重を受け止めるBB軸と後軸の距離を十分にとる必要があります。ところが、このBB~後軸の距離は後輪への荷重コントロール、旋回性、そしてフロント荷重のコントロールのために大きな影響を与え、それらの向上のためにはできれば「短い」方が良いのですが、この点で29インチ化がマイナスに働いてしまいます。そこでチェーンステイを短く保つために(せめて)後輪だけでも小さめのホイールを、というフレーム設計が「マレット」の基本的な設計の狙いです。外径が小さくなってしまった縦長の接地面積を横方向に稼ぐために太いタイヤを装着するのもそのためです。
つまり、マレット仕様の目的はコントロール性、旋回性を担う短いリアセンターのディメンジョンを維持しつつ、走破性、操舵性を向上し、転がり抵抗を低減する大径のフロントホイールを装着するための、方法というわけです。スピードを優先するクロスカントリーレーサーよりも、操作性を優先するフリーライド/エンデューロ車両に多く採用されているのもそのためです。


ところで「マレット」という呼び方はなぜなのでしょうか?
マレット、と聞いて辞書を調べるとmullet(ボラ)あるいはmallet(木槌)が出てきて???です。正しい綴りはmulletのようです。実「はマレット・ヘアー」という髪型があるそうで、魚のボラが小さい頭のわりに尾ひれが大きめのことから、全体はショートヘアーでありながら襟足だけが長い髪型を指すようです。ん?でも尻尾がデカイ、なら逆じゃやない?と不思議に思ってジテンシャと英語に詳しいジャーナリスト、コイチロ・ナカムラ氏に訊いてみます。やはり髪型の「マレット(ヘアー)」からだそうで、前後が逆なので「tellum(テルム)」と呼ぶことにしたのだそうです。しかしテルムは浸透しなかったそうで元の「マレット」が意味が逆のまま定着した、のだそうです。へー♪ 日本語であれば「逆マレット」が正式名でしょうか。


閑話休題
さて、ネットを検索すると「マレット」に関する記述も見つかります。「その効果はどれほどか?」「良いのか?」「違和感は?」などなど・・・ 効果、については上記の狙いで設計されたものですので、恩恵や感じる度合いは個人差はありながらも何かの違い(効果)はあるでしょう・・・ 
ところが関心の中心は現行あるいは所有車両を「マレット化」した場合でしょうか。前後共に29インチ、27.5や26インチで設計された車両を後から「前後異径ホイール」にした場合の影響です。良くなった?悪くなった?変わらない?ではないでしょうか。それらの内で気になったのは「的外れ」な記述も見受けられることです。「(前後)29インチ車両を『マレット』にして小回りが利くようになった」とか「低重心化して安定した」とかw ウーン・・・・

元々29インチホイールで設計されていたフレームに(リアだけを)小径の27.5ホイールを装着してもリアセンターのディメンジョンは変わらないのですから乗り手の前後位置、車両としての旋回性能(半径)などは変化せず、「小回り」にはならないかと思います。車輪の重量減による漕ぎだしや加速の「軽さ」は向上する部分はあるかもですが、上記のようにマレットとして設計されたフレームのような効果は残念ながら限定的です。むしろ前後輪で高さの差が生じたことによるヘッド角(キャスター)の変化は旋回性よりも直進性に働く方向ですので鋭い方であれば「小回りが利かなくなった?」と感じる傾向のはずです。低重心云々に関しては、前後に100㎜を越えるサスペンショントラベルがある車体において2~3㎝の高さ変化がどれだけ感じ取れるか?そして影響に現れるか、です。ですので前後同径車を「マレット化」してメリットが現れるケースは、
・前後27.5インチだった車両のフロントを29インチ化して走破性と転がり抵抗減を狙った
・前後29インチだった車両のリアを27.5インチ化して標準よりも「太い」タイヤを装着できるようにしてエアボリュームや接地面積を横方向に伸ばすことを狙った ギヤ比の向上を狙った、ブレーキ力の向上を狙った、などでしょうか。
どうやら、27.5インチ車両を29インチにマレット仕様にする方が効果は大きい、ということがいえそうです。

次に、前後同径車をマレット化したことによる姿勢変化がハンドリングにどう影響するか、を考えていきます。前輪を大径化、後輪を小径化、いずれの場合も姿勢が変化して「前上がり(後下がり)」になります。上記の「小回りが~」の項で述べた様に大回りになる傾向ですがどの程度でしょうか。
操舵性については「トレイル値」で考えていきます。
トレイルとは車輪半径、キャスター角、オフセットの3要素によって決まる操舵特性を表す指標です。乗り物の直進性や旋回性を幾何学的に数値で示したものです。その乗り物の用途や特性に応じて設計時に検討、決定されます。競技用のロードレーサーの場合、50~60㎜ほどで設計されることが多いですが、競技性の低いロングライドモデルなどでは70㎜ほど、シクロクロスモデルなどオフロードモデルも70㎜前後、数値が大きくなるほど「安定志向」、小さいほど「反応性が高い」となります。マウンテンバイクではクロスカントリーモデルで70㎜前後、トレイルモデル80mm、フリーライドモデルは100㎜を越えるような数値になります。

このトレイルを求める数式は

T=R/tanΘーF/sinΘ
T:トレイル R:タイヤ外半径 F:オフセット Θ:ヘッド角



で求めることができます。良心的な量産メーカーであればカタログに「トレイ(ー)ル量」という諸元で載せています。(表記のないものも多いです。バイクの旋回特性を知る、推測する上で重要な数値ですので表示すべきだと思いますし、目的を持って設計していることを示すものです)式からわかるように、タイヤ半径Rが大きくなればトレイルは増加(安定)します。ヘッドアングルが小さくなればやはりトレイルは増加します。マレット化することで車体が前上がりになってヘッドアングルΘが小さいく(寝る)ので「直進性」が強調されます。これが「マレット化して必ずしも小回りが利くようになるわけではない」の理由です。フロントホイールを大径化した際には半径Rが増加するのでトレイルが大きくなり「直進」寄りになります。
リア側の29インチ→27.5インチでどの程度の数値が変わるか、ですがリム径だけで考えると700CのETRTOが622㎜、650Bでは584㎜(いずれも直径)ですから高さの変化は19mm。これが高さの変化。装着するタイヤが小経化で太くするのであればこの差はさらに小さくなります。仮に高さの差が20mmとしてホイールベースが約1000ⅿⅿだったとするとヘッドアングルに生じる変化は約1(=ArcTan(20/1000))°。トレイル値での差はおよそ+6mmほどです。その程度です。
フロントタイヤを27.5から29に変更してタイヤ外径が変わることによる半径Rの差で変化するトレイル値も+7㎜程度で、合計13㎜。マウンテンバイクカテゴリーの中でも4~50mmの許容があることを考えれば大した変化ではありません。何よりも150mmほどあるサスペンションのトラベルによる姿勢変化(ヘッドアングル変化)が走行中に変化し続けることを考えればトレイル値ののこの程度の変化が全く問題にならないものだとわかります。
つまり、マレット化による旋回性の変化はほとんど影響しない、ということの様です。タイヤの選択を目的として、走破性や転がり抵抗軽減などの目的のためにマレット化をすることにはほとんどデメリットはない、と結論できそうです。その代わり、旋回性の向上などは期待できないこと、特に29フレームに27.5ホイールを組み込んでも旋回性に目立った向上はないということが証明できそうです。

今回は「トレイル値」を視点に「マレット化」によるメリットやデメリットについて説明をしてきましたが、実は「マレット」という名称で呼ぶようになるかなり前の時点で、27.5インチホイールが出現してきた時から26インチのマウンテンバイクにフロント27.5インチを装着して長く使用してきています。そこで感じているのは、まさにこれまでに述べた通りで、多少のメリットは感じられるものの、デメリットを感じる部分はほとんどなく、現在のこの状態でかなりの満足を感じているという現状です。欲を言えば当初からこの設計で造られたものが良いのは当然ながら、独自の視点で早くからマレット仕様にしておいてよかったという思いです。同時にオートバイ、特にオフロードオートバイはとっくにそんなことに気付いて遥か以前から標準な仕様として採用していることに改めて納得をした次第です。
結論としては「前後異径の「マレット」は多少の効果は期待できることは事実ながら、それによって「発生する不具合も多少でしかない」ということがいえそうです。27.5インチ車はフロントを29インチ化するのはいいかもしれません。

 

 

 














 

 

ご縁があって神戸市内の歴史ある印刷屋さんと親戚関係になりました。
神戸で100年以上続く老舗の印刷所で、ふと見ると倉庫に1台の自転車が佇んでいました。「時々は使うんだけど、さすがにもう古いから・・・」というその自転車はいわゆる「実用車」と呼ばれる初期のころの自転車、ロッドブレーキに26吋のBEタイヤを装着した骨太の業務車両です。 ただ、幾か所か残念な部分も見られ、長い年月に幾多の変遷もあったことが見られました。

 

神戸は1868年(慶応3年)に対外自由貿易港として開港しました。それに伴う様々な混乱は歴史にいろいろと記録されていますが、大坂でも大和でもない兵庫の「神戸村」が国際的な都市になったのはこのことによるものです。貿易に伴う経済の発展とともに、神戸も大きく発展しました。対外的な公用文書をはじめ、証明書や許可証など公書の需要がかつてないほどになったことに応じて「角丸印刷所」がはじめられたそうです。そしてその後も長くにわたり貿易、通関などの主要都市神戸の印刷所として繁栄をしてきたそうです。創業1900年(明治33)年、今年で123年を迎えるといことになります。

