閉館(物語三昧)

閉館(物語三昧)

Archive/2005年4月17日~2008年3月17日(やり方がわかったので、やっと非公開にできました)

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評価:★★★★☆4つ半

(僕的主観:★★★★★5つ


"THE RECORD OF FALLEN VAMPIRE"(堕ちた吸血鬼の記録)

あらすじ
遠い昔、夜の国の至高のヴァンパイア王は、余りの強さから人間だけでなく同族からも恐れられた。
そしてついには愛する女王を人質にとられ、王は処刑されることとなる。しかし、それに狂乱した女王は自分でも知りえなかった秘めた魔力を暴走させ世界を崩壊の危機へと追い込んでしまう。人々はかろうじて女王を世界のどこかに封印するが、王はそれに怒り、自ら夜の国を滅ぼしてしまう。女王を助け出すために、王は封印をめぐって同族や人間たちと果てのない戦いを続けていく。最後のヴァンパイア王「ローズレッド・ストラウス」は、守るべき国も民も捨てて封印を探す放浪を、千年以上も続けている・・・。ただ、愛する女王「アーデルハイト」を取り戻すために。

 


カルマさんにすすめられたのですが、3巻くらいまで読んで、ちょっと打ち捨てていました。いや、気にはなる展開だったのだが、そこまでが陳腐で、しかも絵柄がカルマさんいわく「漫画的にデフォルメされた可愛らしい絵柄」であんまり好きになれなかったんですよねー。あーいかにもガンガンとかそこらっぽいなー、とかとか。しかし、、、、カルマさんのお勧めということもあって、そこはがんばって読み続けたのですが・・・というか、スミマセン4巻からはマンガ喫茶でした・・・が、大失敗でした。これは、一冊い一冊吟味して読みたい体験だった。

 

 

いやーーーこの脚本は、見事だった。




 

ただ、ここで断っておくが、ガンガンという媒体もそうだし、絵柄もそうなのだが、正直それほどリテラシーの高くない萌がある程度あれば売れる狭いマーケットを対象とした作品であるがゆえに、なかなかその対象マーケットの人間以外が手に取ることは少ないであろうと思う本です。けれど、結局は、質なんだよなーというのが、僕の感覚です。いやこれは骨太で素晴らしいよ。僕のブログは、、、、というか僕のスタンスは、海燕さんと同じく、すべての物語を平等に扱う・・・というかそういう言い方が合うのかわからないんだが、といかく、それがエロゲーであれ古典文学であれ、どんなジャンルであろうと、「ほんもの」かどうかを、その意匠(=表面の上澄み)を飛び越えて本質を感受したいと思っているので、こういう作品に出会えると、俺ってなかなかいい審美眼をしているな、、、また一つ見つけたぜ(笑)みたいな、ニヤリという気分になります。

 

そして、このブログを読んでくださっている方々は、僕のそういうスタイルを知っていると思うので、もし機会があれば、まずはマンキツで・・・そうですね3時間以上はいるとおもうが、、、がんばって6巻ぐらいまで読んでみてください。僕の言っていることが正しいかどうかわかると思います。まーマンガを読みなれていない人にいきなりお勧めはしませんが、マンガをそれなりに読みなれているのならば、これは読んで損はありません。

 

読み終わっていま振り返ると、やはりキャラクターとか表現力が、もう少し最初から大きく、、、かつ世界の描写をもっと細かく書けたらもっと素晴らしくなったとは思う。(つーかこれこそアニメにすればいいのに)けれど、、、いやーとにかく面白かった。読みがいがあったんだもん。これは全冊を一気に読んだ方がいいと思う。びっくりするよ。本当は連載で、ちびちび読んでいたら、途中から衝撃を受けたと思うよ。最初の最初からこの脚本を設計していたというのは、さすが本職が推理作家だけあるなーと思う。

 