おそらく50年ほど使われてきたであろうこの自転車は、基本部分はしっかりとした造りのままでありながら、各部にふさわしくない対症整備も行われてきたようです。すでに何年も前の時点で「もう部品がない」「整備技術がない」などの理由で施されたであろう場当たり的な整備作業の跡が見られます。それら以外には整備不足や自然消耗による機能低下も見られます。さらにこれは仕方がないことですが経年的な劣化や損傷も見られます。すでに「印刷所」としての業務使用は大幅に減ってこの個体をさらに大切に長く使うという意義がないためやむを得ない状況でしょう。
しかし、印刷所の長い歴史やその半分近くの長い年月をこの印刷所で業務に使われていた車両、という歴史を考えた際にこのままお手上げになったらおしまい、ということは非常に残念に感じられます。すでに現時点で部品の調達が不可能かもしれませんが、できる限り「当時」の機能・性能、そして役割を取り戻すための自転車の整備をさせていただくことにしました。


まず、多くの自転車がそうであるように「壊れるまでは整備しない」が50年という年月だったとすれば年数に伴う機能低下は避けられないものでしょう。幸い「運搬業」ではなく、主業務に伴う配達や納品といった軽微な使用だったようですから年数のわりには損傷、消耗は少ないはずです。そして壊れた箇所を修理された場合も、入手可能な部品や技術でおこなわざるを得なかった、ことによる不適合な部品が装着されているようです。



整備の必要箇所を挙げていきます。
・フレーム自体には塗装の損傷を除いて問題はなさそうです。ただし、ヘッドベアリング、BBベアリングは状態を見て整備をすべきでしょう。
・ホイール。こちらもベアリングの整備が必要でしょう。リムの錆はあるものの変形や問題はなさそうです。装着されたBEタイヤの摩耗はすぐに交換しなければという状態でもなさそうです。 しかし、スポークの錆はかなり酷いものです。
・ハンドル回り。この車種の大きな特徴となっているロッドブレーキですが、すでに部品供給がなくなっている状況の中でどれだけ十分な機能状態にまで整備しきれるか、でしょう。
・チェーン、スプロケット、クランクは開けてみて見ないことには何ともいえません。
・サドル。機能的にはスポンジサドルでも良いのですが、可能であれば長持ちする上に身体に合っていくオリジナルな「革」が良いでしょう。あれば、ですが。
・ペダル 安直なプラスチック製、が装着されてしまっています  
・ブレーキシュー。消耗していてそれが原因で効きが悪くなっています。ロッド類は修正/整備して使用できるでしょうか。
・ベル、ライト、反射器  機能はしていますが・・・
・泥除け 衝突などによる損傷も見られますし、不適正なスタンドの取り付けによって変形してしまっているようです。
・両の立スタンド 簡易な物に代わってしまっていますが、寸法的に適合していません。それによってアルミの泥除けが変形してしまっています。
・必要性から取り付けられたいる「鍵」ですが、タイヤ太さや泥除けを含めた径に対応しておらず、泥除けを変形させてしまって、しかも十分に機能していません。





美観再生(世間でいうレストア)でなければ基本的には機能的な整備(分解・給脂・調整)と不適合部品の交換だけで満足のいく状態にはできそうです。ただ、サドルが懸案事項です。入手できる英国メーカー製の金額は躊躇するものです。かといって国内メーカーはとっくに製造を終了しています。
消耗品の手配もできるだろう、と安易に判断して作業に取り掛かります。何はともあれ、フレームからすべての部を取り外していきます。50年分の埃、脂、汚れの堆積が出てきますが、無事にフレーム単体にまでできました。絶望的な錆や損傷は見られず、これをきれいに掃除して、再び取り外した部品を組み戻していきます。ベアリング類はチェックして再利用できそうであれば洗浄して戻してゆきます。ブレーキパーツやハンドル回りなど機能部品とはいえ、正しく作動するためにも徹底的に磨いてめっきを艶出しておきます。ロッドは丁寧に曲がりなどを修正すれば問題なさそうです。ところがブレーキシューはメーカーが製造終了しているようで見つけることができません。取引のある問屋さんでもないようです。これには困ったので意を決して地元の老舗自転車店へお願いしてあみたところ、数日後に「あったよ♪」とどうにかして見つけてくださいました。さすがにそういったネットワークには感謝するばかりです。スタンド、ですが現時点で装着されていものはフレーム(チェンステイ幅)に合っていないものを無理に削って装着されているもので、これは交換を要します。幸いインダストリーがかろうじて?まだ製造・供給をされている様ですので実用車用を手配します。セーフ♪リンエイ製の鉄箱も製造終了ですがこれは軽く色を塗ってカッティングシートで看板文字を入れておきます。ライト、ダイナモは最新機能(LED)で外観それっぽい、が入手できます。入手できるだろう、と安心していたBEタイヤですが発注して届いたものはすっかり中国製のものに変わってしまっていました。トレッドパターンも肉厚も別物でがっかりです。しかも「耳」の部分が異常に大掛かりな構造でこれをリム内にきれいに収めるには通常のBEタイヤでもてこずるのにさらに困難なものになってしまっています。この点を見ても実用車の将来はかなり厳しそうです。そして、問題のサドルです。実はこれも大陸性のノーブランドの雰囲気商品は比較的安価で手に入ります。しかし乗り手にとっては大切な部分でもあり、造りのノウハウで大きく影響される箇所ですので安直に手をだせません。中古も含めて探してみた結果、カシマ製の比較的使用の少ないものが適価で見つかりました。しかし、届いてみてから重要なレール部品が一部欠品していたのです。ああ、イチから探しなおしか?と思いましたが製造のカシマサドルのHPに旧革サドルのベースパーツのみの供給があることを見つけ、これを求めて万事休止。ホイールはハブのオーバーホールは当然としても、リムを磨いてそのまま終了と考えていたのですが、スポークの錆が思いのほかひどく、部品価格を見ると1台分で1000円ちょっと、二度と整備されることはないだろうと考えるとこの際スポークの全交換をしてくことにしました。
以上の作業をすべて済ませ、フレームも軽く艶出し磨きをして完成。まあまあオリジナルに近い状態で、そして機能的にはほぼベストな状態に復活することができました。

 

 

「試運転」という名目で、神戸の港町を回ってみることにします。重厚な変速機構を持たない車両ですので坂道は苦手ですが、街中の平坦な道は思ったほどでもなくすいすいと軽快に走ってくれます。転がりがよく進む、というと手前味噌になってしまいますが、タイヤサイズとギヤ比、フレームの剛性/しなりが程よくバランスしているのでしょうか。神戸開港155年ははるか昔でも、神戸が貿易輸出入の拠点として栄えていた時を想い忍びながら、当時に活躍した印刷所自転車であたりを散策してみます。海岸通、税関関連施設、世界各国からの船員でにぎわったであろう元ドヤ街・・・ おそらく当時もこの速度で走るこの自転車が一番しっくりと来ていたはずです。

 


 

 

アクセサリーを含め、チタンの投稿が続きましたので、しつこくもう少しチタンについて書いてみようと思います。



【自転車のフレームとしては ・・・「好み」です】 
フレームの素材と金属としてしてチタンがいかに優れているか、本当に優れているのか、が今一つ正しく理解されていないようにも感じています。金属として(加工コストや量産効果が少ないことによって)アルミや鋼よりも高価であるがゆえに「優れている(に違いない)」ととらえられているのではないでしょうか。
「錆びないから!」カーボン(C-FRPのことです)やアルミ、ステンレスだって錆びません。
「強度がある!」ステンレスを含むスチールの方が(引張)強度は高いものが実現できています。
「軽い!」アルミの方が比重は小さいですし、カーボンはさらに軽いです。
「(重量に対する強度)比強度が高い!」もちろんカーボンの方が優れています。
「希少な価値のある金属なんでしょ!」地中(地殻)には、アルミ、鉄、マグネシウムに次ぐ4番目に多い金属です。
「生体親和性が高い!」ジテンシャのフレームにその点は特に求める必要は無いはずです。
と、何一つ、一番の「優れた点」を持っているわけではありません。このことが、一時はもてはやされたものの、その性質ではなく数値的な物差しで評価する傾向の自転車産業では使用されることが少なくなったのではないかと思います。軽さで言えば「カーボン」、細さの精悍さや撓りで言えば「スチール」、安い価格でいえば「アルミ」と区分され、選択されていった結果、チタンは一部を除いて高く評価されなくなってしまったのではないでしょうか。評価されるとすれば「好み」とでもいうべきでしょうか。
オキにとってはフレーム?素材としてのチタンはかなりの「好み」です。上述のように何一つ飛びぬけた特徴がない代わりに、(オキの好む使用目的の)フレーム素材として理想的な「バランス」を持っているからです。「スチールほど重くはないがアルミほど軽くなくてもいい」、「アルミほど撓りを抑え込む必要は無いがスチールほど撓ってくれなくてもいい」、「環境耐性(錆・腐食)はアルミでも心配ではないが靭性(疲労破壊)を考えるとアルミでは心配」などいくつもの「そこそこいい」を高次元で満たしてくれています。この点に気付いて、気に入った人(達)にとっては「チタンはこの上なく優れたフレーム」と捉えられているのです。もちろんチタンで作られていればどのフレームでも優れているのか、といえば前提として(素材に応じた)ジテンシャのフレーム自体を性能良く作ることができる、技術やノウハウを持った上での、ということになりますが。

【アクセサリー素材として】
チタンフレームの優れた点は、「好みです」という結論に至ったとして次に、アクセサりーなどの素材としてのチタンが優れているのか、あるいはそうでないか、の本題についてお話していきたいと思います。アクセサリー(ここでは装飾品、というよりも身に付ける物という意味でアクセサリーという言葉を使うことにします)

【錆びるの?錆びないの? 実は錆びやすい卑金属です】
まず金属の分類の一つに「貴金属」と「卑金属」という呼び方があります。多くの方が「貴金属は高級(高価)な金属」をイメージすると思います。惜しいのですが正しくは違います。卑金属、貴金属はその金属が「酸素の影響を受けて酸化しやすいか、そうでないか」を表現、分類したものです。金属には「イオン化傾向」という物性特性があります。酸素と反応して酸化、還元しやすい金属を「卑金属」、反応しにくい金属を「貴金属」と呼ぶことにしています。卑金属はイオン化、酸化しやすいということは錆やすく、電気を生じやすい特性になります(バッテリー原料のリチウムは非常にイオン化傾向の強い卑金属です)。一方貴金属はイオン化の低い、酸化しにくい錆びにくい特性になります。金やプラチナがイオン化傾向が小さい金属です。しかし、それほど高価でもない銀や銅も「貴金属」ですので必ずしも高価な金属が貴金属ではない、と理解いただけるとおもいます。酸化しにくく、腐食や変質が起らない→価値が変わらない→貨幣(硬貨)にも使えるなどのことから埋蔵量との関りもあって金やプラチナが高価なもの、として定着したのでしょうか。そしてこのイオン化傾向が小さい、酸化しにくいは人体にとっても影響が少なく、つまり金属アレルギーも起こりにくいようです。金、プラチナ、銀、(銅)などの貴金属がアクセサリー類に多く使われてきたのはこのためでしょう。ところが、チタンはアルミと並んで非常に酸化しやすい「卑金属」です。「錆ないのがチタンだろ!」と考える方が90%以上でしょうか。事実は、「チタン(やアルミ)はイオン化傾向の非常に大きな酸化しやすい金属です」。チタン(やアルミ)は非常に酸化しやすく、鉄などよりもはるかに早く酸化します。が酸化によって表面に形成される「酸化被膜」が「不動態皮膜」を形成して酸素を遮断し、それ以上の酸化を進行させないのです。ステンレレス鋼が錆びないのも同じで、添加されたクロムが酸化して不動態皮膜を形成するからです。アルミの場合には意図的に酸化被膜を形成する技術がアルマイトと呼ばれています。
いずれにしてもチタンには貴金属を上回るほどの強い「不動態皮膜」のお陰で卑金属であってもアレルギーも起こり難く、アクセサリー向きということになります。

【金属の殺菌、抗菌作用 他の金属にはない「光触媒」】
さらに、金属には「殺菌作用」というものがあります。金属による殺菌作用はイオン化の影響があると考えられていますが、イオン化傾向の大小に関わらるものでもないことも知られています。イオン化の小さい「銀」や「銅」にその効果が表れ、古くから活用されてきました。しかし、金やプラチナに顕著な殺菌、抗菌の効果はなく、逆に卑金属のコバルトなどにその作用があり、実はなぜ金属に殺菌作用があるのかは明確に解明されていないようです。「衛生的な」のイメージを持つステンレスですが、ステンレス自体には抗菌や殺菌の作用はなく、その点は鋼であることに変りはないようです。酸化しにくいため躊躇なく水などで洗浄できることで衛生を保つのであって、そういえば流台シンクや排水口など放っておくと黒くぬるぬるした状態になります。サージカルステンレスと呼ばれる医療用にも使われるステンレスが有ります(SUS317/317L)がこれも耐食性を向上させただけにすぎません。腕時計のケースやバンド、最近ではアクセサリー類にもステンレスが使われていますが、これらにも抗菌作用はなく黒い堆積物や臭いの元となってしまっているようです。

一方、チタンではどうでしょうか。このことこそがチタンの最大の特徴といっても良いと思うのですが、チタン(酸化チタン)には「光触媒」という他の金属にはない(タングステンにも)特性があることが判っています。乱暴に説明しますと、酸化チタンに紫外線が照射されると有機物が分解される、というのが「光触媒」です。有機物、ですから油汚れ、タンパク質、そして細菌やウイルスを分解して不活性化させることができるということです。おそらく銀や銅にも同様の触媒効果があるのだろうと考えられていますが、酸化チタンの光触媒に関してはそのメカニズムが解明されていて確実な作用とされてます。「チタンじゃなくて酸化チタン?」ご心配なく、上述のようにチタンは非常に酸化し易い卑金属ですのでその表面は既に酸化チタンによって覆われています。その結果、チタンにはステンレスや金、プラチナにはない、銀や銅よりも明確で効果的な「殺菌・抗菌」の作用があるのです。このことは、チタンを使ったアクセサリー、ネックレスやブレスレット、指輪、時計、めがねなどを身に付けることでその汚れや臭いが発生しないだけでなく、周辺の皮膚、身体を衛生的に、細菌やウイルスから守ることにも効果が期待できます。必ずしも十分な水が確保できないようなアウトドアで使用する食器やカトラリーもチタンで作られたものであればその効果があると思われます。


軽くて強い、そして高いだけだと思っていたチタンですが、実はこうした他の金属にはない優れた特性があったというわけなのです。装飾などの類には全く興味のないオキがチタン製のものを身に付ける理由を、少しご理解いただけたかと思います。

チタン製のネックレス、ブレスレットなどを取り扱いしています。
 

子どもの乗るジテンシャは「おさがり」を活用することで物質的な無駄や環境に対する負担が低減するのではないかと考え、「繋がる「リ」さいくる」として我が子にはおさがりジテンシャの活用を実践してきました。
過去記事:16インチ車
過去記事・20インチ車
主には「使っていないジテンシャを有効に利用したい」という想いからによるものですが、特に我が子に関しては「自分仕様ジテンシャを作り上げていくプロセスの体験」が大きな目的となっています。新しい高性能の新品を買い与えることも大切ですが、ぬりえ感覚で自分だけのジテンシャを作っていく喜びを体験してもらいたいという想いです。幸い、子どもはジテンシャが新品であるかどうかよりも「好きな色」とか「自分でやった」の方に満足を感じてくれた様で、16インチ車に続き20インチ車も同様に親切な車両ご提供者のお陰もあってこの試みが実践できています。

そんな前投稿をご覧になって、共感を頂いたお客様より、同様の体験を子ども(姪)さんにさせてあげたい、というお申し出を頂きました。しかし、再生の元となるジテンシャもなく、それも含めてのご依頼です。
これまでに小店でお買い求めいたお客さまを中心に広くお声掛けしたところ「もう使っていないモノがありますよ 良かったらお使いください」というありがたいお申し出をいただきました。小店から販売されたものではありませんでしたが、そこは問題ではありません。画像でご依頼者の方に確認を頂き、これで、と了解を得て実車が店に運ばれてきました。「使っていただけるのであれば結構ですよ」とのことで金銭のやり取りは無くても良いそうです。実車をご依頼者に確認していただきます。元前持ち主は活発な男の子。黒と赤の精悍なカラーリングのジテンシャです。一方ご依頼者はピアノを習いに行く際にも使う、という女の子です。このまま「おさがり」として使うのではなくやはりフレームの塗り替えを含む組み直しをして再利用するということになります。
フレームは塗り替えて好みの色でお使いいただくことになるのですが、例えば色の塗り替えが困難なリムなどはそのままの前提です。現車は赤いリムで組まれていますのでその塗り替えが不可能(困難)であることと、フレームカラーとの影響をご考慮いただく旨を伝えます。それまでに考えていたカラーリングを変更してしまわなければばならないかもしれません。これらをご了解していただた上で作業へかかります。

まずはフレーム単体とするために全ての部品を取り外していきます。再利用しないプラスチックのカゴや跳ね上がった泥除けは廃棄します。そうしてフレーム単体となったモノをご依頼者にお渡しします。これよりフレームの色付けやデザインはご依頼者の元に持ち帰って行われます。さてどんな色に仕上がってくるのでしょうか。

お預かりしたフレームから取り外された各パーツは再組立てに向けて各部の点検と整備を進めておきます。各種軸受け、ベアリングは状態を確認して給脂や調整を行います。使用の限界に達したものは残念ながら交換を必要としますが、やはり今回もその必要は無さそうです。一方、タイヤやチェーン、ケーブルやハウジングは交換をして新品時かそれ以上の使いやすさを狙います。実はこのプロセスが案外と効果的で、子ども車の多くが新車納車時に大人のスポーツ車並みの納車整備をされていることは少なく、あまり使いやすい状態で使われてきているケースは少ないようです。ベアリングの予圧やレバー類の操作性など、多くは手間暇を掛けることなど無くそのままであることが多いのです。ですのでこうした組直しをした際にこれまでよりも「良い作動」を得ることができることがあります。

さて、幾週間の時間の後に塗りなされたフレームが持ち込まれてきました! 調色を優先して「ハケ塗り」で塗られたサーモンピンクのフレームにピンク、赤、白のカッティングシートから切り出された「シール」がレイアウトされています。刷毛塗りの彩色は初めての体験だったのでしょうか。ところどころに垂れたりムラになっていたりしますがそんなものが全く気にならない出来栄えです。おそらくその過程の時間を存分に楽しんだのだろう、という様子がビシビシと伝わってくるようです。
ではせっかくの綺麗に彩色されたフレームを痛めないように細心の注意を払って部品の組み戻しをしていきましょう。こちらジテンシャ店にできることは極僅かですが、フレーム色にあわせた色使いや体格に合わせた組付け、調整、操作性を目指して仕上げていきます。「カゴが必須」とのことでしたので、実用サイズでありながら大きすぎないサイズのカゴを探して取りつけます。 さあ、完成♪


金額的な価値観は人によって様々です。仮に無償で譲り受けたジテンシャであっても使用して減ってしまった消耗部品を交換して、フレームに色を塗るための材料や準備、そして手間賃などを併せると、新しいジテンシャが買える金額になってしまうかもしれません。あるいはそれを上回ることも。真新しいモノを手に入れる喜びも大切な気持ちですが、「自分だけのジテンシャを作り上げていく体験」は新品新車のジテンシャの購入には付加してこないものです。どちらが大切と考えるかは人ぞれぞれ、そして当の本人である子どもさんがどちらを喜ぶのか、だと思います。
おさがりの活用はそうした選択肢を一つ追加できるチャンスだと考えてています。 ご相談はお気軽にお問合せください。また、使っていないジテンシャの活用のご相談もお気軽にどうぞ。