ちなみに、なぜこれほどアニメが乱発して作られているのに、この作品がアニメ化されていないのか理解に苦しむ。絵柄もいい。これを、おもいっきり萌え萌えのキャラクターかわいい作風に仕上げれば、それなりの視聴率が稼げたうえで、しかも内容はウルトラ硬派なんだから。相当のクオリティの作品ができると思うのに。業界の人も見る目ないなー。どうせ、とれる視聴率なんか、それなりに決まっているのだから、あるい程度、マーケットの消費層を超える内容をぶつけるのは、考えないと・・・。とかとか。

 

ちなみに映画を例にあげると、黒沢明監督の『羅生門』とか、洋画だとメグライアンの出ていた『戦火の勇気』などの作品と同じ構造なんです。一つの事実が、いろんな角度からん見ると、まったく異なる真実が浮かび上がっていく手法です。

 

パイオニアLDC
羅生門 デラックス版
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
戦火の勇気

>遠い昔、夜の国の至高のヴァンパイア王は、余りの強さから人間だけでなく同族からも恐れられた。そしてついには愛する女王を人質にとられ、王は処刑されることとなる。しかし、それに狂乱した女王は自分でも知りえなかった秘めた魔力を暴走させ世界を崩壊の危機へと追い込んでしまう。人々はかろうじて女王を世界のどこかに封印するが、王はそれに怒り、自ら夜の国を滅ぼしてしまう。

 

『ヴァンパイア十字界』 作:城平 京 画:木村 有里
http://ameblo.jp/petronius/entry-10039068589.html  

 

これ、あらすじなんですが・・・・・これが、千年前に起きたことで、関係者はほとんど死んで伝説となってしまっているんですが、、、この事実は、確かに事実でここに書かれた通りなんです。けれども、その事実の意味が、どんどん変わっていくのはエキサイティングです。

 

 

しかも、、、、最後の最後に、ヴァンパイア王「ローズレッド・ストラウス」が、

 

 


これは政策だ・・・・・

 

 

 

と呟くとき。

 

その指導者としての器の大きさ、マクロを読み切った発想、そしてそれが故に引き受けなければならなかった激烈な孤独というものに戦慄が走りました。そう・・・・すべてのマクロの責任を引き受けた現実的な政策は、これしかあるまい。

 

・・・・これは、まぎぃさんのラスボス問題・・・・ラスボスがいなくなった世界で、ラスボスとは誰か?という問いと、僕の善悪二元論・・・・人間をある種の統合を得るためには、外部に敵を持たなければならないという本能や法則の次元をどう覆すか…という問いへの、一つの物凄く骨太の解答だ。

 



 

考えてみれば、あまりに当たり前なのだが・・・・これは凄い。脚本としては傑作だと思う。これを自覚的に設計した、ヴァンパイア王「ローズレッド・ストラウス」は、マジですごいよ。というか・・・・正直あまりにマゾ。そこまで自分を切りきざまくてもよかろう…と思う。なぜならば、これは全体のために、あらゆる全ての個としての権利(それも自分自身ののみの!)を切り刻んだ物語。

 

公の人間に、個の権利なし!を地でいく発想だ。


・・・・・うーむ、、、、いろいろ書きたいことがあるのだが、、、まぁ続きは気が向いたら書くとして、、、一言


レディ・ブリジッド・・・・かわいすぎるっ!!!!やばいぞ!!!。


はぁはぁ。

 

 

 

>多分読者の好きなキャラは圧倒的にブリジット多数です(笑)
あの・・全ての誤解が解けた後のストラウスへの態度の変わりっぷりは、可愛すぎますよね。
まさにツンデレです。千年の時を超えたツンデレ(笑)
でも逆に、きっと千年前の2人はああだったんだなって思って、切なくもなったり。

 

 

カルマさんのコメントですが・・・・いやーやべっすよ。

 

人類との共同戦線での最高会議で、涙を流してしまった自分を戒めるように、ナイフで手を突き刺すシーンは、戦慄が走りますよ。かわいくて(笑)。

 

僕は、バスタードのアーシェスネイとダークシュナイダーの関係を思い出しました。


たぶん近いうちに完璧ネタバレ記事を書くと思うので、その時までに読んでおいてください。


以上。


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■ありがとうございます♪

ちゃんと読んでくださいまして、嬉しいです!