*フレーム彩色時の写真をお借りしました


 




 

 

お店を始めた頃から「ツーリング車が究極」と口にしていました。「今」はマウンテンバイクやロードバイク、そのスピードに傾倒するも、その「先」にあるのはツーリング車、旅車なのだろうと考えていました。ついつい、「車種」でそのカテゴリーを区分しがちですが、要は使われ方、用途、そしてスタイルによってその選ぶバイクは決まっていくのだろうということにも気づき始めていました。競技がその目的であればロードバイクが最適でしょうし、パークや専用コースを主にするのであればそれに適したマウンテンバイクなのかもしれません。しかし、ツーリング要素の強いロードライド、トレッキング要素の強いトレイルライドが自らの「好むところ」「向かうところ」であることを知るにつれ、そして「速さ」に囚われることから解放されるつれ、機材(車種)によってカテゴライズされるのではなく、ロードバイクもマウンテンバイクも区別はなく、ただその路面や用途によってのみ区分され、そして選んで使っていることを強く実感することになります。そしてさらにより広範囲、汎用性、実用性を求めていった結果、特性を絞り込んだマウンテンバイクやロードバイクではなく、「旅車」がいきつく先なのかも知れない、と確信したのです。旅、となると「財布一つ」でできる範囲は限られ、未知なる発見を求めるほどに、「備える」つまり装備が増えることになります。より深く自然の中にはいって過ごすためにキャンプ装備を携行するのであれば自転車に求められる機能も自ずと定まってきます。そういえばクルマもオートバイも結局のところ、実用性を重視した「旅車」に収束したように、やはりジテンシャもその方向に向かうのが自然なのでしょうか。

 



「旅車(ツーリング車)」とはいえ、それは用途の名称であって、車種カテゴリーを限定するものではありません。ツーリング車と言えば多くはランドナー、スポルティフなどを指すのかもしれませんが、そこに囚われるつもりはありません。ロードバイクやマウンテンバイクをベースにツーリング仕様として利用するスタイルもあるでしょうし、昨今はシクロクロス(風)やグラベルバイクをその近道として選ぶこと、あるいはメーカーが提案することも多く見られます。しかし・・・ 「旅(ツーリング)」という漠然とした用途はその目的や経路、スタイルや距離、地形、日数などによってさまざまですし、さらにそこに「未知の」を含ませるならそのための機材(ジテンシャ)を他人の推奨で簡単に決めてしまう、型に当てはめてしまう、のは少し異なってきてしまいます。
旅は経験と回数によってスタイルが変化、成長し、自身の「旅スタイル」が形成されてくるものだと思います。同時にそれに使われる機材(道具)としてのジテンシャも経験とスタイルの形成によって必要なものが求められ、不要なものを削ぎ落しながら最終的な「形」にたどり着くものなのだと思います。冒頭での「究極」と表現したのはそうした意味を含んだものです。初期の段階では先人がたどり着いた一つの形であるランドナーを選ぶこともその近道かもしれませんが、最終的に「自身のスタイル」がそれと全く同じ、とはならないかもしれません。



細やかなことに拘る必要はありませんし、この手のカテゴリーで重視されがちな?「様式美」に囚われるつもりも毛頭ありませんので、ある程度の積載ができ、輪行に適したもので、壊れにくくトラブルを最小限に抑えられるもの、の機能を満たせば様式的なメーカーの「吊るし(=完成車)」でも一向にかまわないのです。泥除や荷台の装着に幾分の工夫を要しながらも自分のスタイルに近いものはそう難しく無く実現ができます。現在もそうして使用過程のツーリング車を楽しく使っているところです。舗装路では富山~乗鞍岳をロードバイクと共にこなし、1000ⅿ越えの雪のシングルトラックライドをマウンテンバイクと共にこなし、もちろんキャンプ装備での輪行の実績もあり、十分に満足の出来るものです。
ただし、ブレーキの性能は舗装路で、積載時の制動力、そして悪路でのシューの消耗で不満があります。リムブレーキ(カンティブレーキ)によってホイール径は選択ができませんが、フレーム自体は700Cから26x2.4程度までキャパがあるので、ブレーキ形式を変更できれば理想的です。
「このーリング車をディスクブレーキ仕様にできれば良いのに」が長らくの「夢」でした。



そんな「理想の」ツーリングバイクの話を、あるキャンプツーリングを実践されているお客様にしたところ「もしそれが可能ならぜひお願いしたい!」といことになりました。 しかし、理想とはいえ実現できるかどうか・・・ フレームにディスク台座を取りつけて製作すればよいだけですので物理的には何ら難しいことではなく、既に市販されている物もあります。それこそ、上述のシクロ(ディスク)車やグラベルロード、日本では馴染のないアドベンチャーロードをベースにそれっぽいバイクに仕上げることは可能です。しかしそれらでは乗り手の「スタイル」とは異なるものとなってしまいます。様式には囚われない、とはいうものの「こうありたい」という部分も譲れません。譲りがたい条件としては・・
・機材トラブルのない、輪行のしやすい「Wレバー+ブレーキレバー」を使用
・650x38(42)Bを主に700x35Cまで対応
・フロントキャリアの装着を想定したスチールフォーク
・ハンドル(ステム)の抜きを考慮してノーマル(クイル)ヘッド(1")
・実荷重に耐えうるキャリア取りつけ台座
・当然、泥除け(脱着式)が「キレイに」装着

どうにも実現難しそうな条件です。加えて個人的には将来的なことを見据えて
・油圧式、機械式ディスクブレーキシステムにも対応(フラットマウント)
・前後共にスルーアクスル
などなど・・・

これらをクリアしようと考えてみますが、ディスクブレーキ台座やスルーアクスル取りつけのノウハウ、ツーリング車独特のフレーム工作に関わるノウハウなどこの双方に精通するフレーム製作者が思い当たりません。つまりツーリング専門ビルダーにディスクをお願いするのは、マウンテンバイク主軸のビルダーにツーリング用の工作を、依頼することがはばかれます。あるいは「できねえ」と門前払いでしょうか。「できるよ」といってこちらの思うものが出来上がってくるのでしょうか・・・


「理想」「夢」が実現できないまま、ほぼ諦めつつあったのですが、ダメ元で店主の最も信頼するビルダー、東洋フレームの石垣氏に恐る恐る相談してみることにしました。TIG溶接に関しての技術の高さはもちろんのことなのですが、新しい発想や応用、挑戦に対しても「一歩先を行く」ビルダーです。

「ディスクのツーリング車をお願いしたいんですが・・」
「できるよ」
あまりに簡単に。
「1インチスチールフォーク、フラットマウント、スルーアクスルで」
「それかあ~」「ちょっと考えさせて。アイデアはあるねん」
簡単ではないながら検討はしてもらえるようです。早速この話をご依頼者に伝えますと、大変喜んでいただけたようです。なんとしてでも実現したいものです。
素人ながらに想像しても容易なことではありません。泥除け装着となると車軸~クラウン下の距離がミリ単位で(しかもナナメ)正確に決め無ければなりませんし車軸位置に対するフラットマウント台座の位置決めも難しそうです。スルーアクスルのフォークエンドに十分な強度を備えたキャリア台座をその位置に取り付けるか、泥除けステーの台座の干渉しないための位置決めなど困難は山積みです。
「ストレートフォークでならなんとかできるなあ」という回答を頂きました。「先曲げ」のフォークが外観的な特徴のスチールツーリング車ですが、実は「先曲げ」自体は大して乗り心地に影響していない事実を理解していますのでそれは問題ありません。しかし、ストレートフォークの方が「設計(図面)」が困難になることも理解しています。ありがたい決断です。市販車の、他のビルダーがこの部分で「諦め」ているのだろうと思います。そしてリアのエンド形状。こちらも実用キャリアを装備でき、泥除け装着が可能なものを検討。チューブの接合方法に関しては、様式的には「ラグ」としたい(イメージ)ですが「ラグでもできるけど、ロウ材はいずれ劣化するので。TIGの方が強度も耐久性も高いよ」とのアドバイスでTIG溶接で製作していただくことに。ジオメトリーはもちろんのこと、完全な理想のバイクをなるべく細かい仕様を全て決めていきます。ご依頼者の「好み」によりゴムバンド式のチェンプロテクター(台座)を装着します。カンティブレーキ台座に関しては不要であることを考えながらもキャリア取りつけステーの台座としての機能を残すことにステー台座を装着しようかと考えましたが、大きく手間も費用も変わらないので保険的に「カンティブレーキ台座」を前後に装着・・・ 細かな個所の指定を全て決めてフレームの製作依頼となりました。ジオメトリーに関しては一般的な走行性能に見合った設計と、ご依頼者の体格に合わせて複合的な寸法取りになるようですが、これに関してはいくつかの質問事項(これまでの使用バイクの寸法や積載荷重)に回答をしてお任せ、です。
相当な手間と労力を掛けてしまっているなあと想像できるのは「装着するタイヤ付きのホイール前後と装着するキャリア、泥除けも準備して預けおいてほしい」と言われ、全ての取り合いを確認しながらフレームが製作を進められていくのだろうということ。なにもかもお任せして安心して依頼ができそうです。



使用するホイールを組み上げ、泥除け、キャリアと共に石垣氏に預けて、全てを委ね、待つことわずか2か月ほどで「フレーム生地が出来上がりました」とのメールと幾点かの画像が届きました。「これですです! コレです!」 ほぼワンオフの1”フォークをはじめ、フレームの雰囲気も、依頼した工作も想像か想像以上のものです。TIGとロウ付けを必要に応じて自在に作られたフレームはその両方の技術に精通する石垣氏ならでは、の物です。未塗装の生地フレームの画像に気持ちもアガります!
さらに待つこと数か月、依頼していた塗色で仕上がって来たフレームがようやく出来上がってきました!!



初めて見る、1インチクロモリフォークにフラットマウントディスク台座、カンチ台座、スルーアクスルエンド。できあがった物を見るのはカンタンですが寸法決定を含めて相当な手間ともしかすると試行錯誤がされたものなのかもしれません。実用荷重に耐える様に作られたキャリア台座付のスルーアクスルリアエンドも初めて目にするものです。できあがった物を見ると、むしろフラットマウントディスク台座だからこの形が実現できたのかーと気付かされるのと同時に、ケーブル(ホース)をダウンチューブに沿って導くこととWレバー台座が共存するための現実的な困難さが上手くクリアされていることにも気づかされます。ノーマルブレーキレバー(アウター出し)ケーブルを「右前」で運用する際のアウターの引き回し方もいろいろ考えての上でしょう。TIG溶接による接合を選んだ時点で諦め?ることになるラグの「様式的」な形状ですが、ヘッドチューブの補強のために巻かれた「ハチマキ」にはささやかな装飾的な「ヒゲ」がわざわざ付けられた洒落っ気も見られます。競技用フレーム製作のノウハウからでしょうか、単純にフレーム用管を繋いだだけではない細かなチューブの曲げ、扁平、リブ補強などが見られ、これが走りに活きてくるのでしょうか。 フレームを眺めているだけでフレームの製作に掛かった手間、時間、そして込められた想いが伝わってくるようです。その何倍もの価格がする「高性能」と言われる最新素材のフレームよりも、何十倍、何百倍も価値のあるフレームに感じられます。 今回の無理難題に応じていただいた東洋フレームの石垣氏には感謝しかありません。



さて、ここから先は「ジテンシャ屋」の出番です。このフレームの価値を最大限に活かして実用性の高い満足度の高いジテンシャ車に作り上げていかなければなりません。少しの重圧感と期待感がまじりあう気持ちで臨みます。

フレーム内への防錆対策を施した後は、通常通りの部品の組付けを行っていきます。古典的なスチールフレームへの部品組付け作業になんら大きな問題はありません。ディスクブレーキ、に関してもむしろ手慣れた作業です。
ホイールは「ディスクブレーキ・スルーアクスル」を選択した時点でハブは決まってしまいますが、さらにシルバーポリッシュのリムに合せた仕様で、となるとなかなか厳しい選択肢の中から工夫(と労力)を要することになります。黒で良いのであればもちろん、赤や青でもいい、よりもはるかにハードルの高い課題になりましたが何とかご依頼者のご希望と必要な機能に沿うホイールができました。
ホイール、ハンドル、ブレーキ、駆動機器が組付けられて「ジテンシャ」の形にはなりましたが、ココからがツーリング車としての特徴的な作業となります。今回のゴールはこの手のカテゴリーにありがちな「様式美」ではなく、旅用途に対する実用性、耐久性、走行性をはるかに高い次元で目指すことです。旅の道具として「使い倒してナンボ」を目指して作業を進めていきます。キャリアの装着を前にまず泥除けの装着です。実際に「輪行」でも多用されるツーリング車ですので泥除けは本来の「泥除け」としての機能と脱着の簡便さと耐久性に注力します。700Cでの使用も視野に入れて決定したブリッジ取りつけ位置&フォークブレード長さでしたが、さすが!準備しておいた泥除けにピッタリの寸法でフレームが製作されています。700C想定とはいえ、専らは650(x38B)で使用するため、シビアな取り付けが求められ、ゴマカシは効きません。加えて「脱着」機能を優先するのですが、リアは分割式、フロントは「先外し/後付け」が可能な構成にします。いわゆる「ランドナー」と呼ばれる古典的なカテゴリーでの手法ではこれらのドロ除けを「革ワッシャー」なるものを使用して固定するらしいのですが、固定しようとするものに対して柔軟性のある「革」を使用しても「締結」は不可能なはずです。おそらく「音鳴り」を防止する目的でしょうか。しかし固定が不十分なために泥除けが走行の振動によって微動を繰り返した結果、薄いアルミ素材の穴をどんどん広げでしまって全く固定できない状態、に至ってしまう様子をこれまでにいくつも診てきました。それでも様式(?)を優先して「取り外さない・旅にもつかわない」ランドナーの泥除けとして革ワッシャーを使用するのは勝手ですが、今回に関しては「実用的」に機能することが何倍も優先です。革ワッシャを使用しないだけでなく、泥除材に開けた穴を恒久的に保護するために全ての穴明部にアルミワッシャを溶接に匹敵するといわれる強固な接着剤で接着固定します。これで穴部の保護ができます。また、泥除けには「ステー」と呼ばれる線材を取りつけて固定しますが、そのステーと泥除材とは「ダルマ」と呼ばれる貫孔のボルトを用います。通常は固定箇所1カ所に対してダルマを並列に二つ使用して固定されることがランドナーなどの定番らしいのですが、これをセンターのみの1カ所にします。位置決めの保持力は低減しますが、1カ所留であればイモネジを少し緩めればステーは自由に回転することができ、ステー付きの泥除けをコンパクトに「折り畳む」ことができます。正統派の輪行では外した泥除けは同じく取り外したホイールに被せてステーを護るらしいのですが、折り畳むことができれば収納の自由度もあがりますし、ステーや泥除けの不要な変形を避けることもできます。フロントフェンダーの取り付けの際に採用される「隠し止め」も採用しません。隠し止めとはフォーククラウンの裏側に雌ネジを設けて置き、泥除けの内側からボルトなどで固定する、という締結です。この際にやはり革ワッシャという不完全な固定が行われることもありますが、いずれにしても前輪を取りはずさなければその締結ボルトを緩める/締めるができない構造です。しかもプラス頭であっても六角穴であっても工具を使用しなければならず、せっかくステー先端のフォークエンドでの固定ををダルマジネジ+D環ボルトにして「工具不要」としている意味が半減(どころか全減)です。また車輪脱着の手順としては泥除けが装着された状態で車輪の脱着は不便でしかありませんので「車輪が装着されたまま泥除けの脱着が可能」な方法を取ることが実用上はなるかに重要です。そこで、「見た目」的には好き嫌いが分かれますが、露出したブラケットを取りつけて、車輪装着のまま泥除けの脱着が可能なように「外留め・蝶ナット」による固定を採用します。これで隠し止めボルトがなかなか締付け出来ずにイライライラからは回避されます。吊りボルトによる固定もあるようですがやはり同じ理由で採用しません。飾って楽しむランドナーには「隠し留め」で♪
さらに、作業の核心はリア泥除けの「分割加工」です。フレームに対して2カ所固定+1カ所ステーのリアについては2カ所のフレーム固定箇所を残して後端を「切断(分割)」して脱着を容易にする手法が採用されます。頻繁に輪行をする際にはそうであるかないかは大きく差が出る個所ですので実用ツーリング車では分割が好まれることは多いのです。分割(切断)する箇所はシートステイで固定した部分以降となりますが、その確実な固定方法とそしてその分割箇所が「目立たないこと」が期待される課題です。今回のフレームのシートステイブリッジには泥除け装着を前提として縦穴(ラジアル)のM5雌ネジが設けられていますので泥除けの装着自体は容易です。が、切断ラインを目立たないように(&汚れを最小限)するためには切断箇所をブリッジ下にした方がよく、結果的に切断ラインは横一線ではなく、「曲線」で分割することになります。現物合わせの根気のいる作業となります。
この分割箇所の穴は脱着の度に締め/緩めが繰り返され、かつ走行中の振動も大きく発生する箇所ですので上述の穴を保護する補強アルミワッシャーの接着が重要となります(他の穴開け箇所にも全てワッシャを接着しています)が、長い期間の使用を考えて十分な対策を取るべき箇所です。分割箇所の脱着はこちらもホイールを装着したまま泥除け(分割)の脱着が工具不要で可能なようにやはり蝶ナットを用いて留める様にしており、ボルト側は分割部の支えに溶接してタイヤ側への張り出しを最小限に&ボルトの紛失を防ぐように工夫しています。
泥除けの固定ができ、位置決めができると、それに合わせてキャリアの取り付けを行います。機能的には泥除けとキャリアに関連性はないため、泥除けの位置に関わらずキャリアの位置決めを行うことは可能ですが、接触や干渉して音の発生や変形してもなりませんし、かといって大きく隙間が空いてしまうことは収容性の面でも不利です。理想は「干渉がない範囲でできるだけ近接したキャリアの高さ」に取り付けられていることが望まれます。キャリアの取りつけ高さを決定しているものはキャリアが持つその足の穴の位置であり、フレーム(フォーク)側のキャリア台座(雌ネジ)の位置によって決まります。試しにデフォルトの状態で合わせてみますと、フロント側では泥除けに完全に接触して取りつけ不可能ですし、リア側では無駄に高(離れ)過ぎの状態でした。そこでフロントキャリアの足を延ばして高さを稼ぐ必要とリアキャリアの低くなる位置に穴を追加して、アクスルと干渉する余分な部分をカットする必要があります。特にフロント側は泥除けの前端部分をキャリアとボルト締結するというオプションもあり、ミリ単位で高さを稼ぐ必要があります。穴を開けたステンレスフラットバー(帯鋼)を溶接して約7㎜延長します。リアは約10㎜下げる様に加工しました。キャリア上部の固定はカンティ台座を利用して固定しますが、カンティ台座のボス(軸)をそのま露出して使用するのもなんだかと思い、アルミのスペーサを加工して挿入します。もちろんキャリア座面の「水平」には十分に注力します。以上の工作は溶接部材を含めて全て「ステンレス」を使用し、長年の使用でも腐食や劣化を回避する様にしました。これでで泥除けとキャリアの装着が完了してツーリング車としての出来上がりです。