4巻というと、ようやく物語が異質な方向に動き始めたあたりですね。
1巻読むだけでは面白くないので、漫画向きではない構成なんですが。


>コマ割が少し下手
十字界の作画を担当しているのは(当時)新人の方なので、正直言って下手ですね。
ガンガンはいきなり新人に連載をさせて、育てることが多いです。
だから1巻と最終巻で絵柄が全く変わっているのがザラという(笑)

カルマ 2007-07-10 00:00:27

 

■カルマさんへ

やっやばい・・・・さっきマンキツで読み終わったけれども、、、すげーこれいいじゃねぇかぁ!!!。いやー絵柄があまりにすきくないので、しかも・・・なんつかーいかにもガンガンとかその程度の子作りファンタジー絵柄だなーとか、すみません、馬鹿にしてました。7巻あたりから、、凄かったです。いやーカルマさん。これは凄いですよ!。レディ・ブリジッドにべたぼれです。死にそう(興奮!!)やべーって、あの子、かわいすぎで死にそう。。。。。いやー確かにこれは傑作だ!。世の中にはまだまだ埋もれているんだなー。あんなになめてた絵柄も良くなっていくし、、、これだけの脚本を持つと、それすらもよく見えてくるし…いや凄かった。責任と覚悟を最高度に追求したら、そしてそれを応え得る能力があった・・・こうなのかもな・・・。感動しちゃった。

ペトロニウス@管理人 2007-07-14 22:37:06

 

■僕も感激です!!

多くの文学や物語に触れてきているであろうペトロニウスさんに、まさか「傑作」とまで言っていただけるとは思いませんでした・・・!!

>なんつかーいかにもガンガンとかその程度の子作りファンタジー絵柄だなーとか、すみません、馬鹿にしてました
いや、特に前半の絵の下手さに関してはもう、弁護の余地はないです(苦笑)
ただ・・後半ある程度上手くなってからですが、こういう漫画的にデフォルメされた可愛らしい絵柄
であることで、キャラ的に感情移入できる部分もあるように感じるんですよ。ライトノベルにおける挿絵的な役割というか。

>7巻あたりから、、凄かったです
7巻ですか。周りの、さほど深い読みをしない友人には「とりあえず3巻まで読め」という薦め方をし
てます。この作品、後半になればなるほど良くなるんですよねぇ。

7巻は、王として、死刑を甘んじて受けるストラウスの台詞にまずやられまして・・
そして、千年ものあいだ、国を、血族を守るために、その守る対象である血族と戦い・・・あぁ、書
いてて泣けてきた(爆)

ちなみに、設定好きの僕は、「パンスペルミア説」で大興奮しました(笑)

カルマ 2007-07-15 03:09:09

 

■長くなったので2つにします(爆)

>レディ・ブリジッドにべたぼれです
多分読者の好きなキャラは圧倒的にブリジット多数です(笑)
あの・・全ての誤解が解けた後のストラウスへの態度の変わりっぷりは、可愛すぎますよね。
まさにツンデレです。千年の時を超えたツンデレ(笑)
でも逆に、きっと千年前の2人はああだったんだなって思って、切なくもなったり。

>これだけの脚本を持つと
原作者は、元々ミステリ作家なんですね。
だから非常に複雑な構成や「真実」の導き方とかが上手いです。
また、アニメ化もした「スパイラル~推理の絆~」という漫画の原作を手掛けていました。そちらで随分と有名になりましたが、
作品としての完成度では圧倒的に「十字界」が上だと思います。
しかし・・・これだけ面白いのに、アニメ化とかの噂は一切聞かないんですよ。多分ガンガンで巻頭カラーや表紙も飾ったことがないまま、完結したように思います。是非、星人フィオなどの描ききれなかった部分を補完し、またこの作品を広く知ってもらう意味でもアニメ化して欲しいですねー。(同感・・・管理人

あぁ、なんか関係ないことまでいろいろと書いてしまいました(爆)
ありがとうございました!
感想記事を楽しみにしています♪

カルマ 2007-07-15 03:09:55