最後にハンドルバーに革製のバーテープを巻き、革サドルを取り付け、脱着式のペダルを装着して「完成」です。


構想、の期間を含めればかなりの時間を要してようやく実現、完成することができた理想の「ツーリング車」です。実際に制作する側の苦労はあったことは想像がつきますが、必ずしも「不可能」だったことではないはずなのですが、それでもなかなか実行に移せなかったのは、「(ツーリング車たるもの)~でなきゃ」が作り手にも、乗り手にもあったからなのかもしれません。重量物を積載して悪路を含む道のりを天候も選べない複数日に渡るツーリングでそのブレーキがディスクブレーキであることのメリットは、ロードバイクのそれよりも、晴れた日しか乗らないトレイルバイクよりも明らかです。様々な用途や路面、行き先に応じてホイールを選んで変更して装着できる構造はツーリング車にとってさらに可能性を広げることができる大きな「武器」となるはずです。にも拘わらず、「ツーリング車はカンティブレーキでなければ」とか「正統派スタイルでない」云々という既成概念が邪魔をしてそんなフレーム/フォークをこれまで誰も作ってくれなかったのでしょう。「ツーリング車はこんな形(様式)」という思い込み、型に嵌めた考えがユーザー側にあればこれまで誰もが具現化してみようと思わなかったのでしょう。様式だけを重視して、キャンプを含めた本当の意味での「ツーリング」をする人があまりに少数なのかも知れません。
しかし、それを望む方にその理想を実現できることが証明できた貴重な実績となりました。製作をご依頼いただいたお客様に対して、フレームを製作していただいた東洋フレームの石垣氏に対して、店主の理想の実現のためにご協力いだいたことに深く感謝する次第です。ありがとうございます。




 

とびきり「古い」というものではありません。9速のスラム変速機、Vブレーキ仕様、26吋ホイールでおおよその年式と価格帯が想像できます。採用されているサスペンションフォークを見ても、決して野山を軽快に走れるものではありません。所有者の方もその点は十分承知した上で、「どちらかといえば街乗りメインで」という用途でご購入いただいたものです。

20年とまでは行かなくとも15年以上使われてきたのでしょうか。当初の通り、街乗りで主に使われてきたもので、時には「焼き菓子屋さん」としての配達にも使用されてきました。折を見てメインテナンスも実施してきましたし、タイヤ、ブレーキシュー、、サドル、ケーブル類などの消耗品も必要に応じて交換作業をしながらの使用でした。使用の過程においてなんら大きな問題は無く、このまま同じようにメインテナンスを継続していけば使用し続けることは可能な状態です。

ところが、今回のご依頼は、フレーム以外の問題となりうる箇所を刷新しよう、というものです。物理的には可能なことです。「あれも換えてこれも換えて」すれば最新ではなくともそれなりに「今」っぽい風にはできます。12速化だってできるわけですが・・・ ところがご依頼者のご意向は「最新化」ではないようです。詳しく話を聞いていくと、どやら「このフレームを活かして有効な自転車に仕上げたい」用途は変わらず通勤、買い物、そして商品の配達、です。 実は当時の完成車価格はそれほど大したものでは無かった、のですが、それでもキャノンデール社がまだアメリカ国内で自社工場で作っていたころのフレームです。使用に伴うキズ、塗装の劣化、などはありますが「アメリカ国内で作っていた」の造りがフレームの各所に見られます。所有者の方が感じられたのは「二度と作られることはないこのアメリカ製フレームを乗り続けられるようにしてくれ」というものでした。

かなり「疲れ」が見られていた駆動系は刷新しましょう。とはいっても4角テーパーのBBを使用したクランクに全く問題はなさそうです。ですから「9速(x3速速)」の構成は換える必要がありません。変速レバーとリアディレイラをシマノ製の9速に換える、これだけでよさそうです。フォークは・・・ この価格帯の完成車に装備されてくるサスペンションフォークの実情は明らかなものです。山に行くことがほとんどない、のであればサスペンションの機能は重視する必要はなく、その分素性の良いクロモリのリジッドフォークに換えることにします。特殊なヘッドチューブのフレームですが幸い通常規格のフォークが使用できるようになっています。そして現状の状態は「Vブレーキ」を装備塩ているながら、ホイール(ハブ)もフレームも「ディスクブレーキ」仕様になっています。今後のメインテナンスのこと、悪天時の制動性能のことを考えて「ディスクブレーキ」化をご提案します。現状のブレーキレバーを活かすのであればケーブル(機械)式のディスクブレーキですが、メインテナンスを考慮して油圧式のディスクブレーキにします。そしてディスクブレーキになったことでホイール径(の変更)の選択が可能になりました。街中の舗装路のみを利用であれば700C化して細いタイヤにすることも可能です。しかし、マウンテンバイクとしてのポテンシャルを維持したい、とのご希望に沿うように「27.5インチ化+太タイヤ」を選ぶことにします。ディスク仕様のホイールになっているとはいえ、立派なハブではなかったのですがまた逆にこれではダメという状態でもなかったため、ハブを分解洗浄して再利用し、27.5のリムに組み合わせる、ことにします。シマノのブレーキを使うことにしますが、必ずしも上位のマウンテンバイク用である必要は無さそうです。シマノ製の場合、実はポンプ比(レバー比)は共通であり、ブレーキパッドによっての制動力の差はあっても、エントリーグレードでも性能として全く問題はないことが判っています。むしろ4本指で操作できる下位グレードの方が容易なコントロールができ、フルード漏れのトラブルは却って上位モデルでのみの発生ですので下位グレードブレーキで構成することにします。なんと、そのディスクキャリパーの価格は上位ディスクブレーキパッドよりも安いのです。なんだ?
概ねの仕様は決まってきましたが問題はホイールです。街乗りだけ、とはいえ舗装路での走行性能もホイールに左右されます。しかも27.5のリムで組み替えるのですから・・・ 市場の中で「軽量・耐久性・価格」の面で検討した結果、「Chromag(クロマグ)」を選択。幸い輸入元が製品を準備してくれることになりました。スポークはDT SWISS。ハブはベアリングを分解洗浄して再組立てをしたところ、予想以上の転がりの良さが取り戻すことができました。ラチェットの機能にも問題無く、これで前後ホイールを組み上げます。ここは最も得意とする作業です♪ タイヤは2.1ですがワイドなリムのためかなりボリューム感のあるホイールに仕上がりました。肝心の「26インチ用フレームに装着できるのか?」は事前に慎重ににシミュレーションをして仕様を決めた結果、ギリギリですが「支障なく使える」にうまく収まることができました。

「自転車用のパーツなかなかが揃わない」という現状が続く昨今の実情ですが、関係業者の皆様の便宜やご尽力のおかげでなんと2週間ほどで全てのパーツが揃い、滞りなく組み換え作業が完了することができました。 

できあがった、生まれ変わったキャノンデールはリニアなフォーク、良く効くブレーキ、転がりの良い大径のホイールのおかげでかなり気持ちよく、スムーズに街中を駆け抜けることができる仕様になりました。引き渡しの際に所有者の方に大変喜んでいただくことができ、作業をさせていただいたこちらもとても嬉しい気持ちになりました。


作業のご用命、ありがとうございました♪

 

長らく活躍してくれました・・・

 

出来上がり♪

 

まずやったことは「フレームの洗浄」

 


ハブは洗浄して再組立て
 


そのハブを使って新しいホイールを組みます


タイヤをセット
 

なんとかおさまっています♪


 
クロモリリジッドフォークに。 ディスクローターは裏表まちがってません? いつものことです♪
スポーク配列は逆になってません?いつものことです♪  意味があっての子の向き♪
 

専ら自転車、というよりも登山やバックカントリースキー、沢登り、渓流SUP(‼)などをアクティブにされている方からの作業ご依頼です。「長らく乗っていなかった。フツーに乗れるようになるものなのでしょうか?」「自転車は(山で)あると便利なのでダメっぽかったら新しいのを買った方が・・・」いえいえいえ、ただ古くなっただけで「乗れない」なんてことにはならないですからっ♪ しかも新たに新車を買った方が安くつくなんてないですからっ 一度 持って来ていただいて、それから方向性を考えましょう♪

「古い」とはいえ懐古主義の「旧車」の類ではありませんから新品時のように「レストア」する必要も時代に合せた「様式美」も不問です。7速では不便かというとそれもないはずですし、これを無理やり「今」の仕様に換えなければならない理由はありいません。7速用の変速レバーも現状で入手できますし、チェーンなども入手できるのですから。

そうしてジテンシャをご持参いただき、さっそくチェックしていきます。車体はパーツ構成から推測すると約25~30年ほどたったものでしょうか。当時の「中堅」的なモデルでしょうか。アルミフレーム初期のころの「接着工法」によるフレームの物です。乗ってなかった、とはいえ距離や山道で酷使されte板わけではなさそうですので致命的な損傷はなさそうです。経年による劣化、腐食、破損などによるものでしょうか。タイヤは以前(いつ?w)換えた、ということですのでゴム表面のヒビは少しあるものの、は際立った劣化は少ないようです。ただし、チェーンやケーブル、などの錆びやすい箇所はほぼダメでしょう。7速のグリップシフト仕様ですが、グリップゴムはとうに朽ちてなくなって要るようですし、使い勝手や今後のことを考えるとここはシフトレバー式に交換することにします。主だった箇所は異常の様ですが経年に伴う副産物的なものとしてシートポストが上げ下げ出来ない(どころか廻らない 汗)、ペダルやクランク、BBなどの固着の可能性はあります。フロントディレイラも錆びついて動かない状態です・ しかし、交換を要する部分は先ほど挙げた箇所で済みそうですので部品交換の予算を告げ、作業を承ることになりました。 固着や緩まない、箇所は何とかなるでしょう。 タブンシランケド
フタを開けてみると、錆や固着で少しの苦労することはt当たものの、初見から大きく外れることもなく、費用も最小限で「再生整備」が完了したようです。 これまでの使用頻度で乗り続けるくらいであれば、さらに10年、20年は機能を維持して問題なく使うことはできると思います。

作業のご用命、ありがとうございましたっ


ぱッと見は埃で汚れているだけ? なのですが、グリップシフトは崩壊。Fディレイラは身動きせず・・・


チェーンもそのままの形になっているようです・・・


出来ました♪

 


外観も綺麗になりました


肝心の変速機回り。コチラも問題なく作動するようになっています。
費用的には「最小限」でおさえることができたのではないでしょうか♪

 

子どもの乗る16インチ車がいよいよ「小さい?」というところにまできてしまいました。親から見て少し前からも小さいだろ、という感じだったのですが本人が「まだいい」というのでそのままにしていましたが、怖がりながらもいよいよ自分でも小さいと感じたのか、お友達の自転車と比べて小さいことが気になったのか、ようやく「大きい自転車が欲しい」ということになりました。

「新しいの」とはいえ、新品を買い与えるのはいよいよ選択肢が無くなった時に、というつもりです。そして使用していない20吋の自転車が無いか、譲って頂けないか、と周りに呼びかけたところ、複数の方から「あるよ」とのお声掛けをいただくことができました。本当にありがたいことです。

自転車販売を生業とするものが、自分の子どもに新品を買い与えないのはどういうことか?というところですが、以前から提案していますとおり、「子ども用自転車こそ、使いまわし(おさがり)を活用しましょう」との思いがいあります。

大人であればせっかく買った自転車は部品が消耗すれば、気にいらないところがあれば、自身の運動能力の変化に応じて、ホイールや部品を考案して性能や品質の向上を伴って手を加えていくことで長い期間使用し、「元を取る」大切な使い方もできることでしょう。それに対して子ども用自転車の場合はそうした手を加えるタイミングになる前に、わずか3~4年で「体格が合わなくて乗れなくなる」が先にきてしまい勝ちです。そうなることが判っていてか、メーカーも決して何年も使える高品質な製品を作ってくれることも少ないのですが、中には十分にまだまだ使用できる品質のものがただ乗り手の体格が変わったから、というだけで修理も整備もされずに使われなくなって(棄てるのも惜しい)しまっていたり、「次の子に」との思いはあっても実際に乗らないまま数年後に見てみると、もう整備どころではない、「新しいものを買ってあげたほうがいい」という状態になってしまっていて、結局使われずに処分?される方向へなっていくようです。
ところが自転車視点でみて見ますと、決して使用できないほどのことではなく、使用した分の消耗部品を新たにして、それに伴ったきちんとした整備をしてやれば大人の高額なそれとほとんど変わらずに機能や性能を十分に継続して発揮出来るものがほとんどです。むしろベアリングの「あたり」や馴染みが出てきた、つまり「慣らし」が終わったようなよいコンディションになっている場合すらあります。ただ、その整備や部品に費用や手間がかかること、これがネックとなってしまっているようです。

幸いにして自転車の整備作業は苦にならない親と、限られた色から選ぶ新品の自転車よりも「自分の好きな色」の自転車に乗りたいと望む子どものおかげで、この「もったいない」状況を「吉」として捉えるこができる恵まれた状況です。たぶん、自転車自身にとってもおそらく「良いこと」のはずだと思うのです。自転車販売業としてはどうか、ですが・・・

「譲ってもいいよ」と申し出があった中で引き渡しなども含めて一番手間の少なさそうな1台をお願いすることにしました。幸い?小店から販売させていただいたものですので、メーカーの品質も確かですし(お勧めしたほどなのですから)、お渡しする際にはできる限りの整備をして最良の状態にしていたはずですので悪ろうはずがないでしょう。しかし条件付きで、「親戚の子が大きくなって乗れるくらいになったらまた戻してほしい」というものです。これはむしろ嬉しい条件です♪さらに引き続き自転車を使用していただけることですから。もちろんそれまでに自転車そのものが全くダメになることは考えにくいですから、これは自転車自身にとっても、そして販売した者にとっても嬉しいことでしかありません。これに快諾した後に、その自転車はウチにやってきました! センチュリオンの黒x赤の物です♪

「黒x赤は好きかも♪」と一時はそのまま乗るようなことも言っていましたが、結局は自分の好みの色にフレームを塗ってから使用することになりました。
まずはイメージを形にすることから、ですが頭にある色のイメージを図に書くようにしています。「なにを作る時にもせっけいずを描くように」と日ごろから言っていますのでまずは「ぬりえ」でデザインの決定です。3枚のデザインを描いたところで新たに「グラデーション」のアイデアが加わり、最終的にはその案に決まったようです。今回は刷毛塗りではなく缶スプレーを使用することにしましたので、まず市販のスプレーの色を確認した上でイメージとどう変わるかを確認したのちに最終決定をします。親父はスプレー缶を買い与えるだけです。
今回は塗装の前段階である「分解作業」から自身で体験です。ボルトナットの締付けや緩めはある程度把握していますので、箇所に応じた工具と使い方を示してなるべく自分での作業をしてゆきます。さすがにクランクの引き抜き、BBベアリングの緩めは無理でもほとんどの分解(破壊)作業を行うことができました。そういえば自分が同じような年齢の時には見様見真似で同じようなことをやっていましたから出来て当然なはずです。
フレームの下地処理はオヤジがさくっと済ませ、スプレーで色を付けてゆきます。グラデーションですのでマスキング無しで手間は省けますが、境界が曖昧なことに注意が必要です。加えて連結されたパイプ形状に色を塗るのは初めてのことですので注意点は伝えます。色の塗る順番、重ね具合、スプレーの距離と手を動かすスピード・・・ 幸いなことに「垂れ」が起きることもなく、艶の出せるいい具合の塗装を完了しました。選んだ色も思いのほか良いようだったようです。

色が塗り上がると、残りはオヤジの作業です。取り外して洗浄した部品を給脂しながら組付けていきます。ブレーキシュー、ケーブル類、チェーンを新品に交換、本人希望の「カゴ、スタンド、カギ」を取り付け、法定装備義務のあるベルを取り付けて完成です。スタンドを除き全て16インチ車からの移設です。
最後にカッティングシートを自分で切り出した「マーク」を貼って完成♪ 

この先何年乗ることになるのでしょうか。さきのことはわかりませんが、次の「乗り手」に良い状態で引き継ぐためにも思いっきり乗り倒して自転車本来の性能をとことん活かす使われ方をしていただきたいものです。 


使用済みの自転車を「譲り受けた」「譲り渡したい」などの際に整備状態に不安や不具合がある場合は費用面も含めてお気軽にご相談ください。決して「買い換えたほうがいいですよ」という販売店にありがちな誘導に限らない、ベストな方法を提案させていただき塗装済みたいと思います。

例)ご自身でフレーム塗装をする場合(22吋まで)
分解、フレーム単体お渡し、塗装済みフレーム受け取り、再組立/整備・給脂・調整
を13,200(税込) +消耗部品交換分 

でお請けいたします。内容の詳細につきましてはお気軽にお問合せください。もちろん他店購入車両歓迎です。





 

ロードレーサー、といえばコンポーネントメーカーを問わず、ドロップハンドルに取り付けられたブレーキレバー、あるいはその近くに設けられた変速レバーをハンドルから手を放さずに操作する機構が採用されています。とにかくハンドルバー(ブレーキブラケット)予備からから手を放す必要が無いため、どんなときにも必要に応じてすぐに変速動作が行えるので、ほぼすべてのロードバイクに採用されています。これらの(仮に呼び方として)「ブレーキブラケット変速機構」が発明される以前は変速レバーは主に「ダウンチューブ」に取り付けられた物が主でした。前後の変速用のレバーが左右に対になって設けられていたことから「Wレバー」(正式名称はダウンチューブシフター)と呼ばれているものです。このレバーを操作するためにはハンドルバーから手を放して操作する必要があります。
競技の世界では「ここから速度を上げて仕掛けるぞ」というときに「今から変速操作しま~す♪」とバレバレな動きを見せることなく変速操作をすることが出来たり、咄嗟の速度変化に反応して操作出来たり、あるいはハンドルに体重を預けたまま変速動作ができる(ダンシングなど)、はたまたコーナーでブレーキ操作をしながら出口からの漕ぎだし速度に合わせた変速ができるなどのメリットから採用され、これらの特徴をさらに引き上げることができる「変速操作の電動化」が進みました。
これらのブレーキブラケット変速機構はそのまま「手を離さなくても操作が容易」ということで競技をしないロードバイクにも広く採用され、定着しています。上記のような(競技における)数々のメリットの恩恵があるからですが、一方でデメリットともいえる面も含んでいるのが事実です。操作を容易にするために複雑な変速機構を持つので重量が増え、ハンドル操作に影響があります。変速機構の構造によってはブレーキレバーの形状や支点位置が変わり、ブレーキ操作が劣ってしまったり。変速操作をしようとしてブレーキを誤って操作してしまったり、指や手袋が挟まって誤動作を誘ってしまったり。複雑な構造は故障のリスクも増え、またメインテナンスが煩雑になことになります。競技でならばあきらめてスペアバイクで続行もできるかも知れませんがロードバイクでツーリングの出先でのトラブルは結構厄介なことになりそうです。組み合わせてよく採用される「ケーブル内蔵」などの構造であれば出先でのトラブルは続行不可能、になりかねません。機構の故障の際の修理(部品交換)費用も心配です。数々のメリットはあるものの、あれ?っと不安になりそうです。
ところでその「メリット」は本当に必要なものなのでしょうか? 瞬時に展開に反応して速度を上げる、間髪を入れずに必要なギアへの変速を完了させる、コーナー立ち上がりでのわずかなロスも許さない正確なギア選び、満身創痍のダンシングしながらの変速操作・・・ これらが競技以外の走行で本当に必要なことでしょうか。

そこで、多少変速操作が遅れても(何に対して?)、ハンドル、ブレーキ周りがスッキリ&軽くなって、ブレーキ操作が優先的になって安全に走れて、トラブルも少なく、メインテナンスの費用と時間を抑えることができるなら、ということで「Wレバー(ダウンチューブシフター)」もただ古いだけじゃなくていいこと一杯あるんじゃない?というお話なのです。

とはいえ、製品供給の面からいうとシマノもカンパニョーロも製造を終了してしまった機構ですので条件はかなり限られてしまいます。ここでは「運よく」当時物のレバーが手に入った、それに対応した変速構成やフレームだったら、というケースの場合のご紹介です。

ご依頼のあったのはカンパニョーロの10速コンポーネントで組まれたスチールロード。幸いフレームにはダウンチューブシフター用の「台座」が設けられています。カンパニョーロも10速まではWレバーに対応する機構を採用していました。ただWレバーとしての製品は8速用までだったかも知れませんので、ここは内部パーツを変更して10速に対応する様にしてやらなければなりません。ブレーキレバーは・・・ ブレーキ機能だけのレバーに交換するのも方法ですが、カンパ社でもレコードグレードで変速機構を取り除いたエルゴレバーを「TT用」などとして捉えていたこともありますので同様に現状のエルゴレバーから変速機構を取り除いてブレーキレバーとすることにします。肝心要の「Wレバー」ですがこちらはお客様ご自身で準備されたものです。これに10速用のパーツを組み込む(変更)できれば、ということになりますが、このWレバーは幸いなことにダイヤルの切り替えで「クリック(シンクロ)モード」と「フリクションモード」とを切り替えることができる構造になっていますので最悪?はフリクションモードで運用することにする、という算段です。果たして・・・

エルゴレバーからの変速機構の取り出し(除去)は構造がわかっていればわけない、のですがとにかく部品点数が多く、そして手順もあるため通常はあまり行われない作業だと思います。もしかして将来にまたエルゴレバーでの運用再開、を意識して可逆な除去作業を行います。 これを左右分済ませます。 ブレーキレバーの完成。 8速シンクロ変速レバーを10速シンクロにすru為にパーツを準備し、これを交換します。が、これがなかなか大変です。非常に硬いスプリングが組み込まれていますので思うように作業ができません。小さな力の入れにくい部品をスプリングを抑えながら、中心がスンブ狂わないように組付ける必要があります・・・ 仮に部品を揃えることができたとしても、あまりお勧めする作業ではありません。苦労と工夫ののちに何とか組み換え完了。

これらを元の車体に組み込んで、調整を済ませて、めでたく完成です♪ 

見た目、は副産物にすぎませんがシンプルで格好のよいロードバイクに仕上げることができました。


ふと・・・ 
なぜロードバイクには「泥除け(マッドガード)」がついていないのだろう。そんなことに疑問を持ってしまいました。
「そりゃあ、『競技用』として極限までそぎ落とす上で必要ないからさ」「パンクを含めたホイールの脱着が容易になるだろう」「まず、泥除けが必要な状況で乗らないだろうし、第一濡れてしまって困るような服装でもないだろう」などという答えが返ってきそうです。
一方で、「ツーリング車」などに分類されるスポーツバイクにはその特徴を表すものとして多くの場合「泥除け」が装着されています。なぜ?
「そりゃあ、『様式美』というやつさ」「上品な見た目となり、服の汚れや天候を気にしなくてよくなる」「でも樹脂のヤツではどうもな。軽合でなければ正統派とは言えないな」

恐らくこういう概念で「棲み分け」とカテゴライズがされていて、その通りに従っているようです。しかし、本当に付けない方がいいのでしょうか。泥や土が詰まってしまう、枝木が挟まってしまう可能性の高いマウンテンバイクではその装着をしない理由は理解できますし、純然な競技の世界ではクルマのF1の様に不要であることも納得できます。

ところが世の中で使われている「ロードバイク」のほとんどが必ずしも「競技用」として使われているのではなく、むしろ公道を走って楽しむツーリングやファンライドといった用途が圧倒的に多く、その際には上記の「不要」「付けない理由」が薄れてしまいそうです。「(競技車としての)ロードレーサーにはついていないものだから」という恰好やコスプレ的な基準で「付けない」という認識があるのかもしれません。「ついてたらロード(レーサー)らしくなくてカッコ悪い」そんな認識なのではと思います。

古いもの、「懐古趣味」などには全く興味はありませんが、2010年頃にアラヤ工業(のBrian氏による)企画でRALEIGH社の125周年記念として「ラレー・レコードエース(RRA)」というモデルが限定で販売されました。当時のクラブモデルを「再現」したやはり懐古趣味的な記念モデルでしたが、そうはいっても現行の部品で構成するわけですから結果的に従来からの自転車(ロードバイク)の本来のシンプルな姿を現代技術を使って再現するということになり、純粋に「ロードバイク」としてみた際に非常に魅力的なものに映りました。「クラブモデル」というカテゴリーが何であるかはよく知りませんでしたが、そのシンプルな機能美に心を撃ち抜かれ、展示用在庫としてその場で発注をしてしまったほどです。オキドキでサイズ違いなどで複数台を発注することは普段は無い暴挙です。フレームチューブを含め、企画者の想いが込められた部品構成はその苦労も感じられる価値のあるものでした。そしてそのロードバイクはフレームと同色に塗られた「泥除け(マッドガード)」が装着されていましたがそこに「ツーリング車っぽい」偏った印象は感じられなかったのです。ああ、ロードバイクに泥除けは「あり」だな。機能的でありながら何も損なうものはないんだ。とその時に気付かされました。

「クラブモデル」とは一体何なのかを最近になって考えることがありました。(自転車における)定義についてはあまり気にしないことにしていますが、その位置づけのヒントは4輪や2輪の方から察することが出来そうです。プロフェッショナルによる競技ではなく、アマチュア、つまりクラブマンによる週末レーサー。あるいは公道レース(ごっこ?)を楽しむ「カフェレーサー」。つまりサーキットへ「自走」で向かう必要のある一般アマチュアのための公道走行に必要な保安部品、装備が装着された競技用車両。これがクラブモデル、という位置づけのようです。サーキット走行をしないまでも、日常の公道で競技車両並みの操縦性や走行性を楽しむための車両、というものでしょうか。例えば4輪であれば「ケーターハム/ロータス スーパーセブン」。本来の様にこれで公道を自走してサーキットへ向かい、保安部品を外したり保護した上でスポーツ走行を楽しみ、やはり公道を自走して日常の走行も楽しむ・・・ クラブモデルはそうした用途を狙ったものであるとすれば自転車のロードバイクもやはり同じような仕様の構成で成り立つものができるのではないでしょうか。幸い?自転車の場合は合法に公道を走るために必要な装備は(日中であれば)警音器ぐらいしか規定はなく、必ずしも「泥除け」が「必要というわけではないのですが、天候や路面状況に左右されずに走行を楽しむ、そして他交通者に対して泥撥ねや小石を飛ばしてしまうことを避けるための「エチケット」として極限までの重量に拘るのでなければ「泥除け」の装着もあって然るべきなのでは、という考えに至ったのです。スーパーセブンを所有することも、GB250を手に入れることもないでしょうが、手持ちのお気に入りのロードバイクをクラブマンレーサー的な仕様にしてみよう、というわけです。

対象にしようとなったのは先日「Wレバーシフト(ダウンチューブシフター)化」して再構成した「ライトスピード・クラシック」です。クラブマンレーサーのイメージで、というには英国のかけらもなく、チタンフレーム&カーボンフォークの純然たるメイドインUSAにイタリアコンポーネントを組み合わせたものです。イタリア製スーツを着たバリバリのアメリカ人IT技術者、のような組み合わせで伝統などとは無縁な存在です。しかし、そうした「様式」「形式」的なことを気にせず、快適性能と運動性能の高い、このロードバイクをクラブモデル化することが自分自身にとって理想的であることを十分に認識しています。他人様とスピードや距離を競うのでもなく、大きな積載をして旅をするのでもない。どこまでも自分自身にとっての快適性と走行性を楽しむためのロードバイクになるでしょう。

装着する泥除け(マッドガード)は樹脂製にしてもよかったのですが、樹脂であるカーボンフレームではなく、チタンフレームであるということ。長期使用による経年劣化を避けたいこのロードバイクに関しては泥除けも「金属」であることを望んで、本所工研製のものしました。装着タイヤは25Cですが、25-28Cに対応した細身の製品があります。しかし、資材は手に入りましたがフレーム/フォーク側には一切の泥除け装着に対応した作りはありません。ブレーキもそうですが、特にフォークとタイヤのクリアランスに泥除けが入る余地などありません。カーボン製のフォークに穴やネジなどを追加加工する手立てはありません。金属だから、と言ってチタンフレームに溶接やや追加工するような勇気もありません。ゴムバンドや結束タイなどによる簡易なとりつけは絶対に本望ではありません。輪行はしない、と割り切りますが将来取り除いてしまった時に「迹」が残ってしまうことも望みません。それでいて走行中に泥除けが不用意にずれたり動いてしまってタイヤと接触、損傷などもないようにしっかりとした固定をしなければなりません・・・
こうした「様式」を無視したような試みをする例はなさそうですので参考になる例もなさそうです。ヒントの断片を集め、試行錯誤でいろいろ試して思い描いた形に近づけていく作業。ひと段落がつけば実走をしてみて不具合を確認して手直し、根本的なやりり直し、で納得のいくものに近づけていきます。おかげで泥除けに関する加工の知見を蓄積していくことができたように思います。

最終的に「100点満点」は無理でも「自分自身が使う上でなら」こという範囲での及第点がクリアできたと判断してこの仕様で当面はロードバイクライドをしていこうと思います。ますます自分好みのロードバイクに仕上がってきて嬉しい限りです。

出来上がったWレバーチタン「ライトスピード・クラシック」
 


RRALEIGH RECORDACE 2010
 

 

 

 


マッドがードの後端をどこまで下げるか、は悩ましいですが輪行はしないまでも前輪を外して車載はするだろうと、前輪をはずしても干渉しない長さ、をねらいました。